37 / 66
第一章 渡り人
1-37 ペットが飼いたいの
しおりを挟む
そして村へと帰還した。
その前に教会へ行き、神父様に鹿肉を提供した。人生初鹿なのである。大切な人達に食べてもらいたかった。
「ほお、もう鹿が獲れるようになったのか。お前は偉いねえ」
「その年でたいしたものです」
神父様もアルスラムさんも褒めてくれた。最高に嬉しいぜ。教会の餓鬼どもには馬鹿受けだった。
「すげえな、アンソニー」
「素敵、お嫁さんにしてえ」
フォックス。それを言うなら、せめて金玉くらいは取ってから言えよ。
今は教会の子供も二人だけで、男の子ばっかりだ。赤毛で雀斑のフォックスは4歳、黒髪のアレックスは6歳。もちろん、体格ではどっちも抜いたけどな。
アレックスも大人びているのに加えて、見かけも大きいので8歳くらいに見える。俺は体が大きいが、子供らしく見えるので7歳くらいかと聞かれる。
自分の年齢で人を驚かせられる楽しみもあと僅かな期間のものだろう。今のうちに楽しめるだけ楽しんでおこうかと思っている。
「ただいまー」
「お帰りー。お土産はー?」
当然そんな事を言っているのはミョンデ姉だが、俺は自慢たらたらで鹿肉を見せびらかした。
「じゃーん、人生で初単独狩猟の鹿なんだぜー」
「おー! 凄いじゃん。これから食卓がもっと豪勢になるね!」
あまり働き者ではないが、食う事については、この家で俺に次いで熱心な女である。
齢6歳にして将来が既に危ぶまれているが、生憎な事に器量よしなので買い手には事欠くまい。なるべく、いい家の働き者の男を騙して売りつけるのもいいかなと思っている。
「あのさあ、お姉ちゃん。ペット拾ってきちゃったんだけど、飼ってもいいよね?」
「ペット? ああ、あんたって狼を欲しがっていたものね。ははあ、さては狼に狩りを手伝ってもらったね? まあ狩猟の成果に結びつくなら、別にいいんじゃない?」
これが、この女の基本的な考え方である。全ては実利一本。あまりに、きっぱりとしているため、むしろ清々しくさえある。
一体、誰に似たんだろうか。肝の太さは母親譲りではないかと思うのだが。まあ、言質は取った。別にペットが生き物だなんて言っちゃあいないからな。
まずはダストワン。
「ミハエルお兄ちゃん、ペット飼ってもいい?」
「ん? ああ、別に構わないけど。珍しいね、お前がそんな事を言うなんて。生き物はすべて食べ物と認識しているのかと思っていたよ」
ぐっ、兄上。私を一体なんだと思って。しかし、日ごろの行いがあれだからな。叔父さんとのサバイバル訓練が日常化している現状は否めない。
いざとなったら、蜘蛛でも蜻蛉でも、なんでも食べまっせ。さすがにティムだけは食わないな。食うとこもないし。ダストツー。
「あ、エマお姉ちゃあん。可愛いペット飼ってもいい?」
「あらあら、ようやくアンソニーにも生き物を慈しむ気持ちが湧いてきたのかしら。お姉ちゃん、嬉しいわ。今のままだと、生き物を見ると何も考えずに即座に全て仕留めるような大人になりそうで、とっても心配だったのよ。お爺ちゃんがよくそういう事を言っていたの。いわゆる、鬼の狩人の話ね」
なんですか、それ。怖い。しかし、家族が内心俺の事をどう思っているのかよくわかる、有意義な日だったな。ちょっと泣いてもいいかしら。まあ。とりあえずダストスリー。さて、次は。父は作業場で鋤の修理をしていた。
「お父さん、ペット飼ってもいい?」
「ペット?」
「叔父さんも了承済みだよ」
これは嘘じゃない。
「そうか、狩りに役立つ奴かな。構わんよ」
お父さんの脳裏にあるのは、狼の子供か鷹の雛だろう。
人間の子供の場合、よく仲良くなったりする事もあるからだ。よっしゃ、大黒柱からの了承はいただけたぜ。これでダストフォー。
普通ならこれで完全にチェックメイトだが、この世界でも、こういう事に関しては、やはり母親というものの権限は強い。
それに母は、どうせ買うなら山羊とか鶏を飼いたいのだ。村で飼っている人達を羨ましがっていたが、俺が肉は獲りまくってくるので、今のところその話はない。鶏なんかは卵が大変素敵なのですけれど。たまに肉なんかと交換で俺がもらってくるしね。
「ねえ、父さん。母さんは?」
「ん? 畑で仕事をしているんじゃないのか? もうそろそろ止めさせないといかんのだが」
「へえ?」
なんだろうな。とにかく行ってみたら、そこには驚愕の光景が広がっていた。ティム達が畑で草むしりを手伝っていたのだ。
「お、お前ら、一体ここで何をしているのさ!」
「マイロード、お母上は身重だ。これからは我らが御母堂様をお守りし、お助けします」
そ、そ、そんな事に何故! だが母さんは笑っていた。相変わらず、肝が太いな。
「この子達、あんたが拾ってきたんですって? 私を見かけたら、いきなり全員で平伏するものだから驚いちゃったわよ。よくできた子達ねえ。ところで、これは一体何なのかしら?」
ここで一番偉い人を見抜くのか、ティム軍団よ。そして、本当の事を言おうか激しく迷った。まさか、あのゴブリン軍団の幹部ですと、今言ったなら追い出されるかも!
「そ、それよりさ、母さん。赤ちゃん、生まれるの⁉」
「まだ先よー」
「僕、可愛い妹がいいなあ」
「そうねえ。頑張ってみるわ」
母上、無茶はおよしなせえ。今からではちょっと手遅れであります。それでも俺は可愛い妹の幻視に囚われて、母親のお腹にぺったりと張り付いて離れなかった。
その前に教会へ行き、神父様に鹿肉を提供した。人生初鹿なのである。大切な人達に食べてもらいたかった。
「ほお、もう鹿が獲れるようになったのか。お前は偉いねえ」
「その年でたいしたものです」
神父様もアルスラムさんも褒めてくれた。最高に嬉しいぜ。教会の餓鬼どもには馬鹿受けだった。
「すげえな、アンソニー」
「素敵、お嫁さんにしてえ」
フォックス。それを言うなら、せめて金玉くらいは取ってから言えよ。
今は教会の子供も二人だけで、男の子ばっかりだ。赤毛で雀斑のフォックスは4歳、黒髪のアレックスは6歳。もちろん、体格ではどっちも抜いたけどな。
アレックスも大人びているのに加えて、見かけも大きいので8歳くらいに見える。俺は体が大きいが、子供らしく見えるので7歳くらいかと聞かれる。
自分の年齢で人を驚かせられる楽しみもあと僅かな期間のものだろう。今のうちに楽しめるだけ楽しんでおこうかと思っている。
「ただいまー」
「お帰りー。お土産はー?」
当然そんな事を言っているのはミョンデ姉だが、俺は自慢たらたらで鹿肉を見せびらかした。
「じゃーん、人生で初単独狩猟の鹿なんだぜー」
「おー! 凄いじゃん。これから食卓がもっと豪勢になるね!」
あまり働き者ではないが、食う事については、この家で俺に次いで熱心な女である。
齢6歳にして将来が既に危ぶまれているが、生憎な事に器量よしなので買い手には事欠くまい。なるべく、いい家の働き者の男を騙して売りつけるのもいいかなと思っている。
「あのさあ、お姉ちゃん。ペット拾ってきちゃったんだけど、飼ってもいいよね?」
「ペット? ああ、あんたって狼を欲しがっていたものね。ははあ、さては狼に狩りを手伝ってもらったね? まあ狩猟の成果に結びつくなら、別にいいんじゃない?」
これが、この女の基本的な考え方である。全ては実利一本。あまりに、きっぱりとしているため、むしろ清々しくさえある。
一体、誰に似たんだろうか。肝の太さは母親譲りではないかと思うのだが。まあ、言質は取った。別にペットが生き物だなんて言っちゃあいないからな。
まずはダストワン。
「ミハエルお兄ちゃん、ペット飼ってもいい?」
「ん? ああ、別に構わないけど。珍しいね、お前がそんな事を言うなんて。生き物はすべて食べ物と認識しているのかと思っていたよ」
ぐっ、兄上。私を一体なんだと思って。しかし、日ごろの行いがあれだからな。叔父さんとのサバイバル訓練が日常化している現状は否めない。
いざとなったら、蜘蛛でも蜻蛉でも、なんでも食べまっせ。さすがにティムだけは食わないな。食うとこもないし。ダストツー。
「あ、エマお姉ちゃあん。可愛いペット飼ってもいい?」
「あらあら、ようやくアンソニーにも生き物を慈しむ気持ちが湧いてきたのかしら。お姉ちゃん、嬉しいわ。今のままだと、生き物を見ると何も考えずに即座に全て仕留めるような大人になりそうで、とっても心配だったのよ。お爺ちゃんがよくそういう事を言っていたの。いわゆる、鬼の狩人の話ね」
なんですか、それ。怖い。しかし、家族が内心俺の事をどう思っているのかよくわかる、有意義な日だったな。ちょっと泣いてもいいかしら。まあ。とりあえずダストスリー。さて、次は。父は作業場で鋤の修理をしていた。
「お父さん、ペット飼ってもいい?」
「ペット?」
「叔父さんも了承済みだよ」
これは嘘じゃない。
「そうか、狩りに役立つ奴かな。構わんよ」
お父さんの脳裏にあるのは、狼の子供か鷹の雛だろう。
人間の子供の場合、よく仲良くなったりする事もあるからだ。よっしゃ、大黒柱からの了承はいただけたぜ。これでダストフォー。
普通ならこれで完全にチェックメイトだが、この世界でも、こういう事に関しては、やはり母親というものの権限は強い。
それに母は、どうせ買うなら山羊とか鶏を飼いたいのだ。村で飼っている人達を羨ましがっていたが、俺が肉は獲りまくってくるので、今のところその話はない。鶏なんかは卵が大変素敵なのですけれど。たまに肉なんかと交換で俺がもらってくるしね。
「ねえ、父さん。母さんは?」
「ん? 畑で仕事をしているんじゃないのか? もうそろそろ止めさせないといかんのだが」
「へえ?」
なんだろうな。とにかく行ってみたら、そこには驚愕の光景が広がっていた。ティム達が畑で草むしりを手伝っていたのだ。
「お、お前ら、一体ここで何をしているのさ!」
「マイロード、お母上は身重だ。これからは我らが御母堂様をお守りし、お助けします」
そ、そ、そんな事に何故! だが母さんは笑っていた。相変わらず、肝が太いな。
「この子達、あんたが拾ってきたんですって? 私を見かけたら、いきなり全員で平伏するものだから驚いちゃったわよ。よくできた子達ねえ。ところで、これは一体何なのかしら?」
ここで一番偉い人を見抜くのか、ティム軍団よ。そして、本当の事を言おうか激しく迷った。まさか、あのゴブリン軍団の幹部ですと、今言ったなら追い出されるかも!
「そ、それよりさ、母さん。赤ちゃん、生まれるの⁉」
「まだ先よー」
「僕、可愛い妹がいいなあ」
「そうねえ。頑張ってみるわ」
母上、無茶はおよしなせえ。今からではちょっと手遅れであります。それでも俺は可愛い妹の幻視に囚われて、母親のお腹にぺったりと張り付いて離れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる