107 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-20 リナ
しおりを挟む
「内部は本当に坑道なんだなあ。
こんなところで魔物と戦闘をしたら崩れないのかねえ」
「内部は本当に坑道なんだなあ。
こんなところで魔物と戦闘をしたら崩れないのかねえ」
だが、背後からくすくすと笑う声がした。
振り向けば女の子の冒険者が一人立っていた。
冒険者にしては珍しく伸ばした髪の金髪の煌めきが眩しく俺の目を焼いた。
イエローピンクの瞳と整った目鼻立ちが印象的だな。
「あなた、どこの田舎から出てきたのよ。
このダンジョンは聖なる力に護られているから大丈夫よ。
元々、ダンジョンなんてそう簡単に壊せるものでもないのだし」
「護られているだって」
「そうよ」
その女の子はすらっとした御御足を見せつけるような紺色の短パンと、カーキ色のタンクトップのような格好をして、少し丈夫そうなタイプのショートブーツを履いている。
手には指の部分を強化した、指先が出る仕様の拳闘用の鋲付きグローブを嵌めている。
腰には剣帯を装備し、そこにはシンプルに短剣とポーチ、それになんだかよくわからない薄青色の小箱だけというラフな格好だ。
あの先輩だって、そこまで軽装じゃないのだが。
幸いな事に、この子の場合、色合いだけは先輩ほどイカれていない。
女の子らしいお洒落な色合いで、白やピンク色なども各所に散りばめられているのだが。
まあ拳闘士らしいので動きやすさを重視しているのだろうが、それにしてもダンジョンにおいては度が過ぎる軽装だ。
「ふん、そんな顔をしないのよ。
あたしの肌はコーティングされているから大丈夫なの。
あなたこそ一人なの?
あら、もしかして一緒に従魔でも連れているの?
見えないけれど気配を感じるな」
この子もうちの狼の気配がわかるのか、結構優秀な冒険者なんだな。
俺と歳はそう変わらないように見えるけど。
俺が白狼軍団を見えるようにしてやると、彼女は顔を綻ばせた。
「あら、可愛い~。
もふもふな奴がいっぱいじゃない。
いいなあ」
「へへ、いいだろ。
なあ、ところでコーティングって何だい?」
「これよ」
彼女は、うちの子達の頭を撫でながら、剣帯に付けた薄青色の小箱のような魔道具を見せてくれた。
「ここの宝箱からの発掘品の一つなのよ。
これで、重装特殊金属鎧並みの防御力を体の表面に発生させてくれるの。
特殊な布鎧よりも防御力が高いわ。
いいでしょ」
「へえ、そっちのピンクのポーチは?」
「あら、目聡いわね。
こいつは収納バッグといって、このサイズで背嚢どころか馬車一杯分は荷が入るわ。
まあ買えば、物凄く高いんだけれど、あたしは自力でゲットしたから」
「うお、すげえ。
ねえ、ちょっと使う所を見せてよ」
「ふふん、いいわよ」
そう言って彼女は中からお弁当を取り出して、また仕舞ってみせた。
まるで手品を見ているかのようだった。
結構ドヤ顔のところを見ると、本人も自慢したかったものらしい。
「凄い。
それがあればダンジョンの中で豪華弁当が好きなだけ食えるじゃないか」
「しかも、ずっと腐らないみたいだから、もう最高。
お蔭でみんなの荷物持ちよ」
「よーし、俺もダンジョンで魔物を狩りまくって、そいつを買いに行こう」
「そんな物、ここの宝箱から自分で探しなさいよ。
まあ、なかなか出ないレア物だけどさ。
それに、そうそう収納アイテムは売っていないわよ。
これって自分で使うと凄く便利だからさ」
「そうかー、みんな冒険者なんだものな。
そいつは、どこで見つけたの。
遺跡の扉の中?」
それを聞いて彼女は眉を寄せた。
「こっちの坑道ダンジョンの宝箱よ。
遺跡の方は危ないわよ。
欲をかいて扉を潜った奴なんて、殆ど戻ってこないんだからね」
「ああ、知っている。
昨日は俺もヤバかった。
その前は賞品として、こっちのオリハルコンの槍をもらってきたけど」
「わ、凄いじゃないの。
賞品?
やっぱり、あっちから出たのは普通の武器と違うんだ?」
「凄い高性能だよ。
さらに、うちの凄腕の鍛冶師が弄ってくれたから最高の出来さ」
「へえ、でも扉はやめておいた方がいいよ。
マジで」
「昨日は仕方がない。
扉を捜しまくっていた、うちの先輩が捕まっていたんだもの。
あれは扉を開けた時点で負けなんだ。
扉を潜っていなくても、中に放り込まれる物もあるから気をつけなよ」
「げ、開けただけでアウトなのかあ。
ありがとう、うちのパーティにも言っておくわ。
あんた名前は?」
「リクル」
「あたしは『リナーっ』、という事よ」
彼女は坑道の蔭から顔を出した、自分のパーティのメンバーに手を振ってから俺に言った。
「あれ、お姉ちゃんなのよ。
うちは家族皆が冒険者なの」
「パーティじゃなくて、ファミリー⁉」
「あはは、親は来てないわ。
後はお姉ちゃんの彼氏と、その友達よ。
ちょっと噂の北のダンジョンの異変を覗いてやろうと思ってね」
「同じや、発想がうちのパーティとほぼ同じや」
「あっはっは、みんな冒険者なんだもの。
じゃあねー」
「ああ、君も気を付けて」
こんなところで魔物と戦闘をしたら崩れないのかねえ」
「内部は本当に坑道なんだなあ。
こんなところで魔物と戦闘をしたら崩れないのかねえ」
だが、背後からくすくすと笑う声がした。
振り向けば女の子の冒険者が一人立っていた。
冒険者にしては珍しく伸ばした髪の金髪の煌めきが眩しく俺の目を焼いた。
イエローピンクの瞳と整った目鼻立ちが印象的だな。
「あなた、どこの田舎から出てきたのよ。
このダンジョンは聖なる力に護られているから大丈夫よ。
元々、ダンジョンなんてそう簡単に壊せるものでもないのだし」
「護られているだって」
「そうよ」
その女の子はすらっとした御御足を見せつけるような紺色の短パンと、カーキ色のタンクトップのような格好をして、少し丈夫そうなタイプのショートブーツを履いている。
手には指の部分を強化した、指先が出る仕様の拳闘用の鋲付きグローブを嵌めている。
腰には剣帯を装備し、そこにはシンプルに短剣とポーチ、それになんだかよくわからない薄青色の小箱だけというラフな格好だ。
あの先輩だって、そこまで軽装じゃないのだが。
幸いな事に、この子の場合、色合いだけは先輩ほどイカれていない。
女の子らしいお洒落な色合いで、白やピンク色なども各所に散りばめられているのだが。
まあ拳闘士らしいので動きやすさを重視しているのだろうが、それにしてもダンジョンにおいては度が過ぎる軽装だ。
「ふん、そんな顔をしないのよ。
あたしの肌はコーティングされているから大丈夫なの。
あなたこそ一人なの?
あら、もしかして一緒に従魔でも連れているの?
見えないけれど気配を感じるな」
この子もうちの狼の気配がわかるのか、結構優秀な冒険者なんだな。
俺と歳はそう変わらないように見えるけど。
俺が白狼軍団を見えるようにしてやると、彼女は顔を綻ばせた。
「あら、可愛い~。
もふもふな奴がいっぱいじゃない。
いいなあ」
「へへ、いいだろ。
なあ、ところでコーティングって何だい?」
「これよ」
彼女は、うちの子達の頭を撫でながら、剣帯に付けた薄青色の小箱のような魔道具を見せてくれた。
「ここの宝箱からの発掘品の一つなのよ。
これで、重装特殊金属鎧並みの防御力を体の表面に発生させてくれるの。
特殊な布鎧よりも防御力が高いわ。
いいでしょ」
「へえ、そっちのピンクのポーチは?」
「あら、目聡いわね。
こいつは収納バッグといって、このサイズで背嚢どころか馬車一杯分は荷が入るわ。
まあ買えば、物凄く高いんだけれど、あたしは自力でゲットしたから」
「うお、すげえ。
ねえ、ちょっと使う所を見せてよ」
「ふふん、いいわよ」
そう言って彼女は中からお弁当を取り出して、また仕舞ってみせた。
まるで手品を見ているかのようだった。
結構ドヤ顔のところを見ると、本人も自慢したかったものらしい。
「凄い。
それがあればダンジョンの中で豪華弁当が好きなだけ食えるじゃないか」
「しかも、ずっと腐らないみたいだから、もう最高。
お蔭でみんなの荷物持ちよ」
「よーし、俺もダンジョンで魔物を狩りまくって、そいつを買いに行こう」
「そんな物、ここの宝箱から自分で探しなさいよ。
まあ、なかなか出ないレア物だけどさ。
それに、そうそう収納アイテムは売っていないわよ。
これって自分で使うと凄く便利だからさ」
「そうかー、みんな冒険者なんだものな。
そいつは、どこで見つけたの。
遺跡の扉の中?」
それを聞いて彼女は眉を寄せた。
「こっちの坑道ダンジョンの宝箱よ。
遺跡の方は危ないわよ。
欲をかいて扉を潜った奴なんて、殆ど戻ってこないんだからね」
「ああ、知っている。
昨日は俺もヤバかった。
その前は賞品として、こっちのオリハルコンの槍をもらってきたけど」
「わ、凄いじゃないの。
賞品?
やっぱり、あっちから出たのは普通の武器と違うんだ?」
「凄い高性能だよ。
さらに、うちの凄腕の鍛冶師が弄ってくれたから最高の出来さ」
「へえ、でも扉はやめておいた方がいいよ。
マジで」
「昨日は仕方がない。
扉を捜しまくっていた、うちの先輩が捕まっていたんだもの。
あれは扉を開けた時点で負けなんだ。
扉を潜っていなくても、中に放り込まれる物もあるから気をつけなよ」
「げ、開けただけでアウトなのかあ。
ありがとう、うちのパーティにも言っておくわ。
あんた名前は?」
「リクル」
「あたしは『リナーっ』、という事よ」
彼女は坑道の蔭から顔を出した、自分のパーティのメンバーに手を振ってから俺に言った。
「あれ、お姉ちゃんなのよ。
うちは家族皆が冒険者なの」
「パーティじゃなくて、ファミリー⁉」
「あはは、親は来てないわ。
後はお姉ちゃんの彼氏と、その友達よ。
ちょっと噂の北のダンジョンの異変を覗いてやろうと思ってね」
「同じや、発想がうちのパーティとほぼ同じや」
「あっはっは、みんな冒険者なんだもの。
じゃあねー」
「ああ、君も気を付けて」
0
あなたにおすすめの小説
勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。
敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。
配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。
常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。
誰も死なせないために。
そして、封じた過去の記憶と向き合うために。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる