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花を貪る胡蝶は蜘蛛の網にかかる
15話
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翌日、昼過ぎに起きた神代はTシャツにスェットというラフな服装で、髪の毛もボサボサのまま事務所の奥の居住スペースにあるソファに座った。
神代探偵事務所は、入り口から左に入ると、依頼人と話をするスペースがあるが、右側は神代が住んでいる空間だ。
ただ広いだけのフロアに、仕切り棚や衝立などを設置し区切っているだけだが、フロアの隅には風呂やトイレもあり、キッチンも備えている。
一番奥のスペースには、神代が寝ているベッドがカーテンで仕切れるようになっているが、ほとんどそのカーテンは開きっぱなしだ。
「オイッ‥顔くらい洗え‥」
のっそりと出てきてソファに座る神代に向かって、葉月がキッチンから声を掛けると、チラリと目を開き葉月を一瞥した神代は、すぐまた目を閉じる。
「まだ寝るのかよ!」
「はぁ~うるさい‥」
ボソリと呟くと神代は、洗面台へ歩いていく。
「聞こえてるからなー!‥まったく‥」
憎まれ口を聞いても、いそいそとキッチンでは神代のご飯を用意したりするのは、どうしてだろうと、ふと自問自答してみるも、結論が出る事は無い。
葉月は、たまに自分の面倒見の良さを呪いたくなる時もあった。
キッチンの前に置かれているダイニングテーブルには、遅い朝食に卵焼きや納豆、ほうれん草のおひたし、具沢山の味噌汁などが並べられ、顔を洗ったのか相変わらず不愛想な神代がテーブルに付くと、葉月がよそったご飯を目の前に置く。
「‥‥いただきます‥」
神代がボソッと挨拶を口にすると、葉月も一緒にテーブルに着き、手を合わせて、いただきます‥と食べ始める。
「‥で?昨日のあれで‥‥なんか‥‥分かった‥?」
モグモグと食べながら話す葉月を、相変わらず無視している神代。
「‥俺はさ‥‥自殺かな‥って‥‥思う‥」
箸を神代に向けながら、自分の推理を披露する葉月に、神代はチラリと視線を送った。
「箸を人に向けるな、バカ‥」
「お前もそう思うだろ?‥だけどな‥‥なんで‥あんな場所で‥‥」
頬いっぱいにご飯を詰め、首を傾げている葉月が、本当に残念な男に見えてくる。
「食うかしゃべるかどっちかにしろ!」
むっとした神代がそう言うと、葉月は口の中のご飯をゴクンと凄い音を立て飲み込んだ。
「いいじゃねぇか、二人しかいないんだし、しゃべったって‥楽しく会話しながら食事したいのよ‥俺は!」
プンプンしながら卵焼きを頬張ると、一緒に白飯も頬いっぱい口の中に入れる。
その様子を見ていた神代は、呆れた様にため息を付いた。
食事も終わった頃、事務所のブザーが鳴り、勢いよく入り口のドアが開いた。
「おーい!神代いるか?」
でかい声が聞こえ、神代はまたも溜息を付く。
ドスドスと歩く音がし、駆け込んできたのは大石だった。
「はぁ~大石さん、あなたって本当にマナーがなってませんね‥」
溜息を付きながら話す神代の頭を、大石がグシャグシャとかき回すと、仕返しとばかりに口を開く。
「おいおい、それをお前に言われるとは思わなかったぜ‥なぁ、葉月‥」
ニヤリと話す大石に、葉月は‥どっちもどっちですけどね‥と呟いた。
「で?なんですか?今日は‥」
神代が大石の手を振り払い、髪の毛を手櫛で整えながら口を開く。
「お前が調べろって言ったんだろ?ボヤ騒ぎがあったかどうか‥」
大石の言葉に、神代が身を乗り出した。
「分かったんですか?」
「ああ、調べたぜ、1月から3月までの期間、あの周辺で不審なボヤ騒ぎがあったのは2件だ」
「3カ月で‥2件‥それで場所は‥?」
神代の食いつきに、嬉しそうな大石が胸のポケットから手帳を出す。
「1件目、2月10日これがなんと、東条凜乃が通っている学校の音楽室。時間は13時50分頃、棚の楽譜やらが燃えて、生徒がすぐに気が付いて消火。原因は不明。2件目は3月16日の18時30分頃、東条の屋敷の近所の公園でボヤ騒ぎがあった。幸い近所の人が早く気が付いて消火出来た。やはり原因は不明」
原因不明のボヤが2件。
しかも東条家と関係ありそうな場所で‥神代はカレンダーを引っ張り出し見てみると、2月10日は月曜。3月16日は日曜‥。
「なるほど‥これで確定ですね。力を持っているのは凜乃さんで間違いないでしょう」
神代の言葉に、二人は同意するように頷いた。
「力のコントロールは難しい。まして力が発現したばかりの頃は、感情にすごく左右される‥俺もそうだったから‥」
神代が考え込むように言葉を止める。
「あと少し‥何か決定的なものが‥‥」
神代はそう言って、チラリと大石を見上げた。
すぐ脇に立っていた大石が、俺?と自分を指さすと、神代の顔に微笑みが浮かんだ。
悪魔の様な微笑みだな‥と葉月は横で見ていた。
「葉月‥お前にも調べて欲しい事がある‥」
他人事じゃなかった‥自分にも降りかかってきた事に、葉月はガックリと項垂れた。
それから3日間は、大石に調べ物をしてもらいながら、神代と葉月はバラバラに行動する事になる。
神代探偵事務所は、入り口から左に入ると、依頼人と話をするスペースがあるが、右側は神代が住んでいる空間だ。
ただ広いだけのフロアに、仕切り棚や衝立などを設置し区切っているだけだが、フロアの隅には風呂やトイレもあり、キッチンも備えている。
一番奥のスペースには、神代が寝ているベッドがカーテンで仕切れるようになっているが、ほとんどそのカーテンは開きっぱなしだ。
「オイッ‥顔くらい洗え‥」
のっそりと出てきてソファに座る神代に向かって、葉月がキッチンから声を掛けると、チラリと目を開き葉月を一瞥した神代は、すぐまた目を閉じる。
「まだ寝るのかよ!」
「はぁ~うるさい‥」
ボソリと呟くと神代は、洗面台へ歩いていく。
「聞こえてるからなー!‥まったく‥」
憎まれ口を聞いても、いそいそとキッチンでは神代のご飯を用意したりするのは、どうしてだろうと、ふと自問自答してみるも、結論が出る事は無い。
葉月は、たまに自分の面倒見の良さを呪いたくなる時もあった。
キッチンの前に置かれているダイニングテーブルには、遅い朝食に卵焼きや納豆、ほうれん草のおひたし、具沢山の味噌汁などが並べられ、顔を洗ったのか相変わらず不愛想な神代がテーブルに付くと、葉月がよそったご飯を目の前に置く。
「‥‥いただきます‥」
神代がボソッと挨拶を口にすると、葉月も一緒にテーブルに着き、手を合わせて、いただきます‥と食べ始める。
「‥で?昨日のあれで‥‥なんか‥‥分かった‥?」
モグモグと食べながら話す葉月を、相変わらず無視している神代。
「‥俺はさ‥‥自殺かな‥って‥‥思う‥」
箸を神代に向けながら、自分の推理を披露する葉月に、神代はチラリと視線を送った。
「箸を人に向けるな、バカ‥」
「お前もそう思うだろ?‥だけどな‥‥なんで‥あんな場所で‥‥」
頬いっぱいにご飯を詰め、首を傾げている葉月が、本当に残念な男に見えてくる。
「食うかしゃべるかどっちかにしろ!」
むっとした神代がそう言うと、葉月は口の中のご飯をゴクンと凄い音を立て飲み込んだ。
「いいじゃねぇか、二人しかいないんだし、しゃべったって‥楽しく会話しながら食事したいのよ‥俺は!」
プンプンしながら卵焼きを頬張ると、一緒に白飯も頬いっぱい口の中に入れる。
その様子を見ていた神代は、呆れた様にため息を付いた。
食事も終わった頃、事務所のブザーが鳴り、勢いよく入り口のドアが開いた。
「おーい!神代いるか?」
でかい声が聞こえ、神代はまたも溜息を付く。
ドスドスと歩く音がし、駆け込んできたのは大石だった。
「はぁ~大石さん、あなたって本当にマナーがなってませんね‥」
溜息を付きながら話す神代の頭を、大石がグシャグシャとかき回すと、仕返しとばかりに口を開く。
「おいおい、それをお前に言われるとは思わなかったぜ‥なぁ、葉月‥」
ニヤリと話す大石に、葉月は‥どっちもどっちですけどね‥と呟いた。
「で?なんですか?今日は‥」
神代が大石の手を振り払い、髪の毛を手櫛で整えながら口を開く。
「お前が調べろって言ったんだろ?ボヤ騒ぎがあったかどうか‥」
大石の言葉に、神代が身を乗り出した。
「分かったんですか?」
「ああ、調べたぜ、1月から3月までの期間、あの周辺で不審なボヤ騒ぎがあったのは2件だ」
「3カ月で‥2件‥それで場所は‥?」
神代の食いつきに、嬉しそうな大石が胸のポケットから手帳を出す。
「1件目、2月10日これがなんと、東条凜乃が通っている学校の音楽室。時間は13時50分頃、棚の楽譜やらが燃えて、生徒がすぐに気が付いて消火。原因は不明。2件目は3月16日の18時30分頃、東条の屋敷の近所の公園でボヤ騒ぎがあった。幸い近所の人が早く気が付いて消火出来た。やはり原因は不明」
原因不明のボヤが2件。
しかも東条家と関係ありそうな場所で‥神代はカレンダーを引っ張り出し見てみると、2月10日は月曜。3月16日は日曜‥。
「なるほど‥これで確定ですね。力を持っているのは凜乃さんで間違いないでしょう」
神代の言葉に、二人は同意するように頷いた。
「力のコントロールは難しい。まして力が発現したばかりの頃は、感情にすごく左右される‥俺もそうだったから‥」
神代が考え込むように言葉を止める。
「あと少し‥何か決定的なものが‥‥」
神代はそう言って、チラリと大石を見上げた。
すぐ脇に立っていた大石が、俺?と自分を指さすと、神代の顔に微笑みが浮かんだ。
悪魔の様な微笑みだな‥と葉月は横で見ていた。
「葉月‥お前にも調べて欲しい事がある‥」
他人事じゃなかった‥自分にも降りかかってきた事に、葉月はガックリと項垂れた。
それから3日間は、大石に調べ物をしてもらいながら、神代と葉月はバラバラに行動する事になる。
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