外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
93 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-6 遺跡ダンジョン

しおりを挟む
 翌朝、俺達は張り切って大神殿の玄関口に集合した。

「さて朝食もたっぷり食べた事だし、お出かけといたしますか」

 やがて、マイアが馬車を回してきてくれた。

「ではダンジョンに向かいましょう。
 扉の出現する遺跡が目当てなのですから、鉱山方面ではない街の中央にある遺跡入り口からまいりましょう」

「へえ、入り口がいくつかあるんだ。
 珍しいな、普通はダンジョンに入り口が複数あると魔物が外に出ないように封印しちゃうんでしょう?」

「まあ、ここは特別です。
 元々この遺跡は史跡のような物で、聖山と共に大切にされていたものなのですよ。

 普通の遺跡からの出土品なんかもありましたしね」

「へえ、そいつは知らなかったな。
 ここに関しては多少聞き齧った程度なので」

「ですが、千年前の邪神出現の関係により、さる理由からダンジョンに侵食される形になったのです。

 今では立派な遺跡ダンジョンですね。
 その辺はまた複雑な事情というか背景があるのですが」

「ふうん、そうだったんだ」

 セラシアも、感慨深そうに解説してくれる。

「ここは今でこそ邪神を封印したダンジョン都市として有名だが、元々聖山は有名な、霊的修験場のような場所だった。

 だからこの王国の国名にもなっているほどの物よ。
 邪神自体もその山の力を利用して地上に出現したと言われるほどだ」

「地上に現れた?」

 邪神というのは、地下に住んでいた魔物のような奴だと言う事なのだろうか。

「邪神という物はのう、元は地底におったものなのじゃ。

 この聖教国バルバディアがこのように都市国家のようになっておるのも、一種の結界というか封印により、その邪神を封印しておくためのものなのじゃ」

「へえ」

「だから、その封印を強化するためのバルバディアの封印大祭が五年に一度行われるのよ。
 次回は来年の予定よ」

「へえ、ここでお祭りをやるのか、いいなあ」

 その頃にまた遊びに来てもいいかな。
 その頃には街の修復も進み、この聖都での禍乱も収まっているのではないだろうか。

 だが、先輩は呆れたような声で突っ込みを入れて来た。

「また能天気な事を。
 邪神封印の儀は大切なものだから、各国の王族もやってくる国際的な祭礼だ。

 うちの親もよく出ていた。
 今は王太子である兄の仕事になるか。

 王にとっては大事な外交の場でもある。
 もっとも、多くの民にとっては楽しみな行事以外の何物でもないのだが」

「へえ、そんな御大層なものなのか」

 そして、馬車に乗る事三十分で、その遺跡ダンジョンの入口へ行ったのだが。

「これはまた、何という事か」
「うわあ、寂れているわね」
「なんとまあ、こいつは荒れ放題だな」
「思ったよりも事態は深刻じゃのう」

「俺もここへは初めて来たのだが、こいつはまた厳しい状況だな」

「そういう事でございます。
 本当に困ったものなのです。
 皆様、よろしくお願いいたします」

 俺は先輩同様に、ここを見る事も初めてだし禄な知識すらないのだが、確かに寂れて荒れ果てている事だけはわかる。

 人気も異常に少ないようだ。
 ラビワンなどは時間帯に限らず、随時と賑わっていた。

 俺にここを勧めてくれたラビワンの協会長も、ここまで酷いとは思っていなかったのに違いない。

 こうなったのはつい最近の話だろうしな。

 入り口にある冒険者協会の事務所では、何故か神官姿をした女性は両手で頬杖をついて溜息を吐いていたし、周りの長屋のように並んでいた店は殆ど閉まっていた。

 唯一、協会の開いている消耗品などの必需品のお店は開いていたが、そこも明らかに閑古鳥が鳴いていた。

 店番の神官のおじさんも、こっくりこっくりと居眠りをしているが、それも無理はない話だ。

 マイアもそれを咎めるつもりもないようだ。

 おそらく、初級冒険者は中に入れない上に、君子危うきに近寄らずという事で一時的にここを去った冒険者も多く、あと宝箱目当てでダンジョン飯暮らしをしている、潜りっぱなしで出てこない連中も多いのだろう。

 後は扉とやらの関係でやられてしまったものか。

 あ、俺を狙ってきた、あの中級冒険者共って一部はここから流れてきた連中なのかもしれないな。

 マイアは冒険者協会のダンジョン入り口にある事務所に立ち寄った。

「やあ、ラニス」

「あ、マイア様。
 見てください、酷い有様です。
 そちらは聖女様の?」

「ああ、今から潜る。
 まったく、この聖教国バルバディアともあろうものが、なんという有様か。
 大祭までにはなんとか立て直さねばなあ」

 はて、マイアの知り合いという事は。

「ねえ、バルバディア聖教国冒険者協会の職員さんって」

「ええ、全員神官です。
 ここはそういう国ですから。

 私も今は大司祭様のところで対策係をしていますが、元々はこっちの方面の人間でして、上級冒険者相応の力は持っています」

 そうか。
 いや薄々そんな気はしていたんだ。

 だって彼女が持っている神官の杖って、他の人の錫杖みたいな物と違って、まるで近接もこなせる戦闘系魔法使いが持つバトルスタッフみたいな感じなんだもの。

 それに、この人ってなんだか服装に違和感があると思っていたら、大神殿で一人だけ冒険者用のごつい感じのブーツを履いているし。

 格好もなんだか普通の神官と異なって、厚くて丈夫そうな革なども多用したものだった。

 見た目は神官っぽいので誤魔化されていたが、今にして思えば、やっぱりそうなのかっていう感じだよ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。 人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。 それからおよそ20年。 ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。 ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。 そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。 ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。 次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。 そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。 ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。 採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。 しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。 そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。 そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。 しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。 そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。 本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。 そうして始まった少女による蹂躙劇。 明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。 こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような…… ※カクヨムにて先行公開しています。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...