15 / 42
第15話 モブが王子達の話しを盗み聞きします
しおりを挟むいつものように昼休みに中庭に向かうと 悪役令嬢のゼシカと攻略対象である王子達がいた。
仲良く皆でお昼を食べる・・・なんて様子は無い。
王子達の他にもう1人少女がいる。ゼシカは、その少女に対して怒っているみたいだ。
「誰だ? あの女の子。迷子か?」
「この学園の制服を着ています。マスターと同じ学生でしょう」
「あ、本当だ。人を見た目で判断するのは良く無いな・・・じゃなくて、何であの子が王子達と一緒にいるんだ? ゼシカは、あの子に滅茶苦茶怒っているみたいだし」
「あのゼシカという少女は、そんな簡単に怒るような人間には見えませんでしたが」
「俺もそう思う。婚約者に手を出されたら流石に怒るだろうけど、まあ、いきなりそんな展開が起きるわけ・・・」
「・・・マスター、王子はあの少女に恋をしているのではないですか?」
「はぁっ!? いやいやいや有り得ないって、王子があのちんちくりんな女の子に恋をしたって、そんな馬鹿なことあるわけ」
急いで、王子を確認する。
ゼシカが怒っている様子を見て、震えている女の子。
震えている女の子の肩に手を置き、王子がゼシカから守ろうとしているように見える。
「・・・ああ、これは落ちてますね、王子。やばいですね」
「良かったではないですか、マスター。これで、リーゼと結ばれても問題ありません」
「問題大ありだっての!! そうだよ、そもそもリーゼは何処? せめて、あそこにいるのがリーゼだったら納得出来るのに」
攻略対象が全員集まっていたり、入学してからまだそんなに月日が経っていないのに好感度を上げられている事に関してはこの際置いておくとして、リーゼがいない。
主人公でありメインヒロインである筈のリーゼがこの場にいない。王子が好意を寄せている女性もリーゼじゃない。悪役令嬢であるゼシカとも対立していない。
「意味が分からない。どういうことだ? 神様もしかして俺に嘘を教えたのか?」
「それは無いのでは? 神という存在を信じきれていない私ですが、神がマスターに対して嘘を付くメリットは無いでしょう」
「確かに、嫌がらせするにしても攻略対象の誰かに転生させてからヒロイン実は違いました~とかの方がまだ面白いもんな。ヒロインが変わろうがモブの俺にとっては、特に問題は無いし」
「そうですね。ですが、今のままだと何かしらの問題に巻き込まれる可能性もあります。すでに、リーゼとも仲良くなっていますし」
「うう~~、前世ではギャルゲーばっかりやって乙女ゲームの方には手を出さなかったからな~。好き嫌いするんじゃなかった~。少しでもやっていたら、これからどんな行動したら良いか分かったかもしれないのに~」
「ひとまず、彼らの会話でも聞いてみますか?」
「・・・そうだな」
まだ、中庭に王子達はいる。
バレないように聞き耳を立てる。
「いい加減にしろ! 貴様、殿下に近づいて一体何が目的だ!」
「目的だなんて・・・わ、私はただ王子達と仲良く出来たらと思っただけで」
「仲良くだと? 殿下の婚約者である私の前でよくそんな事が言えたな。早く殿下から離れろ!」
「は、はい。分かりました」
「大丈夫だ、ユリス」
「ですが、殿下」
「俺が、ユリスの傍にいたいんだ」
王子は女の子をユリスと呼んでいた。
ロゼは、離れようとしたユリスを抱き寄せる。
(うわぁ~、婚約者の前で他の女にベタベタしたらダメだろう。しかも、幸せそうな顔をして。あんなの見せつけられるゼシカはたまったもんじゃないな)
ゼシカの方を見てみるが、先程の怒りの表情から悲しみの表情に変わっていた。
「ゼシカ、俺がユリスといることを望んでいる。邪魔をするな」
「しかし、殿下。その女は平民です。身分が違い過ぎます」
「だからどうした。この学園は、身分の差は関係無くどのような相手とも仲良く出来る場所だ」
(何それ、初耳なんですけど、未だに貴族の知り合いいないんですけど)
「なら、せめて私も殿下の傍に・・・」
「ダメだ。学園に来てまで婚約者であるお前と行動を共にしたくは無い。必要以上に俺に近づくな」
(酷くない? そこまで言う?)
「・・・分かりました」
ゼシカは、拳を握り腕を振るわせていた。フゥ~と息を吐き、力を抜いた。
ロゼに深くお辞儀をした後、背筋を伸ばしてその場を去っていった。その背中からは悲しみがにじみ出ていたのが俺にも分かった。
ゼシカが去った後、攻略対象達とユリスもいなくなった。
「はぁ~、疲れた」
「話しを聞いていただけですよ?」
「ああいう緊張する空間っているだけで疲れるんだよ。・・・俺、攻略対象達嫌いかもしれない」
「王子だけでなく、他の人物もですか」
「さっきの見てれば何となく分かるよ。王子と似たような意見を持った奴らばかりさ」
「では、悪役令嬢の味方をしますか?」
「いや、味方をする訳じゃないけど」
悪役というのだからもしかしたらユリスに何かしている可能性もある。
でも、俺にはゼシカがそんな事をするような奴には思えなかった。
「悪役って何なのかな?」
「さあ? 悪というのは考え方によって変わりますから」
「・・・・分からん」
王子達と関わることは無いと思っていた日常が、この日を境に変わっていくことを俺はまだ知らない。
11
あなたにおすすめの小説
家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜
三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」
「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」
「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」
「………無職」
「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」
「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」
「あれ?理沙が考えてくれたの?」
「そうだよ、一生懸命考えました」
「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」
「陽介の分まで、私が頑張るね」
「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」
突然、異世界に放り込まれた加藤家。
これから先、一体、何が待ち受けているのか。
無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー?
愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。
──家族は俺が、守る!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる