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それが運命というのなら #29
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暫し、目の前の食事に集中し、二人は食べ終えると理月は秋吉の分と自分の飲み物を取りに席を立った。
(アルファは、執着心が強い性なのかもしれないな……)
もしかしたら、アルファという性はそういう傾向にあるのかもしれない。この予測を、瓜生はどう思うだろうか。また、研究ネタができたと喜ぶかもしれない。
秋吉の前にグラスを置くと、
「ありがとう」
そう言って、口を付ける。
相変わらず、腕の中の将輝はスヤスヤと眠っている。
「理月……」
「ん?」
理月は音を立てながら飲み物を飲み干し、秋吉に目を向けた。
「俺さ……今、凄く幸せだよ」
不意にそんな事を言った。
「きっと、誰もオメガで生まれて良かったなんて思う人はいないけど、今はオメガで良かったって思う」
そう言って将輝の頬を優しく撫でている。
「男の俺でも、こうやって好きな相手の子供が産めるんだもん」
そう言った秋吉の表情は、幸せそうで理月の鼻の奥がツンとした。
「理月はオメガである自分が嫌いって事は知ってるけど、オメガでも幸せになる権利はあるし、幸せに過ごしてるオメガもたくさんいると思う。当然、その反対に辛い思いをしているオメガもいるのは確かだけど……。オメガの自分を戒める事はないんだよ、理月」
秋吉は理月の手に触れると、
「幸せになる権利は、俺たちオメガにだってあるんだよ」
そう言って、ぎゅっと手を握った。
「秋吉……」
確かに、今まで誰にも頼らず生きてきた。この先もずっとこのまま一人で生きていくのだと思っていた。そう思っていたのに、将星が現れてしまった。将星から伝わってくる、自分への執着心とも言える想い。人に愛される幸せを知ってしまった。
「俺は、理月に幸せになってほしい。できれば将星くんと一緒に」
そう言って、優しい笑みを浮かべ秋吉は母親となり強くなったのだと理月は思った。
「理月だって将星くんの事、好きでしょ?」
そう尋ねられ、瞬間顔面が熱くなる。
「好き……っつーか……まぁ、嫌いだったら、一緒にいねーし」
しどろもどろなりながら言うと、秋吉はクスリと笑った。
「いつか、それ将星くんに言ってあげたら? 喜ぶよ、きっと」
「絶対、言わねえ」
そう言って、理月はそっぽを向いた。
口にして気付く。自分なりに将星を好きなのだと。それでも将星が自分を想う気持ちとは、ほど遠い気もするが。
少なくとも、傍にいてほしいと思う相手で浮かぶのは将星だ。
「本当は、ダチみたいな関係が良かったって思う。俺がオメガであいつがアルファじゃなければ、普通にダチになれてたかな、って考える」
「どうだろ。そうじゃなかったとしても、お互いに惹かれてたかもしれないよ? 何もオメガとアルファだから惹かれるってわけではないんだし。そうだとしたら、それこそ運命的な出会いだよね」
ふふっ、と秋吉は笑いを零す。
「皆んな好きだよな、その《運命》って単語」
最近、その単語ばかり聞いているような気がして少しうんざりした。
「運命の番? 本当にあったらロマンチックだけど、今俺の前に現れても困るけどね」
そう言って秋吉は将輝の額にキスをした。
自分にだって、秋吉のような未来もあり得るのだ。将星と番になる事も将星の子供を産む事も自分にはできる。だが、それを未だに受け入れる事はできない。ある意味、意地に似たものかもしれない。ずっとオメガとして生きていく事に、反発して生きてきた。オメガだって強くなれる事を、一人でも生きていける事を、自分自身で証明したかった。それが生きる意味でもあるように、今まで生きてきた。それを今更、覆す事もできないのだ。
矛盾していると分かっていてもその反面、こんな自分にいつか将星は離れていくのではないか、という不安も込み上げてくるのも確かだった。
(アルファは、執着心が強い性なのかもしれないな……)
もしかしたら、アルファという性はそういう傾向にあるのかもしれない。この予測を、瓜生はどう思うだろうか。また、研究ネタができたと喜ぶかもしれない。
秋吉の前にグラスを置くと、
「ありがとう」
そう言って、口を付ける。
相変わらず、腕の中の将輝はスヤスヤと眠っている。
「理月……」
「ん?」
理月は音を立てながら飲み物を飲み干し、秋吉に目を向けた。
「俺さ……今、凄く幸せだよ」
不意にそんな事を言った。
「きっと、誰もオメガで生まれて良かったなんて思う人はいないけど、今はオメガで良かったって思う」
そう言って将輝の頬を優しく撫でている。
「男の俺でも、こうやって好きな相手の子供が産めるんだもん」
そう言った秋吉の表情は、幸せそうで理月の鼻の奥がツンとした。
「理月はオメガである自分が嫌いって事は知ってるけど、オメガでも幸せになる権利はあるし、幸せに過ごしてるオメガもたくさんいると思う。当然、その反対に辛い思いをしているオメガもいるのは確かだけど……。オメガの自分を戒める事はないんだよ、理月」
秋吉は理月の手に触れると、
「幸せになる権利は、俺たちオメガにだってあるんだよ」
そう言って、ぎゅっと手を握った。
「秋吉……」
確かに、今まで誰にも頼らず生きてきた。この先もずっとこのまま一人で生きていくのだと思っていた。そう思っていたのに、将星が現れてしまった。将星から伝わってくる、自分への執着心とも言える想い。人に愛される幸せを知ってしまった。
「俺は、理月に幸せになってほしい。できれば将星くんと一緒に」
そう言って、優しい笑みを浮かべ秋吉は母親となり強くなったのだと理月は思った。
「理月だって将星くんの事、好きでしょ?」
そう尋ねられ、瞬間顔面が熱くなる。
「好き……っつーか……まぁ、嫌いだったら、一緒にいねーし」
しどろもどろなりながら言うと、秋吉はクスリと笑った。
「いつか、それ将星くんに言ってあげたら? 喜ぶよ、きっと」
「絶対、言わねえ」
そう言って、理月はそっぽを向いた。
口にして気付く。自分なりに将星を好きなのだと。それでも将星が自分を想う気持ちとは、ほど遠い気もするが。
少なくとも、傍にいてほしいと思う相手で浮かぶのは将星だ。
「本当は、ダチみたいな関係が良かったって思う。俺がオメガであいつがアルファじゃなければ、普通にダチになれてたかな、って考える」
「どうだろ。そうじゃなかったとしても、お互いに惹かれてたかもしれないよ? 何もオメガとアルファだから惹かれるってわけではないんだし。そうだとしたら、それこそ運命的な出会いだよね」
ふふっ、と秋吉は笑いを零す。
「皆んな好きだよな、その《運命》って単語」
最近、その単語ばかり聞いているような気がして少しうんざりした。
「運命の番? 本当にあったらロマンチックだけど、今俺の前に現れても困るけどね」
そう言って秋吉は将輝の額にキスをした。
自分にだって、秋吉のような未来もあり得るのだ。将星と番になる事も将星の子供を産む事も自分にはできる。だが、それを未だに受け入れる事はできない。ある意味、意地に似たものかもしれない。ずっとオメガとして生きていく事に、反発して生きてきた。オメガだって強くなれる事を、一人でも生きていける事を、自分自身で証明したかった。それが生きる意味でもあるように、今まで生きてきた。それを今更、覆す事もできないのだ。
矛盾していると分かっていてもその反面、こんな自分にいつか将星は離れていくのではないか、という不安も込み上げてくるのも確かだった。
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