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第一章 孤独の果てに
1-54 キャプテン・コマチと愉快な仲間達
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ショウが船に向かって陽気に呼び掛けた。
物騒なスカルフラッグを掲げた海賊船とブラウスにスカートの美少女、なんだか思いっきり気の抜けるような組み合わせだな。
「ヤッホー、キャープテン」
すると、船縁から真っ赤な顔で酒臭い息を吐いている小柄な甲板員らしき奴がひょこっと顔を出した。
黒髪黒目の。
うん? こいつは……。
「なんでえ、ショウかよ。
それに、そこのそいつ。
いきなり人の顔をじろじろと見やがって。
なんだ、こらあ。
喧嘩を売っていやがんのかあ」
だが俺は、片足でトンっと軽く石造りの埠頭を蹴って、腕組みをしたまま甲板にストンっと上がり込んだ。
「喧嘩? よせよ。
いい商品なんかがあれば買ってもいいんだけどな。
そうだな、例えば」
そして俺は、その三十歳くらいかなと思うような髭面の酔っ払いに向けて笑いかけて、日本のお菓子の有名な商品名をズラリっと並べてやった。
「チッ、なんでえ。
あんた、ただの御同輩かよ。
近くでよく見たら黒髪黒目じゃねえか。
そうかショウが連れてきたんだものなあ。
てっきり、またショウの奴が面倒臭い仕事を押し付けに来たのかと思ったじゃねえか。
俺は甲板長のアキラ、三上彰だ。
あやとか、あきらかとも呼ぶあの字だが、間違ってもショウとは読まないでくれ、けったくそ悪いからよ」
俺はその彼の悪態を豪快に笑い飛ばしてやった。
酒浸りになっているらしき彼も俺のような悲惨な経験をした口なのだろうか。
あの女に借りを作ったのは、もしかしたら高くついたのかねえ。
後で目一杯扱き使われそうだ。
まあ、借りとかないと逃げられそうになかった危機一髪なシーンではあったのだが。
「はっはっは。
じゃあ、彰さん、よろしく。
俺は大木仁、ジンって呼んでくれ。
俺は魔神ギガントだそうだから、ジンで語呂がいいしな」
「げ、ギガンテスかよ、陸上最強クラスだな。
まあよろしく頼まあ。
俺は蛸のクラーケンだ。
よく酔っぱらって真っ赤になるんで、お前は大茹で蛸だってよく言われるよ。
こんな糞ったれなご時世に素面なんかでいられるかってんだ」
「へえ、海の仲間もいるのか。
あんたはまた大型な魔物なんだなあ」
「まあ船にいるのは、そういう奴らが多いな。
その方が適材適所だろう。
ま、海の生き物は大きくなるもんだ」
「まあそう言われればそうかもしれないね。
じゃあ仲間共々よろしく頼む。
西方面に行きたいんだ」
それを聞いて彰さんは酒瓶片手に体をよじって笑った。
いやそれはもう楽しそうに。
「はっはっはっは。
皆が尻に帆をかけて東に逃げ出す夜に、お前は西に行くってか。
まあ、あの女のオーダーなんて、いつだってこんなものさ。
仲間になったっていうのなら、お前さんもせいぜい気を付けるんだな。
ま、うちには似合いの仕事だが。
西ねえ、こいつは傑作だ」
「あはははは、もう既に一戦参加を誘われているんだが」
「おいおい、あんたはバトルジャンキーなのかよ。
魔神呼ばわりされているのは伊達じゃねえな、ギガントの兄ちゃん」
「いや、帝国の奴らに散々追い回されたんでな。
この魔神ギガントが碌に戦いもせずに、追い回されて逃げ回ったんだぞ。
この借りは必ず返す」
正確には「追い回された」という過去形ではなく、ただ今も絶賛追い回され中なのだから現在この場にいるのだが。
「そうか、まあいい。
だがあまりいい風向きじゃねえから、果たして無傷でいけるものやらな」
「ああ、何せその暴風の発生源を連れての旅なのだからな、悪いがこの借りがべらぼうに高くつきそうなくらい冗談抜きで命懸けだ。
一緒に連れていくその子達はアーデルセン王国の遺児、あそこの二人の王女なんだ」
それを聞いた彰さんの顎がかっくんと外れたような感じになって、目の玉を飛び出させたような面白い表情になる。
「お、お前。
一体どうやったら、何がどう転がったら、そんな貧乏くじが引けるんだ!?
それはあの暴虐の征服者たる帝国丸ごと相手に喧嘩を売って、鬼畜皇帝に向かって真正面から堂々と啖呵を切っているようなもんじゃねえか。
しかも、よりにもよってうちの船にその核爆弾並みのド級の爆弾娘どもを積んで帝国本国のある西に向かって行けだとお!
正気か、手前は」
「そんなもの、俺が知らないよ。
文句なら、その子供らを雪の中から発掘してきた、そこにいるうちの駄犬に言うんだな、はっはっはっはー」
「かーっ、これだから人外転生者っていうのはよ。
まったくもって愉快で痛快で面白いったらありゃあしねえぜ。
こうなったらグズグズできねえなあ。
そのうちにこの港にも帝国の強襲艦隊が押し寄せてきやがるに違いねえ。
はたして、この港も朝まで持つもんかねえ。
おいお前ら、出航準備を急げ!
ボヤボヤしていると、またキャプテンにどやされるぞ」
「甲板長、追加食糧の注文を入れた商人が体一つで逃げやしたー」
「馬鹿野郎、千史。
お前が泳いで追いかけていって連れ戻してこい。
手前は大ウミヘビだろうが」
「おいおい、勘弁してくれよ。
こんな晩に俺が港に出没したら、それこそ秩序も糞もない大騒ぎになっちまうって。
安心してくれ、彰さん。
金は全額払い込み済みなんだから、もうブツは利子の分までたっぷりと、うちの水夫どもが抑えてあるからよ」
「おお、そうか。
でかした、ならいい」
「今収納で運ばせている最中だから積み込みはもうちょっとかかる。
それが済んだらすぐ出られるはずだから。
まったく帝国の奴ら、面倒な真似をしやがって」
その面倒な真似をさせちまったのが実は俺達なのだが。
アリエスが少し申し訳なさそうな顔をしているが、こいつは別にそう気にしたもんじゃあない。
これは、いずれ起きたはずの出来事なのだから。
そして、ここにいる俺のお仲間連中に至っては先だって帝国と散々に揉めていやがったのだし。
だから、そこにいるアル中の彼もさして動じていないのだろう。
「この船はもしかして全員が転生者なのかい?」
「その通りだ」
振り返ったら、そこには二十代後半くらいと思われる、何故か腰に日本刀を提げた女性がいた。
そしてまるで絵に描いたかのような地球風の海賊船長の装束に海賊帽、いわゆる髑髏をあしらった海賊キャプテン帽を頭に被っている。
そして片目には真っ黒な丸眼帯。
まるでハリウッド映画にでも出てくるような海賊そのものだ。
唯一その腰に提げた日本刀を別とすればだが。
あれ、もしかしてこの女性が、この船のキャプテンなのか。
彼女も転生者だというなら、もはやコスプレといってもいいようなスタイルだな。
それにしても、見事に異世界海賊生活を満喫していやがるもんだなあ。
「やあ、君は人外転生者だね。
ようこそ、私の船に。
私はこの【我が愛しの小野小町号】のキャプテン・コマチだ。
ああ、これはちゃんと本名だよ。
親が古風な名前が好きな道場主だったものでね。
私は朝霧小町だ、よろしく。
君がギガンテスの大木仁君だね、話というかテレパシーでショウから聞いているよ」
この方、もしかしたら一般と違う方向で中二が入っているんじゃないだろうか。
まあ楽しい旅が出来そうなメンバーみたいで何よりだな。
物騒なスカルフラッグを掲げた海賊船とブラウスにスカートの美少女、なんだか思いっきり気の抜けるような組み合わせだな。
「ヤッホー、キャープテン」
すると、船縁から真っ赤な顔で酒臭い息を吐いている小柄な甲板員らしき奴がひょこっと顔を出した。
黒髪黒目の。
うん? こいつは……。
「なんでえ、ショウかよ。
それに、そこのそいつ。
いきなり人の顔をじろじろと見やがって。
なんだ、こらあ。
喧嘩を売っていやがんのかあ」
だが俺は、片足でトンっと軽く石造りの埠頭を蹴って、腕組みをしたまま甲板にストンっと上がり込んだ。
「喧嘩? よせよ。
いい商品なんかがあれば買ってもいいんだけどな。
そうだな、例えば」
そして俺は、その三十歳くらいかなと思うような髭面の酔っ払いに向けて笑いかけて、日本のお菓子の有名な商品名をズラリっと並べてやった。
「チッ、なんでえ。
あんた、ただの御同輩かよ。
近くでよく見たら黒髪黒目じゃねえか。
そうかショウが連れてきたんだものなあ。
てっきり、またショウの奴が面倒臭い仕事を押し付けに来たのかと思ったじゃねえか。
俺は甲板長のアキラ、三上彰だ。
あやとか、あきらかとも呼ぶあの字だが、間違ってもショウとは読まないでくれ、けったくそ悪いからよ」
俺はその彼の悪態を豪快に笑い飛ばしてやった。
酒浸りになっているらしき彼も俺のような悲惨な経験をした口なのだろうか。
あの女に借りを作ったのは、もしかしたら高くついたのかねえ。
後で目一杯扱き使われそうだ。
まあ、借りとかないと逃げられそうになかった危機一髪なシーンではあったのだが。
「はっはっは。
じゃあ、彰さん、よろしく。
俺は大木仁、ジンって呼んでくれ。
俺は魔神ギガントだそうだから、ジンで語呂がいいしな」
「げ、ギガンテスかよ、陸上最強クラスだな。
まあよろしく頼まあ。
俺は蛸のクラーケンだ。
よく酔っぱらって真っ赤になるんで、お前は大茹で蛸だってよく言われるよ。
こんな糞ったれなご時世に素面なんかでいられるかってんだ」
「へえ、海の仲間もいるのか。
あんたはまた大型な魔物なんだなあ」
「まあ船にいるのは、そういう奴らが多いな。
その方が適材適所だろう。
ま、海の生き物は大きくなるもんだ」
「まあそう言われればそうかもしれないね。
じゃあ仲間共々よろしく頼む。
西方面に行きたいんだ」
それを聞いて彰さんは酒瓶片手に体をよじって笑った。
いやそれはもう楽しそうに。
「はっはっはっは。
皆が尻に帆をかけて東に逃げ出す夜に、お前は西に行くってか。
まあ、あの女のオーダーなんて、いつだってこんなものさ。
仲間になったっていうのなら、お前さんもせいぜい気を付けるんだな。
ま、うちには似合いの仕事だが。
西ねえ、こいつは傑作だ」
「あはははは、もう既に一戦参加を誘われているんだが」
「おいおい、あんたはバトルジャンキーなのかよ。
魔神呼ばわりされているのは伊達じゃねえな、ギガントの兄ちゃん」
「いや、帝国の奴らに散々追い回されたんでな。
この魔神ギガントが碌に戦いもせずに、追い回されて逃げ回ったんだぞ。
この借りは必ず返す」
正確には「追い回された」という過去形ではなく、ただ今も絶賛追い回され中なのだから現在この場にいるのだが。
「そうか、まあいい。
だがあまりいい風向きじゃねえから、果たして無傷でいけるものやらな」
「ああ、何せその暴風の発生源を連れての旅なのだからな、悪いがこの借りがべらぼうに高くつきそうなくらい冗談抜きで命懸けだ。
一緒に連れていくその子達はアーデルセン王国の遺児、あそこの二人の王女なんだ」
それを聞いた彰さんの顎がかっくんと外れたような感じになって、目の玉を飛び出させたような面白い表情になる。
「お、お前。
一体どうやったら、何がどう転がったら、そんな貧乏くじが引けるんだ!?
それはあの暴虐の征服者たる帝国丸ごと相手に喧嘩を売って、鬼畜皇帝に向かって真正面から堂々と啖呵を切っているようなもんじゃねえか。
しかも、よりにもよってうちの船にその核爆弾並みのド級の爆弾娘どもを積んで帝国本国のある西に向かって行けだとお!
正気か、手前は」
「そんなもの、俺が知らないよ。
文句なら、その子供らを雪の中から発掘してきた、そこにいるうちの駄犬に言うんだな、はっはっはっはー」
「かーっ、これだから人外転生者っていうのはよ。
まったくもって愉快で痛快で面白いったらありゃあしねえぜ。
こうなったらグズグズできねえなあ。
そのうちにこの港にも帝国の強襲艦隊が押し寄せてきやがるに違いねえ。
はたして、この港も朝まで持つもんかねえ。
おいお前ら、出航準備を急げ!
ボヤボヤしていると、またキャプテンにどやされるぞ」
「甲板長、追加食糧の注文を入れた商人が体一つで逃げやしたー」
「馬鹿野郎、千史。
お前が泳いで追いかけていって連れ戻してこい。
手前は大ウミヘビだろうが」
「おいおい、勘弁してくれよ。
こんな晩に俺が港に出没したら、それこそ秩序も糞もない大騒ぎになっちまうって。
安心してくれ、彰さん。
金は全額払い込み済みなんだから、もうブツは利子の分までたっぷりと、うちの水夫どもが抑えてあるからよ」
「おお、そうか。
でかした、ならいい」
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それが済んだらすぐ出られるはずだから。
まったく帝国の奴ら、面倒な真似をしやがって」
その面倒な真似をさせちまったのが実は俺達なのだが。
アリエスが少し申し訳なさそうな顔をしているが、こいつは別にそう気にしたもんじゃあない。
これは、いずれ起きたはずの出来事なのだから。
そして、ここにいる俺のお仲間連中に至っては先だって帝国と散々に揉めていやがったのだし。
だから、そこにいるアル中の彼もさして動じていないのだろう。
「この船はもしかして全員が転生者なのかい?」
「その通りだ」
振り返ったら、そこには二十代後半くらいと思われる、何故か腰に日本刀を提げた女性がいた。
そしてまるで絵に描いたかのような地球風の海賊船長の装束に海賊帽、いわゆる髑髏をあしらった海賊キャプテン帽を頭に被っている。
そして片目には真っ黒な丸眼帯。
まるでハリウッド映画にでも出てくるような海賊そのものだ。
唯一その腰に提げた日本刀を別とすればだが。
あれ、もしかしてこの女性が、この船のキャプテンなのか。
彼女も転生者だというなら、もはやコスプレといってもいいようなスタイルだな。
それにしても、見事に異世界海賊生活を満喫していやがるもんだなあ。
「やあ、君は人外転生者だね。
ようこそ、私の船に。
私はこの【我が愛しの小野小町号】のキャプテン・コマチだ。
ああ、これはちゃんと本名だよ。
親が古風な名前が好きな道場主だったものでね。
私は朝霧小町だ、よろしく。
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