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第5章_カリバー宇宙賊

第23話_戦いの夜明け

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 「改めて言わさせてもらう。ありがとう‼」

 「今さらなんだし」
 「零くんらしくないわねぇ~。」

 戦艦疾風に帰還したあと、また仲間とゆったり過ごした。
 零が珍しく感謝をする様に、みんなは驚きと微笑みを隠さずにいられなかった。
 あ~、マジで疲れたぁ~。

 「零くん!私からも感謝を伝えなきゃ。あの時は、私を助けてくれてありがとう!本当に死ぬかと思ったけど、そんな時でも零くんはかっこよかったよ。白馬の王子様かと思った!」
 「冗談もほどほどにしてくれ。」

 小さな笑いが起きた。
 だが、みんなこの戦いで随分と疲れている。
 特にロガンは、ボローとの肉体戦と、オーディンのウイルスで、体力が削られているだろう。

 「あれ?そういえば、ロガンは?」
 「心配するな。過多をつけにいった。」

 みんなは不思議がっていたが、零には分かる。
 ロガンは、ボローのところにいる。
 あいつ、トドメを刺さなかったのにも、訳があるんだろうな。
 まぁ、あいつがどんな答えを出そうと、俺達は受け入れるぜ。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「隊長さんよぉ。調子どうだ?」

 ボローはケッと唾を吐くと、居心地が悪そうに、

 「うっせぇな。嫌味かよ。」

 前は盟友として、戦友として過ごしてきた二人。
 ロガンもボローも、オーディンの愚行に従事して、一緒に悪ふざけしていた。
 だけど、こうやってぶつかり合ってみると、決着を付けられないもんなんだな。

 「トドメを刺しに来たんだろ?」
 「いいや、悔しいけど、出来なさそうだぜ。」
 「そんなんじゃ、あいつらに追放でもされるぞ?」

 こんな弱気なボローは初めて見た。
 いつも強気で頑固で、面倒くさいリーダーで、いちいち難癖付けてきやがって腹立たしかった。
 でも、すんごい強かった。対等に戦える気がしないほど、力の差は歴然としていた。
 でも俺は、そんなボローが、憧れの対象でもあったし、嫌いになれない先輩だった。

 「俺は、お前を仲間にしたいと思ってる。」
 「.....」

 驚きなのか、はたまた喜びなのか、表情がよく見えない。

 「あいつらは、絶対に受け入れてくれる。例えさっきまで戦っていた敵だとしても。俺もそうだったし。これからの旅で、また苦しいときが絶対来る。そんなときのために、少しでも強い方が良いだろ?」
 「馬鹿じゃねぇのか?俺は根っからの悪だ。オーディン様に、心酔している悪者だ。」

 ロガンはわかっていた。
 ボローだって、今までオーディンのやり方に不満を持っていたのだろう。
 ロガンは近くにいて、その事を感じていたのだから。

 「じゃあ、なんで泣いてるんだ?」

 ボローは静かに泣いていた。
 
 「俺は少なくとも、お前を悪だとは思えない。」

 今度は声を堪えたりしなかった。
 ボローは、声を出して泣いていた。
 オーディンの縛りから放たれた自由の喜びと、これからの未来への希望を二人は感じていた。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「おっ、来たぞ。」

 「ただいま。」

 ロガンは帰ってきた。
 一人のボロボロの男を連れて。

 「遅いよロガン。」
 「行こうぜ。」
 「み、みんな?こいつは...」
 
 「分かってる。お前が仲間だと認めたなら、俺らも仲間と認める。というか、逆に認めない理由なんてない。わざわざ任命するとかしないとか、そういうの面倒くさいだろ?俺らは、正義に溢れている奴なら、誰だろうと受け入れるぜ。拒みはしない。」

 ボローは静かに笑った。

 「ようやく、本当の仲間に会えた気がする。」

 こうして、零一行はまた一人仲間を増やしたのだった。

 そして、モンバルト要塞城から燃料を運び、戦艦疾風に貯蔵した。
 戦場にはまだ戦士がそこらに立ち尽くしたり、倒れたりしていたが、もう俺らに敵意を向けなかった。
 彼らもオーディンの呪縛から解かれて、少なからず喜んでいるのだろう。

 「これからみんなに話さなきゃいけないことがある。」

 零が重々しく口を開くと、みんなも真剣な顔をこちらに向けてくれた。

 「まず、改めて新たな仲間のボローだ。多分こいつらは当たり障り無く接するはずだ。これからよろしく頼む。」
 「おう、少しでも役に立てるよう、頑張るぜ。」

 「よろしくな隊長!」
 「頼むわよ。」

 などと、みんなも温かく受け入れてくれた。
 このチームの最大の良いところは、仲間意識、絆だと思う。
 仲間を優先して考え、決して犠牲なんて生まない。
 
 「そして、もう1つ重要なことを話さなければならない。」

 キリッと空気が変わる。

 「オーディンと戦っている最中、奴はとある名を口にした。“spaceACEスペースエース”という、宇宙最強の集団だ。善い輩では無いと聞いた。恐らく、俺らの敵になるであろう存在だ。え...、あぁーっと、ね。そーゆーこと。」

 (コア、任せた。)
 (しょうがないなぁ。)

 「ここからは私から説明するわ。ロガンとボローは、その存在を噂では聞いたことがあるかもしれないけど、スペースエースにも、私でもわからないけど、総括している頭がいる。その頭は、宇宙で神よりも権力を持っている、いわばこの世のテッペン。頭の仮名は、テッペンにするわ。そんなテッペンは、宇宙の隅々から強いやつらをかき集めている。気に食わない奴らは、傘下の強者でぶっ潰す。極悪非道で、とにかく実力主義で、弱肉強食の世を成り上がってきた宇宙最強集団です。」

 その場に、唾をゴクリと飲む音が響き渡るのを感じた。
 なんなんだ。スペースエースっていうのは。
 恐ろしすぎるだろ。その、テッペンってやつ。

 オーディンですら、少し恐れ多いような雰囲気を醸していた。
 それが表すのは、オーディンより強い奴らがいるということ。
 あれ?おかしいな、俺って宇宙最強じゃなかったっけ?

 (零くんは、持っている能力だったりこれからの向上率を含めて宇宙最強なの。だから、零くんより強い人達なんて、この宇宙にはたくさん居るわよ。)

 まぁ、軽く宇宙最強なんて言ってはいけないんだな。
 どこぞの噂だか知らないけど...。
 そう言えば、ヴァンレアー・レイスターってどこ行ったん?

 “俺を呼んだか?チビクソヒーロー。俺はまだお前の体で過ごしてるぜ。意外と居心地が良いじゃねぇか。”

 ちょ、ちょっと待って。キャラ壊れてない?大丈夫?
 最初の登場から時間離れてたけど、さすがに変わりすぎてない?
 ちゃんと同一人物?

 “うっせぇな、褒めてやってんだから黙ってろ。あと、スペースエースってやつ。俺より強いのたくさんいるから、気を付けろよ。仲間を増やさないと、多分倒せないぜ。”

 んんん、なんで俺に協力的になってるの?
 元はと言えば、お前が原因だからな?

 .....

 なんか言ってくれ~。
 久しぶりっていうか、会話できて少し嬉しかったのに~。


 「零くーん?」

 「あ?あぁ、ごめん。考え事してた。」
 「もう、男は女を心配させたらアカンのよ?」

 アテナに指摘されてしまった。
 だって、ヴァンレアー・レイスターが、キャラ崩れを起こしてたから...。
 そりゃあ、驚いちゃうよぉ。

 いやぁ、だって俺の命はあいつに握られているようなものだ。
 それなのに、まさかあんな奴だったなんて。
 話し合えば、なんとかなる気がするんだが...。

 そう感じるのは俺だけ?

 「それじゃあ、みんな、お腹減ってないか?」
 「超腹減ったぁー。」
 
 ロガンが自慢の料理を披露しようってのか?
 また、これから楽しい日々が続きそうだな。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「宇宙を渡ってきたお前らなら、始末できるだろ?」
 「お任せください、閣下。」
 「期待しているぞ、カリバー。」
 「嬉しきお言葉です。」

 直接ではないが、こうして仕事を任されるというのは、怖くもあるけど、嬉しいものだな。
 奴の相手をするのは、正直恐ろしいものがある。
 あのオーディンですら殺られたんだからな。

 俺はオーディンよりは強くないが、強力な部下がたくさんいる。
 絶対、奴を仕留めて見せる。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 零は、既にスペースエースのターゲットになっているということを知らない。
 また、今まで通りコアとイチャイチャするのだろう。

 羨ましぃ~...。
 おっと本音が。
 
 
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