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火を恋う青蛾は焔に焼かれ
18話
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大石は病室を出て廊下を進み、電話が出来るスペースまで向かうと、ドスンとベンチに腰掛け、携帯を取り出し電話を掛けた。
相手はすぐに出た。
「もしもし‥どうだ、傷は?」
『ああ、大したことない‥それより‥あいつは?』
銃で撃たれといて大したことないとは‥と、大石はフンッと鼻で笑う。
「ああ、もう歩いてる‥大丈夫だ。身体はな‥」
『‥そうか』
嬉しいのか、悲しいのか、感情のない声が聞こえる。
「お前さー俺がどんだけ苦労してるか分かってる?なんで俺が説得する方?‥おかしいでしょ?話くらい自分でしとけって‥」
『‥ああ‥悪いな‥』
「俺、悪もんだよ?‥警察官なのに‥悪役って‥なんで?」
『クックッ‥‥悪い‥』
獅道は、大石がわざと自分を元気づけようとして言ってくれているのだと、分かっていた。
「はぁ~まぁ、お前が大丈夫ならいい‥こっちは心配するな。なんとなる‥」
『‥ああ』
「ひとつだけ確認させてくれ‥‥本当に、黒須響が、この世から消えても‥良いんだな?」
電話口の向こうで、獅道が一呼吸するのが聞こえた。
『‥ああ、俺はもう覚悟を決めた。もう二度と‥あいつの前には顔を出さない』
「‥‥うん、そうしてくれ‥じゃあ、後は任せろ」
『‥啓司‥助かった。本当に、ありがとう』
電話は切れた。
大切な人の傍にいたいと願う響と、大切な人に平坦で平和な人生を歩んで欲しいと願う獅道、どちらも間違いではないし、どちらが正解かは分からない。
人生とは厄介だな‥。
大石は少なくとも二人には、この決断を後悔して欲しくない‥と、何度目か分からない溜息を付いた。
「はぁ~なんだか上手くいかないな‥」
「チャオ~!」
陽気に病室に入ってきたのは葉月で、ベッドで身体を起していた響が、嫌悪感を隠そうともせず、目を細め眉を顰める。
「なんだなんだ?暗いぞ顔が‥ん?どうした?‥響君」
おちゃらけているのはいつもの事で、あれから毎日、夕方になると病室へ面会に来るようになってしまった。
響が返事をしない事も、気にする様子もなく1人でしゃべり続ける。
「今日は何してたのかな?」
どれどれと近づき、響が手に持っている本を持ち上げた。
「ほうほう‥推理小説ですか、これ面白いよねー」
前に大石が見舞いに来た時に、沢山持って来た本の中の一冊だった。
「あのさー毎日来るの、止めてくんない?」
嫌そうに言われ、葉月はハッと泣きそうな顔をして、倒れ込むようにベッドに顔を埋める。
「オイッ!ふざけるな・・」
響の暴言に、クスクスッとくぐもった笑い声が聞こえる。
葉月の肩が笑いで震え、そんな男の頭を冗談めかしでバシッと叩く。
「クスクスッ‥ふざけてないよ‥」
そう言いながら、顔を埋めた布団からチラリと響を見上げると、響の顔がみるみるうちに血色がよくなる。
「‥っ‥あざとい!‥それに可愛くない!!」
あっさりとそっぽを向かれ、葉月はチッと舌打ちをした。
「そうだ、今日は良いモノ持って来たよー」
ジャジャーンと効果音まで付けながら、葉月は紙袋を響に渡した。
「えっ?‥なに?」
嬉しそうに渡してくる葉月に、うっかり笑顔で受け取ってしまう。
紙袋を開き中から箱を取り出すと、それは新型の携帯だった。
「‥うっそ‥いいの?」
満面の笑顔を自分に向けてくる響に、葉月はコクンと頷いた。
「‥気に入った?」
そう聞くと、うんと明るい返事が聞こえ、葉月はクスリと笑う。
響は早速携帯を箱から出すと、手慣れたものですぐに充電器を繋く。
本当に嬉しそうな顔をして、携帯の設定を始める響を見ていたが、そろそろ帰るねと葉月が立ち上がった。
「あっ、お前の番号教えろよ」
「‥お前って‥葉月さんだろ?」
葉月はワザと眉間に皴を寄せ、文句を言うが、ケタケタと笑い相手にされない。
実際には葉月も24歳で響と同じ年だった。
それを何かの話の流れで響に知られてから、急に距離が近くなり、敬語もすぐになくなった。
ブツブツ言いながらも、響に番号を教えると、じゃあなと響の頭を撫で、病室を出て行く。
廊下に出てドアを閉め数歩進むと、そのドアを心配そうな顔をして振り返る。
「‥‥乗り越えろよ‥響‥」
そう呟いて、立ち去った。
響に携帯を渡すという事は、自分自身で誰にでも連絡が出来るという事で、その事が、どれくらい危険なのかは、携帯を渡す前に大石と二人で話し合った。
おそらく、もうすぐ退院になるだろう、それまでに徐々に慣らしておく必要があると、そう結論付けた。
だが、葉月には不安が残っている、それでなくても、あれから響は獅道の話を一切しなくなった。
だけど、心の奥には獅道への想いが、まだまだ沢山あるのだと知っているだけに、後ろ髪引かれる思いで葉月は病院を後にした。
相手はすぐに出た。
「もしもし‥どうだ、傷は?」
『ああ、大したことない‥それより‥あいつは?』
銃で撃たれといて大したことないとは‥と、大石はフンッと鼻で笑う。
「ああ、もう歩いてる‥大丈夫だ。身体はな‥」
『‥そうか』
嬉しいのか、悲しいのか、感情のない声が聞こえる。
「お前さー俺がどんだけ苦労してるか分かってる?なんで俺が説得する方?‥おかしいでしょ?話くらい自分でしとけって‥」
『‥ああ‥悪いな‥』
「俺、悪もんだよ?‥警察官なのに‥悪役って‥なんで?」
『クックッ‥‥悪い‥』
獅道は、大石がわざと自分を元気づけようとして言ってくれているのだと、分かっていた。
「はぁ~まぁ、お前が大丈夫ならいい‥こっちは心配するな。なんとなる‥」
『‥ああ』
「ひとつだけ確認させてくれ‥‥本当に、黒須響が、この世から消えても‥良いんだな?」
電話口の向こうで、獅道が一呼吸するのが聞こえた。
『‥ああ、俺はもう覚悟を決めた。もう二度と‥あいつの前には顔を出さない』
「‥‥うん、そうしてくれ‥じゃあ、後は任せろ」
『‥啓司‥助かった。本当に、ありがとう』
電話は切れた。
大切な人の傍にいたいと願う響と、大切な人に平坦で平和な人生を歩んで欲しいと願う獅道、どちらも間違いではないし、どちらが正解かは分からない。
人生とは厄介だな‥。
大石は少なくとも二人には、この決断を後悔して欲しくない‥と、何度目か分からない溜息を付いた。
「はぁ~なんだか上手くいかないな‥」
「チャオ~!」
陽気に病室に入ってきたのは葉月で、ベッドで身体を起していた響が、嫌悪感を隠そうともせず、目を細め眉を顰める。
「なんだなんだ?暗いぞ顔が‥ん?どうした?‥響君」
おちゃらけているのはいつもの事で、あれから毎日、夕方になると病室へ面会に来るようになってしまった。
響が返事をしない事も、気にする様子もなく1人でしゃべり続ける。
「今日は何してたのかな?」
どれどれと近づき、響が手に持っている本を持ち上げた。
「ほうほう‥推理小説ですか、これ面白いよねー」
前に大石が見舞いに来た時に、沢山持って来た本の中の一冊だった。
「あのさー毎日来るの、止めてくんない?」
嫌そうに言われ、葉月はハッと泣きそうな顔をして、倒れ込むようにベッドに顔を埋める。
「オイッ!ふざけるな・・」
響の暴言に、クスクスッとくぐもった笑い声が聞こえる。
葉月の肩が笑いで震え、そんな男の頭を冗談めかしでバシッと叩く。
「クスクスッ‥ふざけてないよ‥」
そう言いながら、顔を埋めた布団からチラリと響を見上げると、響の顔がみるみるうちに血色がよくなる。
「‥っ‥あざとい!‥それに可愛くない!!」
あっさりとそっぽを向かれ、葉月はチッと舌打ちをした。
「そうだ、今日は良いモノ持って来たよー」
ジャジャーンと効果音まで付けながら、葉月は紙袋を響に渡した。
「えっ?‥なに?」
嬉しそうに渡してくる葉月に、うっかり笑顔で受け取ってしまう。
紙袋を開き中から箱を取り出すと、それは新型の携帯だった。
「‥うっそ‥いいの?」
満面の笑顔を自分に向けてくる響に、葉月はコクンと頷いた。
「‥気に入った?」
そう聞くと、うんと明るい返事が聞こえ、葉月はクスリと笑う。
響は早速携帯を箱から出すと、手慣れたものですぐに充電器を繋く。
本当に嬉しそうな顔をして、携帯の設定を始める響を見ていたが、そろそろ帰るねと葉月が立ち上がった。
「あっ、お前の番号教えろよ」
「‥お前って‥葉月さんだろ?」
葉月はワザと眉間に皴を寄せ、文句を言うが、ケタケタと笑い相手にされない。
実際には葉月も24歳で響と同じ年だった。
それを何かの話の流れで響に知られてから、急に距離が近くなり、敬語もすぐになくなった。
ブツブツ言いながらも、響に番号を教えると、じゃあなと響の頭を撫で、病室を出て行く。
廊下に出てドアを閉め数歩進むと、そのドアを心配そうな顔をして振り返る。
「‥‥乗り越えろよ‥響‥」
そう呟いて、立ち去った。
響に携帯を渡すという事は、自分自身で誰にでも連絡が出来るという事で、その事が、どれくらい危険なのかは、携帯を渡す前に大石と二人で話し合った。
おそらく、もうすぐ退院になるだろう、それまでに徐々に慣らしておく必要があると、そう結論付けた。
だが、葉月には不安が残っている、それでなくても、あれから響は獅道の話を一切しなくなった。
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