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第一章 孤独の果てに
1-14 平原の国々
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「私達の国アーデルセン王国は、かつて平原の盟主と呼ばれていた国でした」
アリエスは、いきなりそのような荘厳なお話を始めてくれた。
「かつて?」
「はい、あくまで『かつて』のお話です。
昔昔、大いなる災いの時代、人々は悪逆なる魔神の元、蹂躙されておりました。
ですが、心ある者達は勇気をもって立ち上がり、人々を纏め叫びました。
『今立ち上がらずにいつ立ち上がるというのか、このまま人が滅びてしまってよいのか。
力は及ばずとも、心では負けるな。勇気を振り絞って戦うのだ』と」
今、ちょっと嫌なキーワード来たね。
この世界の魔神とは、暗黒邪神みたいな魔王のような存在?
この魔神という二つ名を持つ俺が、冒険者などから一体どれくらい嫌われていたのかよくわかるエピソードじゃないの。
あいつらあ、お情けで一人も殺さずにおいてやったというのに、なんという恩知らずな事か。
冒険者ども、手前らの血の色は何色だ。
「そして広大な範囲から集まった人々は多大な犠牲を払い、ついには魔神を打ち破ったのです。
その指導をした彼らも率先して戦いに望み、ただ一人を除いて全て討ち死にしました。
それが我が祖先、当時はただの一介の平民であったウインドシュガルツでした。
それを姓とした王家を起こし、その生き残った人々を纏めて広大な大平原全域に渡る大王国を作り上げたのです。
それくらいして纏めねば、生き残った人々が荒廃した世界で奪い合いと争いごとで滅びてしまいかねなかったので。
だから、今では平原の一王国に過ぎなくなった我が国ですが、多くの国々から尊敬されていました。
今の帝国など、元々はその属領の一つにしか過ぎなかったものなのです」
あ、段々わかってきちゃった。
属領として支配されていた劣等感というか、そういうもので下から上を羨望と暗い怨念を綯い交ぜたようなどろどろとした自分でもどうにもしようがないようなドス黒い感情で持って見上げていた方々が、今更ながら反旗を翻したというか、ついにやってしまったというか。
こういう事は国家だけでなく、個人でもよくあるものなのだが、実際にやってしまったら洒落にならないという奴なのだ。
だが、それだけではない。
そのかつての平原の覇者とやらに自分達が成り上がろうとしているのに違いあるめえ。
こ、これはもしや『大戦争が始まる序章』に過ぎないのでは。
そう、おそらく今はこの世界における『第一次世界大戦前夜』なのではないだろうか。
こいつはえらい事になったなあ。
その盟主の国の王家が滅ぼされた事件が、地球でいえばあのウイーンあたりで起きた皇太子暗殺事件みたいなものにあたるのだろうか。
そして、それを正当化するための手段として、その生贄として選ばれた王女様方と共にその渦中にあるのが、この俺『魔神様』なのだ。
マズイ。奴らはこれくらい言うだろう。
『我々は世に再び現れた魔神を討伐し、お救いした栄えあるウインドシュガルツ王家の姫君と共に、この世界に再び大いなる安定と平和をもたらす戦いに身を投じる。この帝国に従え』
そしてもしかしたら、地球でその当事者であったドイツと世界の関係とは逆で、この異世界で世界大戦をおっぱじめた奴らが圧倒的なまでに強大なのではないか。
そうでなければ、今この子達がこうも逃げ回ってはいまい。
「ここまで聞いた内容だけでも、非常によくない状況だ。
こりゃあ、奴ら本気の全力で来る。
この魔神呼ばわりされている俺を倒し、君達を手中に収めたのであれば、奴らは平原を平定するために進軍し、各地の王国を配下に組み入れ押し進むだろう。
そしてその後に、文字通り完璧な大帝国を築き上げられるだろう。
奴らの国力はどれくらいあるのだ。
そのような事が可能なのか。
数多くの国が奴らの相手なのだろう」
そしてアリエスはしばし苦悩した風だったが、やがて苦笑いと共にあっさりと頷いた。
些かの逡巡もなく。
おいおい、参ったね。
通りであの連中も凄まじい装備や手練れだったわけだ。
もしや、あのクラスの特殊部隊があちこちに常備されているレベルの国家とかなのか?
「今、平原には帝国や滅ぼされたアーデルセン王国を別として十の国があります。
皆、かつての平原を治めたグランドシュガルツ大王国の一部だった国々です。
強大な力で平原を治めていたグランドシュガルツ大王国も、いつしか分裂して多くの国々に別れていきました。
最大で三十五まであったと思います」
「そこまで強大な国が何故そこまで衰退してしまったのだと?
国力が衰えていたのか」
だが彼女はあっさりと首を横に振った。
「そうではなく、時代が変わった、ただそれだけなのですわ。
昔の対魔神という一つの目的ではなく、それぞれの利益を追求していく流れの中で、大分裂をしてバラバラになってしまうよりも盟主として多くの国家をコントロールするしかないような事態になってしまったのです。
貴族などもそういう風潮であり、王達も無理に人の心を押し止めてまで大王国を維持する事はできませんでした。
もうそういう時代ではないのですから。
まあそのお蔭で長らく平原は小競り合い程度で済ませてきたのです。
もちろんその中で滅ぶ国もあれば、併合されていく国々もありました」
そういうのを国力が衰えたというのでは?
そう思って首を捻ったが、別に大王国自体が衰退していって滅びたわけではなく、分家みたいな感じで暖簾分けしてやって、大連合的にやっていたという事なのだろうか。
運営というか運用というか、そういう物が変更になったみたいな感じなのかね。
アリエスは、いきなりそのような荘厳なお話を始めてくれた。
「かつて?」
「はい、あくまで『かつて』のお話です。
昔昔、大いなる災いの時代、人々は悪逆なる魔神の元、蹂躙されておりました。
ですが、心ある者達は勇気をもって立ち上がり、人々を纏め叫びました。
『今立ち上がらずにいつ立ち上がるというのか、このまま人が滅びてしまってよいのか。
力は及ばずとも、心では負けるな。勇気を振り絞って戦うのだ』と」
今、ちょっと嫌なキーワード来たね。
この世界の魔神とは、暗黒邪神みたいな魔王のような存在?
この魔神という二つ名を持つ俺が、冒険者などから一体どれくらい嫌われていたのかよくわかるエピソードじゃないの。
あいつらあ、お情けで一人も殺さずにおいてやったというのに、なんという恩知らずな事か。
冒険者ども、手前らの血の色は何色だ。
「そして広大な範囲から集まった人々は多大な犠牲を払い、ついには魔神を打ち破ったのです。
その指導をした彼らも率先して戦いに望み、ただ一人を除いて全て討ち死にしました。
それが我が祖先、当時はただの一介の平民であったウインドシュガルツでした。
それを姓とした王家を起こし、その生き残った人々を纏めて広大な大平原全域に渡る大王国を作り上げたのです。
それくらいして纏めねば、生き残った人々が荒廃した世界で奪い合いと争いごとで滅びてしまいかねなかったので。
だから、今では平原の一王国に過ぎなくなった我が国ですが、多くの国々から尊敬されていました。
今の帝国など、元々はその属領の一つにしか過ぎなかったものなのです」
あ、段々わかってきちゃった。
属領として支配されていた劣等感というか、そういうもので下から上を羨望と暗い怨念を綯い交ぜたようなどろどろとした自分でもどうにもしようがないようなドス黒い感情で持って見上げていた方々が、今更ながら反旗を翻したというか、ついにやってしまったというか。
こういう事は国家だけでなく、個人でもよくあるものなのだが、実際にやってしまったら洒落にならないという奴なのだ。
だが、それだけではない。
そのかつての平原の覇者とやらに自分達が成り上がろうとしているのに違いあるめえ。
こ、これはもしや『大戦争が始まる序章』に過ぎないのでは。
そう、おそらく今はこの世界における『第一次世界大戦前夜』なのではないだろうか。
こいつはえらい事になったなあ。
その盟主の国の王家が滅ぼされた事件が、地球でいえばあのウイーンあたりで起きた皇太子暗殺事件みたいなものにあたるのだろうか。
そして、それを正当化するための手段として、その生贄として選ばれた王女様方と共にその渦中にあるのが、この俺『魔神様』なのだ。
マズイ。奴らはこれくらい言うだろう。
『我々は世に再び現れた魔神を討伐し、お救いした栄えあるウインドシュガルツ王家の姫君と共に、この世界に再び大いなる安定と平和をもたらす戦いに身を投じる。この帝国に従え』
そしてもしかしたら、地球でその当事者であったドイツと世界の関係とは逆で、この異世界で世界大戦をおっぱじめた奴らが圧倒的なまでに強大なのではないか。
そうでなければ、今この子達がこうも逃げ回ってはいまい。
「ここまで聞いた内容だけでも、非常によくない状況だ。
こりゃあ、奴ら本気の全力で来る。
この魔神呼ばわりされている俺を倒し、君達を手中に収めたのであれば、奴らは平原を平定するために進軍し、各地の王国を配下に組み入れ押し進むだろう。
そしてその後に、文字通り完璧な大帝国を築き上げられるだろう。
奴らの国力はどれくらいあるのだ。
そのような事が可能なのか。
数多くの国が奴らの相手なのだろう」
そしてアリエスはしばし苦悩した風だったが、やがて苦笑いと共にあっさりと頷いた。
些かの逡巡もなく。
おいおい、参ったね。
通りであの連中も凄まじい装備や手練れだったわけだ。
もしや、あのクラスの特殊部隊があちこちに常備されているレベルの国家とかなのか?
「今、平原には帝国や滅ぼされたアーデルセン王国を別として十の国があります。
皆、かつての平原を治めたグランドシュガルツ大王国の一部だった国々です。
強大な力で平原を治めていたグランドシュガルツ大王国も、いつしか分裂して多くの国々に別れていきました。
最大で三十五まであったと思います」
「そこまで強大な国が何故そこまで衰退してしまったのだと?
国力が衰えていたのか」
だが彼女はあっさりと首を横に振った。
「そうではなく、時代が変わった、ただそれだけなのですわ。
昔の対魔神という一つの目的ではなく、それぞれの利益を追求していく流れの中で、大分裂をしてバラバラになってしまうよりも盟主として多くの国家をコントロールするしかないような事態になってしまったのです。
貴族などもそういう風潮であり、王達も無理に人の心を押し止めてまで大王国を維持する事はできませんでした。
もうそういう時代ではないのですから。
まあそのお蔭で長らく平原は小競り合い程度で済ませてきたのです。
もちろんその中で滅ぶ国もあれば、併合されていく国々もありました」
そういうのを国力が衰えたというのでは?
そう思って首を捻ったが、別に大王国自体が衰退していって滅びたわけではなく、分家みたいな感じで暖簾分けしてやって、大連合的にやっていたという事なのだろうか。
運営というか運用というか、そういう物が変更になったみたいな感じなのかね。
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