外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
82 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-82 聖都バルバディア大神殿

しおりを挟む
「なあ、マロウス」
「なんだ、勇者リクル」

「もう。
 俺って、もしかして協会長から聖女様パーティに配属されていたわけ?」

「別に特にそういう訳じゃないのさ。
 だが歴代の聖女様と共に戦った勇者は皆そういう風に勝手に育ち、何故か極自然に聖女の元に集う。

 まあそういう事なのだろう。
 お前のスキルの発現具合を見ていると、そのように思えるな。
 そもそも、どう見たって普通じゃないだろう、お前のスキルって」

「う!」
 確かにそうなのだがなあ。

 パッと見には、どう見ても外れスキルにしか見えなかったのだし。

 俺達は神官の長(大司祭?)であるらしいマルコスの案内に従って、この聖都バルバディアの中枢、大神殿へと向かっていた。

 面白い事に、それは街の中央ではなく、王都側つまり街の南に存在した。

 だから今も馬車は神官が世話をしてくれており、徒歩でそこへ向かっている。

 その理由は聖なる山が街の北側にあり、街の中心から北部は遺跡と元魔法金属採掘場である鉱山跡のダンジョンになっているからだ。

 その街の下には邪神と共に聖女様が眠っていらっしゃるのだ。

 この一種の独立市国ともいえる街は、それを封印し続け、また封印を護るためだけに存在するのだから。

 俺は、一応の『勇者』として、その特殊極まるくにの、石を基調とした街並みを眺めていた。

 だが、今俺の関心事は一にも二にも先輩にあった。
 彼の目には明らかに期待に満ちた狂気が呪われた炎の如くに宿り始めていたからだ。

 神官達の中にもその様子を気にして、彼にそっと目線を走らせる者もいた。

 そいつは無理もないわ。
 これは聖女様のパーティなのに、このように異端な人格破綻者が混ざっていたらな。

 せっかく、ここのところ収まっていたみたいな殺戮衝動とか戦闘衝動のような物が疼いてしまっていたらしい。

 しまった。
 先輩にもドラゴンを残しておいてやったほうがよかったのか。

 だが、さっさと片付けないと俺のスキルの最大の弱点であるタイムリミットが来ちまうから、もたもたしていてブレスを吐かせまくると、また街に被害が及んだことだろう。

 そして、うちの強面教官達に出番を提供する羽目になって俺は落第だ。

 そんな事になった日には、ドラゴン顔負けに目から火を噴く勢いの姐御に怒られちまうよ。

 それに「お前が全部片づけてこい」と教官が全員一致で申し付けてきたのだし、先輩も敢えてそれに異は唱えていなかった。

 あの修行の成果で俺がどれだけ美味しく(強く)なったのか見たかったものらしい。

 だが、強者を求めて退屈している狂気の落胤王子を、さっきの俺のドラゴン退治が刺激しちまったらしいので。

 これだから、この先輩って扱い辛いのだが。

 まさか俺を食う日を夢見て、また股間を大きく膨らませているんじゃないだろうな。

 こいつのズボンって割合とダブっとしているので、よくわからないんだけど。

 いくらなんでも、この聖都の大神殿ではそういう行為は控えてくださいね、先輩。

 いくら落胤のやる事とはいえ、王家の品位が地に落ちるぜ。
 ここも一応は、あんたの父上が治める国の中にあるのだからな。

 なんかこう、野郎がさっきからチラチラチラチラと俺の方ばかり見ているのだ。

 いっそ、早いうちにさっさと【邪神】とやらを生贄として先輩にくれてやった方がいいのかもしれない。

 その場合は、俺がメインイベンターとしてその後始末をしないといけなくなりそうなので鬱なのだが。

 今鮮やかに蘇る、あのダンジョン管理魔物の悪夢。

 そして目の前に聳え壮大な雄姿を見せつける白亜の宮。

 その後ろにもっと聳え立っている白亜の塔があるので、存在感的にはそれすら前座でしかないと言えない事もないのだが。

「なあ、なんであんな物凄い塔を建てたの?」

 こいつはまた近くで見ると雄大な建築物で維持費がかかりそうだなあ。

 建設にどれくらいの時間と金がかかったものか。
 世界中から金や人工が集まったのではなかろうか。

 もしかして清掃は見習い神官の仕事なのか。
 あるいは信者さんのご奉仕?

 勇者たる者の最初の仕事として「頑張って一人で塔のお掃除」などというものがプログラムに入っていたら、さすがの俺も泣く。

 そいつは鍛錬代わりにいいかもとか、うちの鬼教官達なら平気で言い、乗りそうなので。

「はは、あれはまた別名『祈りの塔』とも呼ばれ、それは一種のシンボルのような物にございます。

 世界中が力を合わせてこの塔を建設し、再び邪神が現れるような事になった日はまた共に戦おうと言う誓いのために立てられました。

 また、そのための信仰を忘れないように今日もきちんと整備されておるのでございます」

「うわあ、結構重大な意味があったのですね~」

「当り前だ。
 さもなければ、ここまで金食い虫の建築物を今日まで建てたままにはしておらんよ。
 あれから千年も経つのだからな。

 定期補修にも莫大な手間と金がかかっておる。
 お前に高みから聖都見物をさせるための物では決してないのだがな。
 まあどうしても登りたければ、話の後で勝手に登ってこい」

 やった、姐御から登頂の許可が下りたぞ。
 頂上まで走って何分で行けるか、タイムアタックするとしよう。

 記録は毎回縮めてみせるぜ。ここで時計が手に入らないかな。
 こんな事なら王都で買ってくればよかったぜ。

 数を数えながらだと、せっかくの登頂があまり楽しくない。

 バージョン上昇補正×4のスキルもついているし、ここの上り下りだけでバージョンが上がりそうな気がする。

 10.8から11.0までが、またなかなか上がらないんだよね。

 例の地下遺跡あたりに入るのならもう一つくらいバージョンを上げておいた方がいいんだし。

 まさか、いくらなんでもいきなり邪神が待ち構えている事はないと思うのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...