外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-57 精霊ご指導会

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「ふう」

「はい、溜息にも力入れ過ぎ。
 ていっ」

「あいたっ。
 お前のチョップって、小さいくせに何故か地味に痛いんですけど」

「そりゃあ、あんたの契約精霊ですもの!」
「それ、何か関係あるの⁉」

「特にない」
「ねーのかよ!」

「そういうものは年季、それ」

「うわ、ウインディアか。
 いやフェアリー・ビューティズ全員集合なのかよ」

「だって面白そうなんだもん。
 うちも混ぜて~」

「ほれほれ、そいやそいやだわいな~」

「あ、イタタタ。
 グランディア、お前、今スキルを使って叩いただろう。
 反則だあ」

 契約精霊全員が参加して、俺の頭はポコポコと叩かれっぱなしになっていた。

 だが、もうダンジョンへ出発の時間になった。

 馬車が待っていてくれ、俺は乗るように促された。

「リクル、遊んでいていいとは言ってないぞ」
「へーい」

 先輩から怒られちまった。
 いや頑張って力を抜く練習をしていたんだけどな。

 あまり意識すると、逆に心と体がバラバラになっていく感じでギクシャクするんだよね。

「リクルって返事だけは軽くて力が入っていないんだね」

「はん、それは前からの事よ」

「じゃあ、リクル。
 その軽い返事をするように力を抜いて」

「こうか?」

 俺は馬車に乗り込んでから、言われた通り座席で全身の力を抜いてグダっとしてダラけてみせた。

「うーん、それはちょっと違うような。

 確かに力は抜けているけど、それだと邪神どころかスライムにだってやられそう」


「くそ、難しいな」
「あそこに、いいお手本があるよ」

 そう言ってルミナスが指差したのは、向かい側で普段通りに優雅に座っている先輩だった。

 軽く窓で頬杖などをついている。


「なんていうのかな。
 物静か? 平常心?
 ただ、そこにあるとでもいうか。

 まったく力を入れていないけど、実はシャープに研ぎ澄まされている感じ」


「なんて言ったらいいかよくわからないけど、ピシっとしていながら力は入っていないにょ」

「王の息子にして貴族の貫禄でありんす?」

「お前ら、無茶を言うなよ。
 俺は農村出身だぜ。
 まだ村を出て二年と経っちゃいないっていうの」

「のーそん」
「いなかもの」
「おちついてない」
「こころえがない」
「がくがない」

「おい、最後の学は特に関係ないよな!」


「そんな事はないぞ。
 だって先輩は物静か、本とか読んでいるし。
 よく思索にも耽る。

 冷静で観察力が鋭く、無駄な事をしていない。
 日頃から無駄な力も入れていない。

 だからリクルの事まで視ていられる。
 今は一番パーティで心に余裕ある。
 逆にセラシアは余裕がない」

「うーん。確かにそうなのだが」

 先輩が俺を見ているのは、アレでアレな感じだからなのだが。

 あと、先輩は元々このパーティの人ではないのだ。
 もっとも、この俺だってそうなんだけど。

 片や王の勅命、片や指名制の勇者稼業?

 先輩の場合は勅命たって、自分でそれを出してもらったようなもんだけどなあ。

 まあ今姐御に余裕がないのは仕方がないよな。
 聖女は辛いよ?

「はは、お前ら、もうすっかり仲良くなったもんだな」

「だってセラシア、こいつ面白いよ。
 こんな奴なかなかいない」

「いたら、あちこちの関係者が困るだろうな」

 う、そうかもしれない。
 精霊達も馬車の車内を飛び回りつつ、笑いさざめいていた。

「とにかく、リクルは無理しない。
 もう下っ端で下働きばかりしていなくていい。
 大仰に構えるのも無し」

「そうは思うんだけどねえ。
 俺はまだ見習いを卒業して、あまり日が経ってないんだから。
 そいつが一番難しいねえ」

 俺は、ありとあらゆることに対して構えているのかな。

 だが、それは冒険者として生きるならば必要な事であり、あのブライアンから学んできた事なのだ。

 それが間違っているとは必ずしも思えない。

 そうしないと、冒険者として生き残っていけないだろう。

 だが、無駄な力は入っているんだろうなあ。
 一体どうしたものやら。

 力に慣れれば、時が解決してくれるのだろうか。
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