幻影の彼方~青春の狭間に枯れゆく決断~

序章

終わりのプロローグ

　春の訪れとともに、桜の花が満開になる小さな町。高校二年生の水野輝は、新しい一日を迎える準備をしている。
　彼の部屋は整然としており、壁にはサッカーのトロフィーが並び、その一つ一つが彼の数々の勝利を物語っている。家族の写真に向かって軽く手を振る輝は、これから始まる一日に心からの感謝を示している。

　その日の学校からの道は、いつものようにリズミカルな音楽と共に自転車でのんびりとした時間を楽しんでいたが、何かが違っていた。途中で向かいの家に住む幼馴染の桜庭宇都美と偶然出会うが、彼女の様子はいつもと異なり、何かに追われるように急いでいた。ぎこちなく交わされた挨拶の後、彼女は急いでその場を去っていく。その異変に心配しつつも、輝はそのまま家へと向かった。
　しかし、突然強い風が吹き、何かが輝の自転車の前輪に絡まる。それは小さな紐のようなものだった。
　事態を把握しようとする間もなく、彼はバランスを崩し、道端に衝突してしまう。事故の衝撃で意識を失った輝が目を覚ますと、彼の周りの世界は一変していた。

　見舞いに来たという彼女を自称する女の子の顔にモザイクがかかっていた。

　この物語は、一見些細な出来事がいかに人生に大きな影響を与えるかを描き出す。水野輝と彼を取り巻く人々の心の葛藤、成長、そして許しについての物語が、今、静かに幕を開ける。