外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
72 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-72 ハッピー・フェアウェル(幸せなお別れ)

しおりを挟む
 そして時は無情に刻まれていき、子供達との切ないお別れの時間になった。

 だが、その別れの時間になって、親方が急にこのような事を言い出した。

「そのう、なんだ。
 ちょっと相談があるのじゃが」

「なんだい、親方」
「そのなあ、その子達の事なんじゃがのう」

 あれ、まさか親方ってば。

「その、よかったらうちで引き取らせてもらえんかのう」
 やっぱり!

「ほう」
 親方の昔馴染みである国王が少し楽し気な声を上げる。

「わしも、もうこの歳だし、この先に碌に弟子を取る事もあるまい。

 この子達には将来の仕事が必要じゃ。

 陶芸の才能もありそうだし、どうせなら縁のあったわしのところで世話をしてやるのも悪くないのではと思ってなあ」

「いいのかい、親方。
 この子達って、まだまだ手がかかるぜい」

「構わんよ。
 わしの息子達も皆、この土を捏ねる手で立派に育てたのじゃからのう」

「そっか、じゃあ俺は賛成だ。
 親父さん、男前だね」

「親方がそう言うのであれば俺に異論などはない。
 二人とも、それでいいか」

「うん、喜んで。
 わあ、工房の親父さんが僕のお父さんになってくれるの?」

「嬉しい。
 本当は孤児院へ行くのが嫌だったの。
 親方大好き」

 二人の子供達は親父さんにむしゃぶりついていった。

 もう先輩ったら妙に子供に優しいのが不気味だわ。
 まあ子供なんて物は、先輩の殺しの欲望の興味対象外なのかもしれないが。

 この人は単なる狂人なんかじゃなくって、バトルジャンキー系のどうしようもない方なのだから。

 盗賊なんか人質ごと殺せとかなんとか言いながら、実際にはこれだよ。

 この優しさの一欠片でもいいから俺にも回せよな。
 この骨の髄までイカれた落胤王子が。

「じゃあ、親方。
 養育費や修行のための材料費なんかもかかるだろう。
 はいこれ」

 俺はそう言って、すかさず大金貨を一枚差し出した。

「じゃ、私も」
 国王陛下は俺に倣った。

 それから二人で先輩を見た。

 奴は苦笑し、握っていた片方の手の平から手品のように大金貨二枚を取り出して、軽く放ると見事に二枚とも指の間に挟んでいた。

 先輩が先に用意しておいたのにタイミングが合わなくて出遅れたのか。
 意外とやることが男前じゃないか。

 まあ相手は顔馴染みの親方なんだしな。
 この男がこんな風に心を許すのは、この人と父親くらいなんじゃないのか。

 後は誠に不本意ながら、この俺くらいのものなのだろう。

「二人分だからな」

「そうか、そうか。ありがとうよ。
 どうか優しいあんたらに神のご加護がありますように」

 うん、王様はともかくとして、俺と先輩は先行き次第で、そいつが必要かもしれないね。

 そして、俺は親方の祈りを自分のスキルに加えて【祈りの力×x+1】としておいた。

 こいつはきっと邪神相手になら凄く効くんだぜ。
 勇者リクルの勇気にプラスワンだからな。

 そして俺達は、親方と二人の子供達に別れを惜しんでいた。

 国王陛下は着替えてから王宮に戻るつもりなのらしい。
 そういや、ここって王宮と反対側にある区域なんだった。

 普通は王様が一人で出歩いていたら、向こうの王宮側にいる関係者から怒られるはずなんだがな。

 まあこの方の場合は特別なんだろう。
 何せ、あの先輩よりも強いんだからな。

「なあ先輩、あの人って王様なのに結構フリーダムなんだな」

「まあ、もう実務の方は王太子がかなりの部分を引き受けている。
 現王が指導しながら引継ぎに五年はかけるのだ。

 国はしっかりと治めねばな。
 そんな人生は俺ならば絶対に御免だが」

 そうだろうなあ。
 王様なんかにされたら、俺の尻なんか追い回せなくなっちゃうものな。

 強さを求めて無頼に生きる王様の落とし種かあ。
 濃いなあ、こいつの人生も。

 俺なんか、ただの農家の長男なんだから気楽なもんだ。
 家は長女と義兄が継いでくれたのだ。

 俺はあの小さな村を出てみたかった。
 自分の力を外の世界で試してみたかったのだ。

 お蔭で何度も死にかけたが、この生き方を今も後悔していない。

 俺と先輩はさりげに歩いているように見えるのだが、実は常人の六倍の速さで、通常速度で走る馬並みのスピードで歩いている。

 これでもゆったり歩いている程度だ。
 まだまだ本気で走ったら先輩に負けるだろうなあ。

 こいつは本当に化け物なのだ。

 そのうち、もう少しバージョンが上がったら、殺し合い抜きの本気の追いかけっこをやって試してみたいが、あまり本気の逃げ足を見せると、また途中で先輩のスイッチが入っちまいそうだし。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...