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第二章 王都へ
2-5 伯爵の館
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そして馬車の中で、うちのお姉ちゃんが溢している。
「ああーあ。スカーレットちゃんとお別れかあ。あたし、彼女の事が大好きだったのに」
「僕だってそうさ。あんな人がお姉ちゃんだったらよかったなあ」
「うん。エマお姉ちゃんも好きだけどさ」
「うちはいい兄弟多いもんな」
ミョンデ姉、あんたが一番みそっかすなんだが、まあ俺としては一番付き合いやすい姉弟でもある。
今回なんて、この姉と一緒でなければ、ここまでやりたい放題にはできなかったもんさ。ある意味で、俺達は一番いいコンビなのだ。これでも六歳児と一緒だから、この二歳児も割と野放しでOKという事情もあるのだから。
「さあ、お前達。これから私のうちだ。私の家族はお前の本性なんか知らないからな。お手柔らかに頼むぞ、アンソニー」
「そうですか。まあそれもいいでしょう」
生憎と伯爵には幸運のスキルはプレゼントしていないので、その名を唱えても何も起きないがね。
「大丈夫だよ、伯爵。アンソニーったら猫被りの名人なんだもの。本性がすぐバレるのが玉に瑕だけど」
「ちぇっ、とりあえずはいけるところまでは、それでいきましょうか。無理だったらゴメン」
「いや、頼むぞ。本当にな。少なくとも、王の御前ではな」
「まあ、そのあたりは努力目標といたします。ところで伯爵。晩御飯は何時からでしょうか」
「まさに今の問題はそれね!」
それを聞いて、顔を片手で覆ってしまう伯爵。だって、それだけが楽しみなんだもん。
「ま、まあ、うちの夕食は一般的な貴族の範疇に収まるものではあると自負してはいるが。お前らが相手だと、ちょっと不安はあるな」
「いやいや、収納の特技なんてお持ちで、王国からも信頼が厚そうな伯爵の事ですから~。期待してまっせ~」
「そうだよ。もうずっと、わくわくしているんだからね!」
それを聞いて、うわ~という感じに頭を抱える伯爵。
「王都かあ。もう期待に胸がはち切れそうだぜ」
「そうそう。どんな素敵なお店があるのかなあ」
その辺は持っていき方にあると思うのだ。俺達はたいして金を持っていない。だが、金持ちのスポンサーがそこにいるのだ。
その辺の財布の紐の開いてもらいようは、これかたのやり方一つだと思うの。頑張るつもりではあるのだが、そこは展開一つといったとこだろう。特に国王陛下の出方一つで大きく展開は変わるはず。いい展開になるといいなあ。
そうしているうちにも、伯爵の館が見えてきたようだ。彼の表情を見ているとわかる。なんというか、ホッとしたというか? 一体誰のせいなんだろうな。
なかなか大きな屋敷だな。高めに作られた大きな塀で囲まれて、かなりの大きさだ。特にこっちが幼児なので、巨大な物に映る。
我々幼児から見て、宇宙そのものでさえ、数倍から数十倍は広いもののはずだ。人は体が成長していく度に、相対的に宇宙は狭くなっていくのだ。
なかなか稼いでいるな、この伯爵。さすがは収納持ちか。うん。ここは頑張りどころだな。
そして、屋敷の厳かな正門を潜り、豪勢な館の扉の前に馬車はつけられた。
「へえ、なかなかのものじゃないか、伯爵」
「すごーい、貴族のお屋敷だ。本物の」
いや、ミョンデ姉。あのご領主様の館だって、そうなんだからね。まあ見た目、そうは見えんけどね。
あっちは辺境の小さな町の男爵家。ここは王都の、しかも羽振りの良さそうな伯爵家なのだから。さすがに同列には語れない。
「まあ、うちより大きな屋敷なんていくらでもあるさ」
そう言いつつも、褒められて伯爵も満更でもない雰囲気だったが。
「貴族の屋敷にゴー」
「おー!」
「おいおい、お手柔らかに頼むよ」
そして、馬車は門を抜けて中へと進んでいった。
「お帰りなさい、旦那様」
「ああ、ただいま。アントニオ、留守中特に変わりはなかったかね」
「はあ、平穏そのものでございます」
「それはよかった。よろしくね、アントニオ」
「ただいま、アントニオ」
「ええっ、君たちは一体誰⁉」
いきなり知らない子供達に馴れ馴れしくされて、驚く守衛のおっさん。
「ああ、これこれ、お前達。ああ、この子達は我が家のお客様だ。明日国王陛下のところに連れていかねばならんのだ」
「え、その子達をですか」
それは無謀なんじゃないですがねえ、と言いたそうな顔でこちらを見ているアントニオ。
まあ無理もないわな。礼儀作法も挨拶も碌にできなそうな餓鬼が二人だ。まあ、ミョンデ姉の方は、まさにその通りなのだが。こっちは地球で大学を出て就職し、向こうの人間の数々のスキルを手にした。
社会人経験だってあるから、丁寧な口の利き方はできるのだ。ああ、せっかくいい会社にも入れたのにな。あれじゃすべてが台無しだったわ。こちらでも貴族の礼儀などは、そこの伯爵などから拝借済みなのだ。
「ねえ、伯爵。ミョンデ姉も明日連れていくの?」
「ん? うむ、どうしようかのう」
ミョンデ姉を連れていくのは心配なのだが、俺の手綱を握れる人間を置いていってしまうのも不安が残るのだろう。
「じゃあ、一緒に行くっていう事でどう? 案外、うちのお姉ちゃんは抜け目がないから大丈夫じゃないかなと思うんだけど」
俺はチラっと彼女を見たが、ドヤ顔でこう返してきた。
「まあ、後ろで大人しくして、同じように振る舞っておけばいいのでしょう? せっかくだから王宮へ行きたいわあ。それにアンソニーを一人で野放しにしないよう、お母さんから言われているんだし」
あら、案外と親から信用なかったのね、俺。伯爵もそれには大きく頷いた。もう傷ついちゃうなあ。
「ああーあ。スカーレットちゃんとお別れかあ。あたし、彼女の事が大好きだったのに」
「僕だってそうさ。あんな人がお姉ちゃんだったらよかったなあ」
「うん。エマお姉ちゃんも好きだけどさ」
「うちはいい兄弟多いもんな」
ミョンデ姉、あんたが一番みそっかすなんだが、まあ俺としては一番付き合いやすい姉弟でもある。
今回なんて、この姉と一緒でなければ、ここまでやりたい放題にはできなかったもんさ。ある意味で、俺達は一番いいコンビなのだ。これでも六歳児と一緒だから、この二歳児も割と野放しでOKという事情もあるのだから。
「さあ、お前達。これから私のうちだ。私の家族はお前の本性なんか知らないからな。お手柔らかに頼むぞ、アンソニー」
「そうですか。まあそれもいいでしょう」
生憎と伯爵には幸運のスキルはプレゼントしていないので、その名を唱えても何も起きないがね。
「大丈夫だよ、伯爵。アンソニーったら猫被りの名人なんだもの。本性がすぐバレるのが玉に瑕だけど」
「ちぇっ、とりあえずはいけるところまでは、それでいきましょうか。無理だったらゴメン」
「いや、頼むぞ。本当にな。少なくとも、王の御前ではな」
「まあ、そのあたりは努力目標といたします。ところで伯爵。晩御飯は何時からでしょうか」
「まさに今の問題はそれね!」
それを聞いて、顔を片手で覆ってしまう伯爵。だって、それだけが楽しみなんだもん。
「ま、まあ、うちの夕食は一般的な貴族の範疇に収まるものではあると自負してはいるが。お前らが相手だと、ちょっと不安はあるな」
「いやいや、収納の特技なんてお持ちで、王国からも信頼が厚そうな伯爵の事ですから~。期待してまっせ~」
「そうだよ。もうずっと、わくわくしているんだからね!」
それを聞いて、うわ~という感じに頭を抱える伯爵。
「王都かあ。もう期待に胸がはち切れそうだぜ」
「そうそう。どんな素敵なお店があるのかなあ」
その辺は持っていき方にあると思うのだ。俺達はたいして金を持っていない。だが、金持ちのスポンサーがそこにいるのだ。
その辺の財布の紐の開いてもらいようは、これかたのやり方一つだと思うの。頑張るつもりではあるのだが、そこは展開一つといったとこだろう。特に国王陛下の出方一つで大きく展開は変わるはず。いい展開になるといいなあ。
そうしているうちにも、伯爵の館が見えてきたようだ。彼の表情を見ているとわかる。なんというか、ホッとしたというか? 一体誰のせいなんだろうな。
なかなか大きな屋敷だな。高めに作られた大きな塀で囲まれて、かなりの大きさだ。特にこっちが幼児なので、巨大な物に映る。
我々幼児から見て、宇宙そのものでさえ、数倍から数十倍は広いもののはずだ。人は体が成長していく度に、相対的に宇宙は狭くなっていくのだ。
なかなか稼いでいるな、この伯爵。さすがは収納持ちか。うん。ここは頑張りどころだな。
そして、屋敷の厳かな正門を潜り、豪勢な館の扉の前に馬車はつけられた。
「へえ、なかなかのものじゃないか、伯爵」
「すごーい、貴族のお屋敷だ。本物の」
いや、ミョンデ姉。あのご領主様の館だって、そうなんだからね。まあ見た目、そうは見えんけどね。
あっちは辺境の小さな町の男爵家。ここは王都の、しかも羽振りの良さそうな伯爵家なのだから。さすがに同列には語れない。
「まあ、うちより大きな屋敷なんていくらでもあるさ」
そう言いつつも、褒められて伯爵も満更でもない雰囲気だったが。
「貴族の屋敷にゴー」
「おー!」
「おいおい、お手柔らかに頼むよ」
そして、馬車は門を抜けて中へと進んでいった。
「お帰りなさい、旦那様」
「ああ、ただいま。アントニオ、留守中特に変わりはなかったかね」
「はあ、平穏そのものでございます」
「それはよかった。よろしくね、アントニオ」
「ただいま、アントニオ」
「ええっ、君たちは一体誰⁉」
いきなり知らない子供達に馴れ馴れしくされて、驚く守衛のおっさん。
「ああ、これこれ、お前達。ああ、この子達は我が家のお客様だ。明日国王陛下のところに連れていかねばならんのだ」
「え、その子達をですか」
それは無謀なんじゃないですがねえ、と言いたそうな顔でこちらを見ているアントニオ。
まあ無理もないわな。礼儀作法も挨拶も碌にできなそうな餓鬼が二人だ。まあ、ミョンデ姉の方は、まさにその通りなのだが。こっちは地球で大学を出て就職し、向こうの人間の数々のスキルを手にした。
社会人経験だってあるから、丁寧な口の利き方はできるのだ。ああ、せっかくいい会社にも入れたのにな。あれじゃすべてが台無しだったわ。こちらでも貴族の礼儀などは、そこの伯爵などから拝借済みなのだ。
「ねえ、伯爵。ミョンデ姉も明日連れていくの?」
「ん? うむ、どうしようかのう」
ミョンデ姉を連れていくのは心配なのだが、俺の手綱を握れる人間を置いていってしまうのも不安が残るのだろう。
「じゃあ、一緒に行くっていう事でどう? 案外、うちのお姉ちゃんは抜け目がないから大丈夫じゃないかなと思うんだけど」
俺はチラっと彼女を見たが、ドヤ顔でこう返してきた。
「まあ、後ろで大人しくして、同じように振る舞っておけばいいのでしょう? せっかくだから王宮へ行きたいわあ。それにアンソニーを一人で野放しにしないよう、お母さんから言われているんだし」
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