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それが運命というのなら #30
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店に戻り、紅羽と秋吉が帰っていくと、将星は店終いを始めた。理月のバイトも休みだった為、そのまま将星のアパートにいく事になった。
将星のアパートに着き、話しながら階段を登っていると、先に階段を登り切った将星の動きが止まった。
「なんで止まってんだよ」
将星の肩越しから先を見ると、将星の部屋の前で女性が一人座り込んでいた。
(元カノ……なんで……)
その姿を見た瞬間、理月の心臓が大きくなり始めた。別れたはずの元カノがなぜ将星の部屋の前にいるのか。
「将ちゃん……」
将星の姿を見た女性は笑みを浮かべ将星に駆け寄って来た。
「加奈子……」
明らかに将星の声が困惑している。
「何しに来た」
将星は突き放すように冷たく言い放った。
「ご飯作って来たの。将ちゃんの好きな、蓮根のキンピラと豚の角煮作ったの」
将星の後ろにいた自分に気付くと加奈子はこちらに顔を向けた。
「お友達?」
「……」
将星は何も言わなかった。自分が嫌がる事を察知し、言葉を発する事はしなかったのだと思った。
「いらない……もうここには来ないでくれって、何度も言ってるはずだ」
そう将星が言うと、加奈子は悲し気な表情を浮かべたと思うと両手で顔を覆い隠し、肩を震わせた。どうやら泣いているようだ。
迷惑そうに将星は、あからさまに大きく溜め息をついている。
「理月……中で待っていてくれ」
そう言ってアパートの鍵を渡され、黙ってそれを受け取ると理月は言われた通り鍵を開けて中で待つ事にした。
スコープから外を覗く、など野暮な事はしなかった。
加奈子はまだ将星が好きなのだろう。あの様子だと諦めきれず、何度も将星を訪ねて来ているようだ。
もし、自分が彼女の立場だったら、そう考えると胸が苦しくなる。将星にあんな風に突き放されたら……想像すると死にたくなるくらい悲しいと思った。性は関係ないとは言え、おそらく彼女はベータのようだったが、自分はオメガだからアルファの将星を失う事に対して尚更そう思うのかもしれない。理月は自分と加奈子を無意識に重ねてしまった。
将星が部屋に戻ってくると、明らかに焦燥しきっていた。
「悪い……」
理月の横に腰を下ろすと、タバコに火を点けた。
理月は将星が言葉を発するのを待った。将星は将星で聞かれるのを待っているのかもしれない。
「悪い、理月……あいつに……加奈子にお前が忘れられない相手だって、言っちまった」
「!!」
「ずっと言わないでいたけど、相手教えてくれるまで帰らないって言うし、教えてくれたら諦めるって言われて……」
将星はこれでもかと言うくらい身を縮こませている。
「俺がオメガだって言ったのか?」
「……元々忘れられない相手はオメガだって言ってたから……」
正直、腹の底からメラメラと怒りが込み上げて、思わず拳を固めていた。
理月は大きく息を吐くと、
「しょうがねえんじゃねえの」
そう言って、理月もタバコに火をつけた。
「理月……」
「そう言わないと、帰ってくれそうになかったんだろ?」
「ああ……何度も家に来るなって言っているし、電話もメールも着信拒否もしてる。家を知ってるから意味はねえんだけど」
そう言って苦笑を浮かべている。
加奈子は相当将星が好きなのだろう。何度も家を訪ねては復縁を迫っているようだった。きっと自分より加奈子の方が将星を想っているだろう。不意に将星にとって、その方がいいのではないかという考えも過ぎる。そうだとして、今、将星が加奈子に気持ちが向いてしまったらと思うと、それも酷く嫌だとも思うのだ。加奈子ほどの気持ちはないにしろ、共に生きていくなら将星がいい。少しずつ将星を好きだと実感し始めた矢先だった。少なくとも、将星を取られたくはないと思う。
将星を強く想う加奈子といるのと、中途半端な気持ちの自分と一緒にいるのとでは、将星にとっての幸せはどっちなのだろうか。
将星のアパートに着き、話しながら階段を登っていると、先に階段を登り切った将星の動きが止まった。
「なんで止まってんだよ」
将星の肩越しから先を見ると、将星の部屋の前で女性が一人座り込んでいた。
(元カノ……なんで……)
その姿を見た瞬間、理月の心臓が大きくなり始めた。別れたはずの元カノがなぜ将星の部屋の前にいるのか。
「将ちゃん……」
将星の姿を見た女性は笑みを浮かべ将星に駆け寄って来た。
「加奈子……」
明らかに将星の声が困惑している。
「何しに来た」
将星は突き放すように冷たく言い放った。
「ご飯作って来たの。将ちゃんの好きな、蓮根のキンピラと豚の角煮作ったの」
将星の後ろにいた自分に気付くと加奈子はこちらに顔を向けた。
「お友達?」
「……」
将星は何も言わなかった。自分が嫌がる事を察知し、言葉を発する事はしなかったのだと思った。
「いらない……もうここには来ないでくれって、何度も言ってるはずだ」
そう将星が言うと、加奈子は悲し気な表情を浮かべたと思うと両手で顔を覆い隠し、肩を震わせた。どうやら泣いているようだ。
迷惑そうに将星は、あからさまに大きく溜め息をついている。
「理月……中で待っていてくれ」
そう言ってアパートの鍵を渡され、黙ってそれを受け取ると理月は言われた通り鍵を開けて中で待つ事にした。
スコープから外を覗く、など野暮な事はしなかった。
加奈子はまだ将星が好きなのだろう。あの様子だと諦めきれず、何度も将星を訪ねて来ているようだ。
もし、自分が彼女の立場だったら、そう考えると胸が苦しくなる。将星にあんな風に突き放されたら……想像すると死にたくなるくらい悲しいと思った。性は関係ないとは言え、おそらく彼女はベータのようだったが、自分はオメガだからアルファの将星を失う事に対して尚更そう思うのかもしれない。理月は自分と加奈子を無意識に重ねてしまった。
将星が部屋に戻ってくると、明らかに焦燥しきっていた。
「悪い……」
理月の横に腰を下ろすと、タバコに火を点けた。
理月は将星が言葉を発するのを待った。将星は将星で聞かれるのを待っているのかもしれない。
「悪い、理月……あいつに……加奈子にお前が忘れられない相手だって、言っちまった」
「!!」
「ずっと言わないでいたけど、相手教えてくれるまで帰らないって言うし、教えてくれたら諦めるって言われて……」
将星はこれでもかと言うくらい身を縮こませている。
「俺がオメガだって言ったのか?」
「……元々忘れられない相手はオメガだって言ってたから……」
正直、腹の底からメラメラと怒りが込み上げて、思わず拳を固めていた。
理月は大きく息を吐くと、
「しょうがねえんじゃねえの」
そう言って、理月もタバコに火をつけた。
「理月……」
「そう言わないと、帰ってくれそうになかったんだろ?」
「ああ……何度も家に来るなって言っているし、電話もメールも着信拒否もしてる。家を知ってるから意味はねえんだけど」
そう言って苦笑を浮かべている。
加奈子は相当将星が好きなのだろう。何度も家を訪ねては復縁を迫っているようだった。きっと自分より加奈子の方が将星を想っているだろう。不意に将星にとって、その方がいいのではないかという考えも過ぎる。そうだとして、今、将星が加奈子に気持ちが向いてしまったらと思うと、それも酷く嫌だとも思うのだ。加奈子ほどの気持ちはないにしろ、共に生きていくなら将星がいい。少しずつ将星を好きだと実感し始めた矢先だった。少なくとも、将星を取られたくはないと思う。
将星を強く想う加奈子といるのと、中途半端な気持ちの自分と一緒にいるのとでは、将星にとっての幸せはどっちなのだろうか。
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