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第2章 闇を越えた先の希望(光)
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翌朝、三匹は冷たい山風に吹かれながら、谷を離れる道を歩いていた。
空は晴れているはずなのに、どこか重く、胸を押さえつけるような気配があった。
「……兄ちゃん、気づいた?」
ミクが小声で囁く。
ポンはわずかにうなずき、険しい視線を山の斜面へ向けた。
岩陰に、影が動いた。
耳の長い獣――兎一族。
その数は二、三。だがただの旅人ではない。残党の偵察隊。
「な、何かいたの……?」
マメが不安げに振り返る。
ポンは小さく首を振る。
「心配するな。今は気づかれてない。歩き続けるんだ」
しかし、その声には重みがあった。
かつて命をかけて戦った相手が、まだ息を潜めている。
しかも今回は、イタチ一族と手を組んでいるという噂がある。
ミクはそっとマメの手をとる。
「大丈夫。僕たちがついてる」
その笑顔に、マメは少しだけ頷いた。だが心臓は、鼓動を早め続けていた。
彼らの旅路に、静かだが確実な影が迫っている――。
昼を過ぎたころ、三匹の前に大きな川が立ちはだかった。
山から流れ落ちる雪解け水で、水量は激しく、濁流は岩を砕くような勢いを見せていた。
「……渡れるの?」
マメが不安そうに声を震わせる。
「渡るしかない」
ポンは短く言い、流れをじっと見つめた。
「ここを越えなきゃ、村には辿り着けない」
三匹は足を濡らしながら、慎重に川へ踏み出した。
冷たい水が甲羅を打ち、体を押し流そうとする。
マメはすぐに足を取られ、必死に声をあげた。
「た、助けて……!」
その腕をミクがつかむ。
「大丈夫!離さないで!」
だが濁流は二匹を揺さぶり、危うく呑み込もうとする。
「しっかり掴まれ!」
ポンが川の中央で踏ん張り、二匹を支える。
ごうごうと轟く水音の中で、兄弟の声が響いた。
「マメ、目を閉じるな!前を見ろ!」
「一緒に歩けば渡りきれる!」
必死に足を前へ、前へ。
冷たい水に押されながらも、三匹は互いを支え合い、ようやく対岸に辿り着いた。
岸に倒れ込み、マメは息を切らしながら涙をこぼした。
「ぼく……足手まといだ」
「違う」
ポンは低く言い、マメの肩をつかんだ。
「お前は最後まで諦めなかった。それが大事なんだ」
ミクも笑顔でうなずく。
「一緒に渡ったんだから、もう仲間だよ」
マメは鼻をすすりながら、二匹を見上げた。
その胸に、確かな灯がともり始めていた。
その夜、三匹は川辺の林で休むことにした。
昼間の渡河で全身は疲れ切り、焚き火の炎を見つめながらも、すぐにまぶたが重くなる。
……だが、マメは眠りの中でうなされていた。
「やめて……!村を、焼かないで……!」
小さな体を震わせ、甲羅を抱え込む。
夢の中で、兎の残党たちの影が村を襲い、炎に包まれた家が崩れ落ちる光景が蘇っていた。
「マメ!」
ミクがすぐに肩を揺さぶると、マメは息を荒げて飛び起きた。
顔は涙で濡れ、震える声が漏れる。
「ごめんなさい……ぼく、怖いんだ……ずっと……」
ミクはそっと腕を回し、マメを抱き寄せた。
「怖いのは、当たり前だよ。僕だって、あの日は怖かった」
「え……?」
「兄ちゃんと一緒だから、僕は戦えた。だからマメも、一人で背負わなくていい」
焚き火の光が、二匹の甲羅を柔らかく照らす。
ポンは黙ってその様子を見守り、ゆっくりと頷いた。
「恐れを知っているからこそ、強くなれる。……俺たちはそう信じている」
マメは涙を拭き、少しだけ笑みを見せた。
「……ありがとう。ぼく、がんばるよ」
夜空には雲が切れ、星がきらめいていた。
闇の中に確かな光を見つけた三匹の旅は、再び明日へと続いていく。
空は晴れているはずなのに、どこか重く、胸を押さえつけるような気配があった。
「……兄ちゃん、気づいた?」
ミクが小声で囁く。
ポンはわずかにうなずき、険しい視線を山の斜面へ向けた。
岩陰に、影が動いた。
耳の長い獣――兎一族。
その数は二、三。だがただの旅人ではない。残党の偵察隊。
「な、何かいたの……?」
マメが不安げに振り返る。
ポンは小さく首を振る。
「心配するな。今は気づかれてない。歩き続けるんだ」
しかし、その声には重みがあった。
かつて命をかけて戦った相手が、まだ息を潜めている。
しかも今回は、イタチ一族と手を組んでいるという噂がある。
ミクはそっとマメの手をとる。
「大丈夫。僕たちがついてる」
その笑顔に、マメは少しだけ頷いた。だが心臓は、鼓動を早め続けていた。
彼らの旅路に、静かだが確実な影が迫っている――。
昼を過ぎたころ、三匹の前に大きな川が立ちはだかった。
山から流れ落ちる雪解け水で、水量は激しく、濁流は岩を砕くような勢いを見せていた。
「……渡れるの?」
マメが不安そうに声を震わせる。
「渡るしかない」
ポンは短く言い、流れをじっと見つめた。
「ここを越えなきゃ、村には辿り着けない」
三匹は足を濡らしながら、慎重に川へ踏み出した。
冷たい水が甲羅を打ち、体を押し流そうとする。
マメはすぐに足を取られ、必死に声をあげた。
「た、助けて……!」
その腕をミクがつかむ。
「大丈夫!離さないで!」
だが濁流は二匹を揺さぶり、危うく呑み込もうとする。
「しっかり掴まれ!」
ポンが川の中央で踏ん張り、二匹を支える。
ごうごうと轟く水音の中で、兄弟の声が響いた。
「マメ、目を閉じるな!前を見ろ!」
「一緒に歩けば渡りきれる!」
必死に足を前へ、前へ。
冷たい水に押されながらも、三匹は互いを支え合い、ようやく対岸に辿り着いた。
岸に倒れ込み、マメは息を切らしながら涙をこぼした。
「ぼく……足手まといだ」
「違う」
ポンは低く言い、マメの肩をつかんだ。
「お前は最後まで諦めなかった。それが大事なんだ」
ミクも笑顔でうなずく。
「一緒に渡ったんだから、もう仲間だよ」
マメは鼻をすすりながら、二匹を見上げた。
その胸に、確かな灯がともり始めていた。
その夜、三匹は川辺の林で休むことにした。
昼間の渡河で全身は疲れ切り、焚き火の炎を見つめながらも、すぐにまぶたが重くなる。
……だが、マメは眠りの中でうなされていた。
「やめて……!村を、焼かないで……!」
小さな体を震わせ、甲羅を抱え込む。
夢の中で、兎の残党たちの影が村を襲い、炎に包まれた家が崩れ落ちる光景が蘇っていた。
「マメ!」
ミクがすぐに肩を揺さぶると、マメは息を荒げて飛び起きた。
顔は涙で濡れ、震える声が漏れる。
「ごめんなさい……ぼく、怖いんだ……ずっと……」
ミクはそっと腕を回し、マメを抱き寄せた。
「怖いのは、当たり前だよ。僕だって、あの日は怖かった」
「え……?」
「兄ちゃんと一緒だから、僕は戦えた。だからマメも、一人で背負わなくていい」
焚き火の光が、二匹の甲羅を柔らかく照らす。
ポンは黙ってその様子を見守り、ゆっくりと頷いた。
「恐れを知っているからこそ、強くなれる。……俺たちはそう信じている」
マメは涙を拭き、少しだけ笑みを見せた。
「……ありがとう。ぼく、がんばるよ」
夜空には雲が切れ、星がきらめいていた。
闇の中に確かな光を見つけた三匹の旅は、再び明日へと続いていく。
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