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第二章 王都へ
2-7 待ちに待ったディナー
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「さて、まずは前菜だ。これも美味しそうだなあ」
鳥の蒸した、なんというかさっぱりした部分だな。ささみみたいなものだろうか。
その蛋白さを損なわないような、これまたさっぱりした、それでいて非常に味わい深いソースがかかって味を引き立てている。俺は心してじっくりといただく事にした。そして気がついた。
「む、こいつは」
「どうしたの、アンソニー。やけに勿体つけて食べているね」
自分は、遠慮なくパクパクいっているミョンデ姉。
「これ、今まで食べた事がない鳥だよ。多分、うちの近所にはいない種類なんだな。しかし、とんでもなく素晴らしい肉質だ。どうしよう、姉ちゃん。今からこいつを狩りにいってきてもいいかな」
それを聞いて慌てる伯爵。ナプキンで口を拭くと、フォークで抑えるようにして言ってきた。
「待て待て待て。行くのなら、明日が終わってからにしてくれ。狩場は心当たりがあるので連れていってやるから。今は大人しく飯を食っておれ」
すでに椅子の上に立ち上がって弓を取り出し大興奮の俺を伯爵が諫めた。
「もうアンソニーったら、でも確かにお土産に欲しいよね。家族にも食べさせたいわ」
「任せろ、姉ちゃん。冒険者達からパクったスキルで狩りまくりだぜ」
スキルをパクるという事がまったく理解できていないが、美味しい思いはできそうなので満足そうなミョンデ姉。
「あー、その鳥を絶滅させん程度で頼むぞ。これは、この地方では名高い鳥でアリアーデという名物料理の食材だ。生息地は大体が貴族領の、普通の人は入れない場所にあるから、許可がないと狩猟はできん。この王都周辺ではいくつか心当たりがある。頼んでやるから」
「それを聞いて安心して食べられますよ。ではお替りを五皿ほどお願いします」
「あ、あたしもお替り!」
給仕をしてくれる使用人の人は呆れていたが、苦笑する伯爵が持ってくるように指示を出した。
「まったく、お前はぶれない奴だな」
お替りが届くまではじっくり食っていたが、届いたとたんに猛速で平らげていった。それでも、しっかりと味わいながらだから何も問題はない。
お次はサラダ。おお、見たことない野菜類だが、見た目から判断して地球の知識から類推できる。
体をアルカリ性にするサラダの機能的な役割、性能としては申し分なさそうだ。十分摂っておかないといけないな。幼児の場合どうなのかはよくわからないが。
そしてコースは次のステージに移っていく。
まずはスープから!
俺は優雅に音を立てずに静かにスープを一口含む。俺は高級なレストランに慣れているのでいいが、ミョンデ姉はマナーに失敗しているようだ。いや、農民の子が貴族同等のマナーを身に着けている事の方が異様なのだが。しかも、俺はまだ二歳だ。
「お前、そんなマナーをどこで学んでくるんだ?」
むしろ、伯爵は俺に対して呆れて見ていた。
あの僻地の村の様子を知っているしな。それに、うちの母親の田舎者ぶりも知っているのだ。教えてくれる人なんか知っているわけがない。ミョンデ姉なんかマナーなんか拘っていなしし。だが、天真爛漫で卑しい感じではないので、伯爵の家人からも微笑ましくみてもらっているようだ。
「ふふ。独学にございますれば。それよりも、これはまた素晴らしいスープでございますね!」
「ほお、さすがは世界一食い意地の張った幼児だけあるな。確かに、うちのスープは評判なのだ。あれほど食い意地の張ったお前が、そこまで味わっているのを見たのは初めてだよ」
さすがにこれは再現できる気はしない。だが、レッツチャレンジ! ここの料理長のスキルもパクらせていただこう。いや、ここは堂々と伯爵に申し込んで。こういう時はスキルハンターの力がバレているのは却って便利だよな。
スープのお替りはやめておこう。水分のせいで水腹になり、固形物がたくさん入らなくなる恐れがある。その辺が理解できたものか、伯爵も呆れ顔だった。
「次はパンか。こいつは素晴らしいな。焼きたてで柔らかい」
じっくりと齧り付いて味わう俺。またか、という目をする伯爵。
「本当だあ、こんなの食べた事がないよ」
俺は大きく頷いて、また一口食べた。
「そして、この香り。これはもう麦からして違いますね。うちの村でとれるような麦じゃあない。それに焼き方も最高だ。いいなあ、いいパン焼き釜を使っているんですね」
「あ、ああ。これは最高品種の麦でね。普通の麦の値段の十倍以上はするものだ。お前、本当によくわかるな」
「一応、農民の子ですから」
嘘だけどね。
休日には、かなり本格的なオーブンでパンを焼いたりしたのだが、本格パン焼き釜には敵わないのは経験上、よく知っている。そういう事を売りにしているお店にはよく行ったから舌が覚えているだけだ。
その後の魚や肉のコースも大満足の品だった。特に魚は遠方からだが、伯爵自ら収納を持って仕入れてくるため、特別な料理らしい。
「伯爵、このお肉なのですが」
「わかった、わかった。そいつの狩りも回ろう。これも、少し特別な獲物でなあ」
「ありがとうございます。確実に仕留めて御覧にいれますから。ついでにソースのレシピと材料もお願いいたします」
「わかったわかった。しかし、やはり二歳児の台詞じゃないな。まあ今更なのだが」
そして、最後に俺を驚かせたもの。それはデザートのアイスクリームだ。これは‥…。
「伯爵、これは何かの魔導具で?」
「いや、そのような魔道具などはない。これは、うちの料理人のスキルで、あ」
少し口が滑ったかなという感じの伯爵。
「できれば、それもいただいて帰りたいものです」
「わかったわかった。ただし、出どころは内緒にしてくれよ」
「よし、これもお替りだあ!」
そして、すかさず叫ぶミョンデ姉。
「よしなよ、お姉ちゃん」
「なんでよー、珍しいわね」
「そいつは俺達幼児がお替りすると、お腹が痛くなる代物だからさ」
「えー、そうなのー」
「安心しなよ、レシピとスキルと材料は全部いただいて帰るつもりだからさ」
「お前、こいつは初めて食うのだろう? 何故わかるのだ」
最後まで伯爵を呆れさせて、俺としても大満足なディナーだった。
鳥の蒸した、なんというかさっぱりした部分だな。ささみみたいなものだろうか。
その蛋白さを損なわないような、これまたさっぱりした、それでいて非常に味わい深いソースがかかって味を引き立てている。俺は心してじっくりといただく事にした。そして気がついた。
「む、こいつは」
「どうしたの、アンソニー。やけに勿体つけて食べているね」
自分は、遠慮なくパクパクいっているミョンデ姉。
「これ、今まで食べた事がない鳥だよ。多分、うちの近所にはいない種類なんだな。しかし、とんでもなく素晴らしい肉質だ。どうしよう、姉ちゃん。今からこいつを狩りにいってきてもいいかな」
それを聞いて慌てる伯爵。ナプキンで口を拭くと、フォークで抑えるようにして言ってきた。
「待て待て待て。行くのなら、明日が終わってからにしてくれ。狩場は心当たりがあるので連れていってやるから。今は大人しく飯を食っておれ」
すでに椅子の上に立ち上がって弓を取り出し大興奮の俺を伯爵が諫めた。
「もうアンソニーったら、でも確かにお土産に欲しいよね。家族にも食べさせたいわ」
「任せろ、姉ちゃん。冒険者達からパクったスキルで狩りまくりだぜ」
スキルをパクるという事がまったく理解できていないが、美味しい思いはできそうなので満足そうなミョンデ姉。
「あー、その鳥を絶滅させん程度で頼むぞ。これは、この地方では名高い鳥でアリアーデという名物料理の食材だ。生息地は大体が貴族領の、普通の人は入れない場所にあるから、許可がないと狩猟はできん。この王都周辺ではいくつか心当たりがある。頼んでやるから」
「それを聞いて安心して食べられますよ。ではお替りを五皿ほどお願いします」
「あ、あたしもお替り!」
給仕をしてくれる使用人の人は呆れていたが、苦笑する伯爵が持ってくるように指示を出した。
「まったく、お前はぶれない奴だな」
お替りが届くまではじっくり食っていたが、届いたとたんに猛速で平らげていった。それでも、しっかりと味わいながらだから何も問題はない。
お次はサラダ。おお、見たことない野菜類だが、見た目から判断して地球の知識から類推できる。
体をアルカリ性にするサラダの機能的な役割、性能としては申し分なさそうだ。十分摂っておかないといけないな。幼児の場合どうなのかはよくわからないが。
そしてコースは次のステージに移っていく。
まずはスープから!
俺は優雅に音を立てずに静かにスープを一口含む。俺は高級なレストランに慣れているのでいいが、ミョンデ姉はマナーに失敗しているようだ。いや、農民の子が貴族同等のマナーを身に着けている事の方が異様なのだが。しかも、俺はまだ二歳だ。
「お前、そんなマナーをどこで学んでくるんだ?」
むしろ、伯爵は俺に対して呆れて見ていた。
あの僻地の村の様子を知っているしな。それに、うちの母親の田舎者ぶりも知っているのだ。教えてくれる人なんか知っているわけがない。ミョンデ姉なんかマナーなんか拘っていなしし。だが、天真爛漫で卑しい感じではないので、伯爵の家人からも微笑ましくみてもらっているようだ。
「ふふ。独学にございますれば。それよりも、これはまた素晴らしいスープでございますね!」
「ほお、さすがは世界一食い意地の張った幼児だけあるな。確かに、うちのスープは評判なのだ。あれほど食い意地の張ったお前が、そこまで味わっているのを見たのは初めてだよ」
さすがにこれは再現できる気はしない。だが、レッツチャレンジ! ここの料理長のスキルもパクらせていただこう。いや、ここは堂々と伯爵に申し込んで。こういう時はスキルハンターの力がバレているのは却って便利だよな。
スープのお替りはやめておこう。水分のせいで水腹になり、固形物がたくさん入らなくなる恐れがある。その辺が理解できたものか、伯爵も呆れ顔だった。
「次はパンか。こいつは素晴らしいな。焼きたてで柔らかい」
じっくりと齧り付いて味わう俺。またか、という目をする伯爵。
「本当だあ、こんなの食べた事がないよ」
俺は大きく頷いて、また一口食べた。
「そして、この香り。これはもう麦からして違いますね。うちの村でとれるような麦じゃあない。それに焼き方も最高だ。いいなあ、いいパン焼き釜を使っているんですね」
「あ、ああ。これは最高品種の麦でね。普通の麦の値段の十倍以上はするものだ。お前、本当によくわかるな」
「一応、農民の子ですから」
嘘だけどね。
休日には、かなり本格的なオーブンでパンを焼いたりしたのだが、本格パン焼き釜には敵わないのは経験上、よく知っている。そういう事を売りにしているお店にはよく行ったから舌が覚えているだけだ。
その後の魚や肉のコースも大満足の品だった。特に魚は遠方からだが、伯爵自ら収納を持って仕入れてくるため、特別な料理らしい。
「伯爵、このお肉なのですが」
「わかった、わかった。そいつの狩りも回ろう。これも、少し特別な獲物でなあ」
「ありがとうございます。確実に仕留めて御覧にいれますから。ついでにソースのレシピと材料もお願いいたします」
「わかったわかった。しかし、やはり二歳児の台詞じゃないな。まあ今更なのだが」
そして、最後に俺を驚かせたもの。それはデザートのアイスクリームだ。これは‥…。
「伯爵、これは何かの魔導具で?」
「いや、そのような魔道具などはない。これは、うちの料理人のスキルで、あ」
少し口が滑ったかなという感じの伯爵。
「できれば、それもいただいて帰りたいものです」
「わかったわかった。ただし、出どころは内緒にしてくれよ」
「よし、これもお替りだあ!」
そして、すかさず叫ぶミョンデ姉。
「よしなよ、お姉ちゃん」
「なんでよー、珍しいわね」
「そいつは俺達幼児がお替りすると、お腹が痛くなる代物だからさ」
「えー、そうなのー」
「安心しなよ、レシピとスキルと材料は全部いただいて帰るつもりだからさ」
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最後まで伯爵を呆れさせて、俺としても大満足なディナーだった。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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