81 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-81 塔のある風景
しおりを挟む
「ははあ、我らが聖女セラシア様。
よくぞ来ていただきました。
今、この件について祈りの塔を始めとする各地で一心に祈っておったばかりでございます」
よく見たら、同じような神官服を着た人達が両膝を着いていて、その数はどんどん増えてきていた。
こ、こいつら全員、あの危険なドラゴンとの戦闘の近くにいたのだな。
でなければ、こんなに早くはやってこれないだろう。
俺や先輩じゃあるまいに。
全員が神官服を着た者たちのようで、その中に一般人はいないようだったが。
さすがに姐御は呆れて、やや眉を吊り上げて彼らに言い放った。
「この痴れ者共が。
こういう時は安全なシェルターに避難せよと、私は教えなんだか!」
「で、ですが猊下。
私どもが祈らずに、一体どこの誰が民のために祈れましょう。
ましてやここには、あの」
ああ、そういや封印された邪神様がいらっしゃるものなあ。
そんな物が、どさくさに紛れて解き放たれるようになったら、世界中が大騒ぎになるようなえらい事だわ。
これはもう押し問答していたって埒が明きそうもない。
今も続々と集まってきている連中は、どうせどいつもこいつも同じような事を言うのに決まっている。
これがバルバディア聖教国っていう奴なのか。
「はいはい、もう姐御の負け。
ここにいるのは皆こういう人達なんだろうから、何を言ってもやる事は変わらないだろうよ。
あんたらの俺に対する仕打ちと一緒でな~。
それより、一体どうなっているのか聞いてくれよ。
あれだけのドラゴンがいたっていう事は、つまり」
それには姐御も渋い顔をした。
それは、とりもなおさず、おそらくはこの聖都にドラゴンの卵を大量に持ち込んできた連中がいるという事なのだ。
あるいは他の手段にてドラゴンを導きいれたか。
その方がもっとマズイがな。
「なんで、こんなにドラゴンがまとめていやがるんだよ。
こいつらはどこから来たんだ」
「だそうだ、マルコス」
「は、はあ。
あのセラシア姫、その方は?
先程ドラゴンと、たった御一人で戦い、見事に打ち破られたのは見ておりましたが」
いや、どこで見ていたんだ。
さっさと逃げろよ、危ないだろうが。
よかったな、巻き添えを食らわせないで済んで。
こいつらって要注意な連中だな。
姐御が怒った訳がよくわかった。
「ああ、こいつは今うちのパーティにいる若いのだ。
勇者リクルという。
まあたっぷりと鍛えておいたので、あの程度の蜥蜴の群れにそうそう後れを取る事はない。
まあうちの切り札と言えない事もない男だ。
話は聞かせてもらうぞ」
「おおお、『新しき勇者様』の誕生ですか、それは心強い。
あの異変についても是非【今代の勇者様】にも聞いていただかねば!」
「おい、姐御。
そこの不吉の使者は、一体何を言っているんだ?」
「ああ、我が叔母バルバディアの時にも、前回私が邪神を封じた時にも、我らが育てた勇者がパーティにおってなあ。
単にそれだけの話だ」
ちょっと待たんか、そこの千年おばん。
「待て、そんな話を俺は聞いていないぞ」
「懐かしいシチュエーションよのう。
歴代の勇者も皆そういう台詞を吐きよったものだが」
「ええっ」
も、もしかして、このおばさんって実はそこの先輩よりもヤバイ人だったのと違うんか~⁉
そして十分ほど歩いて我々は大神殿らしき場所へと到着した。
ここへ来るだろうと言う事はわかっていた。
何故なら、そこには高い塔があって、さっきの場所からもよく見えていたからだ。
こんな物をどうやって作ったものやら。
くそ、登ってみたい。
高いところは景色がいいから結構好きなのだ。
あそこからなら、きっとこの大聖都の雄大な景趣が一望できるに違いない。
俺の、その偉大な建造物に向けらえた羨望の眼を監視していた姐御が、このように釘を差してきた。
「リクル。塔に登るなら後にしろ。
マルコスの話が先だぞ」
「ほっほ、歴代勇者もあそこに上るのが好きだったと聞くがのう」
「リクルって、ああいうの好きそうよね」
「まあ景色は悪くはないし、上り下りは鍛錬にはもってこいなのかもしれん」
マロウスが不吉な事を言い出したので、俺は現実に返った。
「え。そうか、上まで辿り着くには、階段で登らないといけないんだね!」
「当り前だ。
なんだったら晩飯までに十往復くらいどうだ?」
「マロウス~、初めて登るんだから少しくらい景色を堪能させてくれよ。
今日はドラゴンの大群を倒したんだから、鍛錬はもういいだろ!」
だが俺達の先を歩くマルコスは楽し気に笑っていた。
「ははは、相も変わらず、姫様が率いるパーティは頼もしいのですな。
以前に邪神を再封印なされた時は、私が生まれる遥か前の事でございましたが」
なるほどなあ。
そういう話を聞くと、セラシアが英雄姫と呼ばれている意味がよくわかる。
彼女は神話の時代というか、伝説の中の英雄クラスの存在なのだ。
そもそも、血縁がこの聖都を開いた人間なのだし。
ああ、本人じゃなくて彼女バルバディアが邪神を封じた後に出来た街なのか。
よくぞ来ていただきました。
今、この件について祈りの塔を始めとする各地で一心に祈っておったばかりでございます」
よく見たら、同じような神官服を着た人達が両膝を着いていて、その数はどんどん増えてきていた。
こ、こいつら全員、あの危険なドラゴンとの戦闘の近くにいたのだな。
でなければ、こんなに早くはやってこれないだろう。
俺や先輩じゃあるまいに。
全員が神官服を着た者たちのようで、その中に一般人はいないようだったが。
さすがに姐御は呆れて、やや眉を吊り上げて彼らに言い放った。
「この痴れ者共が。
こういう時は安全なシェルターに避難せよと、私は教えなんだか!」
「で、ですが猊下。
私どもが祈らずに、一体どこの誰が民のために祈れましょう。
ましてやここには、あの」
ああ、そういや封印された邪神様がいらっしゃるものなあ。
そんな物が、どさくさに紛れて解き放たれるようになったら、世界中が大騒ぎになるようなえらい事だわ。
これはもう押し問答していたって埒が明きそうもない。
今も続々と集まってきている連中は、どうせどいつもこいつも同じような事を言うのに決まっている。
これがバルバディア聖教国っていう奴なのか。
「はいはい、もう姐御の負け。
ここにいるのは皆こういう人達なんだろうから、何を言ってもやる事は変わらないだろうよ。
あんたらの俺に対する仕打ちと一緒でな~。
それより、一体どうなっているのか聞いてくれよ。
あれだけのドラゴンがいたっていう事は、つまり」
それには姐御も渋い顔をした。
それは、とりもなおさず、おそらくはこの聖都にドラゴンの卵を大量に持ち込んできた連中がいるという事なのだ。
あるいは他の手段にてドラゴンを導きいれたか。
その方がもっとマズイがな。
「なんで、こんなにドラゴンがまとめていやがるんだよ。
こいつらはどこから来たんだ」
「だそうだ、マルコス」
「は、はあ。
あのセラシア姫、その方は?
先程ドラゴンと、たった御一人で戦い、見事に打ち破られたのは見ておりましたが」
いや、どこで見ていたんだ。
さっさと逃げろよ、危ないだろうが。
よかったな、巻き添えを食らわせないで済んで。
こいつらって要注意な連中だな。
姐御が怒った訳がよくわかった。
「ああ、こいつは今うちのパーティにいる若いのだ。
勇者リクルという。
まあたっぷりと鍛えておいたので、あの程度の蜥蜴の群れにそうそう後れを取る事はない。
まあうちの切り札と言えない事もない男だ。
話は聞かせてもらうぞ」
「おおお、『新しき勇者様』の誕生ですか、それは心強い。
あの異変についても是非【今代の勇者様】にも聞いていただかねば!」
「おい、姐御。
そこの不吉の使者は、一体何を言っているんだ?」
「ああ、我が叔母バルバディアの時にも、前回私が邪神を封じた時にも、我らが育てた勇者がパーティにおってなあ。
単にそれだけの話だ」
ちょっと待たんか、そこの千年おばん。
「待て、そんな話を俺は聞いていないぞ」
「懐かしいシチュエーションよのう。
歴代の勇者も皆そういう台詞を吐きよったものだが」
「ええっ」
も、もしかして、このおばさんって実はそこの先輩よりもヤバイ人だったのと違うんか~⁉
そして十分ほど歩いて我々は大神殿らしき場所へと到着した。
ここへ来るだろうと言う事はわかっていた。
何故なら、そこには高い塔があって、さっきの場所からもよく見えていたからだ。
こんな物をどうやって作ったものやら。
くそ、登ってみたい。
高いところは景色がいいから結構好きなのだ。
あそこからなら、きっとこの大聖都の雄大な景趣が一望できるに違いない。
俺の、その偉大な建造物に向けらえた羨望の眼を監視していた姐御が、このように釘を差してきた。
「リクル。塔に登るなら後にしろ。
マルコスの話が先だぞ」
「ほっほ、歴代勇者もあそこに上るのが好きだったと聞くがのう」
「リクルって、ああいうの好きそうよね」
「まあ景色は悪くはないし、上り下りは鍛錬にはもってこいなのかもしれん」
マロウスが不吉な事を言い出したので、俺は現実に返った。
「え。そうか、上まで辿り着くには、階段で登らないといけないんだね!」
「当り前だ。
なんだったら晩飯までに十往復くらいどうだ?」
「マロウス~、初めて登るんだから少しくらい景色を堪能させてくれよ。
今日はドラゴンの大群を倒したんだから、鍛錬はもういいだろ!」
だが俺達の先を歩くマルコスは楽し気に笑っていた。
「ははは、相も変わらず、姫様が率いるパーティは頼もしいのですな。
以前に邪神を再封印なされた時は、私が生まれる遥か前の事でございましたが」
なるほどなあ。
そういう話を聞くと、セラシアが英雄姫と呼ばれている意味がよくわかる。
彼女は神話の時代というか、伝説の中の英雄クラスの存在なのだ。
そもそも、血縁がこの聖都を開いた人間なのだし。
ああ、本人じゃなくて彼女バルバディアが邪神を封じた後に出来た街なのか。
0
あなたにおすすめの小説
勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。
敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。
配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。
常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。
誰も死なせないために。
そして、封じた過去の記憶と向き合うために。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。
人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。
それからおよそ20年。
ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。
ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。
そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。
ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。
次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。
そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。
ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。
採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。
しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。
そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。
そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。
しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。
そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。
本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。
そうして始まった少女による蹂躙劇。
明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。
こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような……
※カクヨムにて先行公開しています。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる