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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-20 槍争奪戦 追い剥ぎの詩
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俺は興奮していた。
今から俺はこのとんでもなく素晴らしい槍の持ち主なのだ!
いやいや、そんな事を言っている場合じゃない。
とんでもないお宝を目の前にぶら下げられて、つい勢いで買ってしまったものの、こんな凄い槍を欲しい奴はいくらでもいるんだからな。
中には力づくでも奪い取りに来る奴もいるはずだ。
いや、必ずいる。
しかも本日中には必ず。このダンジョンに入り、そして出口から帰還する俺を、性質の良くない数十人の冒険者の、中級クラスの先輩方が待ち構えていたっておかしくはないのだから。
冒険者という人間の中には、そういう輩も大勢いるのだった。
セラシア達のような立派な人達ばかりではないのだ。
そんな事になれば、有り金から装備一式ごと全て何もかも毟っていかれるはずだ。
今の俺を力で庇護してくれる人間は、この街のどこにもいない。
「こんな事はしちゃあいられないぜ。
さっさとバージョンアップを図らないと、せめて5.0くらいまでいかないと、この槍を護れないぜ」
何故だか知らないのだが、本末転倒な事になっている!?
下の方の階層にいる魔物を倒せる強い武器を手に入れて、強い魔物を倒して金を稼ぎながらバージョンアップしたかったのに。
何故か買った武器の守り人として早急にバージョンアップをしないといけないという異常な事態に陥っていた。
これほどの槍ともなれば、その整備費も半端なものではないだろうから、その分も稼がないといけないのだ。
必ず毎回金貨の眩い煌めきが、何枚か俺の財布から飛んで行くのに決まっているのだから。
俺はその辺の三流冒険者連中から槍に因縁を付けられないよう、おじさんから貰ったボロ布に全体を包んでから、勢い込んで走ってダンジョンへと向かった。
まあダンジョンなんて物は協会からすぐそこにあるもんなんだけど。
「あら、リクル。
早かったのねー」
「リクルー」
「お、ミモザたん、元気してたかー」
ライザさんの子供、ミモザはまだ三歳だが元気のいい女の子だ。
俺達冒険者を見ると必ず名前で呼んでくれる。
きっと呼んでも返事をしなくなった冒険者も大勢いる事だろう。
まだこの歳では死の概念もきちんと持っていないのだろうが。
俺はずっとこの子に名を呼ばれたら返事をしてあげたいな。
だがその前に、まず今日の日を無事に乗り切らなくては~。
噂を聞いて、さっそく俺を闇討ちにしようとする冒険者もいるかもしれない。
ここでは、その手の情報の伝搬速度は異常に速い。
甘く見ていたら命取りになる。
ラビワン・ダンジョン・ミスリル槍争奪杯か、ふざけんな。
もう、あのおじさんったら。
この素晴らしい槍を持つのなら『こういう事も含めて』の試練があるって訳ね。
ええい上等だー、やってやらあ!
「いってらっしゃーい」
「しゃーい」
俺は愛すべき方々に見送られて、死地へ? と旅立った。
そして入り口を潜って、ライザさんから見えない場所に一歩進んだ途端に、いきなり不意討ちを食らった。
上から落ちてくる奴、横手からのタックル、そして足元にスライディングしてくる奴の三人で、さらに正面にもう一人いて、どうやらそいつが本命らしい。
さすがは中級冒険者パーティ、実に見事な連携だった。
ふざけるな~。
何、この情報力と連携力は。
俺はその場で横手から来た奴の顎に猛烈なパンチをくれながら、足元にいた奴の頭を爆発的に蹴ってからジャンプした。
そして上から落ちてきた奴の足を掴んで空中でドッキングして、カウンターで上の奴に玉潰しを食らわせ白目で泡を吹かせた。
さらにその不安定な肩車したままの姿勢を逆手に取って、体重移動のみで見事なお辞儀をして、正面の奴の頭に肩車をした男の頭を棍棒代わりにぶつけてやった。
俺は伊達に上級者パーティで、対人の喧嘩上等を常時教え込まれてはいないのだ。
ほぼ一瞬で、相手全員が戦闘不能になった。
どうだ、これが冒険者三人前以上の力なのだ。
並みの冒険者五人前くらいの力はあるんだぜ。
「阿呆かあー!
入り口を潜った瞬間にもう、仁義無きバトルの開始なのかよ」
俺もさすがに頭に来たので、そいつらの所持金や有益そうなアイテムは手早く奪ってやった。
ここからは間違いなく長期戦になるのだから。
こういうのはゲリラ戦の基本だな。
「お、ラッキー。
こいつってミスリル剣のショートソードを持っているんじゃねえか。
そのくせミスリル槍まで欲しがるのかよ。
欲張りな奴らめ。
こうしてくれるわ」
俺は腰の剣が二本差しになった。
前から欲しかった特殊な軽合金製の肩当てもいただいておいた。
でも3.6倍のレバレッジがかかっているんだから全然重くないもんね!
四名の所持金は合計で約金貨二十枚か。
安い極厚ミスリルメッキの槍が買える金額じゃねえか。
こいつら一体何を考えているんだよ。
そして出るわ、出るわ。
太陽光を嫌うため魔物は出ない一階層を駆け抜け終える前に、追加の襲撃者が都合五組も現れた。
これがまた待ち伏せや、酷い場合は二チーム合同で、片方が正面で、もう一チームが闇討ちするなどの狡猾な作戦を取ってきた。
そいつらをレバレッジのパワーと習熟した技術をもって槍で叩いて気絶させて回っただけで、なんとスキルのバージョンが3.7に上がった。
ひでえな、これだけで4.0に上がってしまえそうな勢いの襲撃だなあ。
こいつら全員中級冒険者のようだった。
さすがに上級は混じっていないな。
もっぱら中の下っていうところか。
中にはブライアン・パーティ時代の顔見知りまでいたぞ。
まったく、嫌になっちまうぜ。
ブライアンには常に揉み手で対応し、そしてオマケに見習いの俺にまでぺこぺこしていたくせに、俺がパーティを追い出された途端にこれかよ。
冒険者なんて仁義もへったくれもない人種だな。
「上等だあ。
お前らの根性を叩き直しがてら、バージョンアップしてやろうじゃねえか~」
もうそれだけで5.0を目指せるのかもな。
しかも魔物を倒すよりも金が儲かっている!?
今から俺はこのとんでもなく素晴らしい槍の持ち主なのだ!
いやいや、そんな事を言っている場合じゃない。
とんでもないお宝を目の前にぶら下げられて、つい勢いで買ってしまったものの、こんな凄い槍を欲しい奴はいくらでもいるんだからな。
中には力づくでも奪い取りに来る奴もいるはずだ。
いや、必ずいる。
しかも本日中には必ず。このダンジョンに入り、そして出口から帰還する俺を、性質の良くない数十人の冒険者の、中級クラスの先輩方が待ち構えていたっておかしくはないのだから。
冒険者という人間の中には、そういう輩も大勢いるのだった。
セラシア達のような立派な人達ばかりではないのだ。
そんな事になれば、有り金から装備一式ごと全て何もかも毟っていかれるはずだ。
今の俺を力で庇護してくれる人間は、この街のどこにもいない。
「こんな事はしちゃあいられないぜ。
さっさとバージョンアップを図らないと、せめて5.0くらいまでいかないと、この槍を護れないぜ」
何故だか知らないのだが、本末転倒な事になっている!?
下の方の階層にいる魔物を倒せる強い武器を手に入れて、強い魔物を倒して金を稼ぎながらバージョンアップしたかったのに。
何故か買った武器の守り人として早急にバージョンアップをしないといけないという異常な事態に陥っていた。
これほどの槍ともなれば、その整備費も半端なものではないだろうから、その分も稼がないといけないのだ。
必ず毎回金貨の眩い煌めきが、何枚か俺の財布から飛んで行くのに決まっているのだから。
俺はその辺の三流冒険者連中から槍に因縁を付けられないよう、おじさんから貰ったボロ布に全体を包んでから、勢い込んで走ってダンジョンへと向かった。
まあダンジョンなんて物は協会からすぐそこにあるもんなんだけど。
「あら、リクル。
早かったのねー」
「リクルー」
「お、ミモザたん、元気してたかー」
ライザさんの子供、ミモザはまだ三歳だが元気のいい女の子だ。
俺達冒険者を見ると必ず名前で呼んでくれる。
きっと呼んでも返事をしなくなった冒険者も大勢いる事だろう。
まだこの歳では死の概念もきちんと持っていないのだろうが。
俺はずっとこの子に名を呼ばれたら返事をしてあげたいな。
だがその前に、まず今日の日を無事に乗り切らなくては~。
噂を聞いて、さっそく俺を闇討ちにしようとする冒険者もいるかもしれない。
ここでは、その手の情報の伝搬速度は異常に速い。
甘く見ていたら命取りになる。
ラビワン・ダンジョン・ミスリル槍争奪杯か、ふざけんな。
もう、あのおじさんったら。
この素晴らしい槍を持つのなら『こういう事も含めて』の試練があるって訳ね。
ええい上等だー、やってやらあ!
「いってらっしゃーい」
「しゃーい」
俺は愛すべき方々に見送られて、死地へ? と旅立った。
そして入り口を潜って、ライザさんから見えない場所に一歩進んだ途端に、いきなり不意討ちを食らった。
上から落ちてくる奴、横手からのタックル、そして足元にスライディングしてくる奴の三人で、さらに正面にもう一人いて、どうやらそいつが本命らしい。
さすがは中級冒険者パーティ、実に見事な連携だった。
ふざけるな~。
何、この情報力と連携力は。
俺はその場で横手から来た奴の顎に猛烈なパンチをくれながら、足元にいた奴の頭を爆発的に蹴ってからジャンプした。
そして上から落ちてきた奴の足を掴んで空中でドッキングして、カウンターで上の奴に玉潰しを食らわせ白目で泡を吹かせた。
さらにその不安定な肩車したままの姿勢を逆手に取って、体重移動のみで見事なお辞儀をして、正面の奴の頭に肩車をした男の頭を棍棒代わりにぶつけてやった。
俺は伊達に上級者パーティで、対人の喧嘩上等を常時教え込まれてはいないのだ。
ほぼ一瞬で、相手全員が戦闘不能になった。
どうだ、これが冒険者三人前以上の力なのだ。
並みの冒険者五人前くらいの力はあるんだぜ。
「阿呆かあー!
入り口を潜った瞬間にもう、仁義無きバトルの開始なのかよ」
俺もさすがに頭に来たので、そいつらの所持金や有益そうなアイテムは手早く奪ってやった。
ここからは間違いなく長期戦になるのだから。
こういうのはゲリラ戦の基本だな。
「お、ラッキー。
こいつってミスリル剣のショートソードを持っているんじゃねえか。
そのくせミスリル槍まで欲しがるのかよ。
欲張りな奴らめ。
こうしてくれるわ」
俺は腰の剣が二本差しになった。
前から欲しかった特殊な軽合金製の肩当てもいただいておいた。
でも3.6倍のレバレッジがかかっているんだから全然重くないもんね!
四名の所持金は合計で約金貨二十枚か。
安い極厚ミスリルメッキの槍が買える金額じゃねえか。
こいつら一体何を考えているんだよ。
そして出るわ、出るわ。
太陽光を嫌うため魔物は出ない一階層を駆け抜け終える前に、追加の襲撃者が都合五組も現れた。
これがまた待ち伏せや、酷い場合は二チーム合同で、片方が正面で、もう一チームが闇討ちするなどの狡猾な作戦を取ってきた。
そいつらをレバレッジのパワーと習熟した技術をもって槍で叩いて気絶させて回っただけで、なんとスキルのバージョンが3.7に上がった。
ひでえな、これだけで4.0に上がってしまえそうな勢いの襲撃だなあ。
こいつら全員中級冒険者のようだった。
さすがに上級は混じっていないな。
もっぱら中の下っていうところか。
中にはブライアン・パーティ時代の顔見知りまでいたぞ。
まったく、嫌になっちまうぜ。
ブライアンには常に揉み手で対応し、そしてオマケに見習いの俺にまでぺこぺこしていたくせに、俺がパーティを追い出された途端にこれかよ。
冒険者なんて仁義もへったくれもない人種だな。
「上等だあ。
お前らの根性を叩き直しがてら、バージョンアップしてやろうじゃねえか~」
もうそれだけで5.0を目指せるのかもな。
しかも魔物を倒すよりも金が儲かっている!?
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