自由を求める者と、自由を奪う者

影樹 ねこ丸

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第一章 真実の壁

第5話 転機

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 デウス達は、その日病院を退院した。
 クーリが早朝から病院に駆けつけ、3人を乗せて帰った。

 「人助けは良いけど、無茶はいけない。まずは自分の命を第一に考えなさい。」
 「それは今回十分わかったよ」

 当然嘘だった。
 これからも夢は諦めなかった。
 魔獣を滅ぼして、この世界に平和をもたらす。
 騎士団の不正を暴き、国民を救う。

 「着いたわ。」
 
 家に着いたら、すぐに公園に出掛けた。
 また特訓であるが、無茶はしない。
 クーリに怒られてしまう。
 3人は一生懸命走って、公園に向かった。

 「騎士団のお偉いさん達は、魔獣の住み処を突き止め、そこからかけ離れた所で探しているらしい。」
 「やっぱ最低だな。俺たち国民は眼中にないとよ。」
 「人類最強のルヴィア騎士長でさえ、不正をしてるのかな?」

 色々な話を交わした。
 ルヴィア騎士長のことを話していた時。

 「実は俺も騎士団に、不満があるんだ。」

 急に知らない声が聞こえ、3人とも驚いたが、声の主を見るともっと驚いた。
 声の主は、話題の中心。ルヴィア騎士長本人だったのだ。

 「どうしてここに?」
 「国民を救ってくれたガキに礼を言いに来た。」

 ガ、ガキ...。騎士長って随分とイメージが違う。
 かなり雑言だなぁ。

 「あぁそういうことですか。」
 「この前は助けてくれて、ありがとうございました。」
 「礼は要らねぇ。たまたま通りかかったら、ガキが3人のたれ死んでたから、救ってやっただけだ。」
 「は、はぁ。」

 確かにクールなイメージがあったが、さすがに冷たすぎないか?
 かなり凛々しい顔立ちに、どこか肉食動物のような野生を感じる。
 いきる渇望は少なそうで、顔はいつもやる気の無さそうな顔をしている。
 戦いの時は誰よりも速く動き、魔獣を駆逐している。
 そしてその強さから、“人類最強の騎士”と呼ばれて、人類が誇る唯一の強力な騎士だ。
 で、騎士団に不満とは、どういうことなのだろうか?

 「不満ってなんですか?」
 「お前らが今話してたことだ。国民を見殺しにしようとしている。お前らはどうやって情報を手に入れた?」
 「僕の父親がたまたま騎士の話を聞いて、それを聞きました。」
 「で、お前らはそれを聞いてどう思った?正直にだ。」
 「糞だと思いました。」
 「うむ。それでよし。なかなか見込みがある。」

 騎士長もそれに不満を持っている?
 騎士長の権威では、それを抗議するのも難しいのだろうか?
 司令官が一番上で、南北方司令官、副司令官、司令官補佐、団長、副団長、団長補佐隊長、騎士長。
 とこう考えると、上には何人もの有権者がいる。
 騎士長と仲が良い、副団長も、上には手を出せないのだろう。
 そういうことなら逸そのこと、騎士長も秘密結社に入ってしまえば?
 でも、まだ信憑性がない。
 秘密結社を組んだ男の息子が、病院で身元がわかったため調査しに来たのかもしれない。

 「でもどうすれば良いのか分からなくて。」
 「僕達には魔獣を倒して国民を救えないし、子供じゃ大人に騎士団の不正を訴えても信用してもらえない。」
 「なら、俺と一緒に行動しよう。」

 意外な一言に驚いた。
 調査をするなら、そんなに早く行動を共にしたら、怪しまれるだろう。
 だがそんなことは気にしていないようだ。
 やはり調査ではないのだろうか?
 
 「それはどういう事ですか?」
 「お前らを騎士団に任命する。俺の勧誘だ。特別な書類も試験も要らねぇ。」

 それって、推薦入学みたいな?
 どういうこじつけで言い訳をするのだろう?

 「でも僕達には才能が無いんで、推薦されるレベルじゃ...」
 「俺は騎士団では、“人類最強の奇人”とも呼ばれるほどだ。この程度のことは、いくらでもする。」
 
 確かに町でも聞いたことがあった。
 ルヴィア騎士長はかなり強くて、イケメンだけど、性格に少し難がある。と
 まさか本当の情報だとは思わなかったが、どうやら事実のようだ。
 かなり意外だ。

 「じゃあ騎士団に入って良いんですか?」
 「一緒に不正を暴こうぜ。あんな糞みたいな騎士団では、この国は守れない。」

 これはかなり強大な助っ人を手に入れた。
 その後。3人は騎士長の後ろを着いていった。
 騎士長の愚痴を聞きながら。


 嶺騎士王国 騎士団 中央騎士団 桜花隊
 ルヴィア騎士長が所属する、アーマーに桜の花が刻まれている騎士隊。
 特別騎士隊 通称・桜花隊
 嶺騎士王国で最強の攻撃力を誇る、上位騎士の最重要選抜隊に選ばれている。
 簡単に言うと、強者が揃っている、王国最強の騎士隊ということだ。
 そんなところに行って、完全に場違いなんだが。

 「ルヴィア。このガキ共どこで拾ってきた?」
 「この前の戦いで、国民の避難を助けた奴らだ。この前話しただろ。」
 「あぁ、例の奴らか。で、どういう状況?」
 「ここに俺が勧誘した。こいつらも、騎士団の不正を暴こうとしてるらしい。」
 「小さいのに、考えることは立派な大人だな。」

 どうやら桜花隊は、全員が味方らしかった。
 本当に強い人は、誠実で清らかな心を持っている。
 恐らく彼らも、綺麗な心を持っているのだろう。

 「よ、よろしくお願いします...!」
 「堅くなんな、もっと肩の力抜けや。」

 ここにいる騎士達は、他の騎士とは違うただならないものを感じた。
 少し怖くなってしまうほど、彼らは威圧的だった。

 「まぁでも最初は慣れないからな。どんどん慣れてけば良いよ。」
 「「はい」」

 どうやら優しい人達のようだ。
 だが桜花隊のなかで、デウス達だけ格が違いすぎるが、どうすれば良いのだろうか?

 「でも、ここじゃ僕達は足手まといですよね?」
 「そうでも無いんだな。」
 「えっ?」

 デウス達が何をできるのだろうか?
 役に立てるのだろうか? 

 「俺が見る限り、お前らはかなりいい体をしている。しなやかさも、筋肉も持っている。
 それだけじゃない。身体能力も高くて、視野も思考能力も、抜群に抜けている。
 体も技も頭脳も、そして一番は、勇敢さだ。魔獣に立ち向かうなんて、その年じゃできない。普通はな。だけどお前らは、それができる。心も良いんだ。
 その年齢で、これから桜花隊と特訓したら、随分と強くなる。俺が保証する。
 最後決めるのは、お前らの気持ち次第だ。無理に押し付けない。
 だが、お前らが次世代の騎士を背負うかもしれないんだ。この世界を救うかもしれない。」

 自分達がこんなにすごいのか?
 そんな疑問が浮き上がったが、騎士長に言われるとなんだか説得力があった。
 3人は顔を見合わせた。
 3人とも意思は固まっているようだ。

 「はい。ここに入らせてください!」
 「良いんだよ頼まなくて。頼むのはこっちだから。じゃあ、よろしく。
 早速自己紹介。俺はここの隊長の、キーリス・マルテアンだ。まぁ騎士長の方が強いけど、一応隊長だ。」

 3人も自己紹介を済ませたら、桜花隊の説明を受けた。
 どうやらかなり仕事を頼まれるらしい。
 王族の護衛、国民の守護、魔獣の討伐、迎撃任務など
 とにかく任せられる回数が多いらしい。
 だがそのため、支給される物資はかなり最高級なものだ。
 鬼に金棒のようなものである。

 「で、とりあえず君達は、桜花隊の訓練生として加入してもらう。
 まぁ正式には後だ。とりあえず今日は家に帰っていい。親に別れを言うんだな。」
 「わかりました。」

 その日は家に帰って、親に事情を話した。
 クーリは怒ると思ったが、意外に軽かった。
 相手が騎士だからだろうか?
 とりあえず、俺は桜花隊に仮加入した。
 首を斬られないように頑張らないと!

 
 その日も魔獣は生きていた。
 当たり前のように。

 「人間も軽いもんだな」
 「俺らも人間だろ!w」
 「でも俺らは、選ばれし者だ。あんな落ちこぼれとは違う。」
 「まぁね。他にもやんないといけないから、大変だけどね。」

 魔獣の中には、四人の人間がいた。
 いずれも全員が男で、謎に包まれている。
 彼らの正体は、彼ら以外知らない。

 
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