【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

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レイズの過去を知る

死は無駄などではなかった!

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俺は深呼吸し、頭を整理してから口を開いた。

「……落ち着いて聞いてくれ。俺は、この世界の人間じゃない。別の世界から来たんだ」

 その言葉に、ヴィルの眉がわずかに動く。
 だが口を挟まず、ただ静かに俺を見据えていた。

「俺のいた世界では、この世界の“未来”が解き明かされていた。……そして、その未来の中で“死属性”が解明されて、とても有用なものだと分かったんだ」

 訓練場に乾いた沈黙が落ちる。
 嘘は言っていない。けれど、この話を信じてもらえるはずもなかった。

「……ただ、俺は魔法の“使い方”を知らない。だから、もし教えてくれれば――示せる。死属性の有用性を、証明してみせる」

 必死の言葉に、ヴィルの瞳が細くなる。

「……なるほど。よく回る口だな」

 信じてはいない。
 その目には、疑念と観察が混ざっていた。

 だが、次の瞬間。ヴィルはふっと息を吐き、わずかに肩を落とした。

「よかろう。では、魔法の使い方を知れば――おまえが“本当に”使えるということだな?」

「……ああ。必ず」

 ヴィルは木刀を収め、静かに頷く。

「ならば教えてやろう。基礎からだ。……もっとも、たとえ使えたとしても――私の敵ではないがな」

 その言葉に、背筋が冷たくなる。
 圧倒的な自信。
 彼は、俺との間にある“絶対的な差”を理解しているのだ。


「よく聞け。魔法とは、属性を“外へ押し出す”術だ。呼吸と同じ。
 力を吸い込み、体内で巡らせ、言葉や動作で形を与える」

 ヴィルの低い声が、訓練場の石壁に反響する。

「炎は熱を、氷は冷を、風は動きを。……そして“死”は――存在そのものを“薄くする”。
 ゆえに、それは“無用の力”とされてきた。」

 喉が、ごくりと鳴った。

(存在を薄くする……? 無にする……ってことか?)

 そんな疑問を飲み込みながらも、俺は必死で集中した。


 何だかんだ言いながら、ヴィルは驚くほど丁寧に教えてくれた。

「違う、そこではない。力を集めるのは胸でも腹でもない。“巡らせる”感覚を掴め」
「肩に力を入れるな。流れを止めるな」

「は、はいっ!! す、すみません!!」

(……このおじいさん、案外ノリノリじゃないか?)

 そんなことを思いながらも、俺は必死に指導に食らいついた。
 魔力を練ろうとしては失敗し、「違う!」と怒鳴られる。
 だが、その叱声には苛立ちよりも“導き”の熱があった。

 時間はあっという間に過ぎ――
 喉は渇き、汗で全身がぐっしょりになった頃。

 ふと、胸の奥で、灯のような感覚が生まれた。

「……これか?」

 胸の奥から、じんわりと、熱でも冷でもない何かが広がっていく。

 ヴィルはその様子を見つめ、わずかに表情を緩めた。

「……よくやった!」

 短く、だが力強い言葉。
 俺は驚き、思わず目頭が熱くなった。

「ありがとう……名前も知らないおじいさん……!」

 次の瞬間――

 ヴィルの表情が、ぴたりと止まる。
 そして、我に返ったように低く告げた。

「……では、それで“できる”のだろうな?」

 訓練場の空気が一瞬で冷えた。
 眼差しが変わる。試す者のそれへと。

「……あぁ。やってみる」

 大きく息を吸い、ふと思いついて尋ねた。

「その……おじいさん、名前はなんていうんだ?」

 ヴィルはわずかに眉をひそめ、淡々と答える。

「……私の名はヴィル。この屋敷の執事長を務めている」

「えっ、執事長!?」

 思わず地面に膝をつき、勢いで叫んだ。

「ははぁぁぁーー!!」

 ヴィルの木刀がカツンと床を打つ。

「いまはふざけている場合ではない! 証明するにはどうすればいいのか、言ってみろ!」

「……じゃあ、俺に何か――属性をまとった攻撃をしてくれ!」

「……本当にいいのだな?」

 ヴィルの目が細く光る。
 俺は全身の汗を感じながら、それでも頷いた。

「は、はいっ!!」


 次の瞬間。
 ヴィルの木刀に紅蓮の炎がまとわりついた。

 燃え盛るような熱気が訓練場全体を包み込む。

「――行くぞ」

 炎が唸りを上げ、俺へと叩きつけられる。
 轟、と空気が爆ぜた。

「ちょっ、どんな火力だよッ!?」

 思わずツッコミを入れながらも、俺は両手を突き出した。

(消えろ……! “無”になれ!!)

 ふわり――。

 次の瞬間、炎は跡形もなく消えていた。
 熱も焦げ跡もない。
 まるで、最初から存在しなかったかのように。

「……なっ……!」

 ヴィルの目が大きく見開かれた。
 たしかに手加減はした。だが、それでも確実に“死に至る”威力を込めていた。

 それを、魔法を習い始めたばかりの少年が――たやすく“消し去った”のだ。

「ほ、本当に……」

 その声は驚愕に震えていた。

 だが次の瞬間、ヴィルの表情がゆるむ。
 ゆっくりと、長い沈黙を破るように――

「……ふ、はは……!」

 笑いが漏れる。
 それは抑えきれぬ歓喜の笑みへと変わっていった。

「やはり――“死”は、無駄などではなかった!」

 ヴィルの声が訓練場に響き渡る。
 それは、長年封じられていた希望が解き放たれる音のようだった。

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