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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-6 遺跡ダンジョン
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翌朝、俺達は張り切って大神殿の玄関口に集合した。
「さて朝食もたっぷり食べた事だし、お出かけといたしますか」
やがて、マイアが馬車を回してきてくれた。
「ではダンジョンに向かいましょう。
扉の出現する遺跡が目当てなのですから、鉱山方面ではない街の中央にある遺跡入り口からまいりましょう」
「へえ、入り口がいくつかあるんだ。
珍しいな、普通はダンジョンに入り口が複数あると魔物が外に出ないように封印しちゃうんでしょう?」
「まあ、ここは特別です。
元々この遺跡は史跡のような物で、聖山と共に大切にされていたものなのですよ。
普通の遺跡からの出土品なんかもありましたしね」
「へえ、そいつは知らなかったな。
ここに関しては多少聞き齧った程度なので」
「ですが、千年前の邪神出現の関係により、さる理由からダンジョンに侵食される形になったのです。
今では立派な遺跡ダンジョンですね。
その辺はまた複雑な事情というか背景があるのですが」
「ふうん、そうだったんだ」
セラシアも、感慨深そうに解説してくれる。
「ここは今でこそ邪神を封印したダンジョン都市として有名だが、元々聖山は有名な、霊的修験場のような場所だった。
だからこの王国の国名にもなっているほどの物よ。
邪神自体もその山の力を利用して地上に出現したと言われるほどだ」
「地上に現れた?」
邪神というのは、地下に住んでいた魔物のような奴だと言う事なのだろうか。
「邪神という物はのう、元は地底におったものなのじゃ。
この聖教国バルバディアがこのように都市国家のようになっておるのも、一種の結界というか封印により、その邪神を封印しておくためのものなのじゃ」
「へえ」
「だから、その封印を強化するためのバルバディアの封印大祭が五年に一度行われるのよ。
次回は来年の予定よ」
「へえ、ここでお祭りをやるのか、いいなあ」
その頃にまた遊びに来てもいいかな。
その頃には街の修復も進み、この聖都での禍乱も収まっているのではないだろうか。
だが、先輩は呆れたような声で突っ込みを入れて来た。
「また能天気な事を。
邪神封印の儀は大切なものだから、各国の王族もやってくる国際的な祭礼だ。
うちの親もよく出ていた。
今は王太子である兄の仕事になるか。
王にとっては大事な外交の場でもある。
もっとも、多くの民にとっては楽しみな行事以外の何物でもないのだが」
「へえ、そんな御大層なものなのか」
そして、馬車に乗る事三十分で、その遺跡ダンジョンの入口へ行ったのだが。
「これはまた、何という事か」
「うわあ、寂れているわね」
「なんとまあ、こいつは荒れ放題だな」
「思ったよりも事態は深刻じゃのう」
「俺もここへは初めて来たのだが、こいつはまた厳しい状況だな」
「そういう事でございます。
本当に困ったものなのです。
皆様、よろしくお願いいたします」
俺は先輩同様に、ここを見る事も初めてだし禄な知識すらないのだが、確かに寂れて荒れ果てている事だけはわかる。
人気も異常に少ないようだ。
ラビワンなどは時間帯に限らず、随時と賑わっていた。
俺にここを勧めてくれたラビワンの協会長も、ここまで酷いとは思っていなかったのに違いない。
こうなったのはつい最近の話だろうしな。
入り口にある冒険者協会の事務所では、何故か神官姿をした女性は両手で頬杖をついて溜息を吐いていたし、周りの長屋のように並んでいた店は殆ど閉まっていた。
唯一、協会の開いている消耗品などの必需品のお店は開いていたが、そこも明らかに閑古鳥が鳴いていた。
店番の神官のおじさんも、こっくりこっくりと居眠りをしているが、それも無理はない話だ。
マイアもそれを咎めるつもりもないようだ。
おそらく、初級冒険者は中に入れない上に、君子危うきに近寄らずという事で一時的にここを去った冒険者も多く、あと宝箱目当てでダンジョン飯暮らしをしている、潜りっぱなしで出てこない連中も多いのだろう。
後は扉とやらの関係でやられてしまったものか。
あ、俺を狙ってきた、あの中級冒険者共って一部はここから流れてきた連中なのかもしれないな。
マイアは冒険者協会のダンジョン入り口にある事務所に立ち寄った。
「やあ、ラニス」
「あ、マイア様。
見てください、酷い有様です。
そちらは聖女様の?」
「ああ、今から潜る。
まったく、この聖教国バルバディアともあろうものが、なんという有様か。
大祭までにはなんとか立て直さねばなあ」
はて、マイアの知り合いという事は。
「ねえ、バルバディア聖教国冒険者協会の職員さんって」
「ええ、全員神官です。
ここはそういう国ですから。
私も今は大司祭様のところで対策係をしていますが、元々はこっちの方面の人間でして、上級冒険者相応の力は持っています」
そうか。
いや薄々そんな気はしていたんだ。
だって彼女が持っている神官の杖って、他の人の錫杖みたいな物と違って、まるで近接もこなせる戦闘系魔法使いが持つバトルスタッフみたいな感じなんだもの。
それに、この人ってなんだか服装に違和感があると思っていたら、大神殿で一人だけ冒険者用のごつい感じのブーツを履いているし。
格好もなんだか普通の神官と異なって、厚くて丈夫そうな革なども多用したものだった。
見た目は神官っぽいので誤魔化されていたが、今にして思えば、やっぱりそうなのかっていう感じだよ
「さて朝食もたっぷり食べた事だし、お出かけといたしますか」
やがて、マイアが馬車を回してきてくれた。
「ではダンジョンに向かいましょう。
扉の出現する遺跡が目当てなのですから、鉱山方面ではない街の中央にある遺跡入り口からまいりましょう」
「へえ、入り口がいくつかあるんだ。
珍しいな、普通はダンジョンに入り口が複数あると魔物が外に出ないように封印しちゃうんでしょう?」
「まあ、ここは特別です。
元々この遺跡は史跡のような物で、聖山と共に大切にされていたものなのですよ。
普通の遺跡からの出土品なんかもありましたしね」
「へえ、そいつは知らなかったな。
ここに関しては多少聞き齧った程度なので」
「ですが、千年前の邪神出現の関係により、さる理由からダンジョンに侵食される形になったのです。
今では立派な遺跡ダンジョンですね。
その辺はまた複雑な事情というか背景があるのですが」
「ふうん、そうだったんだ」
セラシアも、感慨深そうに解説してくれる。
「ここは今でこそ邪神を封印したダンジョン都市として有名だが、元々聖山は有名な、霊的修験場のような場所だった。
だからこの王国の国名にもなっているほどの物よ。
邪神自体もその山の力を利用して地上に出現したと言われるほどだ」
「地上に現れた?」
邪神というのは、地下に住んでいた魔物のような奴だと言う事なのだろうか。
「邪神という物はのう、元は地底におったものなのじゃ。
この聖教国バルバディアがこのように都市国家のようになっておるのも、一種の結界というか封印により、その邪神を封印しておくためのものなのじゃ」
「へえ」
「だから、その封印を強化するためのバルバディアの封印大祭が五年に一度行われるのよ。
次回は来年の予定よ」
「へえ、ここでお祭りをやるのか、いいなあ」
その頃にまた遊びに来てもいいかな。
その頃には街の修復も進み、この聖都での禍乱も収まっているのではないだろうか。
だが、先輩は呆れたような声で突っ込みを入れて来た。
「また能天気な事を。
邪神封印の儀は大切なものだから、各国の王族もやってくる国際的な祭礼だ。
うちの親もよく出ていた。
今は王太子である兄の仕事になるか。
王にとっては大事な外交の場でもある。
もっとも、多くの民にとっては楽しみな行事以外の何物でもないのだが」
「へえ、そんな御大層なものなのか」
そして、馬車に乗る事三十分で、その遺跡ダンジョンの入口へ行ったのだが。
「これはまた、何という事か」
「うわあ、寂れているわね」
「なんとまあ、こいつは荒れ放題だな」
「思ったよりも事態は深刻じゃのう」
「俺もここへは初めて来たのだが、こいつはまた厳しい状況だな」
「そういう事でございます。
本当に困ったものなのです。
皆様、よろしくお願いいたします」
俺は先輩同様に、ここを見る事も初めてだし禄な知識すらないのだが、確かに寂れて荒れ果てている事だけはわかる。
人気も異常に少ないようだ。
ラビワンなどは時間帯に限らず、随時と賑わっていた。
俺にここを勧めてくれたラビワンの協会長も、ここまで酷いとは思っていなかったのに違いない。
こうなったのはつい最近の話だろうしな。
入り口にある冒険者協会の事務所では、何故か神官姿をした女性は両手で頬杖をついて溜息を吐いていたし、周りの長屋のように並んでいた店は殆ど閉まっていた。
唯一、協会の開いている消耗品などの必需品のお店は開いていたが、そこも明らかに閑古鳥が鳴いていた。
店番の神官のおじさんも、こっくりこっくりと居眠りをしているが、それも無理はない話だ。
マイアもそれを咎めるつもりもないようだ。
おそらく、初級冒険者は中に入れない上に、君子危うきに近寄らずという事で一時的にここを去った冒険者も多く、あと宝箱目当てでダンジョン飯暮らしをしている、潜りっぱなしで出てこない連中も多いのだろう。
後は扉とやらの関係でやられてしまったものか。
あ、俺を狙ってきた、あの中級冒険者共って一部はここから流れてきた連中なのかもしれないな。
マイアは冒険者協会のダンジョン入り口にある事務所に立ち寄った。
「やあ、ラニス」
「あ、マイア様。
見てください、酷い有様です。
そちらは聖女様の?」
「ああ、今から潜る。
まったく、この聖教国バルバディアともあろうものが、なんという有様か。
大祭までにはなんとか立て直さねばなあ」
はて、マイアの知り合いという事は。
「ねえ、バルバディア聖教国冒険者協会の職員さんって」
「ええ、全員神官です。
ここはそういう国ですから。
私も今は大司祭様のところで対策係をしていますが、元々はこっちの方面の人間でして、上級冒険者相応の力は持っています」
そうか。
いや薄々そんな気はしていたんだ。
だって彼女が持っている神官の杖って、他の人の錫杖みたいな物と違って、まるで近接もこなせる戦闘系魔法使いが持つバトルスタッフみたいな感じなんだもの。
それに、この人ってなんだか服装に違和感があると思っていたら、大神殿で一人だけ冒険者用のごつい感じのブーツを履いているし。
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