フェンリル転生 神の子に転生しましたが残念な事に魔法が使えません、魔道具と物理で頑張ります

緋色優希

文字の大きさ
11 / 107
第一章 荒神転生

1-11 王都帰還への道

しおりを挟む
「やあ、やっと旅に出られたなあ」
「でも楽しかったんだよ~」

「そうだなあ」
 俺もまさか、あそこまで楽しむ事ができようとはな。

 この姿では人と触れ合う事すら難しいと思っていたのだが。今は触れ合うどころか、人を乗せて歩いている。

 だが、あの村で最初にボール爺さんと会った時の反応が、人との出会いの反応の基本だと思っている。

「ああ、そういや、あの村ってなんて名前だったろう。聞くのも忘れたわ」

「ローム村だよ。村の名前とかを知らないと訪ねてもいけないよ。スサノオってのんびりしているから、道とかいろいろ忘れていそう」

「ああ、そうかもしれないな。ところでサリー、王都までどれくらいかかるんだい」
「そうですね。今の調子だと三週間くらいでしょうか」

「うーん、遠いな。でもまあ乗客を二人も乗せていれば、こんなものかな」
 俺がつっぱしれば、あっという間に着くかもしれないが、上に乗っている方が堪ったものではない。

「次の町までは遠いんだったっけ」
「ええ、それなりにはですが、このペースならば日暮れ前に十分着きますよ」

「そうか。まあ遅れそうなら、ペースを少し早めればいいのだが」
 その場合は若干乗り心地が犠牲になるので、それも良し悪しなのだが。その間にお話しでもしておくか。

「なあ、サリー。お前らの国って小さいの? 面積っていうか、小国なのかという意味で」
「いえ、けしてそのような事は。周辺国では三本指に入る国ではないかと」

「第五王女の立ち位置ってどれくらいなんだ。いくらなんでも、このような辺境を越えていくのにお付きの人間が二人だけというのは、さすがにおかしくはないか?」

「そ、それは」
 サリーも少し言い澱んだ。やっぱり訳ありなのかよ。

「向こうに着くまでに、よかったら話を聞いておきたいと思ってな。王国内で何かごたごたしていたりして、向こうに着いたら襲撃者が現れるような事態が予想されるなら先に言っておいてもらいたい。

 どうも、お前さんも訳ありっぽいしな。話したくないのなら構わないのだが、お姫様にも危害が加わるようならマズイ」

 すると、ルナ姫がサリーに向かって宥めるように話しかける。
「サリー、スサノオには言っておいてもいいよ。どっちみち王宮へ行けばわかる事なんだし。スサノオは話を聞いても気にしないと思う」

「そうですか」
 サリーは軽く溜息を吐くと、軽鎧の面を上げると語った。

「実はルナ姫様は少し疎まれるような環境にあってな。我がアクエリア王国には三人の王妃様がおられる。ルナ姫様はその第三王妃様の子供で、第三王妃様は他の王妃様に比べて少し身分が低い。王国にはまだお世継ぎがなかったので、王女のうちの誰かが婿を取って跡を継ぐかという話が出ていたのさ」

 ははあ、それで跡目争いがあったわけか。

「そして、第一王妃と第二王妃の間で激しい跡目争いがあった。ルナ姫の母上であられるアルカンタラ王妃様は一歩引いた立ち位置におられて、ルナ姫様に危害が及ばないようにと取り計らっていたのだよ。

 だが彼らは万が一の可能性を考えて、幼いルナ姫様を狙ってきた。騎士達も分の悪い第三王妃につく者はなく、はみ出し者の私にお鉢が回って来たのだ。困った国王陛下も危惧されておってね、なんとか信頼できる警護の者をと」

「へえ、お前さんは信頼できるというのかい? 自分ではみ出し者などと言っていたのに」

「ああ、その事なんだがな。私は代々優秀な魔法騎士を輩出してきた特別な家柄なのだが、男子が生まれずに私が騎士となったのだが、おまけに何故か知らないのだが魔法が使えなくてな」
 少し自嘲気味に、意味ありげに俺の頭を見ながらそういうサリー。

「へえ、まるで俺みたいな奴だな。呪いか何かか? スキルのような物は使っていたようだが」

「ああ、仕方がないので、そっち方面を研鑽したのさ。武具も魔法武器を愛用している」
「なるほどな。ますます俺と一緒じゃねえか」

「ああ、お前には妙な親近感が湧くよ。ただ、そこからまた風向きが変わってきてなあ」
「へえ?」

 サリーは兜を取り、脇に抱えると少し髪を風に任せて靡かせた。

「よりにもよって、アルカンタラ王妃様に男のお子様ができたのさ。第一王位継承権はアルス王子に移り、跡目争いでアルカンタラ王妃が一気に優位に立った。だが、それは本人も望んでいなかったし、周りもな。王も今さらかと複雑な胸中だ」

「あっちゃ、それってルナ姫のお母ちゃん的に凄くまずくないか?」

「マズイなんていうものではなかった。毎晩のように殺し屋がやってきて、私とエルンストも気が休まる暇もなくてな。

 そして、ついにある日、堪りかねたアルカンタラ王妃が王に願い出た。子供達を他国への養子にと。王もその願いを受け入れ、まさに今回、ルナ姫本人がその使者を御勤めになったのだ。

 王は言われた。お前自身と、弟の将来を自らの目で見極めてきなさいと。さらにマズイ事にな、第一王妃・第二王妃にはそれぞれ出身国のバックがついておる。彼女達はそこの王女だったからな。

 第三王妃は自国の伯爵令嬢に過ぎない。あの強欲で他国の紐付きのような王妃連中にうんざりした国王陛下が、ご自分で見初めた女性だったのだ。

 できればアルス王子に王位を継いでもらいたいのだが、それは叶いそうもない。それだと殺されてしまうだろうからな。彼は自分が愛した女性の子供達を守りたい。そう願ったのだ」

 俺は立ち止まり、ちょっと不満そうに鼻を鳴らした。
「だったら、もうちょっと警護くらいつけてやればいいのに。数少ない味方だったらしいエルンストは、今はもう俺の収納の中じゃないか。ルナ姫だって危なかったのだし」

「へたにそういう手配をしてしまうと、奴らに感づかれて途中で襲撃されるからな。そっと側近だけで送り出したのだ。今、王国は酷い有様よ。

 我がハーベスト家は、いつの時代も王家からの信頼を受けてきたというのに。私はその信頼をもう少しで裏切ってしまうところだった。

 この魔法も使えぬ半端者が、女だてらに騎士の跡目をと誹られたものだが、アルカンタラ王妃様とルナ様だけは優しく接してくれた。今、王宮で公然と姫と王子の味方ができるのは、もう私だけになってしまった」

 だが俺は思わず、くっくっくと笑ってしまった。
「何がおかしい。真面目な話をしていたんだぞ」

「おいおい、だってここに立派な忠犬がもう一匹いるじゃねえかよ。しかも、とびっきりの奴がよお。忘れたか、サリー。俺は神の子フェンリルの加護を、彼女ルナ王女に与えたのだぞ。そうするに相応しい魂の持ち主だからな。神の一族が人の子に加護を与えるというのは、そういう事なのだ」

 ポカンっとするサリー。そして、ひょいっと体を前に伸ばし、俺の首筋を撫でるルナ王女。
「ありがとう、スサノオ。大好きだよ」

「ああ、俺もだ。俺達は友達だぜ。サリー、お前もな」
 それを聞いた金髪の騎士は、改めて兜を被ると言った。

「そうだな、マイフレンド。とりあえずは、次の街を目指して」
 俺達一行は爽やかな風に吹かれながら、旅路を急いだのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...