上 下
21 / 23
第4章_モンバルト大戦争

第21話_覚醒厄神零

しおりを挟む
 考えた。とにかく考えた。
 だが答えはでない。
 さっきからオーディンの攻撃を喰らうだけで、なにもできていない。
 こんなときに冷静になれないのが厄神零だ。
 長所であり、短所だ。...
 ん?長所であり、短所?長所?...そうか。
 冷静になれなくていいんだ。なろうとしなくていいんだ。俺は俺。俺の生き方で考えるんだ。
 一発一発と体に打ち込まれる、オーディンの攻撃。
 叫んでいるコアの顔。
 大切な仲間達。
 俺が戸惑ってちゃ、この先あいつらを守ることができるのか?
 覚醒した零は、その頭もフル回転させ、...いやフル回転を止めた。
 いつも通りの零を思い出した。
 この状況俺の直感だ。大切な仲間は一回忘れる。一か八か、俺は賭けに出る。
 コアの結界に近づいて行ったときに、オーディンが俺を攻撃しようとした瞬間。
 コンマ一秒隙が出来れば!
 結界を破って爆弾はオーディンに投げて、コアを救出したあと自分で結界を張り、爆発に備える。
 俺だったらそうするだろう。
 オーディンに反応されたらもう終わりだ。スイッチは体に付着しているため取り外すことはできない。
 結界の方をどうにかしないといけない。結界がどれだけ硬いかなんて知らない。
 でも、行動を起こさなかったら、なにも始まらない。
 一つでも失敗すれば、俺もコアも死ぬ。仲間も守れない 
 ようやく決心してその瞬間を待つ。
 俺は抵抗しないように見せかけて、蹴飛ばされてコアの結界に近づくのを待った。
 オーディンは無抵抗な俺をずっと蹴り続けた。そして結界に近づいた。オーディンが脚を振り上げる。
 今だ!
 一瞬で結界に着き、強烈なパンチを当てた。
 結界はパリーンッと割れた。オーディンが迫ってくる。
 爆弾をオーディンの顔に投げ、コアを救出したら結界を張っ...ボガーーーンッ!と大きな爆発が起こる。
 結界は間に合ったのか?一方3人は、洞窟の入口にたどり着いた。

 「この中に奴らは居るのか?」

 するとロガンが、

「奴らは居る!兵士が中で倒れてる。零の仕業に違いない!」

 3人は急いで洞窟の中に入った。すると、
 ボガーーーンッ!
 と大きな音と共に、強風が吹いた。
 風が止んだら3人は、爆音がした方へと向かった。零の気配がしてきた。
 真っ黒焦げの部屋に入った。
 そこには、真っ黒な怪物オーディンが倒れていた。だが生きている。まだ余裕そうだ。
 そして前を見ると、結界の中に覚醒した零と、泣き顔のコアが居た。
 3人はホッとした。二人とも無事だった。
 だが油断はしていられない。オーディンとの戦いがまだある。
 零が結界を解き、3人のもとへ飛びコアを預けた。アテナは安心してまた気を失ったコアを抱き、船艦に向かった。
 零に命令されたのだ。こいつを守っててくれと。そして零と薙とロガンは、怪物オーディンと戦った。

 「オーディン!卑怯な手を使わないで、面と向かって正々堂々勝負しようぜ。」

 薙は少し嘲るように言った。
 ロガンはようやくチャンスが来た、というような面持ちでオーディンを睨んだ。
 零は相変わらず神々しい佇まいで構えていた。

 「正々堂々やって、俺に勝てると思ってんのか?なぁロガン?お前なら俺の強さ分かるよな。」

 ロガンは躊躇ったが口を開いた。

 「知ってるよ。だが零と出逢って、お前を殺れると思ったんだよ。」
 するとオーディンは笑い、「さっきボコボコにしたそのガキか?お前も安い男になったな。」

 ケラケラ笑っている。3人はオーディンを睨む。
 この腐れ外道をボコボコにすることしか考えてなかった。
 笑い止んだオーディンが、

 「おい、かかってこいよ雑魚。」

 すると零が二人に言い放った。「オーディン、俺一人で、殺る。」

 二人は驚いて零を見る。さっきより豪快に気が溢れ出てる。

 「いやでも、相手はオーディンだ。大丈...」
 「宇宙最強の男を、信じろ。」

 零は必死だった。オーディンに腹を立ててるのだろう。
 二人は少し考えたが、時間はそんなに無い。今にもかかってきそうなオーディンが居る。

 「分かった。ただ危なかったら助けにいく。」薙はそう言った。

 ロガンも異論は無いようだ。零は頷き、オーディンと向き合う。

 「おいおい!相手はガキ一人か?死んでも知らねぇかんな?」
 零はそれに反論する。「お前こそ、念仏、唱え終わったか?」

 喋る能力は低下したが、喋る内容はいつも通りだ。

 「来いガキ。」

 零は来いと言われて行かない。集中力を高め、相手の隙に強烈な攻撃をかます。
 オーディンは来いと言ったのに来ないガキに腹を立て、待ってるふりをして一気に距離を詰めた。
 そして拳を握り、顔面めがけてパンチした。
 だがスッと避けられ、腕に肘突きを喰らった。
 その後腹に回し蹴りも喰らった。オーディンは岩の壁に衝突し、貫通して隣の部屋まで吹っ飛んだ。
 だが一瞬で部屋に戻ってきた。
 零の姿が見えない。周りを見渡して探していると、急に顔面に脛蹴りを当てられた。
 零はオーディンの背後に居た。オーディンが気づかないほど、静かで気も抑えてたのだ。
 脛蹴りを当てた後、逆足をもう一度顔面に当てた。
 着地する前にパンチを溝に一発かました。
 オーディンはまた吹っ飛び、壁にめり込んだ。
 零が突進して腹にスピンキックを入れた。オーディンは隣部屋に崩れた。
 オーディンは反撃した。顔面にパンチ、腹に膝蹴り、だが全て避けられた。
 しかも攻撃の合間にカウンターを当てられる。
 正拳突きを打つが、跳躍でかわされ脳天に踵落としを喰らった。しかも逆足が頬に蹴りを入れる。
 オーディンは一回転して床に倒れ込んだ。
 倒れ込んだオーディンの背中に、足を落とした。オーディンもすぐに立ち上がる。さすが宇宙最凶だ。

 「お前。さっきとまるで違う。何したらそんな風になる?」オーディンが不思議そうに聞くが、零はまだ臨戦態勢だ。
 「おめぇに、やられそうに、なったからだ。」面倒くさかったが答えてやった。
 「それより、早く、戦おうぜ。」

 オーディンは、かかってこい、と言って戦闘体勢に入った。
 零は一瞬でオーディンの背後に回る。気づかれたことに気づいている。
 拳が飛んでくるが、空中で屈み避けた後に、腹に屈伸蹴りを当てた。
 オーディンは後方に尻餅を着いた。
 零がもう一度攻撃する。だがそれはオーディンが反応して、避けられた。
 その後のカウンターを回避するため、後ろに飛びオーディンと距離を取った。
 オーディンは突進してくる。伏せて避け尻に蹴りを入れた。
 オーディンは勢いを殺せず、壁に顔が衝突した。オーディンがそれに一瞬退いたのを見逃さず、オーディンの頭に振り蹴りをかました。
 オーディンはスピンして転がった。そこに爆弾を投げた。
 威力の小さな爆発が起こる。
 オーディンはその煙を利用して、カウンターをしようと煙を抜ける。
 すると零の姿が消えた。どっかに居るのだが分からない。
 そしていつの間にか蹴られて、前方に吹っ飛んでいた。何が起こったのか分からない。
 覚醒した零は、オーディンを遥かに超越した力を持った。
 二人の戦いは超高速で、なにも見えない。
 オーディンと零の一騎討ちが始まって、まだ30秒しか経っていない。
 だがこれを見る限り、零が押しているのは間違いなかった。
 最初っからウイルスで防がれてしまう魔法は使わず、拳や蹴りの武術戦闘を主に戦った。
 オーディンも超強い奴なのだが、零が卓越し過ぎて雑魚キャラになってしまっている(しかも卑怯)。
 オーディンは手にウイルスを生み出した。零が一瞬でオーディンの考えを察した。

 「ロガン!避けろ!」オーディンはロガンに向けてウイルスを放った。
しおりを挟む

処理中です...