牡丹の夜露は欺瞞が香る蜜の味

白樫 猫

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蜜月は牡丹の香 ※

18話

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翌日、朝食を終え、いつもの様にトレを済ませシャワーを浴びて部屋に戻ると、入れ替わりに百瀬がシャワーを浴びる為にシャワールームへと向かった。
ソファに座っている宅間は、いつもの様に難しそうな本を開き、俺もソファに座ると読みかけの小説を手に取った。
どこまで読んだか記憶を探りながらページを開いていると、宅間がジッと俺を見ている事に気が付いた。

「‥朽木、お前はこれから百瀬に抱かれろ」

いきなり告げられた言葉に、俺の頭の中はショートした様に固まる。

「‥な‥に言ってる?」
「お前に拒否権はない」

沸々と怒りが湧き、俺は持っていた小説を床に放り投げると立ち上がる。

「拒否権なんか知らない!俺は、嫌だ!!絶対に!」
「じゃあ、私と賭けをしよう。1時間‥お前が射精せずに堪え切れたら、お前の望みを何でもひとつ叶えると約束する‥」
「‥の、ぞみ?そんなの‥それでも、俺は‥」

頭の中でグルグルと思考が絡み合う。
これでここから出れるのか?
それでも、百瀬に抱かれるのは嫌だと、身体が震えだす。

「‥何でも良いんだぞ。これは、お前にとってここから出れる最後のチャンスかもな‥」
「‥それでも、俺は‥嫌だ!」

怒りを滲ませ抵抗する。
セックスをするだけなのに、こんなにも忌避感が溢れ出すなんて、自分でもおかしいと思うが、嫌なモノは嫌だった。

「クックッ‥お前に拒否権は無いと言っただろ。1時間、射精を我慢しようがしまいが、お前の自由だ。だが、お前は百瀬に抱かれる、それだけだ‥」

宅間が言い終わった時、百瀬が腰にタオルを巻いているだけの姿で部屋に戻って来た。

「あ~スッキリした~で?早速、俺は朽木さんを抱いていいのかな?」

百瀬の言葉に、これは前から宅間と百瀬で決められていた事なんだと理解した。
立ち上がったままの俺は、ジワリと百瀬と距離を開ける。

「‥朽木、ベッドに行け」

宅間の口からいつもと変わらない平然とした声が聞こえてきた。

「‥っ‥嫌だ‥宅間‥いやだ‥」

俺が首を横に振っている傍で宅間がジロリと見上げてくる。

「はぁ~朽木。私の言葉が分かるな?ベッドに行くんだ‥」

掌が無意識にガウンをギュッと握る。
嫌だと頭では分かっているのに、宅間の命令を聞かなくてはいけないと身体から汗が滲み出る。
宅間の視線が突き刺さる中、俺の脚はゆっくりとベッドに進み、数歩先にあるベッドがやけに遠く感じた。
ギシリと音を立てベッドに上がると、ドクドクと暴れていた心臓が痛くなる。
ベッドに横になる時、視線の中に居た宅間の眼は冷たく光り、それを見た瞬間、もう逃げられないのだと知り、俺は目を閉じた。

「‥百瀬、1時間だ‥」

宅間の声が聞こえた時、百瀬がベッドに上がり俺に覆いかぶさった。

「朽木さん、気持ち良くなってね‥」

唇に百瀬の息が掛かり、熱い舌が俺の口内へと侵入してきた。
グニュリと絡められる舌に、俺は何の感情も湧かず、先程の宅間の視線を思い浮かべ、ただこみ上げてくる虚無感に囚われる。

思えば俺は勘違いをしていたのかもしれない。
俺は、宅間が俺の事を好きで、ここに監禁しているだと思っていたが、それは間違いだった。好きな奴を他の人間に抱かせたりはしない。
俺は、ただの暇つぶし‥宅間にとっては玩具のようなモノだったのか‥。
どうりで、宅間が俺をいじめて楽しんでいるが、俺を抱くことは無かった。
宅間は俺の身体に触れてくるが、俺が宅間の身体に触れるのは許されていない。
キスまでだ。
そうか、俺は宅間にとって代わりのきく玩具なのだ。そう考えた時、頭の中に淀んでいた霧が晴れ、ハッキリと理解できた。ただ、そう理解できたとしても、今の俺は悲しいのか‥苦しいのか、分からない‥胸が痛い。
何の感情もなく、ただ身体を舐めまわされている感触に、自分の中の嫌悪感を必死に抑える。
叫び出したいのを我慢していると、百瀬が敏感な乳首に吸い付いた。

「‥んっ‥ぐっ‥」

感じたくないと思っているのに、開発された身体は僅かな刺激でも快楽を生み出していく。
それが望んでいないモノであってもだ。
全身から引きずり出され、剥き出しにされる敏感な部分に、百瀬の手垢が付いていく。
何故か分からないまま、俺の目尻には涙が零れた。

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