転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望

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第15話 モブが王子達の話しを盗み聞きします

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 いつものように昼休みに中庭に向かうと 悪役令嬢のゼシカと攻略対象である王子達がいた。
 仲良く皆でお昼を食べる・・・なんて様子は無い。
 王子達の他にもう1人少女がいる。ゼシカは、その少女に対して怒っているみたいだ。
「誰だ? あの女の子。迷子か?」
「この学園の制服を着ています。マスターと同じ学生でしょう」
「あ、本当だ。人を見た目で判断するのは良く無いな・・・じゃなくて、何であの子が王子達と一緒にいるんだ? ゼシカは、あの子に滅茶苦茶怒っているみたいだし」
「あのゼシカという少女は、そんな簡単に怒るような人間には見えませんでしたが」
「俺もそう思う。婚約者に手を出されたら流石に怒るだろうけど、まあ、いきなりそんな展開が起きるわけ・・・」
「・・・マスター、王子はあの少女に恋をしているのではないですか?」
「はぁっ!? いやいやいや有り得ないって、王子があのちんちくりんな女の子に恋をしたって、そんな馬鹿なことあるわけ」
 急いで、王子を確認する。
 ゼシカが怒っている様子を見て、震えている女の子。
 震えている女の子の肩に手を置き、王子がゼシカから守ろうとしているように見える。
「・・・ああ、これは落ちてますね、王子。やばいですね」
「良かったではないですか、マスター。これで、リーゼと結ばれても問題ありません」
「問題大ありだっての!! そうだよ、そもそもリーゼは何処? せめて、あそこにいるのがリーゼだったら納得出来るのに」
 攻略対象が全員集まっていたり、入学してからまだそんなに月日が経っていないのに好感度を上げられている事に関してはこの際置いておくとして、リーゼがいない。
 主人公でありメインヒロインである筈のリーゼがこの場にいない。王子が好意を寄せている女性もリーゼじゃない。悪役令嬢であるゼシカとも対立していない。
「意味が分からない。どういうことだ? 神様もしかして俺に嘘を教えたのか?」
「それは無いのでは? 神という存在を信じきれていない私ですが、神がマスターに対して嘘を付くメリットは無いでしょう」
「確かに、嫌がらせするにしても攻略対象の誰かに転生させてからヒロイン実は違いました~とかの方がまだ面白いもんな。ヒロインが変わろうがモブの俺にとっては、特に問題は無いし」
「そうですね。ですが、今のままだと何かしらの問題に巻き込まれる可能性もあります。すでに、リーゼとも仲良くなっていますし」
「うう~~、前世ではギャルゲーばっかりやって乙女ゲームの方には手を出さなかったからな~。好き嫌いするんじゃなかった~。少しでもやっていたら、これからどんな行動したら良いか分かったかもしれないのに~」
「ひとまず、彼らの会話でも聞いてみますか?」
「・・・そうだな」
 まだ、中庭に王子達はいる。
 バレないように聞き耳を立てる。

「いい加減にしろ! 貴様、殿下に近づいて一体何が目的だ!」
「目的だなんて・・・わ、私はただ王子達と仲良く出来たらと思っただけで」
「仲良くだと? 殿下の婚約者である私の前でよくそんな事が言えたな。早く殿下から離れろ!」
「は、はい。分かりました」
「大丈夫だ、ユリス」
「ですが、殿下」
「俺が、ユリスの傍にいたいんだ」

 王子は女の子をユリスと呼んでいた。
 ロゼは、離れようとしたユリスを抱き寄せる。
(うわぁ~、婚約者の前で他の女にベタベタしたらダメだろう。しかも、幸せそうな顔をして。あんなの見せつけられるゼシカはたまったもんじゃないな)
 ゼシカの方を見てみるが、先程の怒りの表情から悲しみの表情に変わっていた。

「ゼシカ、俺がユリスといることを望んでいる。邪魔をするな」
「しかし、殿下。その女は平民です。身分が違い過ぎます」
「だからどうした。この学園は、身分の差は関係無くどのような相手とも仲良く出来る場所だ」
(何それ、初耳なんですけど、未だに貴族の知り合いいないんですけど)
「なら、せめて私も殿下の傍に・・・」
「ダメだ。学園に来てまで婚約者であるお前と行動を共にしたくは無い。必要以上に俺に近づくな」
(酷くない? そこまで言う?)
「・・・分かりました」
 ゼシカは、拳を握り腕を振るわせていた。フゥ~と息を吐き、力を抜いた。
 ロゼに深くお辞儀をした後、背筋を伸ばしてその場を去っていった。その背中からは悲しみがにじみ出ていたのが俺にも分かった。
 ゼシカが去った後、攻略対象達とユリスもいなくなった。

「はぁ~、疲れた」
「話しを聞いていただけですよ?」
「ああいう緊張する空間っているだけで疲れるんだよ。・・・俺、攻略対象達嫌いかもしれない」
「王子だけでなく、他の人物もですか」
「さっきの見てれば何となく分かるよ。王子と似たような意見を持った奴らばかりさ」
「では、悪役令嬢の味方をしますか?」
「いや、味方をする訳じゃないけど」
 悪役というのだからもしかしたらユリスに何かしている可能性もある。
 でも、俺にはゼシカがそんな事をするような奴には思えなかった。
「悪役って何なのかな?」
「さあ? 悪というのは考え方によって変わりますから」
「・・・・分からん」
 王子達と関わることは無いと思っていた日常が、この日を境に変わっていくことを俺はまだ知らない。
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