【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

文字の大きさ
5 / 107
レイズの過去を知る

俺の名前はレイズ·アルバード!

しおりを挟む


「たしか……名前は……」

 脳裏に、かすかな記憶が蘇る。
 キャラ設定画面。薄暗い背景。ステータス欄に記された文字。

 ――レイズ・アルバード。

「レイズ・アルバード! 氷属性と……死属性を使う!」

 やけくそ気味に名乗ったその瞬間、ヴィルの眼が細く、鋭く光った。

「……やはり。おまえは“レイズ”ではないな」

 低い声が訓練場に落ちる。
 次の瞬間、木刀の切っ先がわずかに俺の胸元へと傾いた。

「問う。なぜ“死属性”を知っている?」

 その一言で、空気が凍る。
 肌が粟立つほどの静寂。

 死属性――それはアルバード家が決して外に出さぬ“事実”。
 禁忌ではない。だが、それを名乗った瞬間、世界が牙を剥く。
 人々は劣等と蔑み、家は侮られ、縁は切れ、騎士団でさえ門を閉ざす。
 だからこそ、徹底して隠してきた。

「死属性は悪徳でも禁忌でもない。だが、この国では“劣印”だ。」

 ヴィルの声は静かだった。だが、砂塵よりも重く胸に沈む。

「知る者は限られる。屋敷の者ですら、許しなくしては口にしない。……にもかかわらず、おまえは自ら名乗った。」

 木刀の影が、俺の足元に落ちる。
 視線を上げられない。呼吸が浅くなる。

「答えろ。誰に聞いた。――おまえは何者だ。」

 喉が焼けるように乾いた。
 言葉を探すより早く、背中を冷たさが這い上がる。

 指先が、かすかに白む。
 氷の気配――いや、違う。
 影のような“空白”が皮膚の下でうごめいた。

 ヴィルの眉が、わずかに動く。

「……やはり、反応するか。」

 無意識に一歩、後ずさった。

 この世界では、ただ名乗るだけで“落ちる”。
 俺は今、その事実を知らずに、最も重い言葉を口にしてしまった。

 ヴィルが木刀を肩に担ぎ、静かに告げる。

「ここで嘘を重ねれば、おまえは守れない。レイズも、家もだ。」

 心臓が、どくんと跳ねた。

(――どうする?)

 “俺”を語るのか。
 “レイズ”を演じ切るのか。

 砂塵が、音もなく落ちる。
 訓練場の空気だけが、異様に澄んでいた。

「……俺は、死……死属性の使い方を知っている! だから殺気を向けるのはやめてくれ!」

 必死に叫ぶ。喉が痛い。心臓が爆発しそうだ。

(ムリムリムリ……この人マジで怖い! こんな圧、ゲームのボスでもなかったぞ!)

 ヴィルの瞳が、さらに鋭く光る。

「死属性の“有効性”を知っている、だと?」

 声は低く、冷たい。まるで刃。

「……そんなことは誰にも解明できていない。この世に“扱える者”など存在しないはずだ。なぜ嘘を重ねる?」

「ほ、ほんとに! 本当に知ってるんだ!」

 必死に首を振る。

「証明だってできる! ただ……今は使い方が分からない。だから……教えてくれ! 教えてもらえれば、示すから! だから殺すのは待ってくれ!」

 ヴィルは木刀をわずかに下げ、俺の目をじっと覗き込む。

「……示せるのか?」

「お、教えてもらえれば……必ず!」

 沈黙が落ちる。
 その沈黙は永遠のように長く、息が詰まる。

 やがて、ヴィルは小さく息を吐いた。

「……いいだろう。」

「ほ、ほんとに!?」

「だが覚えておけ。これは“修練”ではない。」

 その声には、試す者の冷静さと、見極める者の威厳があった。

「生まれ持った属性を、どう生かすかを探るだけだ。……死属性が本当に使えるというのなら、ここで証明してみせろ。」

 木刀の先が、静かに下がる。
 張りつめていた空気が、ほんのわずかに動いた。

 ――これはもう、ゲームじゃない。

 “レイズ”としてではなく、“俺”として問われている。

 ヴィルの瞳の奥に、わずかな興味と、確かな覚悟が宿っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...