外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
24 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-24 狂気と凶器と強気の同居人

しおりを挟む
「なあ、上級冒険者さんよ」

 俺はゆっくりと振り向いて、じりじりと後ろに下がって間合いを取りながら、その狂喜ものぐるいを名乗るお方に訊いてみた。

「なんだい」
 彼はそれを特に咎めようともせずに訊いた。

 くっ、イカれた野郎だな。
 このダンジョンで碌な装備も武器も何もなく無手なのか。

 簡単な鎧さえ着込むわけでもない。
 まあ俺だって新人冒険者の標準装備である革の服と胸当て程度だったんだが。

 襲撃してきた中級冒険者の先輩方のお蔭で、かなり装備は強化できたけど。

 重装の兵士でもなんでもない冒険者とはいえ、防具は大事なものだ。
 だが、こいつは!

 なんというか、こいつの基本装備は布の服だ。

 何か防御の付与はあるのかもしれないが、それがただの服じゃない。
 こいつは派手なんてもんじゃないぞ。

 光沢のある、紫と白の大きめの菱形模様のチェックが入ったシャツに、これまた光沢のある鮮やかなやや明るめのブルーの上着。

 上着の袖は先から肘までの真ん中あたりまでが黒、そしてその黒袖とブルー地との間に細めの金の輪でアクセントが配置されている。

 その黒地の部分に金のカフスをして、上着は太目の黒ベルトにシンプルな角形っぽい感じの金バックルで胸下を締めている。

 上着の襟は大きく折り返し、その裏地は黒に金縁のアクセント、下の裾は表地の縁に太目な白黒チェッカーの帯をあしらってある。

 そして上着よりも光沢のある感じの、目を引く紫と黒のツートンストライプのゆったりズボン、足元は右が白黒チェッカーで左が白黒ストライプの、ズボン下に収めるタイプのショートブーツ。

 おまけに頭には少しぶかっとした感じの御洒落系の黒いシルクハットで、ワンポイントのワッペンが張られている。

 鍔から三分の一くらいまでの高さを占めている、ズボンとお揃いの光沢系のピンク色に近い紫と黒で織りなす斜めストライプが目を引く。

 何かこう拘りみたいな物を感じるような、洒落たというかイカレたというか、まるで【狂気の道化師】とでも表現したくなるような、そういう異常なファッションだ。

 いくら腕利きだといえども、ダンジョンに潜るにはあまりにも相応しくない格好なのは言うまでもない。

 思わずクレジネス・クラウンという二つ名のような仇名を付けてやりたいような異常者だった。

 それでいて、ステッキ一本すら手に持っていやしない。
 だからこそ覚える異様なほどの違和感。

 このダンジョンなる場所にて、敢えてその格好をしている無手の上級冒険者。

 格好が派手なのは、『一目で自分と見分けてもらうため』なのだろう。

 警告色ならぬ警告スタイルだ。
 弱者は俺を見かけただけで失せろってか。

 まさか人間を狩るためだけにダンジョンにいるのではなかろうな。

 顔はなかなか精悍な感じで、しかも各パーツやその配置が整っており、見かけだけは十分に色男であると言える。

 髪は金髪で、帽子からはみ出した部分から見ても短髪ではなさそうだ。

 そして一番気になるのは、その群青色の一見知的に見えない事もない眼だ。

 静かで、特に威嚇するわけでもなく、鋭く敵意を放っているわけでもない。

 だが少し普通の人間とは違う何かを感じる、見ていると自然に不安になってくるような、なんというか他者に対する嗤いのような物を含んでいるような。

 そして、その眼が嗤う時に発する狂気の光。
 いや目だけではなく、そういう心の発露が表情全般に現れているな。

 それは強者が弱者をいたぶる時のような物にも似ているが、こいつが求めるものは、おそらく弱者ではなくて。

 なんて奴だ。
 こんなミスリルの槍一本持ったくらいじゃ、少々バージョンをアップしたくらいでは、まったく勝てる気がしねえ。

 このダンジョンにこんな危険な奴が生息していたなんて!

 ならば、この場をなんとかして切り抜けるしかない。

 どうやって?
 そんな物は決まっている。

 こいつの興味を引いて、というか『俺はあんたに殺されないだけの価値がある男』なのだと、こいつにはっきりと示すしかない。

 でないと、この手のバトルジャンキーは興味を失った対象を、いきなりシリアルキラーのように躊躇いなく殺す傾向が強いのだ。

 いや座学は真剣にやっておくもんだね。
 なんて事を協会の座学でやるんだと思っていたのだが、今は見事に役に立ってしまっている。

「なあ、あんたのスキルは?」
 だが彼は何故か非常に驚いた顔をしてみせた。

「なんで、そんなに驚くんだい。
 そんな物は協会が公開しているから、他の連中は知っているんだろう?

 あんたが知っていて俺だけあんたのスキルを知らないのは不公平じゃないか。
 ハンデをくれよ、先輩」

 だが、彼は笑って目の前で人差し指をちっちっと振ってみせた。
 そして狂気の瞳に悪戯小僧の光を混ぜた。

「俺のスキルは非公開なの。
 すんごいレアスキルなんだってさ」

「あ、そう。
 いいなあ、先輩は特別扱いのエリートなんだね」

 くそ、もしかして、それでこのイカレジャンキーが野放しになっているのか?

 さっきの中級冒険者の追い剥ぎ連中の方が、欲の皮を突っ張らせていた分だけ、わかりやすくてまだマシだったぜ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。 人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。 それからおよそ20年。 ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。 ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。 そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。 ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。 次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。 そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。 ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。 採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。 しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。 そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。 そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。 しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。 そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。 本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。 そうして始まった少女による蹂躙劇。 明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。 こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような…… ※カクヨムにて先行公開しています。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...