「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第2章 姫

30話 秘書との依頼②

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 セレットと秘書が旅立った日の晩。ウテナは急いでいた。彼女が目指す場所はとある一室。その部屋の主はセレットだ。

 彼女は城の中ではしたないと思われないぎりぎりの速度で歩く。いや、半分は走っていると言う方が近いかもしれない。

 そして、目的地に到着し、呼吸を整えてからノックする。

コンコン

「………………」

不思議に思った彼女はもう一度ノックをする。

コンコン

「………………」
「ん?」

 いつものならいる時間。しかも、彼がいる時はすぐに返事が返ってくる。最初からノックするのが分かっていたのではないだろうかと言うほどに彼の行動は早い。

「どこかに行っているのか?」

 彼女は楽しみにしていた。ここ最近は敬愛するロネ姫のお世話をしていて、ほとんど自分の時間が無かった。

 でも、遂に働き過ぎだと思ったのか、ロネ姫から1日休みとして貰えたのだ。ウテナがそれを喜ばない訳がなかった。

 そして、その休日中に、セレットとどこかに出掛けられないか。そう思ってここに来たのだが、セレットはどうやら留守らしい。

 ウテナはセレットがどこにいるのかを考える。

(彼なら……龍脈か? それとも訓練場? 他に彼が行く所はあったりするのだろうか?)

 彼女はセレットの部屋の前でうんうんと考え続ける。セレットが行くならどこか? と。

 そこへ、隣の部屋から中年の騎士が出てくる。

 それを見た彼女はこれ幸いと彼に聞く。

「あの、セレット……この部屋の人が何処に行ったかしらないか?」
「これはウテナ様……。セレット殿でしたら何でも依頼でどこかに行かれましたぞ? 確か……あの……『創製』の2つ名の……」
「アイシャか?」
「ああ、はい。そうです。その方の秘書? をしている方と出掛けたと聞いています」
「何だと……」

 ウテナの雰囲気が一気に重くなる。その感情を隠そうともせずに、目の前に立つだけの哀れな騎士は逃げを選択した。

「た、確かそうだったと思うなーという訳ですので。どこかで一度確認することをおススメします! それでは私は用事がありますので、失礼しますー!」

 中年の騎士はそう言って小走りに走り去ってしまった。

「折角の休みなのに……。どうして、どうしてこんなことに……」

 彼女はその情報を確かめた後、それから1日。ただひたすらレイピアを振り続けた。

******

 秘書と依頼の物を受けとり、宿で一泊する。

 そして、俺達はその日の翌日に出発した。

 いい天気の下、森の中を秘書と共にスレイプニルに乗って行く。

「にしても何だったんだろうな。よくわからない依頼だったし」
「ですねぇ。あっちの依頼の品を受け取る時も何も無かったですし……」
「宿屋でも何もなかったよな? やたら同じ部屋にしようと言ってきていたが……」
「セレットさんを誰かとくっつけたがっているんじゃないですか? この前はアイシャさんやパルマさんとデートに行ったんでしょう?」
「いや? ただの依頼で出掛けて来ただけだぞ?」
「セレットさん。本当に刺されても知りませんからね……?」
「掴まれ!」
「!?」

 俺はスレイプニルに鞭を打ち、走る速度をあげさせる。

 秘書は驚いて俺にしがみ付くが仕方ない。むしろそれでいい。今は急がなければ。

 だが、そんな俺の思いとは裏腹に囲まれてしまった。

「間に合わなかったか……」
「がるるるるるるるる!!!」

 周囲には何体もの魔物が俺達を取り囲んでいた。その魔物は狼型で体の毛皮は緑色をしている。口から伸びる牙は鋭く、人など簡単に殺せそうだ。

 急いで逃げるつもりだったが、関係なかったようだ。

「セレットさん……あれ……」

 秘書が刺す方向には、人や馬だった物のなれの果てが転がっていた。

「昨日はあんなの無かったよな?」
「はい……。しかも、あの緑色の魔物はフォレストウルフ。Cランクに分類されています。群れで森に住み、集団で狩りをする魔物です。でも、街道に出てくるなんて話は聞いたことがないですよ」
「俺も聞いたことがない。依頼を受ける時に街道上は安全だということも聞いていた」

 しかし、現にフォレストウルフが俺達を囲んでいる。もしかしてその情報が間違っていたか、何か異変でもあったのか……。

 どちらにしろ魔物の群れだ。油断はすることが出来ない。

 俺の後ろには秘書もいるし、スレイプニルも周囲を睨みつけているが、これだけの数はかなり危険かもしれない。

「自衛のための魔法は使えるか?」
「すいません。……私はあんまりそういった魔法には……」
「いやいい。ただ、俺は降りて戦ってくるが、待っていてくれるか?」
「本当ですか? 逃げたらアイシャさんに言いつけますよ?」
「大丈夫だ。何とかする」
「わかりました……。お願いします」
「ああ」

 俺は彼女にそう返してスレイプニルから降りた。

 彼女には大丈夫と言ったが不安は残る。感覚で把握できるだけでも周囲に30体以上は囲んでいるようだった。

 ここが龍脈であれば問題はない。必要なだけの龍力を使い身体を強化できる。だが、ここは外、体に取り込んだ龍力は長く保存出来て1日といった所。専用のアーティファクトがあればその限りではないが今はない。

 俺の相棒にはその機能が備わっているが、今回はなく代わりに城に置いてあった剣を借りてきていた。

「といってもやるしか無いからな。手加減は出来ん。覚悟してくれ」

 俺は聞えているかも分からないフォレストウルフ達に向かって言い放つ。そして、体中に魔力を巡らし体を強化する。

「がるるるるるるるる!!!」

 フォレストウルフが飛びかかってくる。その狙いはスレイプニル。まずは食いごたえがありそうな奴からということか。

「遅い」

 俺は剣を抜く必要すら感じず、飛びかかってくるフォレストウルフの横っ面をかかとで蹴り飛ばす。

「きゃいん!!!」
「がるるるるるるるる!!!」

 蹴り飛ばした隙に、他フォレストウルフが俺に向かって襲い掛かってくる。

 その数10体。それぞれがタイミングをずらし、狙う場所を変えて相当な連携をして攻撃を仕掛けてくる。

「連携はいいが、その程度の数で勝てると思うな」

 俺は右手で剣を抜き放ち、一太刀で2体の首を斬り飛ばす。

 同時に斬り飛ばせなかった所からの攻撃は裏拳で叩き潰した。残り7体。

 近づいてくる一体に近寄り、拳で殴り飛ばす。その飛んでいく方向を調整して、2体のフォレストウルフを巻き込んだ。 残り4体。

「はっ!」

 後ろから近づいてきていたフォレストウルフを縦に真っ二つにして残り3体……。

「あれ?」

 そこで、残りの3体は既に森の中に逃げ込んでいた。というか、様子を伺っていた他の20体も既にいない。

 俺は瞬時に追撃を選択する。フォレストウルフを追いかけ、3体共首を刈り取る。

「これ以上は危険か」

 あまり彼女から離れると守れないかもしれない。

 急いで彼女の元に戻り、周囲を警戒する。

「無事か?」
「え? あ、はい。今……何をしたんですか?」
「ん? フォレストウルフを倒しただけだよ。あれ以上は追いかけられないから放置するしかないけど」
「かなりの数いませんでした?」
「いたけど、まぁ、龍に比べたら大したもんじゃないし。力も入れなくて結構簡単に倒せたよ」
「やっぱりセレットさんは規格外なんですね……」
「そうかな? っと、騎士の人達が来たぞ」

 俺の感覚に馬に乗って走ってくる人々が感じる。

 その感覚は正しく、少し遠くに騎士らしき人達が見えた。

「前々から思ってましたけど、セレットさんの感覚って鋭すぎませんか?」
「そうだな……。龍脈で寝泊りしてると感覚が鋭くないと死ぬからな。命賭けでやれば鋭くもなる」
「そんな簡単にならないと思うんですけど……」

 事を話していると、騎士たちが近づいてくる。そして、馬上から聞いてきた。

「お前達! 何があった!」
「帝都に向かっている最中にフォレストウルフに襲われたから倒しただけだよ。そこら中に散らばってるだろ?」

 俺は騎士に残骸を指さす。ちゃんと形を残して倒したから大丈夫だ。

「何……? 確かに本当にフォレストウルフの死体だ。だが、街道に出たということは聞いたこともない」

 騎士は馬から降りて調べている。

「そうなのか?」
「ああ、街道からそれなりに離れた深い森、都市で言うとガンプノスに近い森ではいる。しかし、そこからここまではそれなりの距離があるはずなのだ。それがどうして……」
「そこの森で異変があったりしないのか?」
「そんな話は聞いていないが……。もしかしたら強い魔物が発生しているのかもしれない。報告はしておこう」
「分かった。魔物の処理は任せていいか?」
「む、自分たちで解体して売ることもできるがしないのか?」
「ああ、俺はそんなこと必要ないからな。それじゃあ、これで失礼させてもらう」
「討伐感謝する」
「気をつけてな。10体程倒したが、20体位には逃げられた。多分。まだ森にいると思う」
「早速討伐隊を組むとしよう」

 そうして、俺達は別れて皇都カイガノスを目指しスレイプニルを走らせる。

 帰り道は特に問題はなかった。

「……むう」
「どうかしましたか?」
「いや、どうもしない……」

 特に問題は無かったのだが、秘書がさっきよりも体の距離が近かった気がするのだ。何でそう思うかというと、スレイプニルを走らせている時に彼女の立派な柔らかい何かが背中に当たり続けていた。

 彼女はいつもゆったりしたローブを着ていて、体型は余りわからない。だから、こんなにも大きいとは思わなかったのだ。

 そのちょくちょく当たる何かを気にしながらの行軍はかなり心に来るものがある。

 しかし、俺は何とか耐えきり、皇都カイガノスに到着した。

 城について秘書と話す。

「しかし、この依頼は何が目的だったんだろうな?」
「うーん。なんでしょうね。でも、きっとセレットさんにとって悪いことじゃないと思いますよ?」
「そうなのか?」
「多分ですけど、だって、楽しかったのではないですか? 出掛けたことや、観光とか、どうです?」
「そう言われると確かに……」
「でしょう? なので、心配しなくても大丈夫ですよ」
「秘書がそう言うなら分かったよ。信じてるからな」
「……。それでは失礼しますね」

 彼女はそう言って帽子を深く被ると俺に背を向ける。そして、そのままスタスタと歩き去ってしまった。

「気をつけてな」

 俺がそう声をかけると、彼女は頭をペコリを下げる。


 そして、意味の分からない依頼のこれで終わりを迎えた。

 新たに下された依頼は単純明快。内容は皇女殿下、ロネ姫の護衛だった。
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