外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-7 ダンジョン入場

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 バニッシュはダンジョン探索に未練そうな顔を置き土産に、俺達の見送りだけしてから馬車で大神殿へ戻っていった。

 遺跡の入り口にも男性の神官さんが二人立っていたが、その出で立ちはマイアに準じるものだった。

 この事態においても、彼らはさすがに弛緩していない様子だった。
 彼女は知り合いらしき彼らに声をかけていた。

「やあ、バルバディアの兄弟達よ。
 景気はどうだい、レスター」

「マイアか。
 これが景気よく見えたのなら、目に効くようにたっぷりと回復魔法をかけた方がいいな。

 御覧の通りの閑古鳥状態さ」

「おや、そちらにいらっしゃるのは聖女様じゃないですか。
 ようこそ、バルバディア・モンサラント遺跡ダンジョンへ」

 そして二人は居住まいを正して、聖女様に対して深い礼を示した。

「ああいい、そうかしこまるな」

 バルバディア・モンサラント遺跡ダンジョンか。
 俺は興味深く訊いてみた。

「それが、ここのダンジョンの正式な名称なのですか?」

「ええ、まあ。
 皆は遺跡ダンジョンとしかいいませんが。

 元々は昔の鉱山跡がダンジョンで、モンサラント鉱山と呼ばれていましたので。
 まあ中ではどちらも繋がっていますのでね」

「もし、向こう側の出口からお出になりましたら、帰りがけにでもよろしいので、こちらへご一報をお願いいたします」

「なるほど、ありがとう」

 俺達は彼らに見送られて、そのまるで城の入り口のような石のアーチで組まれた中へと入っていった。

 そこも何かこう寺院のような感じになっているのだ。

 ずっと思っていたのだが、ここの聖教国の建物はいわゆる寺院といった方がいいようなスタイルになっている場合が多い。

 他の都市とは異なり、神殿さえもがそうなのだ。
 エルフがそれを好むからというのが理由らしい。

 この街は、その佇まいを聖女様方の好みに合わせているのだ。

 まるで、それさえもが邪神を封じる一助になるとでもいうように。

 そのくせ、そこにいる人間はプリーストではなく神官なのだから面白い。

 そういうのも、縄張りというか、お金の関係というか政治的な話というかあれこれと絡んでいるのだろう。

 姐御の話だと、このバルバディア聖教国は主神の神殿とも関係が深いらしい。

 一部はそちらからも人が回ってきているのかもしれない。

「ここは、いくつも結界が張られていて、万が一魔物が上へ上がってきてもこれが遮断してくれます。

 入り口の建物なども、そういう効果を持つ物が設置してあるのです」

「へえ、こういう物はラビワンにもあるのかな」

「さあ特に聞いた事がないが。
 あそこから魔物が逃げ出した話も聞かないな」

「上の方は魔物も少ないしね。
 一階なんか魔物が出ない、ただのエントランスだからなあ」

「魔物は地上の陽光を嫌う物も多いしの。外に出て生き延びる魔物も少ないし、また弱体化してしまう。

 外界は魔素が少ないというのも、魔物が外に出るのを嫌がる一因じゃ」

「へえ、それは知らなかったな。

 そういやスライムなんかは上の方の階にいるけど、入り口の比較的外に近い場所にはあまりいないしね。

 陽光を嫌うのは知っていたけど。
 そういや、外に出た魔物は弱体化するんだっけ」

「あら、リクル。
 そういう事も協会で教えるはずなんだけど。
 あんた、講習での成績は優秀だったんでしょ」

「でも最近は、実務に関係あるような話を重点的に載せる方が多いから、講習用の教科書が簡便化されている部分もあって、そういう細かい事は教えないよ。
 逆に、そこの先輩みたいな奴に関する注意なんかは詳しく載っているんだけど」

 俺はチラっと横目で先輩を見たが、奴は優雅に中を眺め回している。

 一応、例のミスリルの大剣は二振り持たせてあるのだが、背嚢にくくりつけたままだ。

 まあいいけどね。
 このイカれた強さの先輩が、その辺の魔物に苦戦する姿など想像もつかない。

 あのオークや狼との一方的な蹂躙劇、いや粉砕劇しか思い浮かばないわ。

「まあ、それも正しい方向性なのかもね。
 あれはただの業務前の座学教育ですもの。
 マイア、どっちへ向かうの」

 だが彼女は、ニコっと笑うとこのような事を言うのであった。

「お好きな方へ」

「あれ、あなたが案内してくれるのじゃないの?」

「例の扉は気ままでしてね。
 ラビワンの扉のように深い場所に現れるわけではないのです。
 酷い時は、さっきの入り口の隣あたりに出現した時もあります」

「へえ、そいつはまた」

 それを聞いた俺は一応、見回してみたが特に何も異変はない。

「その扉って、どんな感じなのです?」
「まあ、いわゆるただの扉のような物ですよ」

「はあ?」

「だから、その辺にある普通の扉と同じ物が壁などに存在するのです。

 本来は、そのような物はこのダンジョンにはございません。

 初級の冒険者などはそういう事もよく知らず、うっかりと探索のつもりで入ってしまい、それっきりですね」

「うわ、それってただの初心者殺しのトラップじゃん」

「はは、その点においては何処も変わらずか。
 ラビワンの最奥部だと、扉自体が魔物というかミミックという物もあったな。

 そして誰かが触るとすかさずパクっといくのだ。
 あれがまた狡猾な上に出鱈目に強い」

「マジで?」

「しかも、更に狡猾な奴になると逃がさないように最初からパクっといかずに、扉自体が口になっていて、知らずに普通に中に入るといつの間にか胃袋へ直行という感じかな。

 いつの間にか退路を断たれた上に消化液の雨が降ってくるぞ」

 うわあ、そいつは勘弁だな。
 その口ぶりだと、きっと先輩は引っかかった事があるんだな。

 消化されかかって、例のスキルで中から刻みまくってやって、強引に外へ出てきたんだろう。

「そのミミックは何がもらえるの?」

「特に何も。
 ただのくたびれ儲けだった。
 あれは何故か一旦出だすと大量に湧いてなあ。

 あれは必ずしも深層にだけ湧く物じゃない。
 生きてダンジョンの壁の中を移動しているからな。

 まあ滅多に深層以外ではお目にかかれないがな。

 そういや、そういう扉もあったか。
 まあ、あれは扉でもなんでもない、ただの魔物なのだが」

「そんな物、いらねーっ」
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