双甲伝2-SOUKOUDEN2-

野口てんぐ

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最終章 旅の終わり、そして別れ

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戦場を覆っていた影と嵐が消え去ると、村はようやく息を取り戻した。
夜風は涼しく、焼け焦げた木々の匂いが立ち込めていたが、そこに漂うのは恐怖ではなく、安堵だった。

村人たちは崩れかけた家屋から次々と顔を出し、避難していた仲間と抱き合う。
「無事だったか!」「よく耐えたな!」
その声に、涙と笑顔が混ざる。

ポンは土埃にまみれた甲羅を軽く叩きながら、ふらつく足取りで立ち上がった。
「……守れたんだな」
声は掠れていたが、確かな安堵が滲んでいた。

ミクが肩を支え、にやりと笑った。
「兄ちゃんの突進は相変わらず無茶苦茶だな。」

マメも弓を抱きしめながら微笑んだ。
「二人がいたから、村は救われたんだ。ぼく一人じゃ、絶対に無理だった」

その言葉に、ポンは首を横に振った。
「違うさ。マメ、お前がいたからこそだ。最後の矢がなければ、俺たちは負けてた」
「そうそう!」ミクが頷く。「影の核を見抜けるなんて、俺には無理だ。お前だからできたんだ」

マメは少し俯き、拳を握りしめた。
「……ありがとう。そう言ってもらえると、救われるよ」

その時二つの影が遠くの方からこちらに近づいてくる。
「……マメ!」
マメが振り返ると、そこには、離れ離れになっていたマメの両親がいた。

「父さん……母さん……!」
マメの目に大粒の涙が溢れ、駆け寄ると、両親は両腕を広げて抱きしめた。

「父さん!母さん!無事で……無事でよかった……!」

「マメ…どれだけ心配したと思ってるの……!」

三人は言葉を交わすよりも先に、涙と笑顔で強く抱き合った。その泣きじゃくる姿は幼さなさが残る少年の顔をしていた。
その光景を見て、ポンとミクは顔を見合わせ、静かに微笑んだ。

---

戦いから数日。
村は急速に立ち直ろうとしていた。壊れた家はみんなで修復され、焼けた畑には再び苗が植えられる。
その中心には、マメがいた。
彼は村人たちに指示を出し、自らも汗を流して働いていた。

ポンとミクはその様子を見つめながら、甲羅谷へ帰る支度を整えていた。

「もう行っちゃうんだね……」
マメが声を落とした。
「もっと一緒にいてくれたら、この村も……いや、ぼくも安心なんだけどな」

ポンは笑って首を振った。
「さよならじゃないさ。もしまた危機が迫るなら俺達はいつでも駆けつける。それに、マメ。お前なら、この村を、みんなを守れる。必ずな。」

マメは驚いた顔をした。
「ぼくが……?」

ミクが肩を叩く。
「そうだぞ。マメ、お前には弓の腕がある。何より、“諦めない目”を持ってる。
それがあれば、どんな敵でも怖くないだろ!」

マメはしばし黙り、やがて静かに頷いた。
「……分かった。ぼくはこの村を守る。どんな困難が来ても……必ず!!」

その言葉を聞き、ポンは手を差し出した。
「じゃあ約束だ」
マメも迷わず手を握り返した。

「また会おう、ポン。ミク。」
「おう!」
「元気でな!」

「ありがとう。二人がいてくれて良かった。」
マメの目には涙が浮かんでいた。

別れの瞬間、村の子どもたちが駆け寄ってきた。
「ポン! ミク! ありがとう!」
「また遊びに来てね!」

ポンとミクは笑顔で手を振り、夕焼けに染まる道を歩き出した。
背後で、マメが仲間たちと共に立ち、ずっと見送っていた。

やがて村の灯りが遠ざかり、夜空の星が瞬き始める。
ポンはふと満天の星が輝く夜空を見上げ。
ミクに向かって、
「さあ…俺達も家に帰ろう。」と、呟いた。

その声は夜風に乗り、故郷の甲羅谷の方角へと静かに流れていった。



🐢~[完]~🐢





    
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感想 1

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みんなの感想(1件)

Chisa
2025.08.29 Chisa

ウチのモル達も登場させていただきありがとうございます!2作目も楽しく読ませていただきます!

解除

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