「完全で最高」で「不完全で最低」な青春

影樹 ねこ丸

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第3話 雷男

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 あの貼り紙が貼られてから、約一週間が経った。
 みんな最初は躊躇ためらう、というか、疑いの目を向けていた。
 俺らはただの、怪しい連中と思われている。
 まぁ、実際そうだな...。

 
 放課後、最近は活動拠点として、校舎裏の倉庫を利用している。
 なんだか知らないけど、生徒会から...

 「君達が噂の新撰組?...探してたよ。」

 俺たちを探すなんて、どんな用件なのだろう?

 「活動するにしても、どっか集まる場所が欲しいでしょ?
 裏で動く部隊なんでしょ?そしたら、校舎裏の使わなくなった部室棟を使って良いよ。
 というか、そこの掃除を頼みたいんだ。綺麗にしたら、そこが新撰組の活動拠点として利用して良いよ。」

 どうやら今年の生徒会は、都合が良さそうだ。
 

 というわけで、きったない倉庫に様なところを、一週間掛けて掃除を完了した。
 一応寝転がったり、歩き回ったりもできそうだ。

 その後は、和気藹々わきあいあいと話を弾ませて、時間を過ごした。
 すると、

 「バンバンバンバン!」

 と、荒々しく扉を叩く音がした。
 新撰組の面々は顔を見合わせた。
 一気に室内が静まり返り、みんなの視線は扉に集中した。
 どうやらこの倉庫の扉を叩いたらしい。

 「まさか、先生じゃないだろうな?」

 小さな声で、傑はみんなに問った。
 とりあえず扉を開けてみることにした。
 
 ノブに手を掛けて、クルッと回し、こちらに引いた。
 するとそこには、制服を着た髪の毛がモジャモジャな人が立っていた。
 どうやら將高の生徒らしい。

 「あのぉ、どうしました?」
 「お前ら、新撰組で合ってるか?」
 「あ、はい。」
 「失礼する。」
 「いや、ちょっと待って。」

 急に知らない男に詰め寄られ、すぐに入れるわけにはいかない。
 傑は髪モジャの男を、手で制し、外に追い返した。
 その男は不思議そうな顔をして、こちらの様子をうかがっている。
 
 「用件はなんですか?」
 「ちょっと相談をしたくて。」

 どうやらその男は、何かの相談に来たようだ。

 「雷に撃たれて、髪がモジャモジャになっちゃったからどうしよう?とか?」

 善造がなんの躊躇いもなく、しれっと口にしてみせた。
 制服の汚れ具合から、恐らく先輩だろう。
 さすがにそれは、後輩として成っていないのでは?

 「惜しいな。雷は関係してくる。とりあえず、中に入らせてくれ。詳しく説明する。」
 
 傑はその男を中に入れ、机に座らした。
 飲み物とかも用意した方が良いかな。
 少しの間、沈黙が続いた。

 「で、相談というのは?」
 「あぁ、その事なんだが、驚くなよ?
 俺、もしかしたら、“雷男かみなりおとこ”かもしれないんだ。」
 「.....は?」

 こいつの頭沸騰しているのだろうか?
 ゲームのやりすぎだろうか?
 とにかく近くの精神科病院に連れていった方が良いのでは?

 どうやら、その男は2年生の、山城春馬という名前の、美術部所属らしい。
 髪型もかなりの芸術性を感じる。
 
 「それでな、なんで雷男なのかと思ったかっていうと。」


 それは春休みの時。
 京都の神社仏閣を巡っていた、というか、古風の日本の景色を家族で見に行ったんだ。
 で、1つだけ、良く分からない神社があったんだ。
 その神社が、

 「雷神社」

 といって、雷神をまつっているらしいのだが、100年で5回ほど雷がそこに落ちたという。
 そこに行くと、たまに雷神が悪さをしに、誰かに取りくかもしれないらしい。
 ただの都市伝説であって、全く信じなかった。
 馬鹿馬鹿しいと思った。

 そして、旅行から帰ってきて、一週間が経った頃。
 家のなかで、スマホをいじりながら、とにかく春休みを満喫していたとき。

 「ドガァァッァァァーーーーーンッッ!!!」

 という音が、いや、音なんていうものじゃない。
 爆弾が爆発したような、かなりの衝撃が体を震わした。

 何か何かと思うと、うちの近くの竹林に雷が落ちたのだという。
 その瞬間、急に身震いを感じた。
 雷神が、俺に取り憑いたんじゃないか?
 そう思った。

 それから二週間が経つが、近くで雷の音が聞こえると、怯えてしまって仕方がない。
 雷神に殺されてしまうんではないか?
 そんなことを考えてしまう。


 「ということなんだが。」
 「考えすぎじゃないっすか?」

 俺は直球に思ったことを、伝えてみた。
 だが、空気の読めない善造は、

 「そんな髪型だから狙われるんすよ?」

 と不謹慎なことを、ポンポンと口にしている。
 まったく、この男は、

 「やっぱ、狙われてるのかな?俺」
 「自意識過剰じゃね?」

 いろんな意見が飛び交い、収拾がつかなくなり、もはやふざけ始めていた。

 あれから、どれだけふざけただろう?
 気づけば、地平線が夕日を飲み込もうとしていた。

 「もうこんな時間かよ⁉」
 「おいおい、相談の答え出てねぇじゃん!」
 「は?お前は俺らの、ヒントに気づかなかったのか?」

 春馬は顔をしかめて、ヒントのことについて必死こいて考えた。
 
 「よーく考えるんだ!俺らとの会話を思い出すんだ!」
 「なんだよ!紛らわしいことしないで、言ってくれよ!答えを!」
 「さぁな。自分でヒントを見つけて、それから答えを導き出すことで、その答えを大切さを実感できるんだ。その答えを見失わないように、自分で見つけ出せ。」

 融通は通っているが、あまり納得できない。
 あれ、こんなこと、前にも言ったような気がする...。

 春馬は、言葉に押し出されたかのように、そのまま家に帰っていった。
 何より、とんでもなく深く考えているようで、額には無数のしわが寄せ集まっていた。
 よし、一件落着(?)だな。
 それにしても、傑が言っていた、ヒントとはなんだろう?
 俺たちすらわからなかった。

 「なぁ傑。ヒントってなんだ?いつそんなこと言った?」
 
 すると傑は静かに笑い出した。
 
 「なんだよ怖いな。」
 「ヒントなんて、俺は言ってないよ。」
 「...はぁ⁉」

 どういうことだ?そんなんだったら、意味なんて無いじゃないか。
 ただの嘘っぱち集団になってしまう。

 「どういうことだよ!」
 
 この場にいる者で、傑の思考を理解できる者はいなかった。
 すると、傑は面白そうに口を開いた。

 「あいつさ、嫌ほど心配してただろ?回りから見れば、そんな心配しなくて良いことだろ?
 それなら、それを気づかせてあげるのが最善だろ?俺は、ヒントも言っていないのに、わざわざそのヒントをあいつに考えさせた。俺たち、ふざけあってた時、雷のことなんて忘れてただろ?それをあいつに思い出させようとしてるんだよ。
 しかも、あれだけ集中して考えていたら、雷のことなんてどうでも良くなって、とにかくヒントを探そうとするだろ?あいつ単純そうだったから、いつの間にか主旨なんて忘れてると思うんだよな。
 まぁ、全ては、あいつに雷のことを、忘れさせようとしてるわけ。」

 う~ん、まぁそうかもしれないけど...、なんか違う気がするんだよなぁ?
 なんなんだ、この違和感は?

 「まぁ、適当に解決しとけば良いんだよ。あんまり深く関わらない方がいい。」

 この発言にも何か、引っ掛かった。
 前から春馬を知っているかのような、慣れた言いぶりである。
 傑って、なんだか良く分からない男だ。
 ここ数日で、改めてそう思った。

 「解散しよーぜー。」

 善造が眠そうな顔をこちらに向けて、気の抜けた声を発した。
 傑もどうやら眠いようで、目を擦りながら「そーしよ」と言った。
 戸締まりをして、それぞれ帰路に就いた。

 一日のことを振り返ると、なんだか色々と謎が深まる日だった。
 傑のことだって、雷男だって、なんだか良くわからなかった。
 この世の中は、分からないことで溢れているんだと。
 勉強なんかじゃ全然学べないことが、そこら辺にたくさん転がっているんだと。
 
 とにかく曖昧だけど、そう思った。

 俺は傑みたいに、すぐに頭が回らない。
 善造みたいに、雑になれない。
 新みたいに、かっこよくもないし。
 一みたいに、頭も良くない。

 俺には何ができるんだろうか?
 俺は、新撰組にとってどういう存在なんだろう?

 とにかく考えたけど、自分は何をしているのだろう?
 全然分からない。
 必死こいて考えて、探そうとしたが、全然思い浮かばない。
 恐らく今の自分は、さっきの春馬のように、無数の皺を浮かべて考えているのだろう。

 いや、今はそんなことどうでもいい。
 明日、みんなにでも聞いてみようかな...。
 
 何故か、恐る恐る風呂に入り、恐る恐るベッドに入った。
 何に恐れているかわからなかったけど、とにかく慎重に眠りに就いた。
 
 
 
 
  
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