11 / 40
それが運命というのなら#11
しおりを挟む
病院を出て、ゆっくりと歩みを進めていると不意に、将星の気配を感じた気がした。足を止め、振り返ってみるが姿はない。
(気のせいか……)
駅まで歩こうと通りに出る。後ろからバイクの低いマフラー音が聞こえたと思うと、そのバイクが自分の横に止まった。
「理月」
黒い馬のような大型バイクに跨った将星だった。
「よぉ、偶然だな」
「……ああ」
将星の顔を見た瞬間、体がジワリと熱を持ち始め手首の噛み跡が熱くなるを感じる。それはもう理月の中で条件反射のように思えた。
不意に《仮の番》という言葉が過り、そのせいで今日はいつもより体が過剰にアルファの将星に反応しているような気がする。
「今日、病院だったのか?」
なぜ分かったのか、そう思うと顔に出ていたのか将星は自分の首を指差した。
ハッとして、理月は首元に触れるとプロテクターをしたままなのに気付き、慌ててそれを外した。将星を前にその行動が酷く恥ずかしく感じて誤魔化すように、
「将星は仕事休みなのか?」
そう尋ねた。
「そう、水曜日定休日だからな……この後、何も予定なければ飯でもいかねぇか?」
「夕方からバイトだけど、それまでなら……」
「そうか! じゃあ、乗れよ」
そう言って、親指で後ろのダンデムシートを指さした。
ガードレールを跨ぎ、将星の肩に手を置きダンデムシートに腰を下ろす。
将星の広い背中が嫌でも目に入る。将星の香水の匂いなのかアルファのフェロモンの匂いなのか、ほのかに柑橘系の匂いが鼻をついた。将星に近付くと、いつもこの匂いがした。理月の脳は既に、この匂いは将星のものであると植え付けられている様だった。
心音が徐々に早くなっていく。
(ヒートの予定日まで日数はあるから大丈夫なはずだ。抑制剤も飲んでる……大丈夫だ)
そう自分に言い聞かせ、手首の噛み跡が少し疼いたが、気付かない振りをした。
近くのラーメン屋に入り、早めの夕飯となった。
「旨かったな、あのラーメン屋」
理月がそう素直な感想を述べると、
「当たりだったな」
将星も満足そうに笑みを溢した。
将星はバイクを止めてある駐輪場へ、理月はバイト先である居酒屋に向かって並んで歩く。遠目からでも将星のハーレーだとひと目で分かる程、将星のバイクは駐輪場で浮いているのが理月は少し笑えた。
「バイクいいよな。初めて乗ったけど気持ち良かった」
「おまえも免許取れよ。そんでツーリングでも行こうぜ」
「免許なぁ……でも、俺はバイク買ったところでメンテとか無理だし、俺は後ろに乗ってる方が気楽でいいな」
「なら……今度、バイクでどっか行かねえか? おまえの夏休みが終わる前に」
こちらに目を向ける事なくそう言ってきた。将星は手にした鍵を、手の中で軽く上に投げそれをキャッチする行動を繰り返している。
「うん……そうだな……」
理月の口から自然とそう言葉が漏れると途端、将星は満面の笑みを理月に向けた。
「そうか……! どこにする?……王道だけど、海がいいか? 海行って美味い海鮮もの食べるのもいいな」
そう子供の様にはしゃぐ将星が少し可愛く見えてしまった。
(子供みてえだな……)
そんなに自分と出掛けるのが嬉しいのか、普段強面な男からは想像できないような無邪気な表情をしている。
「いいな、海鮮もの。海鮮丼とか食いてえな」
「そういや昔、ツーリングで行った食堂の海鮮丼が美味かったな」
そこにするか? そう嬉しそうに尋ねられ理月はコクリと頷いた。
将星は先程から言葉が止まることがない。
「はしゃぎ過ぎだろ」
そんな将星を見、て理月の口から呆れた声が漏れていた。
「はしゃぎたくもなるさ! おまえとデートだぞ」
その言葉に理月の顔が一気に熱くなる。
「デッ……!」
思わず将星の左肩を叩いた。
「デートじゃねえだろ! アホか!」
将星はそんな理月を見て、笑いを溢した。
友達同士でバイクに二人乗りをして、出掛けたりもする。決してデートなんかではない、そう自分に言い聞かせる。
これから少しずつ、将星と友達と言える関係になれるだろうか。きっと、将星と自分にはこういう関係が合っているのだ。自分の中で、将星の存在がまだ特別である事は認めざる得ない。でも、その特別な存在というのが、友として大切な《特別な存在》になっていけばいいと理月は思う。
それでも、将星とのその日を楽しみにしている自分がいた。
(気のせいか……)
駅まで歩こうと通りに出る。後ろからバイクの低いマフラー音が聞こえたと思うと、そのバイクが自分の横に止まった。
「理月」
黒い馬のような大型バイクに跨った将星だった。
「よぉ、偶然だな」
「……ああ」
将星の顔を見た瞬間、体がジワリと熱を持ち始め手首の噛み跡が熱くなるを感じる。それはもう理月の中で条件反射のように思えた。
不意に《仮の番》という言葉が過り、そのせいで今日はいつもより体が過剰にアルファの将星に反応しているような気がする。
「今日、病院だったのか?」
なぜ分かったのか、そう思うと顔に出ていたのか将星は自分の首を指差した。
ハッとして、理月は首元に触れるとプロテクターをしたままなのに気付き、慌ててそれを外した。将星を前にその行動が酷く恥ずかしく感じて誤魔化すように、
「将星は仕事休みなのか?」
そう尋ねた。
「そう、水曜日定休日だからな……この後、何も予定なければ飯でもいかねぇか?」
「夕方からバイトだけど、それまでなら……」
「そうか! じゃあ、乗れよ」
そう言って、親指で後ろのダンデムシートを指さした。
ガードレールを跨ぎ、将星の肩に手を置きダンデムシートに腰を下ろす。
将星の広い背中が嫌でも目に入る。将星の香水の匂いなのかアルファのフェロモンの匂いなのか、ほのかに柑橘系の匂いが鼻をついた。将星に近付くと、いつもこの匂いがした。理月の脳は既に、この匂いは将星のものであると植え付けられている様だった。
心音が徐々に早くなっていく。
(ヒートの予定日まで日数はあるから大丈夫なはずだ。抑制剤も飲んでる……大丈夫だ)
そう自分に言い聞かせ、手首の噛み跡が少し疼いたが、気付かない振りをした。
近くのラーメン屋に入り、早めの夕飯となった。
「旨かったな、あのラーメン屋」
理月がそう素直な感想を述べると、
「当たりだったな」
将星も満足そうに笑みを溢した。
将星はバイクを止めてある駐輪場へ、理月はバイト先である居酒屋に向かって並んで歩く。遠目からでも将星のハーレーだとひと目で分かる程、将星のバイクは駐輪場で浮いているのが理月は少し笑えた。
「バイクいいよな。初めて乗ったけど気持ち良かった」
「おまえも免許取れよ。そんでツーリングでも行こうぜ」
「免許なぁ……でも、俺はバイク買ったところでメンテとか無理だし、俺は後ろに乗ってる方が気楽でいいな」
「なら……今度、バイクでどっか行かねえか? おまえの夏休みが終わる前に」
こちらに目を向ける事なくそう言ってきた。将星は手にした鍵を、手の中で軽く上に投げそれをキャッチする行動を繰り返している。
「うん……そうだな……」
理月の口から自然とそう言葉が漏れると途端、将星は満面の笑みを理月に向けた。
「そうか……! どこにする?……王道だけど、海がいいか? 海行って美味い海鮮もの食べるのもいいな」
そう子供の様にはしゃぐ将星が少し可愛く見えてしまった。
(子供みてえだな……)
そんなに自分と出掛けるのが嬉しいのか、普段強面な男からは想像できないような無邪気な表情をしている。
「いいな、海鮮もの。海鮮丼とか食いてえな」
「そういや昔、ツーリングで行った食堂の海鮮丼が美味かったな」
そこにするか? そう嬉しそうに尋ねられ理月はコクリと頷いた。
将星は先程から言葉が止まることがない。
「はしゃぎ過ぎだろ」
そんな将星を見、て理月の口から呆れた声が漏れていた。
「はしゃぎたくもなるさ! おまえとデートだぞ」
その言葉に理月の顔が一気に熱くなる。
「デッ……!」
思わず将星の左肩を叩いた。
「デートじゃねえだろ! アホか!」
将星はそんな理月を見て、笑いを溢した。
友達同士でバイクに二人乗りをして、出掛けたりもする。決してデートなんかではない、そう自分に言い聞かせる。
これから少しずつ、将星と友達と言える関係になれるだろうか。きっと、将星と自分にはこういう関係が合っているのだ。自分の中で、将星の存在がまだ特別である事は認めざる得ない。でも、その特別な存在というのが、友として大切な《特別な存在》になっていけばいいと理月は思う。
それでも、将星とのその日を楽しみにしている自分がいた。
12
あなたにおすすめの小説
白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定
累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる