2 / 2
序章
1話_計画制定案
しおりを挟む
入学式が終わり、新入生は初々しい...というよりは、何故か馴染んでいた。
狂気の世代は、場の対応が尋常じゃなく早かった。
新入生は校門から遠い、B棟に向かいクラスが書いてある掲示板を見た。
全員が2組の掲示板を見て驚愕した。ヤバイ奴らが集まっていた。
巨漢で身長が高い 百田 吾郎(ももた ごろう)、くそ不良で牙戒中の頭だった 九頭竜 快弐(くずりゅう かいじ)、九頭竜の部下の 畝架 凱(せか がい)、超意地悪でズル賢い 田中 冠平(たなか かんぺい)、自慢魔 高多 芽緒(たかだ めお)、女番長の 曾木名 心音(そぎな ここね)、SNSにとりつかれた 杣 佳英(そま かえ)、超癖が強い 碧井 翔朗(あおい かけろう)、くそ弱い不良 仙馬 駕助(せんま かすけ)、小太りムードメーカー 肥後 哉也(ひご かなや)、勉強嫌いで学校嫌い 鎌谷 傑(かまたに すぐる)、魅惑の悪女 碼海 耶麻(めかい やま)、超喧嘩放題双子の兄 山田 隆斗(やまだ たかと)、同じく弟 山田 咲斗(やまだ さくと)、頭のおかしい発狂男 高良 徳男(こうら とくお)、小太り眼鏡のキモオタク 相馬 叶(そうま かなう)、仲間なんて作らない一匹狼 霜降 磊(しもふり らい)、常時スマホ所持 夜目名 蘭(よめな らん)、弱くて人心無し 海江田 謙(かいえだ けん)、遅刻魔 鈴木 いすみ(すずき いすみ)、口が軽すぎて信頼皆無 橋元 音(はしもと おと)、イチャラブ超絶バカップルの彼氏 真堂 将(しんどう はた)、同じく彼女 飯島 なな(いいじま なな)、破壊王 今村 剛(いまむら つよし)、ズル休みのプロ 斑目 慧(まだらめ けい)、ボーッとしてる無神経 名色 悳天(なしき とくて)、狂おしきゲーム狂 白石 廉太郎(しらいし れんたろう)、自意識過剰ナルシスト 田口 浩(たぐち ひろし)
そしてこれからは狂気の世代の、ここら辺で 四天王 と呼ばれる四人の中の、三人が揃った。
先輩も先生も怖じけずかないどころか、倒してしまう、言葉で勝てる者は今まで居ない、成績優秀、高い身体能力、バカで生粋の問題児 九条 界人
暴行事件で警察に睨まれている、強盗、万引き経験あり、不良の集い 龍虎鎧中学校の頭で、ここら辺では最強の不良 八骸 轆轤(やつがい ろくろ)
優等生は潰し、うざい奴は潰し、邪魔な奴も潰す、なのに仲間が群がってくる、謎が深い最強の悪魔 七海 麗(ななみ うらら)
以上31名が問題児で、残りの10名は普通に等しい。
ちなみにもう一人は、砥成弥高校(となみこうこう)へ行った ナンパしまくり変態男、超自由人で我が儘自己中、超絶チャラい金髪イケメン 六郷 佐尚(ろくごう すけなお)。この四人は知り合いではあるが、親しいわけではない。
ところで2組の教室では、ピリついた空気が漂っていた。
教師は 月戒 柾(つきかい まさし)。未来川一の鬼教師だ。強い心を持っているため、狂気の世代のトップクラスを集め、月戒に一括でまとめてもらう作戦だ。つまりは一人に任せているのだ。生徒指導の主任でもあり、その厳しさから 鬼 と呼ばれている。
この教室はとんでもない。空気からして息が詰まりそうだ。そんな騒々しい教室は、絶対に良からぬ事が起こる雰囲気を醸していた。
実際にこれから起こっていくのだが。
そうして大して授業のない、入学式当日の学校が終わった。
下校。帰路を行く九条は、改革部のことについて考えていた。
説明会はどうするか、依頼がちゃんと舞い込んでくるか、活動させてくれるか。
色々な不安を抱えつつ、九条が家に帰っている途中、
「ドスッ」
九条の肩に誰かの肩が当たった。すると、相手が
「おい、どこ見て歩いてんだよ!」
あぁ、考えてたら当たってしまった。今のは俺が悪かっただろう。
「すまない。考え事をしていて。」
九条はそのまま歩き始めた。のだが、
「おい待て!許すわけねぇだろ。土下座しろ。」
何だ?この無礼さ。一発かますか。
「いやいや、土下座はしねぇよ。そこまでじゃねぇだろ?」
「土下座しろっつったら、土下座すんだよ!」
そいつはいきなり殴りかかってきた。
だが九条は避けて、腕を掴んだら捻って、地面に叩きつけた。
一連の流れが、滑らかで美しい。格闘術上級者なだけある。
「何だお前、強いじゃねぇか。」
すると、刃物を突き立ててきた。こんなんで相手に刃物を使うなんて、実に弱い奴だ。
だが九条は分かっている。刃物は脅し用だということを。そしてこいつも知っている。
東北で top5five と呼ばれる者の一人 五ヶ山 希望(ごかやま のぞみ)だ。いつも刃物を持ち歩き、怪我させたことも多数。殺しはしないから、九条は冷静に対処する。
「来い、殺してみろ。刃物でグサッって。殺してみろ。」
五ヶ山は、殺ってやるよ、と言いゆっくり歩いてきた。九条は五ヶ山の顔を見つめる。
刃物が九条の腹に近付いてくる。だが直前で止まった。
数秒間静止し、九条の手を少し切って逃亡した。
「やっぱな。あいつは人を殺すことはできない。できても、これっぽっちの小さな傷を負わせること。」
九条は指から出てくる血を舐めながら、ボソッとそう言った。
九条に恐怖はなかったようだ。
ところで何故、東北top5fiveの一人が東京に居るんだ?
問題の火種が多そうだな。面倒面倒。
一方、逃走した五ヶ山は。
「やっぱ、ここら辺の四天王は良い感じだ。」
「了解。ここ制覇すれば、漸く始まるわね。」
そう言ったのは、東北top5fiveの 四階 栄依子(よしな えいこ)だ。
「ウズウズすんな。」
東北top5fiveの 三矢 慶太(みつや けいた)もそう言った。
「それにしても、東京の一部だけで四人もいかれた奴が居るなんて、さすが首都だなぁ。」
同じく5fiveの 二川 要(ふたかわ かなめ)が感心の声をあげた。
「そうね。だからこそ来たのよ。東日本総力を挙げて、やるしかないわ。」
一ツ星 美緒(ひとつぼし みお)も、決心したようにそう言った。
これから何が始まるのか?新しいことが始まろうとしていた。
九条家二階。寝室。
「そういうことか。」
九条はどう対処するか考えていた。
下校の時のシーンが思い浮かぶ。
「それにしても西日本の奴らは、意気がってるらしいぜ。」
「成敗、退治、撃破、するしかないわ。」
「とりあえず 東京部四天王 には協力してもらい、首都圏の首位を集めて、強い奴らを集めて、西日本に進軍だな。」
なるほどな。そういうことか。東西で戦争おっ始めようってのか。どうしよう。
絶対他の四天王は、
「賛成賛成!やるしかないっしょ。」
「喧嘩なら自信あるぜ。上等だよ。」
「あら、面白そうな話ね。乗った。」
なんてことになるに決まってる。でも止められそうに無いな。
こうなったら俺も乗るしかないか?
翌朝。
土曜日は部活動があるが、新一年は仮入部さえしていない。
つまり暇だ。10分くらいで説明会の準備を終え、散歩へ出かけた。
目的は、5fiveだ。昨日は五ヶ山をつけて、アジトにありついた。
町の南東の端っこにある、もと中小工業の工場の空き地に構えていた。
「おっはよー。今日中に四天王を、ちゃちゃっと勧誘しちゃお。」
元気に一ツ星が、声をあげる。それにいち早く反応したのは、
「やぁ。元気かい?一ツ星。」
九条だった。一ツ星はビックリして、
「うっそ!界人、何でここが分かったの?」
小さい頃知り合いだったからって、馴れ馴れしい対応だ。
「そこのクソ茶髪につけてきた。ノンちゃんは、ストーカーとか気づかないタイプだからね。」
“ノンちゃん”に反応して、五ヶ山は飛び起きた。
「おぉ!九条!何でここが分かった!?ていうかノンちゃんって呼ぶな。」
懐かしいあだ名に、少し嬉しそうだった。
周りが騒がしくなってきて、みんなが起きた。
説明するのは面倒だったが、即座に説明を終え、本題に入った。
「昨日つけてきたってことは、話も聞いたの?」
「まぁな。西日本制圧とかほざいてたな。昨日の夜悩んだけど、協力してやるよ。改革部の名に懸けてな。」
改革部って何?という顔をしたが、協力してくれるということに嬉しいようだった。
「でもまだ時間がかかる。東京の他のバカどもと、千葉と神奈川、関東のバカどもと、中部全域の 中五十隊 にも声かけだ。東北のバカどもは、今北海道と中部の一部に取りかかっている。加勢をしてほしい。」
二川がざっと説明する。九条は一瞬で飲み込み、
「了解。四天王と、ミラカワ高のヤバイ奴と、ここら辺一帯のバカどもは、俺が集めておく。お前らは、東京の外側の奴らと、神奈川を頼んだ。俺らは東京をまとめたあと、千葉に進軍する。終わったら千葉県庁に集合して、中部の加勢に向かおう。長野は東だが、静岡は西だ。だが、静岡も味方につければ、こっちは一層有利になる。細かい作戦はまた後だな。」
瞬間でこの作戦を思い浮かぶなんて、頭脳は半端じゃないほど精巧にできているらしい。
常識的に考えれば、東日本は6271万人、西日本は6509万人で、東日本が不利に見えるが、いかれた奴らは東が、300万人くらいで、西が275万人くらいだ。東が有利だろう。総力を挙げるならば。
......30分後。
「...ということで、西日本への進軍に参加してほしい。」
九条は二人を集め、最後の六郷に勧誘に行った。
「なるほどね。良いよ。面白そうだし。しかも大阪の、六郷 佐義(すけよし)っちゅう奴を倒したいし。従兄弟なんだけど、マジクズなんだよ。俺とは違ってさ。」
さすが自意識過剰。六郷の本領発揮だ。
「じゃあ知り合いのクズども、集めてくんね?ここら辺の。」
「おぉ!お安いご用。親戚とか知り合い当たってみる。すれ違った奴でヤバそうだったら、勧誘しとくぜ。で、おんなじこと言えば良いんだろ?クズども集めろって。集合場所どうする?」
なるほど。集合場所か。
「未来川高校で良いんじゃないかしら?食糧も揃えておけば、何日か滞在できると思うわ。」
「良いねぇ。頭がキレる奴。嫌いじゃねぇ。」
七海も悪~いこととなると、協力的だ。
「じゃあ四人の金かき集めて、食料買おうぜ。無いよかましだろ?」
九条はそう提案した。四人とも家は結構裕福な方だ。
「了解。諭吉30人くらい(30万くらい)でいいか?」
「最低30人、できればそれ以上って感じで良いだろ?」
「たぶん足りないけど、あとは自分で買えってことで良いだろ?」
四人も異論はなかった。
「じゃあまたここで集合な。20分くらいで往復できるか?」
3人は頷いたが、
「俺はちょっと遠いから、30分後くらいでいいか?」
六郷がそう言った。3人も、仕方ない、という顔して、じゃあな、と言って別れた。
一方、5fiveは、まだ誰も自動車免許を取っていないが、顔が老けている五ヶ山が車を運転した。
漸く高速道路に入り、神奈川に向かい始めた。
高速に入るのはお安いご用だった。何故なら盗んだ車に、ETCカードが挿入されていたからだ。
「それにしても九条って奴、頭良いんだな。あっこらへんでは誰も手を出せないとか。東京では無敵といっても過言ではない。あいつを除いてはな。」
三矢が言った途端、四人も反応した。
「与根嶋 止戈夫(よねしま しかお)か。」
「与根嶋くんは、マジ最凶よね。」
「言葉じゃ表せない。」
身の毛が弥立つのを感じた。与根嶋という男は、東京都でNo.1の男だ。少なくとも武力では、東日本最強にして最凶だ。
二川はそれを忘れさせるために、
「神奈川には 神9nine を始め、横綱ten 殺気魔タッグ 神奈川荒しtop30 などといった、強者揃いの集団が沢山居る。どうまとめる?」
四人も思い出して、考え始めた。そこまで真面目ではなかったが。最終的に武力と、刃物、話術でねじ伏せれば良いと思っていたからだ。
しかもクソどもは、クソみたいなことには積極的だ。どうにかなるだろう。
一方、九条達は、六郷を待っていた。
既に130万円集まっている。
買う食いもんは安い焼きそばとか、おにぎり、パンとかで良いだろう。
「すまーん。待った?」
六郷が走ってきた。すぐさま八骸が、
「待った!遅ぇよアホ。30分っつって、40分かかってんじゃねぇか!」
「すまんすまん。許せ。」
六郷は息を切らし、両手を合わせて謝った。
七海が、時間はどうでも良い、という顔で、
「ところでいくら持ってきた?」
金が気になっているようだ。
「70人だ。豚貯金箱に入っていたのしか、持ってきてねぇけど。」
ブタチョで70万!金持ちだなぁ。
「じゃあ50人ずつ持って、近くの店で、一番安いラーメン、焼きそば、おにぎり、パン、お菓子とか買ってきて。一気買いすんなよ。定期的にな。賞味期限の関係もあるから。」
すると、七海が、
「ここら辺に五店くらい在るんだけど、“ヨーイチ”っていう店超安いよ。私、団興店と、欄間店行くから、九条くんが東店、八骸くんが中町店、六郷くんが西川店行って。なるべく買い占めて、余ったら、“ローネ”がいいかな?」
手際よく買うための計画を、ザザッと説明して金を配り始めた。
そして配り終わったら、それぞれ言われた店に向かった。
狂気の世代は、場の対応が尋常じゃなく早かった。
新入生は校門から遠い、B棟に向かいクラスが書いてある掲示板を見た。
全員が2組の掲示板を見て驚愕した。ヤバイ奴らが集まっていた。
巨漢で身長が高い 百田 吾郎(ももた ごろう)、くそ不良で牙戒中の頭だった 九頭竜 快弐(くずりゅう かいじ)、九頭竜の部下の 畝架 凱(せか がい)、超意地悪でズル賢い 田中 冠平(たなか かんぺい)、自慢魔 高多 芽緒(たかだ めお)、女番長の 曾木名 心音(そぎな ここね)、SNSにとりつかれた 杣 佳英(そま かえ)、超癖が強い 碧井 翔朗(あおい かけろう)、くそ弱い不良 仙馬 駕助(せんま かすけ)、小太りムードメーカー 肥後 哉也(ひご かなや)、勉強嫌いで学校嫌い 鎌谷 傑(かまたに すぐる)、魅惑の悪女 碼海 耶麻(めかい やま)、超喧嘩放題双子の兄 山田 隆斗(やまだ たかと)、同じく弟 山田 咲斗(やまだ さくと)、頭のおかしい発狂男 高良 徳男(こうら とくお)、小太り眼鏡のキモオタク 相馬 叶(そうま かなう)、仲間なんて作らない一匹狼 霜降 磊(しもふり らい)、常時スマホ所持 夜目名 蘭(よめな らん)、弱くて人心無し 海江田 謙(かいえだ けん)、遅刻魔 鈴木 いすみ(すずき いすみ)、口が軽すぎて信頼皆無 橋元 音(はしもと おと)、イチャラブ超絶バカップルの彼氏 真堂 将(しんどう はた)、同じく彼女 飯島 なな(いいじま なな)、破壊王 今村 剛(いまむら つよし)、ズル休みのプロ 斑目 慧(まだらめ けい)、ボーッとしてる無神経 名色 悳天(なしき とくて)、狂おしきゲーム狂 白石 廉太郎(しらいし れんたろう)、自意識過剰ナルシスト 田口 浩(たぐち ひろし)
そしてこれからは狂気の世代の、ここら辺で 四天王 と呼ばれる四人の中の、三人が揃った。
先輩も先生も怖じけずかないどころか、倒してしまう、言葉で勝てる者は今まで居ない、成績優秀、高い身体能力、バカで生粋の問題児 九条 界人
暴行事件で警察に睨まれている、強盗、万引き経験あり、不良の集い 龍虎鎧中学校の頭で、ここら辺では最強の不良 八骸 轆轤(やつがい ろくろ)
優等生は潰し、うざい奴は潰し、邪魔な奴も潰す、なのに仲間が群がってくる、謎が深い最強の悪魔 七海 麗(ななみ うらら)
以上31名が問題児で、残りの10名は普通に等しい。
ちなみにもう一人は、砥成弥高校(となみこうこう)へ行った ナンパしまくり変態男、超自由人で我が儘自己中、超絶チャラい金髪イケメン 六郷 佐尚(ろくごう すけなお)。この四人は知り合いではあるが、親しいわけではない。
ところで2組の教室では、ピリついた空気が漂っていた。
教師は 月戒 柾(つきかい まさし)。未来川一の鬼教師だ。強い心を持っているため、狂気の世代のトップクラスを集め、月戒に一括でまとめてもらう作戦だ。つまりは一人に任せているのだ。生徒指導の主任でもあり、その厳しさから 鬼 と呼ばれている。
この教室はとんでもない。空気からして息が詰まりそうだ。そんな騒々しい教室は、絶対に良からぬ事が起こる雰囲気を醸していた。
実際にこれから起こっていくのだが。
そうして大して授業のない、入学式当日の学校が終わった。
下校。帰路を行く九条は、改革部のことについて考えていた。
説明会はどうするか、依頼がちゃんと舞い込んでくるか、活動させてくれるか。
色々な不安を抱えつつ、九条が家に帰っている途中、
「ドスッ」
九条の肩に誰かの肩が当たった。すると、相手が
「おい、どこ見て歩いてんだよ!」
あぁ、考えてたら当たってしまった。今のは俺が悪かっただろう。
「すまない。考え事をしていて。」
九条はそのまま歩き始めた。のだが、
「おい待て!許すわけねぇだろ。土下座しろ。」
何だ?この無礼さ。一発かますか。
「いやいや、土下座はしねぇよ。そこまでじゃねぇだろ?」
「土下座しろっつったら、土下座すんだよ!」
そいつはいきなり殴りかかってきた。
だが九条は避けて、腕を掴んだら捻って、地面に叩きつけた。
一連の流れが、滑らかで美しい。格闘術上級者なだけある。
「何だお前、強いじゃねぇか。」
すると、刃物を突き立ててきた。こんなんで相手に刃物を使うなんて、実に弱い奴だ。
だが九条は分かっている。刃物は脅し用だということを。そしてこいつも知っている。
東北で top5five と呼ばれる者の一人 五ヶ山 希望(ごかやま のぞみ)だ。いつも刃物を持ち歩き、怪我させたことも多数。殺しはしないから、九条は冷静に対処する。
「来い、殺してみろ。刃物でグサッって。殺してみろ。」
五ヶ山は、殺ってやるよ、と言いゆっくり歩いてきた。九条は五ヶ山の顔を見つめる。
刃物が九条の腹に近付いてくる。だが直前で止まった。
数秒間静止し、九条の手を少し切って逃亡した。
「やっぱな。あいつは人を殺すことはできない。できても、これっぽっちの小さな傷を負わせること。」
九条は指から出てくる血を舐めながら、ボソッとそう言った。
九条に恐怖はなかったようだ。
ところで何故、東北top5fiveの一人が東京に居るんだ?
問題の火種が多そうだな。面倒面倒。
一方、逃走した五ヶ山は。
「やっぱ、ここら辺の四天王は良い感じだ。」
「了解。ここ制覇すれば、漸く始まるわね。」
そう言ったのは、東北top5fiveの 四階 栄依子(よしな えいこ)だ。
「ウズウズすんな。」
東北top5fiveの 三矢 慶太(みつや けいた)もそう言った。
「それにしても、東京の一部だけで四人もいかれた奴が居るなんて、さすが首都だなぁ。」
同じく5fiveの 二川 要(ふたかわ かなめ)が感心の声をあげた。
「そうね。だからこそ来たのよ。東日本総力を挙げて、やるしかないわ。」
一ツ星 美緒(ひとつぼし みお)も、決心したようにそう言った。
これから何が始まるのか?新しいことが始まろうとしていた。
九条家二階。寝室。
「そういうことか。」
九条はどう対処するか考えていた。
下校の時のシーンが思い浮かぶ。
「それにしても西日本の奴らは、意気がってるらしいぜ。」
「成敗、退治、撃破、するしかないわ。」
「とりあえず 東京部四天王 には協力してもらい、首都圏の首位を集めて、強い奴らを集めて、西日本に進軍だな。」
なるほどな。そういうことか。東西で戦争おっ始めようってのか。どうしよう。
絶対他の四天王は、
「賛成賛成!やるしかないっしょ。」
「喧嘩なら自信あるぜ。上等だよ。」
「あら、面白そうな話ね。乗った。」
なんてことになるに決まってる。でも止められそうに無いな。
こうなったら俺も乗るしかないか?
翌朝。
土曜日は部活動があるが、新一年は仮入部さえしていない。
つまり暇だ。10分くらいで説明会の準備を終え、散歩へ出かけた。
目的は、5fiveだ。昨日は五ヶ山をつけて、アジトにありついた。
町の南東の端っこにある、もと中小工業の工場の空き地に構えていた。
「おっはよー。今日中に四天王を、ちゃちゃっと勧誘しちゃお。」
元気に一ツ星が、声をあげる。それにいち早く反応したのは、
「やぁ。元気かい?一ツ星。」
九条だった。一ツ星はビックリして、
「うっそ!界人、何でここが分かったの?」
小さい頃知り合いだったからって、馴れ馴れしい対応だ。
「そこのクソ茶髪につけてきた。ノンちゃんは、ストーカーとか気づかないタイプだからね。」
“ノンちゃん”に反応して、五ヶ山は飛び起きた。
「おぉ!九条!何でここが分かった!?ていうかノンちゃんって呼ぶな。」
懐かしいあだ名に、少し嬉しそうだった。
周りが騒がしくなってきて、みんなが起きた。
説明するのは面倒だったが、即座に説明を終え、本題に入った。
「昨日つけてきたってことは、話も聞いたの?」
「まぁな。西日本制圧とかほざいてたな。昨日の夜悩んだけど、協力してやるよ。改革部の名に懸けてな。」
改革部って何?という顔をしたが、協力してくれるということに嬉しいようだった。
「でもまだ時間がかかる。東京の他のバカどもと、千葉と神奈川、関東のバカどもと、中部全域の 中五十隊 にも声かけだ。東北のバカどもは、今北海道と中部の一部に取りかかっている。加勢をしてほしい。」
二川がざっと説明する。九条は一瞬で飲み込み、
「了解。四天王と、ミラカワ高のヤバイ奴と、ここら辺一帯のバカどもは、俺が集めておく。お前らは、東京の外側の奴らと、神奈川を頼んだ。俺らは東京をまとめたあと、千葉に進軍する。終わったら千葉県庁に集合して、中部の加勢に向かおう。長野は東だが、静岡は西だ。だが、静岡も味方につければ、こっちは一層有利になる。細かい作戦はまた後だな。」
瞬間でこの作戦を思い浮かぶなんて、頭脳は半端じゃないほど精巧にできているらしい。
常識的に考えれば、東日本は6271万人、西日本は6509万人で、東日本が不利に見えるが、いかれた奴らは東が、300万人くらいで、西が275万人くらいだ。東が有利だろう。総力を挙げるならば。
......30分後。
「...ということで、西日本への進軍に参加してほしい。」
九条は二人を集め、最後の六郷に勧誘に行った。
「なるほどね。良いよ。面白そうだし。しかも大阪の、六郷 佐義(すけよし)っちゅう奴を倒したいし。従兄弟なんだけど、マジクズなんだよ。俺とは違ってさ。」
さすが自意識過剰。六郷の本領発揮だ。
「じゃあ知り合いのクズども、集めてくんね?ここら辺の。」
「おぉ!お安いご用。親戚とか知り合い当たってみる。すれ違った奴でヤバそうだったら、勧誘しとくぜ。で、おんなじこと言えば良いんだろ?クズども集めろって。集合場所どうする?」
なるほど。集合場所か。
「未来川高校で良いんじゃないかしら?食糧も揃えておけば、何日か滞在できると思うわ。」
「良いねぇ。頭がキレる奴。嫌いじゃねぇ。」
七海も悪~いこととなると、協力的だ。
「じゃあ四人の金かき集めて、食料買おうぜ。無いよかましだろ?」
九条はそう提案した。四人とも家は結構裕福な方だ。
「了解。諭吉30人くらい(30万くらい)でいいか?」
「最低30人、できればそれ以上って感じで良いだろ?」
「たぶん足りないけど、あとは自分で買えってことで良いだろ?」
四人も異論はなかった。
「じゃあまたここで集合な。20分くらいで往復できるか?」
3人は頷いたが、
「俺はちょっと遠いから、30分後くらいでいいか?」
六郷がそう言った。3人も、仕方ない、という顔して、じゃあな、と言って別れた。
一方、5fiveは、まだ誰も自動車免許を取っていないが、顔が老けている五ヶ山が車を運転した。
漸く高速道路に入り、神奈川に向かい始めた。
高速に入るのはお安いご用だった。何故なら盗んだ車に、ETCカードが挿入されていたからだ。
「それにしても九条って奴、頭良いんだな。あっこらへんでは誰も手を出せないとか。東京では無敵といっても過言ではない。あいつを除いてはな。」
三矢が言った途端、四人も反応した。
「与根嶋 止戈夫(よねしま しかお)か。」
「与根嶋くんは、マジ最凶よね。」
「言葉じゃ表せない。」
身の毛が弥立つのを感じた。与根嶋という男は、東京都でNo.1の男だ。少なくとも武力では、東日本最強にして最凶だ。
二川はそれを忘れさせるために、
「神奈川には 神9nine を始め、横綱ten 殺気魔タッグ 神奈川荒しtop30 などといった、強者揃いの集団が沢山居る。どうまとめる?」
四人も思い出して、考え始めた。そこまで真面目ではなかったが。最終的に武力と、刃物、話術でねじ伏せれば良いと思っていたからだ。
しかもクソどもは、クソみたいなことには積極的だ。どうにかなるだろう。
一方、九条達は、六郷を待っていた。
既に130万円集まっている。
買う食いもんは安い焼きそばとか、おにぎり、パンとかで良いだろう。
「すまーん。待った?」
六郷が走ってきた。すぐさま八骸が、
「待った!遅ぇよアホ。30分っつって、40分かかってんじゃねぇか!」
「すまんすまん。許せ。」
六郷は息を切らし、両手を合わせて謝った。
七海が、時間はどうでも良い、という顔で、
「ところでいくら持ってきた?」
金が気になっているようだ。
「70人だ。豚貯金箱に入っていたのしか、持ってきてねぇけど。」
ブタチョで70万!金持ちだなぁ。
「じゃあ50人ずつ持って、近くの店で、一番安いラーメン、焼きそば、おにぎり、パン、お菓子とか買ってきて。一気買いすんなよ。定期的にな。賞味期限の関係もあるから。」
すると、七海が、
「ここら辺に五店くらい在るんだけど、“ヨーイチ”っていう店超安いよ。私、団興店と、欄間店行くから、九条くんが東店、八骸くんが中町店、六郷くんが西川店行って。なるべく買い占めて、余ったら、“ローネ”がいいかな?」
手際よく買うための計画を、ザザッと説明して金を配り始めた。
そして配り終わったら、それぞれ言われた店に向かった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる