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第1章 孤児 ビルド・ノーティス編
01 転生 (新章)
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同期のマリアがこの孤児院を自立してから一ヶ月経った。そして俺はトマス先生の魔の手から息を潜めていた。
「ビルド君! 何処ですか、出て来なさい! お祈りの時間ですよっ」
トマス先生が教会のあっちこっちを探し回っている。他でも無い、俺を見つける為に。
俺は先生を、屋根の上から思いっきり馬鹿にしていた。
ばっかじゃねーの、祈りなんてする意味分かんないぜ。その前の高等数学の授業は嫌々ながらも出たのだから、大目に見て欲しい。
確かに先生は勉強家で、一通りの学問を平たく学んでいる万能人間だ。その教養を見込まれて教会の長にまでなった。何でも知っている先生の事を俺の後輩学生たちは口を揃えて誉めていたし、俺も口に出さないだけで尊敬もしている。だが、祈りがどうの、アスティ様がどうの言ってくることだけは頂けない。
教会で孤児院はまだしも高等学校の真似事をしているのは、そんな付加価値をつけでもしないと、ここの領主に立ち退きを命じられてしまうからだ。
つまりこの街では、誰も神様なんか信じてないって事。
俺にとっては神様だって数学だって、ましてやアスティ様なんて必要ないのにな。
何故なら俺は、冒険者を目指しているからだ。
冒険者が魔獣から村を救っただとか、冒険者が災害級ドラゴンを討伐しただとか、そういう英雄譚はありふれている。幼心に憧れる少年は後を絶たない。
かく言う俺もその一人だった。
しかしこの孤児院の中では俺は少数派になる。何故なら、ここの主である先生が勇者、冒険者を目の敵にしているからだった。
というのも、昔はこの街にもアスティ教の教会がたくさんあったのに、冒険者に武勇を授けるブレイブ教にその地位を奪われたからだ。その過程には領主の扇動もあったという。
そうなった理由くらいなら俺だって想像つく。宗教で街は守れないからだ。そういうわけで今代の領主はアスティ教の教会を徹底的に排除し、生き残ったのは路地の奥のこの教会だけだった。
普段落ち着いている先生が感情的になるのも仕方がないことかもしれない。だがそれを俺たちに強要しないで欲しかった。
俺は冒険者になりたいんだ。
確かに冒険者という職業で身を立てるのは難しいと聞く。だけどここはもはや冒険者の街、バイギンだ。一流冒険者が多いだけでなく、育成にも力を入れていて、新人へのサポートも充実している。
俺だって自分なりに冒険者になる為に努力して来た。今でも知識量だけで言えば中堅に劣らないだろうし、体力も付けたし、同業者の荷物持ち位は容易いはずだ。
「あ~?! こんな所に居た! せんせー、ビル君居ましたよ! 待機お願いします!」
「げっなんでここに居るんだマリア?! というかここ屋根の上えええ?!」
素早い手際で屋根から突き落とされ、受け身を取る間も無く首根っこをがしっと捕まれた。
「ておい止せ、引き摺るなやめろ!」
「はーい1名様ごあんな~い!」
全力で抗っても何故かぐいぐい引っ張られる。こんの怪力女め!
「ビルド君! 何処ですか、出て来なさい! お祈りの時間ですよっ」
トマス先生が教会のあっちこっちを探し回っている。他でも無い、俺を見つける為に。
俺は先生を、屋根の上から思いっきり馬鹿にしていた。
ばっかじゃねーの、祈りなんてする意味分かんないぜ。その前の高等数学の授業は嫌々ながらも出たのだから、大目に見て欲しい。
確かに先生は勉強家で、一通りの学問を平たく学んでいる万能人間だ。その教養を見込まれて教会の長にまでなった。何でも知っている先生の事を俺の後輩学生たちは口を揃えて誉めていたし、俺も口に出さないだけで尊敬もしている。だが、祈りがどうの、アスティ様がどうの言ってくることだけは頂けない。
教会で孤児院はまだしも高等学校の真似事をしているのは、そんな付加価値をつけでもしないと、ここの領主に立ち退きを命じられてしまうからだ。
つまりこの街では、誰も神様なんか信じてないって事。
俺にとっては神様だって数学だって、ましてやアスティ様なんて必要ないのにな。
何故なら俺は、冒険者を目指しているからだ。
冒険者が魔獣から村を救っただとか、冒険者が災害級ドラゴンを討伐しただとか、そういう英雄譚はありふれている。幼心に憧れる少年は後を絶たない。
かく言う俺もその一人だった。
しかしこの孤児院の中では俺は少数派になる。何故なら、ここの主である先生が勇者、冒険者を目の敵にしているからだった。
というのも、昔はこの街にもアスティ教の教会がたくさんあったのに、冒険者に武勇を授けるブレイブ教にその地位を奪われたからだ。その過程には領主の扇動もあったという。
そうなった理由くらいなら俺だって想像つく。宗教で街は守れないからだ。そういうわけで今代の領主はアスティ教の教会を徹底的に排除し、生き残ったのは路地の奥のこの教会だけだった。
普段落ち着いている先生が感情的になるのも仕方がないことかもしれない。だがそれを俺たちに強要しないで欲しかった。
俺は冒険者になりたいんだ。
確かに冒険者という職業で身を立てるのは難しいと聞く。だけどここはもはや冒険者の街、バイギンだ。一流冒険者が多いだけでなく、育成にも力を入れていて、新人へのサポートも充実している。
俺だって自分なりに冒険者になる為に努力して来た。今でも知識量だけで言えば中堅に劣らないだろうし、体力も付けたし、同業者の荷物持ち位は容易いはずだ。
「あ~?! こんな所に居た! せんせー、ビル君居ましたよ! 待機お願いします!」
「げっなんでここに居るんだマリア?! というかここ屋根の上えええ?!」
素早い手際で屋根から突き落とされ、受け身を取る間も無く首根っこをがしっと捕まれた。
「ておい止せ、引き摺るなやめろ!」
「はーい1名様ごあんな~い!」
全力で抗っても何故かぐいぐい引っ張られる。こんの怪力女め!
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