DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希

文字の大きさ
59 / 66
第二章 王都へ

2-6 どうか自分の家のようにお寛ぎください

しおりを挟む
 おお、塀の中もゴージャスだなあ。石畳の馬車道が、噴水のある丸いロータリーに続いている。俺、こういうの凄く好きなんだよねえ。

 いつか、このような噴水のある家に住みたいって思っていた。馬車も趣があっていいよなあ。この世界最速は、うちの新ロバたちかもしれないけれど。

 イタリア製の人工石材の奴で、地球の金にしてどれくらいしたのかなあ。ちょっとした奴だと軽く三百万円くらいはしたはず。

 このサイズなら多分一千万円はくだらないぜ。しかも、こいつはそんな安物じゃない。この屋敷の看板みたいな物だからな。立派な石材と衣装を凝らされた噴水の形は芸術品といってもいい。

 立派な職人が腕によりをかけて設えた王侯貴族御用達の品だ。噴水口に仕立てられた半裸の女性の像は有名な女神を象ったものだ。神父様の本で見た事がある。

 その脇には真っ赤な花が咲き誇る生垣のようになっていて、その向こうには芝生や花壇が広がる庭園なのではないだろうか。乗馬ができるスペースとかもあるかもしれないな。

「伯爵、お屋敷も、なかなかのものじゃないですか」
「これなら御飯も期待できそう」

「ま、まあそれはよかった」
 玄関口に着いた俺達を、執事さんらしき比較的まだ若い方が出迎えてくれた。年の頃はまだ三十歳を少し超えたあたりのところか。

 髪も服装もきちんと整えられ、引き締まった表情、しかし厳つすぎるような事はない、むしろ美青年といった趣だ。なかなか好感がもてる。伯爵の奴、なかなかいい趣味をしているじゃないか。

「お帰りなさいませ、ご主人様。おや、そちらのお子様方は?」
「アンソニー・ブックフィールドです」
「ミョンデ・ブックフィールドです」

「そうでございますか。ようこそ、このブルームン伯爵家へ。私は執事のアルーノです」
 彼にとっては、俺達が何者かはどうでもいいらしい。

 主人が連れ帰ったなら、このブルームン伯爵にとっては賓客に違いないのだから。その執事としてのスキル、ぜひとも欲しいものだな。

「やあ、アルーノ。ただいま。ちょっと、お客様を連れてきたから、よろしく頼むよ」
「かしこまりました」

 なんと、彼の方から手を繋いでくれた。俺の方が幼いのを理解できるらしい。なかなかの人材だなあ。

 もう片手でミョンデ姉の手も繋いで一緒に連れていく。執事見習いらしき少年達が荷物を運んでいく。俺達は身軽なものだけどね。

 うん、彼のスキルはなかなかのものだった。
「執事の心得」
 上級貴族の執事として遜色のない、それに相応しいスキルのパッケージ。

「出迎えの笑顔」
 主を最高の笑顔で出迎えができるスキル。最高に主人を尊敬する人間だけが習得できる。

 うん、愛されていてよかったね、ブルームン伯爵。俺は最高の主抜きで習得しちゃったけれど。いつの日か、この俺もそのような主と出会う事があるのだろうか。

 できれば、一生自由人でいたいものなのだが。とりあえずは、俺自身が最高の主を目指さないといけない状況にある。うちの執事達(ばあや含む)は主の躾に容赦がないからな。

 そして、彼は俺達を素晴らしくゴージャスな部屋へ案内してくれた。
「自分の家のようにお寛ぎください。お食事の準備が整いましたなら、お呼びいたしますので」

 笑顔で退出した彼を見送り、俺達はお言葉に甘えて思いっきりはしゃいだ。
「凄いよ、アンソニー。見て見て、天蓋付きベッドだよ」

「そうだね。それ、いつもミョンデ姉がお話で聞いて、うっとりしている奴じゃない。でも、そっちの書斎用の椅子も素敵だし、あっちのサイドボードも~」

「もう、アンソニーったら、爺臭いよ~。それより、あのカーテンが素敵!」
 それから、二人してベッドに飛び乗り、飛び跳ね、思う様に騒いだ。すると、ドアを開けて伯爵が溜息交じりに声掛けをしてくれる。

「やれやれ、お前達。我が家では別に構わないが、明日の王宮では大人しくしてくれよ。いや、頼むよ、本当に」

「はーい!」
 そして伯爵についていき、ディナーへと招待された。

「「わあ~!」」
 そこにあったのは、なんといったらいいのか、いやよそう。一言で言い表せた。そう、ご馳走の山である。だから、つい言ってしまった。

「伯爵! 奮発したね」
 その言い草に、思わず顔が引き攣る伯爵。

 そして目を見開いた伯爵夫人らしきお方と、顔を背け口に手を当てて笑っている御令嬢、そして、また同じく笑いを堪えて軽く震えている執事君。そして、やたらと咳を連発する伯爵がいる。

「もう、失礼だよ、アンソニー。伯爵だって、好き好んであたしらみたいな平民の子供を厚遇しているわけじゃないんだよ。すべては明日の王様との会見のため、臣下として恥を忍んでの行動なんだから。

 明日の夕食はきっと固くなったパンと残り物のスープだけなのよ。このディナーは命懸けで味わって食べないといけないものなの!」

「ええいっ。お前ら、いい加減にしておけ。子供は四の五の言わずに御飯を食べて大きくなればいいんだ」

「二歳でこれじゃ、まだ足りなかったかな」
 そして、とうとう御令嬢が笑いを堪え切れなくなって体を二つ折りにして爆笑しだした。

「嫌だ、もう。おっかしい。アルーノから聞いていて、まさかと思ったのに。いやあ、二人とも最高。我が家始まって以来の賓客よー」

「もう、およしなさいな、ミスリア。さすが、王宮から密使が来るだけの事はありますわね、アンソニー。でも子供は素直が一番ですから」

「み、密使?」
 奥方は頷くと、にっこりとほほ笑み、優雅にポーズをつけながら楽し気に言った。

「ええ。少し厄介な客が行くがよろしく頼みます。まあ、なんだかんだ言って子供ですので、それが一番厄介なのですが、と。国王陛下直筆の手紙でございましたわ。おっほっほっほ」

 楽しそうだね、おばさん!
 やべえな、国王陛下。それはそれとして、このディナーだけは楽しむ所存だぜ! 特にミョンデ姉が。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...