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第二章 世直し聖女
2-6 たまたま持ってましたま
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「サヤ」
「あ、はい。
ありがとうございます。
謹んで拝命いたします」
一瞬、そうなるとまた面倒な事にならないかなという考えが、ふと頭の片隅に過ったのだが、同時に天秤にかけられた打算の方が勝った。
一介の異国の少女であるよりは、そういう権威みたいなものがあった方が、あの悪魔の青い鳥の捜索が容易になるのではないかとね。
あと、裏称号として悪魔聖女というのはどうかしら。
そっちの方がみんなビビって、おかしなちょっかいをかけられるなんて事もなくなるかなと。
「お前には王国より今回の恩賞を授けよう。
して、少し訊ねたいのだが、あの世にも希少な七色ガルーダの羽根はお前がもってきたのだな。
他に、なんというかな、珍しい玉のような物は持っておらぬか?」
周囲の大気を、何か驚きのような波動が駆け抜けていった。
ここに集まっているのは貴族のような偉い人達ばかりのようなので、驚きを言葉にして吐き出した者はいないようなのだが、なんというかな、そういう気配は隠しきれないみたいな空気、雰囲気。
何故か、リュールさんも驚いていたようだ。
え、何?
何かあるのかな。
「玉……ですか。
いくらか持っていますが、御覧になります?」
「うむ、見せてもらおう。
何か台を持ってまいれ」
王様の指示の下、係の人が少し大きめの立派な装飾が周囲や足回りに施された台を持ってきてくれた。
日本だと美術館に展示されるような立派な品だった。
いいな、これ恩賞としていただけないかしら。
なんていうか、ちょっとチュールを座らせておくのにいいというか、何かこうちょっと置いてみるとか。
今回の恩賞、これだけでもいいんだけど。
私は脳内で、これを部屋のどこに置こうかと楽しく妄想しながら、まずそれを出してみた。
王様がはっきりとは口で言わずに、言葉をぼかしているような感じなので、何が欲しいのかさっぱりとわからない。
「これは違いますかね」
そう言って私が出したものは、まず黒い球。
そこそこの大きさで私の小さめな手の平にすっぽりと余裕で収まってしまう、ずっしりとして重めのそれは、なんだかよくわからないものなのだが、
ガルさんの宝箱に仕舞ってあったコレクションだ。
ナナさんのジャッジは即答だった。
「捨てろ。
いやサヤにあげなさい。
何かの役に立つかもしれないから。
あんたがそんな物を持っていてどうするつもり。
片付けもせずに巣に放り込んでおいて」
「い、いや、これは男の趣味のコレクションというものでな」
そういう物に対しては、人間の世界でも奥さんからはいい顔をされないのはよく聞く話だ。
よってナナさんは強制執行を執り行い、これの所有権は涙目のガルさんから私に移った。
「それは一体なんじゃな」
あ、これは王様がご希望の品とは違う物だったらしい。
「これはですね。
ある種の高位魔物が作り出す、一種の魔法物質の玉だそうです。
どうやっても壊せないほど硬く、魔物が砲弾として打ち出してくるのだそうです。
たぶん、珍しい物だと思うので高く売れるといいなと思っていたのですが、国家にご用命はないようですね。
商談がまとまらなくて非常に残念です」
周囲の空気が再びざわめいた。
これはあまり、人の世では知られていないもののようだった。
「うむ、それはまた珍しいものよの。
もしかしたら、国のどこかの部署が欲しがるかもしれぬので、大切に持っていておくれ」
「はい、わかりました」
残念、せっかく都合七十八個もあるガラクタをいい値段で売りさばくチャンスだと思ったのに。
冒険者ギルドじゃ引き取れない物だったから、国くらいしか売る相手がいないんだよね。
結局、ガルさんのゴミ箱から私の収納に移動しただけだったな。
そういえば、収納の能力を見せてしまったけど、それに関しては誰も驚かないんだなあ。
卑しくも聖女呼ばわりされるような人間は持っていたって当然の扱いなのか。
ちなみにこの玉、もっと撃たせれば好きなだけ手に入っただろうに、ガルさんは面倒臭がりなのですぐに倒してしまったらしい。
そのくせ、大事にコレクションしていたんだから、まったくもって男の考える事は私には皆目理解ができません。
最近は、収納の能力もゲームのアイテム画面であるインベントリのように整理して検索もできるように弄ってみた。
あれがカスタマイズできるなんて知らなかったけど、なんとなく試してみたら出来てしまった。
えー、お次はと。
頭の中で収納のインベントリを操作して見つけた。
「次はこれでしょうか」
「それはなんじゃ」
またですか。
これは何かの白い球なのだが。
「さあ、わかりません。
少なくとも魔物の糞には見えませんね。
うちの国には動物の糞などを転がして丸くする虫なんかはおりますが、そういうものではないようです。
だってこれ、綺麗好きな七色ガルーダの奥さんの方からいただいたので。
旦那さんの方だと危ないですけど」
これは鑑定しても何なのかよくわからないんだなあ。
ただの不思議玉。
「そうか、して他には」
やはり違ったようだ。
次は少し玉とは言い難い物体なのだが、一応出してみる。
それは瑠璃色に輝く、いろいろな色が絵の具を溶かし込んだように入り混じって独特の美しさを見せている。
そして光り輝いている感じなのだ。
正体不明の内部から漏れ出るような不思議な光を放って。
なんというか、丸っこい感じに不定形でいかにも大きな石って感じの奴。
そう、ただの綺麗な石ですね。
半端でない色合いで凄く綺麗なんだけど。
ひょっとしたら宝石のような石の原石か何かだと嬉しいなと思って見せてみた。
「おお、それはっ!」
「王様、これをご存知なので?」
立て続けに外れを引いたので、今度は変わり種を出してみたのだが当たった?
「うむ。
それは魔法鋼のような物の希少な鉱石じゃ。
それもまた滅多に見つからぬ珍しい物でのう。
是非、国で探してほしいと役所から陳情が繰り返されておるものなのじゃ。
して、これをどれくらい持っておる」
「そこそこありますよ。
これはコレクターである七色ガルーダの旦那さんがなんとなく集めていた物で、結婚を機に奥さんによって処分されたというだけの物です。
要るんならどうぞ」
そして、今までの不要な玉を仕舞い、手持ちの鉱石をすべて並べてみた。
こいつも全部で大小合わせて八十個くらいある。
そのあまりに残念な理由に、周囲はまた唸っていたが、王様は苦笑いをして返答をくれた。
「おお、これはありがたい。
全部引き取ろう。
宰相よ、きちんと計算して代金を払ってやってくれ」
「ははっ」
おお、ちゃんと王家が引き取ってくれるだけの値打ちのある売り物が入っていたなあ。
このお金はとっておいて、いつかチャックのためのオリハルコンの代金にしようかな。
あの子って、普通の物は特に欲しがらないからねえ。
「あ、はい。
ありがとうございます。
謹んで拝命いたします」
一瞬、そうなるとまた面倒な事にならないかなという考えが、ふと頭の片隅に過ったのだが、同時に天秤にかけられた打算の方が勝った。
一介の異国の少女であるよりは、そういう権威みたいなものがあった方が、あの悪魔の青い鳥の捜索が容易になるのではないかとね。
あと、裏称号として悪魔聖女というのはどうかしら。
そっちの方がみんなビビって、おかしなちょっかいをかけられるなんて事もなくなるかなと。
「お前には王国より今回の恩賞を授けよう。
して、少し訊ねたいのだが、あの世にも希少な七色ガルーダの羽根はお前がもってきたのだな。
他に、なんというかな、珍しい玉のような物は持っておらぬか?」
周囲の大気を、何か驚きのような波動が駆け抜けていった。
ここに集まっているのは貴族のような偉い人達ばかりのようなので、驚きを言葉にして吐き出した者はいないようなのだが、なんというかな、そういう気配は隠しきれないみたいな空気、雰囲気。
何故か、リュールさんも驚いていたようだ。
え、何?
何かあるのかな。
「玉……ですか。
いくらか持っていますが、御覧になります?」
「うむ、見せてもらおう。
何か台を持ってまいれ」
王様の指示の下、係の人が少し大きめの立派な装飾が周囲や足回りに施された台を持ってきてくれた。
日本だと美術館に展示されるような立派な品だった。
いいな、これ恩賞としていただけないかしら。
なんていうか、ちょっとチュールを座らせておくのにいいというか、何かこうちょっと置いてみるとか。
今回の恩賞、これだけでもいいんだけど。
私は脳内で、これを部屋のどこに置こうかと楽しく妄想しながら、まずそれを出してみた。
王様がはっきりとは口で言わずに、言葉をぼかしているような感じなので、何が欲しいのかさっぱりとわからない。
「これは違いますかね」
そう言って私が出したものは、まず黒い球。
そこそこの大きさで私の小さめな手の平にすっぽりと余裕で収まってしまう、ずっしりとして重めのそれは、なんだかよくわからないものなのだが、
ガルさんの宝箱に仕舞ってあったコレクションだ。
ナナさんのジャッジは即答だった。
「捨てろ。
いやサヤにあげなさい。
何かの役に立つかもしれないから。
あんたがそんな物を持っていてどうするつもり。
片付けもせずに巣に放り込んでおいて」
「い、いや、これは男の趣味のコレクションというものでな」
そういう物に対しては、人間の世界でも奥さんからはいい顔をされないのはよく聞く話だ。
よってナナさんは強制執行を執り行い、これの所有権は涙目のガルさんから私に移った。
「それは一体なんじゃな」
あ、これは王様がご希望の品とは違う物だったらしい。
「これはですね。
ある種の高位魔物が作り出す、一種の魔法物質の玉だそうです。
どうやっても壊せないほど硬く、魔物が砲弾として打ち出してくるのだそうです。
たぶん、珍しい物だと思うので高く売れるといいなと思っていたのですが、国家にご用命はないようですね。
商談がまとまらなくて非常に残念です」
周囲の空気が再びざわめいた。
これはあまり、人の世では知られていないもののようだった。
「うむ、それはまた珍しいものよの。
もしかしたら、国のどこかの部署が欲しがるかもしれぬので、大切に持っていておくれ」
「はい、わかりました」
残念、せっかく都合七十八個もあるガラクタをいい値段で売りさばくチャンスだと思ったのに。
冒険者ギルドじゃ引き取れない物だったから、国くらいしか売る相手がいないんだよね。
結局、ガルさんのゴミ箱から私の収納に移動しただけだったな。
そういえば、収納の能力を見せてしまったけど、それに関しては誰も驚かないんだなあ。
卑しくも聖女呼ばわりされるような人間は持っていたって当然の扱いなのか。
ちなみにこの玉、もっと撃たせれば好きなだけ手に入っただろうに、ガルさんは面倒臭がりなのですぐに倒してしまったらしい。
そのくせ、大事にコレクションしていたんだから、まったくもって男の考える事は私には皆目理解ができません。
最近は、収納の能力もゲームのアイテム画面であるインベントリのように整理して検索もできるように弄ってみた。
あれがカスタマイズできるなんて知らなかったけど、なんとなく試してみたら出来てしまった。
えー、お次はと。
頭の中で収納のインベントリを操作して見つけた。
「次はこれでしょうか」
「それはなんじゃ」
またですか。
これは何かの白い球なのだが。
「さあ、わかりません。
少なくとも魔物の糞には見えませんね。
うちの国には動物の糞などを転がして丸くする虫なんかはおりますが、そういうものではないようです。
だってこれ、綺麗好きな七色ガルーダの奥さんの方からいただいたので。
旦那さんの方だと危ないですけど」
これは鑑定しても何なのかよくわからないんだなあ。
ただの不思議玉。
「そうか、して他には」
やはり違ったようだ。
次は少し玉とは言い難い物体なのだが、一応出してみる。
それは瑠璃色に輝く、いろいろな色が絵の具を溶かし込んだように入り混じって独特の美しさを見せている。
そして光り輝いている感じなのだ。
正体不明の内部から漏れ出るような不思議な光を放って。
なんというか、丸っこい感じに不定形でいかにも大きな石って感じの奴。
そう、ただの綺麗な石ですね。
半端でない色合いで凄く綺麗なんだけど。
ひょっとしたら宝石のような石の原石か何かだと嬉しいなと思って見せてみた。
「おお、それはっ!」
「王様、これをご存知なので?」
立て続けに外れを引いたので、今度は変わり種を出してみたのだが当たった?
「うむ。
それは魔法鋼のような物の希少な鉱石じゃ。
それもまた滅多に見つからぬ珍しい物でのう。
是非、国で探してほしいと役所から陳情が繰り返されておるものなのじゃ。
して、これをどれくらい持っておる」
「そこそこありますよ。
これはコレクターである七色ガルーダの旦那さんがなんとなく集めていた物で、結婚を機に奥さんによって処分されたというだけの物です。
要るんならどうぞ」
そして、今までの不要な玉を仕舞い、手持ちの鉱石をすべて並べてみた。
こいつも全部で大小合わせて八十個くらいある。
そのあまりに残念な理由に、周囲はまた唸っていたが、王様は苦笑いをして返答をくれた。
「おお、これはありがたい。
全部引き取ろう。
宰相よ、きちんと計算して代金を払ってやってくれ」
「ははっ」
おお、ちゃんと王家が引き取ってくれるだけの値打ちのある売り物が入っていたなあ。
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