44 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-44 御昼下がりの一幕
しおりを挟む
一応、セラシアが魔法で周辺を走査して特に異常を確認できなかったので、キャラバンは先に進んだ。
まだまだ先は長い。
俺にとっては生まれて初めての馬車の旅、しかも人生最長の旅になるのだから。
揺れる馬車から眺める車窓越しの景色は、かつてない新鮮な世界を俺に知らしめてくれていた。
「ねえ、そういや盗賊どもはどうしたんです」
「奴らの骸は片付けない。
新しい骸があると、盗賊はそこを危険と見做し、そこは一旦安全になる」
「うわあ、あれですか。
なんというか畑を荒らすカラスを吊るす見せしめみたいな感じに?」
「そうだ」
世の中の厳しさをまた一つ教わった気持ちだった。
俺は絶対にああはなりたくないもんだ。
北のダンジョンでしっかりと、生涯食いっぱぐれないような技術を更に磨いて頑張ろう。
「まあそういう顔をするな。
こういう大都市の周辺では結構盗賊も頻発する。
食い詰めた者も奪った物資などを捌かねばならんし、金を持っていても街にいなくては連中とて面白くなかろう。
だが剽賊どもにも大きなリスクがあるというわけだ」
「この周辺には腕のいい冒険者も多いのになあ」
「まあその分、ダンジョン都市のラビワンは実入りがいい街だから盗賊にとっても魅力的さ。
世の中でリスクと成果を天秤にかけているのは、お前だけじゃないってことさ。
逆に、その冒険者も賊徒の供給源になりうるのだから」
う、そういやそうだったなあ。
そうか、世の中どこへ行っても、どんな立場になってもそうなんだな。
「さしあたって、次の休憩所まで他にも襲撃のポイントはあるが我々がいれば、どうという事もなかろう。
我々のような上級冒険者が露払いをしていけば後続のキャラバンも結構安全なのだ。
ああみえて、ベーゼルはなかなかの漢だぞ」
み、自らの商隊で匪賊白浪どもを蹴散らして後の者に道を開くのか。
自分の金を大枚使って、危険を顧みず。
漢過ぎる。
そういや、キャラバンの人達は戦闘の際に、各々武器を持って自分の馬車を守っていたな。
それが出来ない連中には、この腕の立つ上級冒険者による護衛付きのキャラバンに参加できないルールなのかもしれない。
ははあ、だから格安でセラシア達も仕事を受けるのだな。
金は十分に持っていそうだし。
よく考えて、本来ならこのクラスのパーティがこんな護衛の仕事を受ける必要はないんだよな。
うちの姐御も、いい漢っぷりだなあ。
きっと定期的にあちこちの周辺街道を、先頭切って巡回しているのに違いない。
他にも、そういう上級冒険者のチームがいそうだ。
そして、そういう事が各ダンジョンへの有力な冒険者の循環をも促すのだろう。
その後、第二休憩所へ到達するまでは何事もなかったのだが、昼食後の弛緩タイムに少し油断気味に進行するキャラバン。
だが逆に俺は最大限に警戒していた。
何故ならそこは【俺ならここを狙う】ような、地形的に大変危険な場所だからだ。
そこは木が生い茂り周囲が少し見えにくく、また道がカーブしてブラインドになっている。
少し上り坂なのもポイントだ。
馬車も登りでは馬力が必要なので、その他の方面での機動力が落ちる場所だ。
そして木の枝葉の中に潜んだ奴が飛び降りて、あっという間に馬車に乗り移れる。
先頭馬車を止められたら、そのキャラバンは一瞬にして詰む。
他のメンバーも、俺が警戒する様子を見ていてくれていたようなので当然のように言ってみた。
「案の定ですね」
「うむ、一回襲撃撃退をこなしたから、お前も敏感になってきただろう」
「はい。
だけど、やけに規模がでかい感じがしますね。
なんだろう。
こいつは普通じゃない感じがする。
こんな、特に街のすぐ近くでもない場所なのに、何故これほどの数が。
補給を考えると割に合わないのでは」
奪った物資だけで多人数が野営で暮らせるわけがない。
金目の物が目当てなのだろうから。
「さあな。
そして更に、向こうに魔法使いが混じっている気配がするぞ。
しかも複数の手練れだ。
通常なら有り得ないが、私の魔法使いとしての感覚は疑いようもない」
えー、マジかよ。
魔法使いの盗賊は少し洒落にならない。
しかも複数の手練れだと⁇
「どうします?」
「今のうちにエラヴィスが手早く偵察、敵かどうか確認しろ。
万が一、どこかの軍勢だったりしたら、いきなり攻撃するのはマズイ。
他の二名はいつでも戦闘にかかれるように待機。
エラヴィスが確認して戻ったら私が魔法で攻撃する。
小僧、お前は私に【ついてこい】」
「イエスマム」
要はブーストをかけて、姐御の魔法をコピーして追撃せよと。
敵に魔法使いが多数いるのなら油断はできないからな。
これで軍隊じゃないのだったら目を剥くところだ。
どこかの軍勢だとしたら、その所属がまた問題となるのだが。
正式な軍事交流などの訪問ならば宿に泊まるだろうに。
どっちみち怪しいわ。
エラヴィスは素早く飛び出していく。
彼女は隠蔽の技術を持っているらしくて、直に目で追えなくなった。
うわあ、あのスキルはヤバイな。
俺はスキル発動を準備して待った。
まだまだ先は長い。
俺にとっては生まれて初めての馬車の旅、しかも人生最長の旅になるのだから。
揺れる馬車から眺める車窓越しの景色は、かつてない新鮮な世界を俺に知らしめてくれていた。
「ねえ、そういや盗賊どもはどうしたんです」
「奴らの骸は片付けない。
新しい骸があると、盗賊はそこを危険と見做し、そこは一旦安全になる」
「うわあ、あれですか。
なんというか畑を荒らすカラスを吊るす見せしめみたいな感じに?」
「そうだ」
世の中の厳しさをまた一つ教わった気持ちだった。
俺は絶対にああはなりたくないもんだ。
北のダンジョンでしっかりと、生涯食いっぱぐれないような技術を更に磨いて頑張ろう。
「まあそういう顔をするな。
こういう大都市の周辺では結構盗賊も頻発する。
食い詰めた者も奪った物資などを捌かねばならんし、金を持っていても街にいなくては連中とて面白くなかろう。
だが剽賊どもにも大きなリスクがあるというわけだ」
「この周辺には腕のいい冒険者も多いのになあ」
「まあその分、ダンジョン都市のラビワンは実入りがいい街だから盗賊にとっても魅力的さ。
世の中でリスクと成果を天秤にかけているのは、お前だけじゃないってことさ。
逆に、その冒険者も賊徒の供給源になりうるのだから」
う、そういやそうだったなあ。
そうか、世の中どこへ行っても、どんな立場になってもそうなんだな。
「さしあたって、次の休憩所まで他にも襲撃のポイントはあるが我々がいれば、どうという事もなかろう。
我々のような上級冒険者が露払いをしていけば後続のキャラバンも結構安全なのだ。
ああみえて、ベーゼルはなかなかの漢だぞ」
み、自らの商隊で匪賊白浪どもを蹴散らして後の者に道を開くのか。
自分の金を大枚使って、危険を顧みず。
漢過ぎる。
そういや、キャラバンの人達は戦闘の際に、各々武器を持って自分の馬車を守っていたな。
それが出来ない連中には、この腕の立つ上級冒険者による護衛付きのキャラバンに参加できないルールなのかもしれない。
ははあ、だから格安でセラシア達も仕事を受けるのだな。
金は十分に持っていそうだし。
よく考えて、本来ならこのクラスのパーティがこんな護衛の仕事を受ける必要はないんだよな。
うちの姐御も、いい漢っぷりだなあ。
きっと定期的にあちこちの周辺街道を、先頭切って巡回しているのに違いない。
他にも、そういう上級冒険者のチームがいそうだ。
そして、そういう事が各ダンジョンへの有力な冒険者の循環をも促すのだろう。
その後、第二休憩所へ到達するまでは何事もなかったのだが、昼食後の弛緩タイムに少し油断気味に進行するキャラバン。
だが逆に俺は最大限に警戒していた。
何故ならそこは【俺ならここを狙う】ような、地形的に大変危険な場所だからだ。
そこは木が生い茂り周囲が少し見えにくく、また道がカーブしてブラインドになっている。
少し上り坂なのもポイントだ。
馬車も登りでは馬力が必要なので、その他の方面での機動力が落ちる場所だ。
そして木の枝葉の中に潜んだ奴が飛び降りて、あっという間に馬車に乗り移れる。
先頭馬車を止められたら、そのキャラバンは一瞬にして詰む。
他のメンバーも、俺が警戒する様子を見ていてくれていたようなので当然のように言ってみた。
「案の定ですね」
「うむ、一回襲撃撃退をこなしたから、お前も敏感になってきただろう」
「はい。
だけど、やけに規模がでかい感じがしますね。
なんだろう。
こいつは普通じゃない感じがする。
こんな、特に街のすぐ近くでもない場所なのに、何故これほどの数が。
補給を考えると割に合わないのでは」
奪った物資だけで多人数が野営で暮らせるわけがない。
金目の物が目当てなのだろうから。
「さあな。
そして更に、向こうに魔法使いが混じっている気配がするぞ。
しかも複数の手練れだ。
通常なら有り得ないが、私の魔法使いとしての感覚は疑いようもない」
えー、マジかよ。
魔法使いの盗賊は少し洒落にならない。
しかも複数の手練れだと⁇
「どうします?」
「今のうちにエラヴィスが手早く偵察、敵かどうか確認しろ。
万が一、どこかの軍勢だったりしたら、いきなり攻撃するのはマズイ。
他の二名はいつでも戦闘にかかれるように待機。
エラヴィスが確認して戻ったら私が魔法で攻撃する。
小僧、お前は私に【ついてこい】」
「イエスマム」
要はブーストをかけて、姐御の魔法をコピーして追撃せよと。
敵に魔法使いが多数いるのなら油断はできないからな。
これで軍隊じゃないのだったら目を剥くところだ。
どこかの軍勢だとしたら、その所属がまた問題となるのだが。
正式な軍事交流などの訪問ならば宿に泊まるだろうに。
どっちみち怪しいわ。
エラヴィスは素早く飛び出していく。
彼女は隠蔽の技術を持っているらしくて、直に目で追えなくなった。
うわあ、あのスキルはヤバイな。
俺はスキル発動を準備して待った。
0
あなたにおすすめの小説
勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。
敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。
配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。
常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。
誰も死なせないために。
そして、封じた過去の記憶と向き合うために。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる