待ち人は、いつも傍に‥

白樫 猫

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29話

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朝陽が目を覚ますと、隣で凛太朗が穏やかな寝息を立てていた。
いつも自分に笑顔を向けてくる顔は、今は瞳を閉じて男らしさを感じてしまう。
少し開いた唇にそっと触れると、ビクッと眉を寄せ、ゆっくりと瞳を開き、朝陽を見て目尻を下げた。

「‥おはよう、朝陽さん」
「‥うん、おはよう」

昨夜は、まるで時間を埋めるかのように、葵と抱き合ったまま眠ってしまった。
まだ眠いのか、笑った顔の凛太朗が再び目を閉じるのを、じっと眺めていたい。
再び寝息が聞こえてくるのに、そう時間は掛からなかった。

「‥若いな」

いくらでも眠れるんだろう‥朝陽は、一度、目が覚めてしまうと、なかなか眠れなくなる。
このまどろんだ時間が、幸せ過ぎて布団から出にくくなる。
朝陽は、額に掛かった凛太朗の髪をスッと指で梳き、顔を近づけると、そこに口づけをした。

「おでこじゃやだな‥」

急に声がしたと思えば、凛太朗の瞳が開き、ぬっと伸びてきた手に後頭部を引き寄せられると、朝陽の唇が凛太朗の唇と重なり合う。
チュッと音を立て触れるだけの口づけを交わすと、朝陽の頬を両手で挟み、瞳や鼻‥頬に額に‥顔中にキスを降らせる。

「ちょっ‥ちょっと‥りん‥たろう‥」

キスの嵐は、凛太朗の気が済むまで続いた。
ようやく朝陽を離すと、真っ赤な顔をした朝陽が、プイッとベッドから抜け出していく。

「‥朝陽さん?‥怒ってる?」

心配そうな凛太朗が、慌ててベッドを降り後ろを付いて歩く。

「付いてくんなよ‥」

朝陽がトイレとバスルームに入るドアの前で、振り返り睨みつけた。

「‥ふふっ‥」

笑いながら付いてくる凛太朗を無視し、ドアを閉めようとしたら、それを抑え込まれ凛太朗がグイっと一緒に入ってくる。

「オイッ!‥トイレだよ‥っ‥‥」

そう口にした瞬間、後ろからギュッと抱き寄せられる。

「なっ‥なにすんだ‥」

凛太朗の唇が朝陽の首筋に当たり、熱い息が掛かる。
そしてスッと凛太朗の手が伸びると、朝陽の中心のモノに触れた。

「‥くっ‥ぁ‥‥」

朝陽は、思わず腰が引ける。

「‥ひとりでココ‥慰めるつもりなんですか?」

触れる前から立ち上がっていた陰茎を、ズボンの上からゆるゆると扱かれ、一気に血流が集まるのが分かった。

「‥やっ‥りん‥‥っ‥‥」

いつの間にか、下着の中に手を入れられ、凛太朗の大きな手が、絶妙な力加減で扱き上げ、タラリと垂れる蜜が滑りを良くする。

「‥はぁっ‥っぁ‥あっ‥」

ダラダラと湧き上がる蜜の入り口を指で触れると、ガクガクと朝陽の腰から力が抜け、凛太朗は後ろから片腕で支える。
荒い呼吸を繰り返している朝陽の首筋に舌を這わせると、ビクッと身体が反応し、凛太朗はそこに吸い付いた。

「‥‥んっ‥ぁ‥りん‥たろう‥‥」
「‥良いですよ‥イッて‥‥」

そう言うと、凛太朗はヌルリと濡れている陰茎を、強弱をつけ扱き上げた。

「んぁっ、ああっ‥あああっ‥‥」

無意識に朝陽の腰が動き、快楽を求め、身体がビクビクと震えだし、一気に扱き上げられた朝陽の雄は、凛太朗の手の中に精を吐き出した。
グッタリとした身体を持ち直すと、朝陽が潤んだ瞳で見上げた。
凛太朗は、愛しくて堪らない唇を塞ぐと、力強く抱き寄せた。







23時30分を過ぎた頃、朝陽と凛太朗は、真っ暗な道を歩いていた。

「寒くないですか?朝陽さん‥?」

ダウンジャケットにファーが付いているパイロットキャップを被り、厳重にマフラーを巻かれた朝陽は、動き辛そうに凛太朗を見上げた。

「‥俺が寒そうに見えるか?」

睨みつけた朝陽が可愛くて、凛太朗がクスクスと笑う。

「‥すみません‥クスッ‥」

今日は、大晦日。
新年を祝い初詣に行こうと、近所の神社まで徒歩で向かっている。
夜は寒いだろうと、出掛ける前に凛太朗にキャップとマフラーを巻かれた。
大丈夫だと取ろうとすると、悲しそうな顔をするので、グッと堪えそのまま出てきた。
自分はダウンコート一枚で、なんともないような顔をしている凛太朗を、チラリと見上げた。

「お前は、寒くないのか?」
「はい、心がポカポカですから‥」

そんなむず痒いセリフを言い出すので、それ以上、会話するのを諦めた。

「‥懐かしいな、大学3年の時か‥一緒に初詣に行ったな?」

そんな言葉が聞こえ、朝陽はハッと隣で歩いている男を見上げる。
ニコッと微笑みを返してきた葵は、おもむろに朝陽の手を握った。

「‥急に変わるの‥」

止めて欲しい‥と、いつも思っていたが、それを口にすることは無い。
握り締められた手が温かくて、くすぐったくて嬉しかった。

「あれは、お互いに就活が上手くいきますようにって、それで行ったんだよな?」

朝陽がそう言うと、葵もそうそうと頷く。

「今日は、凛太朗の就活が無事に終える様に願うか‥」

葵の口から出た言葉に、フフッと笑いを漏らす。

「そうだな‥ふふっ‥無事に就職出来て、親父さんを安心させてあげないとな‥」

朝陽は心から、そう思っていた。
無事に神社に到着したが、かなりの人出で込み合っている。
お参りする為に参道に並んでいると、ふいに後ろから声が聞こえてきた。

「あれ?凛太朗じゃね?」

朝陽は思わず繋いだ手を振り解き、凛太朗の身体がグラリと揺れ、葵が外れた。

「‥おう、健司、美佳‥奇遇だな‥」

振り向いた凛太朗は、いつもの笑顔を向け声を掛けた。
後ろに立っていた男女は、女性が男性の腕に寒そうにしがみ付いていた。

「凛太朗も、初詣?‥お前って、この辺に住んでんだっけ?」

そう言いながら、二人は朝陽にジロジロと視線を送る。

「あっ、住んでないよ。俺じゃなくて、恋人が住んでるから‥」

その言葉に、朝陽がギョッとした顔を向けた。

「えっ?‥お前、恋人いたっけ?‥この前、別れたって‥っ‥」

健司と言う友人の口を慌てて抑え込んだ凛太朗は、ヘヘッと朝陽に引き攣った笑顔を向けた。

「お前さ‥空気読めよ‥」

健司の耳元で、ドスの効いた声でそう囁く。

「えっ?どういう事?」

意味が分からずキョトンとしている健司に、凛太朗がコホンと空咳をした後に、朝陽の手をギュッと握った。

「‥‥俺の恋人」

ああ、何て事を言うんだ‥朝陽は頭の中が真っ白になり、いきなりカミングアウトする男に、眩暈がしそうになる。
凛太朗が残りの学生生活をどう送るのか、走馬灯の様に妄想が湧いてくる。

「‥ちっ‥ちが‥」
「えっ――!マジッ?‥なんか意外!」

朝陽が否定の言葉を口にしようとした瞬間、同時に健司が言葉を放っていた。
初めましてーッと、ニコニコと微笑みを浮かべ、朝陽に視線を送ってくる。

「可愛いでしょ?ふふっ‥」

いきなり惚気る凛太朗に、しかも、可愛いってなんだよ!朝陽の頬がカァーッと赤く染まり、俯くしかなかった。

「‥っ‥確かに」
「ちょっと、健司!‥それ以上言うと、私の立場がないでしょうが!」
「ふふっ‥ごめんごめん、分かってるよ。一番は美佳だよ‥決まってるでしょ?」

健司はそう言って、微笑みを浮かべ自分の腕にしがみ付いている美佳の手をギュッと握る。

「はいはい、イチャイチャは他所でやって下さいね~神様の前ですよ~」

凛太朗はそう言うと、じゃあな~と手を上げ、朝陽と繋いだ手をギュッと握り締め、再び参道を並び始めた。
友人の声が遠ざかっていく中、朝陽は口を開いた。

「あのさ‥いいのか?今からでも否定して来いよ‥俺達の関係」

心配そうな朝陽の顔に、また優しい笑顔を向ける。

「何言ってんの。本当の事じゃん。これで離れていくようなら、俺は友達なんてやってないよ。‥でも、俺は大丈夫だったけど‥ごめんね、朝陽さんは、嫌な気分になった?」

凛太朗が、捨て犬の様な顔をしてくる。

「いや、大丈夫だよ」
「‥良かった。ほら、カウントダウンが始まる‥」

周りの人達が、時計や携帯を覗き込みながら、一斉にカウントダウンを口にする。

「10・9・8・7・・・・」

朝陽も凛太朗も、周りにつられながら一緒に叫ぶ。

「‥5・4・3・2・1!!ハッピーニューイヤー!!」

叫び声と共に、歓声が沸き立つ中、凛太朗は朝陽の唇にチュッと口づけした。

「今年もよろしくお願いします。朝陽さん」

そう言って抱き寄せられた身体から、温かい体温を感じて、ギュッと両手を凛太朗の背に回した。
耳元で再び声が聞こえた。

「‥朝陽さん、愛してます」


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