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第一章 王太子様御乱心
1-33 最強の魔法使い
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ダンジョンとは何か。もし私がそう誰かに問われたとしたならば、『魔法発電機の海』そう答えるでしょう。
ダンジョンで最強なのは誰?
無敵の肉体を持つ筋肉戦士? 最強の剣士? ヒーラー? あるいは身体能力に秀でた獣人冒険者?
いいえ。答えは『魔法使い』
だって考えてごらんなさいな。ここは無尽蔵の魔素、魔法の素となるエネルギーが嵐のように荒れ狂い、そこ限定で無限の力を振るう事が可能な魔法使いには圧倒的な空間。
普段は燃費が悪くて、あまり効率がよくない『最大出力』が異様に大きな魔法使いに圧倒的に有利な環境。
私はそういうタイプの魔法使い。持っている魔力も桁違いだから困った事は生まれてこの方、ただの一度もないが。
ダンジョンで最強の魔法属性は何?
それは『風使い』
だって考えてごらんなさいな。気体の風、液体の水、固体の土。同じ力で駆動したとしたら一体何が一番速いのかしら。
答えは一番軽いものよ。
一番速きもの、それは一番鋭きもの。一番速きもの、それは一番攻撃を弾くもの。一番速きもの、それは一番鋭い切れ味を持つもの。一番速きもの、それは一番強き、圧倒的な存在。
本来なら最強であるはずの火魔法。しかし、ダンジョンにて火魔法は使いにくい。自分達まで巻き込みかねないから。だから、火魔法はご法度とし風魔法が貴ばれる。つまり、風魔法は尊い。
一番最強の魔法使いは誰。それは、超姫エメラルダス。何故なら彼女は最強の風属性魔法使い。
あらゆる魔法属性を使いこなす器用さに加え、風魔法を突出して使いこなす、風のニンフと呼ばれし者。
しかして、風姫とは決して呼ばれなかったSランク冒険者。だって彼女は他の魔法でも比肩しうる同業者を持たなかったから。
ダンジョンで二番目に強い魔法使いは誰。それは土魔法使い。だってダンジョンの中でもっとも重い盾を使いこなすから。
そして無尽蔵のゴーレムをダンジョン限定で生み出せる。ソロダンジョンプレイヤーに土魔法はヒッスと言われる由縁だ。
我が母超姫は、二番目に土魔法を得意とした。彼女のダンジョンにおける必殺は『ゴーレム・レジオン』
レジオンはフランス語で『誉の軍団』
フランス外人部隊もそう呼ばれた。
そして、この私、マリー・ミルフィーユ・エクレーアは、その母からその魔法特性の全てと得意魔法を受け継ぎ、それに転生知識を駆使した魔法開発力並びに、最強の開発研究員である魔法創造の天才シナモン・バニラ・クッキーを従者に持つ女。
母は言った。
「この子は生まれながらに私を越えた。何故なら、この子の魂は!」
そして、父。公爵家の生まれでありながら、それに甘んじる事無く、いえ。その特権を最大限に享受し、圧倒的な研鑽の機会を得て、それに努めた努力の男『超人ヘラクレス』と称えられた英雄。
その才を跡継ぎの弟よりも受け継いだ、この身。なれば、道は一つ。
えーと、今何が起きているかというとですね……。
「おらおらおらおら、魔物ども纏めてかかってこんかい。マリー様がお相手をしてやるって言ってんだぞ。とっとと出てこい、このファッキン魔物どもめが! この超獣が相手で何が不足かあ~。それでも雄なのかああああ」
ハイになっております。荒ぶっております。我ながら猛っておりますなあ。
駄目だ、この心の奥底から湧き上がってくる熱い感情を抑えきれない。
あの三歳の時、現実とお芝居の区別がつかなくて、両親と一緒になって楽しく大暴れしたあの時。あんな感じに制御できていない状態ですねえ。
まあ慣れだと思うのだけれど、本日は無理っぽい。今はこのバーサク状態に見も心も任せよう。
ただ一つだけ困った事が。おそらくダンジョンで湧く予定のSランク魔物がビビってしまって湧いてこない状態なのです。
どうしたものかなと理性では困惑しつつ、ただ今超獣マリー全開中です。さすがは私ですね、本人も含めてすべての人の予想の斜め上を行きました。
魔法は一切使わず、魔力パワーモードの超戦士モードに入っております。魔力を身体強化と肉体のパワーに変換するモードですね。
この状態になると、諸国にその名を響かせた我が父『超人』よりさえ強いのです。
そして、ここは魔素の海も同然の空間。レジオンを呼び出したら、あまりにも巨大な奴らが出てきてしまったので持て余し、待機させておいたのですが、そやつらも座り込んで、もれなく頭を抱えております。
でかい図体をして役に立たない奴らですね、主人が困っているのだから止めなさいよ。
無理です。ゴーレムどもには、決して主人に手を上げたりしないような安全装置が組み込まれているのですから。
生まれて初めて浸かった、超濃度の魔素浸けに『魔力酔い』しております。そういえば、まだ舌ったらずだった小さい頃に母親から言い聞かせられていた事があります。
「いーい、マリーちゃん。あなたはねえ、ダンジョンにだけは入っちゃ駄目よー」
「マリー、ダンジョン行くー」
「だから駄目だと」
「行くのー!」
こういう事だったんですねー。本気で困ったわー。終わりのないデスパレードになっていますね。
圧倒的なパワーで全身をぶんぶんと振り回し、触れる物全てを粉砕せんとする死神の舞を踊りまくっております。
すると、後ろで私をツンツン突いている奴がいます。なんとシナモンでした。そういや、こいつも来ていたんだった。今までどこにいたのよ。今の状態の私によく触れるものですね。
「真理姉、あんた何をやっているのさ。もう帰るよ」
「ちょっと助けなさいよ。いやあ、もう全身これ荒ぶって全然止まらなくてさ」
「アホのお姉さんがおる……じゃあね。好きなだけ頑張って」
醒めた目つきで主を置いていこうとする従者に私は慌てました。
「待って、私も帰るから! 主を見捨てるなあ~」
私は置いていかれそうになって慌ててついていきました。
何かこう、この子と一緒だと心も体も脱力して、何かこういい感じになって自制心を取り戻せたようです。これも日頃、彼と勤しんでいるコント修業の成果なのでしょうか⁉
ダンジョンで最強なのは誰?
無敵の肉体を持つ筋肉戦士? 最強の剣士? ヒーラー? あるいは身体能力に秀でた獣人冒険者?
いいえ。答えは『魔法使い』
だって考えてごらんなさいな。ここは無尽蔵の魔素、魔法の素となるエネルギーが嵐のように荒れ狂い、そこ限定で無限の力を振るう事が可能な魔法使いには圧倒的な空間。
普段は燃費が悪くて、あまり効率がよくない『最大出力』が異様に大きな魔法使いに圧倒的に有利な環境。
私はそういうタイプの魔法使い。持っている魔力も桁違いだから困った事は生まれてこの方、ただの一度もないが。
ダンジョンで最強の魔法属性は何?
それは『風使い』
だって考えてごらんなさいな。気体の風、液体の水、固体の土。同じ力で駆動したとしたら一体何が一番速いのかしら。
答えは一番軽いものよ。
一番速きもの、それは一番鋭きもの。一番速きもの、それは一番攻撃を弾くもの。一番速きもの、それは一番鋭い切れ味を持つもの。一番速きもの、それは一番強き、圧倒的な存在。
本来なら最強であるはずの火魔法。しかし、ダンジョンにて火魔法は使いにくい。自分達まで巻き込みかねないから。だから、火魔法はご法度とし風魔法が貴ばれる。つまり、風魔法は尊い。
一番最強の魔法使いは誰。それは、超姫エメラルダス。何故なら彼女は最強の風属性魔法使い。
あらゆる魔法属性を使いこなす器用さに加え、風魔法を突出して使いこなす、風のニンフと呼ばれし者。
しかして、風姫とは決して呼ばれなかったSランク冒険者。だって彼女は他の魔法でも比肩しうる同業者を持たなかったから。
ダンジョンで二番目に強い魔法使いは誰。それは土魔法使い。だってダンジョンの中でもっとも重い盾を使いこなすから。
そして無尽蔵のゴーレムをダンジョン限定で生み出せる。ソロダンジョンプレイヤーに土魔法はヒッスと言われる由縁だ。
我が母超姫は、二番目に土魔法を得意とした。彼女のダンジョンにおける必殺は『ゴーレム・レジオン』
レジオンはフランス語で『誉の軍団』
フランス外人部隊もそう呼ばれた。
そして、この私、マリー・ミルフィーユ・エクレーアは、その母からその魔法特性の全てと得意魔法を受け継ぎ、それに転生知識を駆使した魔法開発力並びに、最強の開発研究員である魔法創造の天才シナモン・バニラ・クッキーを従者に持つ女。
母は言った。
「この子は生まれながらに私を越えた。何故なら、この子の魂は!」
そして、父。公爵家の生まれでありながら、それに甘んじる事無く、いえ。その特権を最大限に享受し、圧倒的な研鑽の機会を得て、それに努めた努力の男『超人ヘラクレス』と称えられた英雄。
その才を跡継ぎの弟よりも受け継いだ、この身。なれば、道は一つ。
えーと、今何が起きているかというとですね……。
「おらおらおらおら、魔物ども纏めてかかってこんかい。マリー様がお相手をしてやるって言ってんだぞ。とっとと出てこい、このファッキン魔物どもめが! この超獣が相手で何が不足かあ~。それでも雄なのかああああ」
ハイになっております。荒ぶっております。我ながら猛っておりますなあ。
駄目だ、この心の奥底から湧き上がってくる熱い感情を抑えきれない。
あの三歳の時、現実とお芝居の区別がつかなくて、両親と一緒になって楽しく大暴れしたあの時。あんな感じに制御できていない状態ですねえ。
まあ慣れだと思うのだけれど、本日は無理っぽい。今はこのバーサク状態に見も心も任せよう。
ただ一つだけ困った事が。おそらくダンジョンで湧く予定のSランク魔物がビビってしまって湧いてこない状態なのです。
どうしたものかなと理性では困惑しつつ、ただ今超獣マリー全開中です。さすがは私ですね、本人も含めてすべての人の予想の斜め上を行きました。
魔法は一切使わず、魔力パワーモードの超戦士モードに入っております。魔力を身体強化と肉体のパワーに変換するモードですね。
この状態になると、諸国にその名を響かせた我が父『超人』よりさえ強いのです。
そして、ここは魔素の海も同然の空間。レジオンを呼び出したら、あまりにも巨大な奴らが出てきてしまったので持て余し、待機させておいたのですが、そやつらも座り込んで、もれなく頭を抱えております。
でかい図体をして役に立たない奴らですね、主人が困っているのだから止めなさいよ。
無理です。ゴーレムどもには、決して主人に手を上げたりしないような安全装置が組み込まれているのですから。
生まれて初めて浸かった、超濃度の魔素浸けに『魔力酔い』しております。そういえば、まだ舌ったらずだった小さい頃に母親から言い聞かせられていた事があります。
「いーい、マリーちゃん。あなたはねえ、ダンジョンにだけは入っちゃ駄目よー」
「マリー、ダンジョン行くー」
「だから駄目だと」
「行くのー!」
こういう事だったんですねー。本気で困ったわー。終わりのないデスパレードになっていますね。
圧倒的なパワーで全身をぶんぶんと振り回し、触れる物全てを粉砕せんとする死神の舞を踊りまくっております。
すると、後ろで私をツンツン突いている奴がいます。なんとシナモンでした。そういや、こいつも来ていたんだった。今までどこにいたのよ。今の状態の私によく触れるものですね。
「真理姉、あんた何をやっているのさ。もう帰るよ」
「ちょっと助けなさいよ。いやあ、もう全身これ荒ぶって全然止まらなくてさ」
「アホのお姉さんがおる……じゃあね。好きなだけ頑張って」
醒めた目つきで主を置いていこうとする従者に私は慌てました。
「待って、私も帰るから! 主を見捨てるなあ~」
私は置いていかれそうになって慌ててついていきました。
何かこう、この子と一緒だと心も体も脱力して、何かこういい感じになって自制心を取り戻せたようです。これも日頃、彼と勤しんでいるコント修業の成果なのでしょうか⁉
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