上 下
2 / 2
序章

1話_計画制定案

しおりを挟む
 入学式が終わり、新入生は初々しい...というよりは、何故か馴染んでいた。
 狂気の世代は、場の対応が尋常じゃなく早かった。
 新入生は校門から遠い、B棟に向かいクラスが書いてある掲示板を見た。
 全員が2組の掲示板を見て驚愕した。ヤバイ奴らが集まっていた。

 巨漢で身長が高い 百田 吾郎(ももた ごろう)、くそ不良で牙戒中の頭だった 九頭竜 快弐(くずりゅう かいじ)、九頭竜の部下の 畝架 凱(せか がい)、超意地悪でズル賢い 田中 冠平(たなか かんぺい)、自慢魔 高多 芽緒(たかだ めお)、女番長の 曾木名 心音(そぎな ここね)、SNSにとりつかれた 杣 佳英(そま かえ)、超癖が強い 碧井 翔朗(あおい かけろう)、くそ弱い不良 仙馬 駕助(せんま かすけ)、小太りムードメーカー 肥後 哉也(ひご かなや)、勉強嫌いで学校嫌い 鎌谷 傑(かまたに すぐる)、魅惑の悪女 碼海 耶麻(めかい やま)、超喧嘩放題双子の兄 山田 隆斗(やまだ たかと)、同じく弟 山田 咲斗(やまだ さくと)、頭のおかしい発狂男 高良 徳男(こうら とくお)、小太り眼鏡のキモオタク 相馬 叶(そうま かなう)、仲間なんて作らない一匹狼 霜降 磊(しもふり らい)、常時スマホ所持 夜目名 蘭(よめな らん)、弱くて人心無し 海江田 謙(かいえだ けん)、遅刻魔 鈴木 いすみ(すずき いすみ)、口が軽すぎて信頼皆無 橋元 音(はしもと おと)、イチャラブ超絶バカップルの彼氏 真堂 将(しんどう はた)、同じく彼女 飯島 なな(いいじま なな)、破壊王 今村 剛(いまむら つよし)、ズル休みのプロ 斑目 慧(まだらめ けい)、ボーッとしてる無神経 名色 悳天(なしき とくて)、狂おしきゲーム狂 白石 廉太郎(しらいし れんたろう)、自意識過剰ナルシスト 田口 浩(たぐち ひろし)
 そしてこれからは狂気の世代の、ここら辺で 四天王 と呼ばれる四人の中の、三人が揃った。
 先輩も先生も怖じけずかないどころか、倒してしまう、言葉で勝てる者は今まで居ない、成績優秀、高い身体能力、バカで生粋の問題児 九条 界人
 暴行事件で警察に睨まれている、強盗、万引き経験あり、不良の集い 龍虎鎧中学校の頭で、ここら辺では最強の不良 八骸 轆轤(やつがい ろくろ)
 優等生は潰し、うざい奴は潰し、邪魔な奴も潰す、なのに仲間が群がってくる、謎が深い最強の悪魔 七海 麗(ななみ うらら)
 以上31名が問題児で、残りの10名は普通に等しい。

 ちなみにもう一人は、砥成弥高校(となみこうこう)へ行った ナンパしまくり変態男、超自由人で我が儘自己中、超絶チャラい金髪イケメン 六郷 佐尚(ろくごう すけなお)。この四人は知り合いではあるが、親しいわけではない。

 ところで2組の教室では、ピリついた空気が漂っていた。
 教師は 月戒 柾(つきかい まさし)。未来川一の鬼教師だ。強い心を持っているため、狂気の世代のトップクラスを集め、月戒に一括でまとめてもらう作戦だ。つまりは一人に任せているのだ。生徒指導の主任でもあり、その厳しさから 鬼 と呼ばれている。
 この教室はとんでもない。空気からして息が詰まりそうだ。そんな騒々しい教室は、絶対に良からぬ事が起こる雰囲気を醸していた。
 実際にこれから起こっていくのだが。

 そうして大して授業のない、入学式当日の学校が終わった。
 下校。帰路を行く九条は、改革部のことについて考えていた。
 説明会はどうするか、依頼がちゃんと舞い込んでくるか、活動させてくれるか。
 色々な不安を抱えつつ、九条が家に帰っている途中、
 「ドスッ」
 九条の肩に誰かの肩が当たった。すると、相手が

 「おい、どこ見て歩いてんだよ!」

 あぁ、考えてたら当たってしまった。今のは俺が悪かっただろう。

 「すまない。考え事をしていて。」

 九条はそのまま歩き始めた。のだが、

 「おい待て!許すわけねぇだろ。土下座しろ。」

 何だ?この無礼さ。一発かますか。

 「いやいや、土下座はしねぇよ。そこまでじゃねぇだろ?」

 「土下座しろっつったら、土下座すんだよ!」

 そいつはいきなり殴りかかってきた。
 だが九条は避けて、腕を掴んだら捻って、地面に叩きつけた。
 一連の流れが、滑らかで美しい。格闘術上級者なだけある。

 「何だお前、強いじゃねぇか。」

 すると、刃物を突き立ててきた。こんなんで相手に刃物を使うなんて、実に弱い奴だ。
 だが九条は分かっている。刃物は脅し用だということを。そしてこいつも知っている。
 東北で top5five と呼ばれる者の一人 五ヶ山 希望(ごかやま のぞみ)だ。いつも刃物を持ち歩き、怪我させたことも多数。殺しはしないから、九条は冷静に対処する。

 「来い、殺してみろ。刃物でグサッって。殺してみろ。」

 五ヶ山は、殺ってやるよ、と言いゆっくり歩いてきた。九条は五ヶ山の顔を見つめる。
 刃物が九条の腹に近付いてくる。だが直前で止まった。
 数秒間静止し、九条の手を少し切って逃亡した。

 「やっぱな。あいつは人を殺すことはできない。できても、これっぽっちの小さな傷を負わせること。」

 九条は指から出てくる血を舐めながら、ボソッとそう言った。
 九条に恐怖はなかったようだ。
 ところで何故、東北top5fiveの一人が東京に居るんだ?
 問題の火種が多そうだな。面倒面倒。

 一方、逃走した五ヶ山は。

 「やっぱ、ここら辺の四天王は良い感じだ。」

 「了解。ここ制覇すれば、漸く始まるわね。」

 そう言ったのは、東北top5fiveの 四階 栄依子(よしな えいこ)だ。

 「ウズウズすんな。」

 東北top5fiveの 三矢 慶太(みつや けいた)もそう言った。

 「それにしても、東京の一部だけで四人もいかれた奴が居るなんて、さすが首都だなぁ。」

 同じく5fiveの 二川 要(ふたかわ かなめ)が感心の声をあげた。

 「そうね。だからこそ来たのよ。東日本総力を挙げて、やるしかないわ。」

 一ツ星 美緒(ひとつぼし みお)も、決心したようにそう言った。
 これから何が始まるのか?新しいことが始まろうとしていた。

 九条家二階。寝室。

 「そういうことか。」

 九条はどう対処するか考えていた。
 下校の時のシーンが思い浮かぶ。

 「それにしても西日本の奴らは、意気がってるらしいぜ。」

 「成敗、退治、撃破、するしかないわ。」

 「とりあえず 東京部四天王 には協力してもらい、首都圏の首位を集めて、強い奴らを集めて、西日本に進軍だな。」

 なるほどな。そういうことか。東西で戦争おっ始めようってのか。どうしよう。
 絶対他の四天王は、

 「賛成賛成!やるしかないっしょ。」

 「喧嘩なら自信あるぜ。上等だよ。」

 「あら、面白そうな話ね。乗った。」

 なんてことになるに決まってる。でも止められそうに無いな。
 こうなったら俺も乗るしかないか?

 翌朝。
 土曜日は部活動があるが、新一年は仮入部さえしていない。
 つまり暇だ。10分くらいで説明会の準備を終え、散歩へ出かけた。
 目的は、5fiveだ。昨日は五ヶ山をつけて、アジトにありついた。
 町の南東の端っこにある、もと中小工業の工場の空き地に構えていた。

 「おっはよー。今日中に四天王を、ちゃちゃっと勧誘しちゃお。」

 元気に一ツ星が、声をあげる。それにいち早く反応したのは、

 「やぁ。元気かい?一ツ星。」

 九条だった。一ツ星はビックリして、

 「うっそ!界人、何でここが分かったの?」

 小さい頃知り合いだったからって、馴れ馴れしい対応だ。

 「そこのクソ茶髪につけてきた。ノンちゃんは、ストーカーとか気づかないタイプだからね。」

 “ノンちゃん”に反応して、五ヶ山は飛び起きた。

 「おぉ!九条!何でここが分かった!?ていうかノンちゃんって呼ぶな。」

 懐かしいあだ名に、少し嬉しそうだった。
 周りが騒がしくなってきて、みんなが起きた。
 説明するのは面倒だったが、即座に説明を終え、本題に入った。

 「昨日つけてきたってことは、話も聞いたの?」

 「まぁな。西日本制圧とかほざいてたな。昨日の夜悩んだけど、協力してやるよ。改革部の名に懸けてな。」

 改革部って何?という顔をしたが、協力してくれるということに嬉しいようだった。

 「でもまだ時間がかかる。東京の他のバカどもと、千葉と神奈川、関東のバカどもと、中部全域の 中五十隊 にも声かけだ。東北のバカどもは、今北海道と中部の一部に取りかかっている。加勢をしてほしい。」

 二川がざっと説明する。九条は一瞬で飲み込み、

 「了解。四天王と、ミラカワ高のヤバイ奴と、ここら辺一帯のバカどもは、俺が集めておく。お前らは、東京の外側の奴らと、神奈川を頼んだ。俺らは東京をまとめたあと、千葉に進軍する。終わったら千葉県庁に集合して、中部の加勢に向かおう。長野は東だが、静岡は西だ。だが、静岡も味方につければ、こっちは一層有利になる。細かい作戦はまた後だな。」

 瞬間でこの作戦を思い浮かぶなんて、頭脳は半端じゃないほど精巧にできているらしい。
 常識的に考えれば、東日本は6271万人、西日本は6509万人で、東日本が不利に見えるが、いかれた奴らは東が、300万人くらいで、西が275万人くらいだ。東が有利だろう。総力を挙げるならば。

 ......30分後。

 「...ということで、西日本への進軍に参加してほしい。」

 九条は二人を集め、最後の六郷に勧誘に行った。

 「なるほどね。良いよ。面白そうだし。しかも大阪の、六郷 佐義(すけよし)っちゅう奴を倒したいし。従兄弟なんだけど、マジクズなんだよ。俺とは違ってさ。」

 さすが自意識過剰。六郷の本領発揮だ。

 「じゃあ知り合いのクズども、集めてくんね?ここら辺の。」

 「おぉ!お安いご用。親戚とか知り合い当たってみる。すれ違った奴でヤバそうだったら、勧誘しとくぜ。で、おんなじこと言えば良いんだろ?クズども集めろって。集合場所どうする?」

 なるほど。集合場所か。

 「未来川高校で良いんじゃないかしら?食糧も揃えておけば、何日か滞在できると思うわ。」

 「良いねぇ。頭がキレる奴。嫌いじゃねぇ。」

 七海も悪~いこととなると、協力的だ。

 「じゃあ四人の金かき集めて、食料買おうぜ。無いよかましだろ?」

 九条はそう提案した。四人とも家は結構裕福な方だ。

 「了解。諭吉30人くらい(30万くらい)でいいか?」

 「最低30人、できればそれ以上って感じで良いだろ?」

 「たぶん足りないけど、あとは自分で買えってことで良いだろ?」

 四人も異論はなかった。

 「じゃあまたここで集合な。20分くらいで往復できるか?」

 3人は頷いたが、

 「俺はちょっと遠いから、30分後くらいでいいか?」

 六郷がそう言った。3人も、仕方ない、という顔して、じゃあな、と言って別れた。

 一方、5fiveは、まだ誰も自動車免許を取っていないが、顔が老けている五ヶ山が車を運転した。
 漸く高速道路に入り、神奈川に向かい始めた。
 高速に入るのはお安いご用だった。何故なら盗んだ車に、ETCカードが挿入されていたからだ。
 
 「それにしても九条って奴、頭良いんだな。あっこらへんでは誰も手を出せないとか。東京では無敵といっても過言ではない。あいつを除いてはな。」

 三矢が言った途端、四人も反応した。

 「与根嶋 止戈夫(よねしま しかお)か。」

 「与根嶋くんは、マジ最凶よね。」

 「言葉じゃ表せない。」

 身の毛が弥立つのを感じた。与根嶋という男は、東京都でNo.1の男だ。少なくとも武力では、東日本最強にして最凶だ。
 二川はそれを忘れさせるために、

 「神奈川には 神9nine を始め、横綱ten 殺気魔タッグ 神奈川荒しtop30 などといった、強者揃いの集団が沢山居る。どうまとめる?」

 四人も思い出して、考え始めた。そこまで真面目ではなかったが。最終的に武力と、刃物、話術でねじ伏せれば良いと思っていたからだ。
 しかもクソどもは、クソみたいなことには積極的だ。どうにかなるだろう。

 一方、九条達は、六郷を待っていた。
 既に130万円集まっている。
 買う食いもんは安い焼きそばとか、おにぎり、パンとかで良いだろう。

 「すまーん。待った?」

 六郷が走ってきた。すぐさま八骸が、

 「待った!遅ぇよアホ。30分っつって、40分かかってんじゃねぇか!」

 「すまんすまん。許せ。」

 六郷は息を切らし、両手を合わせて謝った。
 七海が、時間はどうでも良い、という顔で、

 「ところでいくら持ってきた?」

 金が気になっているようだ。

 「70人だ。豚貯金箱に入っていたのしか、持ってきてねぇけど。」

 ブタチョで70万!金持ちだなぁ。

 「じゃあ50人ずつ持って、近くの店で、一番安いラーメン、焼きそば、おにぎり、パン、お菓子とか買ってきて。一気買いすんなよ。定期的にな。賞味期限の関係もあるから。」

 すると、七海が、

 「ここら辺に五店くらい在るんだけど、“ヨーイチ”っていう店超安いよ。私、団興店と、欄間店行くから、九条くんが東店、八骸くんが中町店、六郷くんが西川店行って。なるべく買い占めて、余ったら、“ローネ”がいいかな?」

 手際よく買うための計画を、ザザッと説明して金を配り始めた。
 そして配り終わったら、それぞれ言われた店に向かった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...