デビルナイツ・ジン

緋色優希

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第一章 孤独の果てに

1-22 襲撃の夜

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 翌日も、なんとか無事に行軍を進め、無難そうな場所を見繕って野営の支度を終えた。

 そして食事も終えて、今日は少し強行軍だったので疲れたものかアリエスも早めに就寝していた。

 俺達も体を休めていたのだが、俺は不意に体に電撃を食らったかのように飛び起きた。

 寝ている間も感知は展開しているのだが、それに引っかかったわけではない。

 理解不能な魔物の本能的な能力というかアンテナに何かが反応したのだ。

 俺の物理的な原理の感知に特に何も反応していないが、どこかに必ず敵はいるはずだ。

 シルバーも同様の有様で、彼も跳び起きて入り口を睨んでいた。

 奴が唸ろうとしたのを俺が一本の手で制したので、彼は牙と喉から出かかっていた唸り声をあっさりと収めた。

 俺は右手で入り口を指しつつ、もう一つの右掌で地面を叩くような仕草をして入り口を護るようシルバーに伝えてから、そっと忍び足でかまくらを這い出ると、まるで足の裏に肉球を張り付けているみたいに無音で気配を消して、そこへ近づいた。

 すると、俺を見返す一対の赤く光る眼が闇夜に浮かび上がる。

 鳥! そこには闇に溶け込んだ真っ黒な巨鳥、いや怪鳥が振り向いていたのだ。

 くそ、こいつは耳がいい魔物だな、さすがは鳥だけの事はある。

 こっそりバックを取ったつもりだったのだが。雪を踏みしめる微かな、本当に微かな音を聞き咎めたか。

 さすがは魔獣だ、しかも隠密特化の飛行魔獣だろうな。
 実に侮れない奴だ。

 俺に発見されてしまったためか、奴は凄まじい雄叫びを上げた。
 これは俺達への威嚇のためではないな、多分こいつの仲間への【警告音】だ。

 そして奴は俺の攻撃を待たず飛び立った。
 こいつ自身が俺達の攻撃に来たのではない。

 おそらくは戦闘員、あるいは特殊な拉致工作専門部隊などのキャリアーになる魔物なのだ。

 仲間、いやこいつのライダーと思われる兵士がどこかにいるはずだ。
 おそらく黒装束で闇に紛れるか、あるいは雪に紛れる白で。
 俺ならその二種類を使い分けるな。

「シルバー、子供達を護れ!
 ここへ人間の敵が侵入している」

 鳥は闇夜の中、木々に紛れてジグザグに高速で見事なまでの信じがたい挙動で逃げ去った。

 チッ、隠密機動に慣れていやがる。

 おまけに居所を察知されてバレた時の逃げっぷりも堂に入っていて舌を巻いた。

 あれは作戦の復路には同じくキャリアーとして捕らえた子供達を載せていくつもりだったのだろうから是非とも潰しておきたかったのだが。

 犯人は二人組くらいだろうか、鳥もさほど大きくないので大量に人を乗せるには相応しくない奴だった。

 子供が二人いるから作戦には最低二人はいるはずだし、大勢で押しかけると隠密作戦には相応しくないだろうから。

 俺は念のためにかまくらを覗き、子供達の無事を確認した。
 二人はぐっすりと眠りこけ、あの騒ぎでも目を覚まさない。
 よほど疲れているのか、身動ぎ一つしていない。

 でも明日も強行軍でいかないと、再び居場所を捕捉されてしまったので面倒な事になりそうだ。

 次は複数の航空戦力を投入されて、大量の精鋭部隊を送り込まれるかもしれない。

 そうなると、次回は俺を足止めする戦闘部隊と、彼女達を攫って行く人攫い部隊の二種類を送り込んでくるだろう。

 とりあえず、今はこいつらを片付けないと安心できない。
 鳥なんか追いかけている場合じゃない。
 人間の方を倒さなくては。

 しかし、参った。
 俺の感知ドームを思いっきり絞って精度を上げてみたが、まったく引っかからない。

 くそう、強力な隠密系のスキル持ちなのか。あるいは魔道具。後者であった場合は、そのうちに部隊丸ごとで忍び寄られかねん。

 そんな事にでもなったなら居場所がバレてしまった今、最悪の事態を引き起こすだろう。

 ちょっとそいつらを捕まえて情報を吐かせなくては。
 そうしないと今後のセキュリティ対策ができないが、どうやって捕まえよう。

 相手は隠密行動のプロだな。
 一つだけ幸いなのは、奴らが王女達を殺しに来たのではないという事だろう。
 俺は戻り、一度確認した。

「敵は来なかったか」
「うん」

「お前の鼻には?」
「見つけた、遠くに潜んでる。
 鳥さんは行っちゃった」

 よかった、フェンリルには嗅ぎ取れるのだな。
 彼らは単なる嗅覚だけではなく、【魔力の臭い】すら嗅ぎ取れるのだ。

 敵にもこういう奴がいるとまた困るのだが、おそらくいるだろう。

「狩れるか?」
「二人は?」

「俺が見ていよう」
「やったー、一人で狩りー」

「いいけど、最低一人は生かして連れてきておくれ。
 でも逃がすくらいなら殺ってしまえ」

「あーい」

 猟犬だけに一匹で狩りをさせるのはなんだが、まあこの雪の山岳地帯で、いかにスキル持ちといえども人間が白銀狼の魔獣フェンリルの相手をするのは辛かろう。

 俺は静かに待つことにした。
 おそらく俺が見つけた鳥は戦闘タイプではなかった。

 隠密な乗物に過ぎないようなので、任務終了の時に呼ばれるまで多分帰っては来ないだろう。
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