牡丹の夜露は欺瞞が香る蜜の味

白樫 猫

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蜜月は牡丹の香 ※

16話

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その日の夜、宅間が部屋を出て行く際に、俺にこう言った。

「朽木、自分の身は自分で守れよ‥」

その言葉に、苛立ちと‥何故か悲しさが入り混じった感情が湧く。
カチャリとドアに鍵を掛けられた瞬間、俺はソファから立ち上がり、百瀬を睨みつける。
先程の二の舞になるのは勘弁したい。
そんな俺の姿を見ていた百瀬は、愉快そうに笑い俺にジワリと近づいてくる。

「朽木さん?どうして警戒するんですか?」
「百瀬、お前はソファで寝ろ。大人しく寝るか、俺に打ちのめされるか選べ」
「‥どうして?ふふっ‥一緒に寝ましょうよ‥そのベッドで‥」

挑発しているのか、百瀬がシャツを脱ぎだした。

「ふざけるなよ」
「だって、俺‥ずっと前から朽木さんの事を良いなって思ってたんですよ~。だから、あの時、ナイフも持たせてあげたでしょ?俺、朽木さんの事、助けてあげようと思ったのに‥」

カチャカチャとスラックスのベルトを外し、ストンとスラックスを床に落とした。

「助けてくれようとした事はありがたいと思っている。だが、それだけだ‥」
「じゃあ、俺が朽木さんに勝てばいいんですね?」

百瀬はそう言うと、いきなり俺に向かって来た。
タックルするような低姿勢で、俺の腰を掴みに来たが、それをギリギリで躱し、逆に百瀬の背中からガッシリと身体を掴み上げる。
そのまま体重を掛け床に抑え込むと、暴れる百瀬が身体を反転させる。
それでも俺は百瀬を離すことなく締め上げると、百瀬がグォッと腹の奥から声を漏らす。
痛みで藻掻く百瀬の身体を再び地面にひれ伏すと、抑え込みながら両手を捻じり上げる。

「‥グゥッ‥い、たい‥朽木さん!ギブアップ!」

百瀬の悲鳴が聞こえたが、俺は容赦なく自分のガウンの腰紐を解くと、それで百瀬の両手首と両足首を背面で縛る。
動きを拘束して俺はようやく百瀬から離れた。
エビ反りのような形で苦しそうに唸る百瀬を見下ろすと、息を吐いた。

「‥朽木さん。何もしませんから、これ解いて下さい‥お願いします‥」

情けない声を出し、許しを請う百瀬を一瞥すると、俺は睨みつけた。

「‥自業自得だ。朝までそのままでいるんだな‥」
「そんな~朽木さん‥」

俺は、百瀬を床に転がしたままベッドに入った。
こうでもしないと、安心して眠れない。
まだ心臓がドクドクしている中、俺はゆっくりと目を閉じた。




翌朝、俺は宅間の笑い声で目が覚めた。
ゲラゲラと笑い声がして目を開けると、下着一枚で拘束されている百瀬の姿を見て、宅間が笑っていた。

「‥お前、負けたんだな‥クックッ‥」

ギラッと睨みつけている百瀬に、まだ宅間は笑っていた。

「‥くっそ‥早く解いて下さいよ!」

百瀬がそう訴えるが、宅間は我関せずと、それを断る。

「悪いが、お前の飼い主は朽木だ。あいつが拘束したのなら、あいつに解いて貰え‥どうせ、お前が突っかかって行ったんだろ?」

宅間はそう言って、笑いながら朝食の準備を始めた。

「ね~腕が痛いんですよ~この体勢‥もう!朽木さん!早く起きて!腕が痺れて‥痛いんだよ~」

情けない声を出している百瀬に、俺はゆっくりとベッドから出ると近づく。

「‥反省してるんだろうな?」

俺が不意に背後から声を掛けたので、ビクッとした百瀬が半泣きの顔を向けコクコクと何度も頷く。

「はい、反省しました。だから、もう解いて下さい。お願いします」

涙目の百瀬に、俺は仕方が無いと拘束を解いてやった。
解放されたが身体が強張り、すぐには動けない百瀬は、長い時間、床で悶えていた。

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