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27話
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翌週の土曜日。
朝陽と凛太朗は2階の部屋で、凛太朗が買い込んできた鍋の材料で、寄せ鍋を作り一緒につついていた。
「美味しい?」
凛太朗が朝陽に聞くと、コクンと頷き箸を進める。
モグモグといっぱい食べる凛太朗につられているのか、朝陽もいつもより食が進んでいるような気がする。
「‥就職活動は、上手くいってるの?」
「あっ、まぁ‥人並みに‥?」
「なんだよ、人並みって‥うっかりしてると、機会を逃しちゃうからな。早目に進めて行かないと、良い会社は、どんどん決まってくんだぞ‥‥」
「‥‥分かってますよ‥」
「‥ならいいけど‥お前は、どんな会社に勤めたいんだよ‥」
朝陽はそう口にしながら、そう言えば凛太朗がどんな社会人になりたいのか、どんな夢を持っているのか、聞いたことが無かった‥と思った。
「んー俺は、朝陽さん達に出会う前までは、何でも良いかなぁ~って思ってたんだ。特にやりたい事もなくってさ、普通の会社に入って、普通に誰かと出会って、普通に結婚して、子供が出来て‥なんて、ホント普通の生活が夢っていうか‥当たり前みたいな‥。あー俺んち、父親しか居なくて、父子家庭?‥母親は俺が小さい頃に亡くなって、親父が一人で俺を育ててくれたから、その恩返しっていうか、安心させたいって思う気持ちが大きかったんだと思う」
白菜を口に運びながら、そう語る凛太朗に、自分は何も凛太朗の事を知らなかったんだと、朝陽は改めて感じていた。
「‥俺、知らなくて‥ごめんな‥」
「なんで、朝陽さんが謝るの?そんなの全然‥母親の事も、もう薄っすらとしか思い出せないし、だけど、親父は大変だったろうなって‥」
どうやったら、こんなに素直で真っ直ぐな男に育つのだろうと、朝陽はいつも思っていたが、それは父親がそうやって真っ直ぐに愛情を注ぎ、育ててくれたんだと実感した。
「そっか‥‥親父さんは、凄いな‥こんなに優しくて立派な息子に育てたんだから‥」
ふと感じた事が、そのまま口に出た。
「何それ?ふふっ‥俺を褒めてんの?」
嬉しそうに笑う凛太朗を見て、朝陽の胸がドキッと高鳴る。
「‥‥親父さんを褒めてんの!」
「クスクスッ‥あっ、そっか‥‥だから、俺は朝陽さん達に出会って、誰かを笑顔にするのは良いなぁ~って思ったんだよ。それで、俺はホテルマンを目指してる。限られた時間の中で、沢山の笑顔を作ってあげたい。それに携わりたいって思ったんだ」
目がキラキラとして見えるのは、自分がおかしいのだろか、笑顔が眩しく見えるのは、自分の卑しい気持ちが出てしまっているのだろうか、そんな事を考え、朝陽はそっと目を逸らした。
「そりゃ‥やりたい事が見つかって、良かったな‥頑張れよ‥」
「うん。頑張るね!」
そろそろ締めでうどんにするかおじやにするかと、二人で揉めて、結局、朝陽の希望でおじやになる。
卵を入れひと煮立ちさせると、鍋の具材の出汁が染みて旨い。
いつもより、沢山食べてしまい、朝陽のお腹がパンパンになる。
「俺、片付けるから、朝陽さんは食休みしてて‥」
そう言って、凛太朗はテキパキと食器を運び、片付け始める。
悪いな‥と思いつつも、満腹過ぎて動けない朝陽は、その言葉に甘えてソファにドサッと身を沈めた。
ひとりで食べる食事は、あんなにも味気なかったのに、誰かと食べる食事は、こんなにも楽しく美味しい。
そんな事を、改めて実感してしまうと、これから凛太朗に告げようとしている、自分の意思がグラリと揺れている。
天井を見ながら、きっとここにも葵が居るんだろうなーと考えていた。
葵の気持ちを考えると、朝陽の胸がギュッと痛みを発する。
そして今以上に、葵を傷付けてしまわない様にと、願うしかなかった。
もう、今日でお終いにしよう‥朝陽は、凛太朗にそう告げるつもりだ。
凛太朗が食器を片付け終わったのか、キッチンからコーヒーの良い香りがしてきた。
カフェでは、コーヒーは朝陽は自分で豆を挽き、ハンドドリップで入れているが、自分用は、ちょっと面倒になる事が多いので、自動で豆を挽きドリップしてくれるコーヒーマシンを用意してある。
「朝陽さん?カフェオレにする?コーヒーにする?」
キッチンから、そう聞こえたので、カフェオレ‥と返事をすると、はーいといそいそと牛乳を出している凛太朗を見て、クスッと笑う。
「は~い、おまたせ~」
そう言ってマグカップを朝陽に渡すと、すんなり朝陽の隣に、もう一つのマグカップを持った凛太朗が腰掛けた。
「‥‥っ‥‥」
2人掛け用のソファは狭く、男二人で掛けるとおのずと腕が触れてしまう。
「‥そうだ、俺ね、朝陽さんに話があったんだ‥」
触れている事に何の感覚もないのか、凛太朗がいつもの様に話し始めた。
「‥なんだ?」
自分も話したい事があったのに、先を越されてしまったと思いながら、返事を返した。
「んーあのね‥」
凛太朗がマグカップをテーブルに置くと、身体ごと朝陽の方に向き、狭いソファで今度は膝が触れ合う。
「俺、朝陽さんが好き」
真っ直ぐに見つめてくる凛太朗の瞳が、キラキラと輝いていた。
朝陽と凛太朗は2階の部屋で、凛太朗が買い込んできた鍋の材料で、寄せ鍋を作り一緒につついていた。
「美味しい?」
凛太朗が朝陽に聞くと、コクンと頷き箸を進める。
モグモグといっぱい食べる凛太朗につられているのか、朝陽もいつもより食が進んでいるような気がする。
「‥就職活動は、上手くいってるの?」
「あっ、まぁ‥人並みに‥?」
「なんだよ、人並みって‥うっかりしてると、機会を逃しちゃうからな。早目に進めて行かないと、良い会社は、どんどん決まってくんだぞ‥‥」
「‥‥分かってますよ‥」
「‥ならいいけど‥お前は、どんな会社に勤めたいんだよ‥」
朝陽はそう口にしながら、そう言えば凛太朗がどんな社会人になりたいのか、どんな夢を持っているのか、聞いたことが無かった‥と思った。
「んー俺は、朝陽さん達に出会う前までは、何でも良いかなぁ~って思ってたんだ。特にやりたい事もなくってさ、普通の会社に入って、普通に誰かと出会って、普通に結婚して、子供が出来て‥なんて、ホント普通の生活が夢っていうか‥当たり前みたいな‥。あー俺んち、父親しか居なくて、父子家庭?‥母親は俺が小さい頃に亡くなって、親父が一人で俺を育ててくれたから、その恩返しっていうか、安心させたいって思う気持ちが大きかったんだと思う」
白菜を口に運びながら、そう語る凛太朗に、自分は何も凛太朗の事を知らなかったんだと、朝陽は改めて感じていた。
「‥俺、知らなくて‥ごめんな‥」
「なんで、朝陽さんが謝るの?そんなの全然‥母親の事も、もう薄っすらとしか思い出せないし、だけど、親父は大変だったろうなって‥」
どうやったら、こんなに素直で真っ直ぐな男に育つのだろうと、朝陽はいつも思っていたが、それは父親がそうやって真っ直ぐに愛情を注ぎ、育ててくれたんだと実感した。
「そっか‥‥親父さんは、凄いな‥こんなに優しくて立派な息子に育てたんだから‥」
ふと感じた事が、そのまま口に出た。
「何それ?ふふっ‥俺を褒めてんの?」
嬉しそうに笑う凛太朗を見て、朝陽の胸がドキッと高鳴る。
「‥‥親父さんを褒めてんの!」
「クスクスッ‥あっ、そっか‥‥だから、俺は朝陽さん達に出会って、誰かを笑顔にするのは良いなぁ~って思ったんだよ。それで、俺はホテルマンを目指してる。限られた時間の中で、沢山の笑顔を作ってあげたい。それに携わりたいって思ったんだ」
目がキラキラとして見えるのは、自分がおかしいのだろか、笑顔が眩しく見えるのは、自分の卑しい気持ちが出てしまっているのだろうか、そんな事を考え、朝陽はそっと目を逸らした。
「そりゃ‥やりたい事が見つかって、良かったな‥頑張れよ‥」
「うん。頑張るね!」
そろそろ締めでうどんにするかおじやにするかと、二人で揉めて、結局、朝陽の希望でおじやになる。
卵を入れひと煮立ちさせると、鍋の具材の出汁が染みて旨い。
いつもより、沢山食べてしまい、朝陽のお腹がパンパンになる。
「俺、片付けるから、朝陽さんは食休みしてて‥」
そう言って、凛太朗はテキパキと食器を運び、片付け始める。
悪いな‥と思いつつも、満腹過ぎて動けない朝陽は、その言葉に甘えてソファにドサッと身を沈めた。
ひとりで食べる食事は、あんなにも味気なかったのに、誰かと食べる食事は、こんなにも楽しく美味しい。
そんな事を、改めて実感してしまうと、これから凛太朗に告げようとしている、自分の意思がグラリと揺れている。
天井を見ながら、きっとここにも葵が居るんだろうなーと考えていた。
葵の気持ちを考えると、朝陽の胸がギュッと痛みを発する。
そして今以上に、葵を傷付けてしまわない様にと、願うしかなかった。
もう、今日でお終いにしよう‥朝陽は、凛太朗にそう告げるつもりだ。
凛太朗が食器を片付け終わったのか、キッチンからコーヒーの良い香りがしてきた。
カフェでは、コーヒーは朝陽は自分で豆を挽き、ハンドドリップで入れているが、自分用は、ちょっと面倒になる事が多いので、自動で豆を挽きドリップしてくれるコーヒーマシンを用意してある。
「朝陽さん?カフェオレにする?コーヒーにする?」
キッチンから、そう聞こえたので、カフェオレ‥と返事をすると、はーいといそいそと牛乳を出している凛太朗を見て、クスッと笑う。
「は~い、おまたせ~」
そう言ってマグカップを朝陽に渡すと、すんなり朝陽の隣に、もう一つのマグカップを持った凛太朗が腰掛けた。
「‥‥っ‥‥」
2人掛け用のソファは狭く、男二人で掛けるとおのずと腕が触れてしまう。
「‥そうだ、俺ね、朝陽さんに話があったんだ‥」
触れている事に何の感覚もないのか、凛太朗がいつもの様に話し始めた。
「‥なんだ?」
自分も話したい事があったのに、先を越されてしまったと思いながら、返事を返した。
「んーあのね‥」
凛太朗がマグカップをテーブルに置くと、身体ごと朝陽の方に向き、狭いソファで今度は膝が触れ合う。
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真っ直ぐに見つめてくる凛太朗の瞳が、キラキラと輝いていた。
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