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第二章 王都へ
2-6 どうか自分の家のようにお寛ぎください
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おお、塀の中もゴージャスだなあ。石畳の馬車道が、噴水のある丸いロータリーに続いている。俺、こういうの凄く好きなんだよねえ。
いつか、このような噴水のある家に住みたいって思っていた。馬車も趣があっていいよなあ。この世界最速は、うちの新ロバたちかもしれないけれど。
イタリア製の人工石材の奴で、地球の金にしてどれくらいしたのかなあ。ちょっとした奴だと軽く三百万円くらいはしたはず。
このサイズなら多分一千万円はくだらないぜ。しかも、こいつはそんな安物じゃない。この屋敷の看板みたいな物だからな。立派な石材と衣装を凝らされた噴水の形は芸術品といってもいい。
立派な職人が腕によりをかけて設えた王侯貴族御用達の品だ。噴水口に仕立てられた半裸の女性の像は有名な女神を象ったものだ。神父様の本で見た事がある。
その脇には真っ赤な花が咲き誇る生垣のようになっていて、その向こうには芝生や花壇が広がる庭園なのではないだろうか。乗馬ができるスペースとかもあるかもしれないな。
「伯爵、お屋敷も、なかなかのものじゃないですか」
「これなら御飯も期待できそう」
「ま、まあそれはよかった」
玄関口に着いた俺達を、執事さんらしき比較的まだ若い方が出迎えてくれた。年の頃はまだ三十歳を少し超えたあたりのところか。
髪も服装もきちんと整えられ、引き締まった表情、しかし厳つすぎるような事はない、むしろ美青年といった趣だ。なかなか好感がもてる。伯爵の奴、なかなかいい趣味をしているじゃないか。
「お帰りなさいませ、ご主人様。おや、そちらのお子様方は?」
「アンソニー・ブックフィールドです」
「ミョンデ・ブックフィールドです」
「そうでございますか。ようこそ、このブルームン伯爵家へ。私は執事のアルーノです」
彼にとっては、俺達が何者かはどうでもいいらしい。
主人が連れ帰ったなら、このブルームン伯爵にとっては賓客に違いないのだから。その執事としてのスキル、ぜひとも欲しいものだな。
「やあ、アルーノ。ただいま。ちょっと、お客様を連れてきたから、よろしく頼むよ」
「かしこまりました」
なんと、彼の方から手を繋いでくれた。俺の方が幼いのを理解できるらしい。なかなかの人材だなあ。
もう片手でミョンデ姉の手も繋いで一緒に連れていく。執事見習いらしき少年達が荷物を運んでいく。俺達は身軽なものだけどね。
うん、彼のスキルはなかなかのものだった。
「執事の心得」
上級貴族の執事として遜色のない、それに相応しいスキルのパッケージ。
「出迎えの笑顔」
主を最高の笑顔で出迎えができるスキル。最高に主人を尊敬する人間だけが習得できる。
うん、愛されていてよかったね、ブルームン伯爵。俺は最高の主抜きで習得しちゃったけれど。いつの日か、この俺もそのような主と出会う事があるのだろうか。
できれば、一生自由人でいたいものなのだが。とりあえずは、俺自身が最高の主を目指さないといけない状況にある。うちの執事達(ばあや含む)は主の躾に容赦がないからな。
そして、彼は俺達を素晴らしくゴージャスな部屋へ案内してくれた。
「自分の家のようにお寛ぎください。お食事の準備が整いましたなら、お呼びいたしますので」
笑顔で退出した彼を見送り、俺達はお言葉に甘えて思いっきりはしゃいだ。
「凄いよ、アンソニー。見て見て、天蓋付きベッドだよ」
「そうだね。それ、いつもミョンデ姉がお話で聞いて、うっとりしている奴じゃない。でも、そっちの書斎用の椅子も素敵だし、あっちのサイドボードも~」
「もう、アンソニーったら、爺臭いよ~。それより、あのカーテンが素敵!」
それから、二人してベッドに飛び乗り、飛び跳ね、思う様に騒いだ。すると、ドアを開けて伯爵が溜息交じりに声掛けをしてくれる。
「やれやれ、お前達。我が家では別に構わないが、明日の王宮では大人しくしてくれよ。いや、頼むよ、本当に」
「はーい!」
そして伯爵についていき、ディナーへと招待された。
「「わあ~!」」
そこにあったのは、なんといったらいいのか、いやよそう。一言で言い表せた。そう、ご馳走の山である。だから、つい言ってしまった。
「伯爵! 奮発したね」
その言い草に、思わず顔が引き攣る伯爵。
そして目を見開いた伯爵夫人らしきお方と、顔を背け口に手を当てて笑っている御令嬢、そして、また同じく笑いを堪えて軽く震えている執事君。そして、やたらと咳を連発する伯爵がいる。
「もう、失礼だよ、アンソニー。伯爵だって、好き好んであたしらみたいな平民の子供を厚遇しているわけじゃないんだよ。すべては明日の王様との会見のため、臣下として恥を忍んでの行動なんだから。
明日の夕食はきっと固くなったパンと残り物のスープだけなのよ。このディナーは命懸けで味わって食べないといけないものなの!」
「ええいっ。お前ら、いい加減にしておけ。子供は四の五の言わずに御飯を食べて大きくなればいいんだ」
「二歳でこれじゃ、まだ足りなかったかな」
そして、とうとう御令嬢が笑いを堪え切れなくなって体を二つ折りにして爆笑しだした。
「嫌だ、もう。おっかしい。アルーノから聞いていて、まさかと思ったのに。いやあ、二人とも最高。我が家始まって以来の賓客よー」
「もう、およしなさいな、ミスリア。さすが、王宮から密使が来るだけの事はありますわね、アンソニー。でも子供は素直が一番ですから」
「み、密使?」
奥方は頷くと、にっこりとほほ笑み、優雅にポーズをつけながら楽し気に言った。
「ええ。少し厄介な客が行くがよろしく頼みます。まあ、なんだかんだ言って子供ですので、それが一番厄介なのですが、と。国王陛下直筆の手紙でございましたわ。おっほっほっほ」
楽しそうだね、おばさん!
やべえな、国王陛下。それはそれとして、このディナーだけは楽しむ所存だぜ! 特にミョンデ姉が。
いつか、このような噴水のある家に住みたいって思っていた。馬車も趣があっていいよなあ。この世界最速は、うちの新ロバたちかもしれないけれど。
イタリア製の人工石材の奴で、地球の金にしてどれくらいしたのかなあ。ちょっとした奴だと軽く三百万円くらいはしたはず。
このサイズなら多分一千万円はくだらないぜ。しかも、こいつはそんな安物じゃない。この屋敷の看板みたいな物だからな。立派な石材と衣装を凝らされた噴水の形は芸術品といってもいい。
立派な職人が腕によりをかけて設えた王侯貴族御用達の品だ。噴水口に仕立てられた半裸の女性の像は有名な女神を象ったものだ。神父様の本で見た事がある。
その脇には真っ赤な花が咲き誇る生垣のようになっていて、その向こうには芝生や花壇が広がる庭園なのではないだろうか。乗馬ができるスペースとかもあるかもしれないな。
「伯爵、お屋敷も、なかなかのものじゃないですか」
「これなら御飯も期待できそう」
「ま、まあそれはよかった」
玄関口に着いた俺達を、執事さんらしき比較的まだ若い方が出迎えてくれた。年の頃はまだ三十歳を少し超えたあたりのところか。
髪も服装もきちんと整えられ、引き締まった表情、しかし厳つすぎるような事はない、むしろ美青年といった趣だ。なかなか好感がもてる。伯爵の奴、なかなかいい趣味をしているじゃないか。
「お帰りなさいませ、ご主人様。おや、そちらのお子様方は?」
「アンソニー・ブックフィールドです」
「ミョンデ・ブックフィールドです」
「そうでございますか。ようこそ、このブルームン伯爵家へ。私は執事のアルーノです」
彼にとっては、俺達が何者かはどうでもいいらしい。
主人が連れ帰ったなら、このブルームン伯爵にとっては賓客に違いないのだから。その執事としてのスキル、ぜひとも欲しいものだな。
「やあ、アルーノ。ただいま。ちょっと、お客様を連れてきたから、よろしく頼むよ」
「かしこまりました」
なんと、彼の方から手を繋いでくれた。俺の方が幼いのを理解できるらしい。なかなかの人材だなあ。
もう片手でミョンデ姉の手も繋いで一緒に連れていく。執事見習いらしき少年達が荷物を運んでいく。俺達は身軽なものだけどね。
うん、彼のスキルはなかなかのものだった。
「執事の心得」
上級貴族の執事として遜色のない、それに相応しいスキルのパッケージ。
「出迎えの笑顔」
主を最高の笑顔で出迎えができるスキル。最高に主人を尊敬する人間だけが習得できる。
うん、愛されていてよかったね、ブルームン伯爵。俺は最高の主抜きで習得しちゃったけれど。いつの日か、この俺もそのような主と出会う事があるのだろうか。
できれば、一生自由人でいたいものなのだが。とりあえずは、俺自身が最高の主を目指さないといけない状況にある。うちの執事達(ばあや含む)は主の躾に容赦がないからな。
そして、彼は俺達を素晴らしくゴージャスな部屋へ案内してくれた。
「自分の家のようにお寛ぎください。お食事の準備が整いましたなら、お呼びいたしますので」
笑顔で退出した彼を見送り、俺達はお言葉に甘えて思いっきりはしゃいだ。
「凄いよ、アンソニー。見て見て、天蓋付きベッドだよ」
「そうだね。それ、いつもミョンデ姉がお話で聞いて、うっとりしている奴じゃない。でも、そっちの書斎用の椅子も素敵だし、あっちのサイドボードも~」
「もう、アンソニーったら、爺臭いよ~。それより、あのカーテンが素敵!」
それから、二人してベッドに飛び乗り、飛び跳ね、思う様に騒いだ。すると、ドアを開けて伯爵が溜息交じりに声掛けをしてくれる。
「やれやれ、お前達。我が家では別に構わないが、明日の王宮では大人しくしてくれよ。いや、頼むよ、本当に」
「はーい!」
そして伯爵についていき、ディナーへと招待された。
「「わあ~!」」
そこにあったのは、なんといったらいいのか、いやよそう。一言で言い表せた。そう、ご馳走の山である。だから、つい言ってしまった。
「伯爵! 奮発したね」
その言い草に、思わず顔が引き攣る伯爵。
そして目を見開いた伯爵夫人らしきお方と、顔を背け口に手を当てて笑っている御令嬢、そして、また同じく笑いを堪えて軽く震えている執事君。そして、やたらと咳を連発する伯爵がいる。
「もう、失礼だよ、アンソニー。伯爵だって、好き好んであたしらみたいな平民の子供を厚遇しているわけじゃないんだよ。すべては明日の王様との会見のため、臣下として恥を忍んでの行動なんだから。
明日の夕食はきっと固くなったパンと残り物のスープだけなのよ。このディナーは命懸けで味わって食べないといけないものなの!」
「ええいっ。お前ら、いい加減にしておけ。子供は四の五の言わずに御飯を食べて大きくなればいいんだ」
「二歳でこれじゃ、まだ足りなかったかな」
そして、とうとう御令嬢が笑いを堪え切れなくなって体を二つ折りにして爆笑しだした。
「嫌だ、もう。おっかしい。アルーノから聞いていて、まさかと思ったのに。いやあ、二人とも最高。我が家始まって以来の賓客よー」
「もう、およしなさいな、ミスリア。さすが、王宮から密使が来るだけの事はありますわね、アンソニー。でも子供は素直が一番ですから」
「み、密使?」
奥方は頷くと、にっこりとほほ笑み、優雅にポーズをつけながら楽し気に言った。
「ええ。少し厄介な客が行くがよろしく頼みます。まあ、なんだかんだ言って子供ですので、それが一番厄介なのですが、と。国王陛下直筆の手紙でございましたわ。おっほっほっほ」
楽しそうだね、おばさん!
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