最強すぎて追放された【最強】スキル持ちの最強魔剣士、〈最強〉を目指して最強に険しい道を進み真の最強に至る

土偶の友

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5章

106話 国境の警備

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「『広域探知サーチ』」

 俺は目の前のある砦を重点的に調査する。
 そして、助けるべき者、殺すべき者。
 全てを見通す。

 砦は3階、2階、1階、地下1階、地下2階となっていて、助けるべき人は地下2階に固まっているように見えた。
 それ以外にもまばらに散らばっているように感じる。
 なので、まずはこれだ。

「『氷結領域アイスゾーン』」

 敵も助けるべき者も全て凍り付かせる。
 1人……それから抜け出せる者がいるようだけれど、今は後回しでいいだろう。

 俺は、地下2階にいる、今にも死に瀕している者達を救出に向かった。

 ドガッ!

 俺は砦の壁を殴って盛大に壊す。
 この砦は邪魔だ。
 後々壊すつもりなので、そのままにすることは全くない。

 中に入ると、俺はそのまま地下2階へ向かう。
 道中の兵士達も氷漬けにされていて、俺を驚いた目で見ているが関係ない。
 放置してそのまま下に向かった。

「これは……酷いな」

 ひどい悪臭のする地下2階。
 そこはボロボロになった魔族の女性たちで埋め尽くされていた。
 俺は彼女たちの魔法を解くけれど、ほとんど動くことはない。

 そもそも、裸のまま地面に置かれていたり、壁と手錠で拘束されている。
 数人は俺の方を見ると、目を見開いた。

「お前、立てるか?」
「あ……う……」
「ん?」

 俺は彼女を見ると、彼女ののどには酷い傷跡が残っている。
 恐らく、声を出せないように潰しているのだろう。
 よくよく確認すると、地面に転がされている女性のアキレス腱は断ち切られている者がほとんどだった。

「よく耐えたな……」
「あ……あぁ……」

 俺は見つめ返して来た女性を抱き締め、安心させる。
 俺は本物の魔族ではない。
 でも、この女性が安心出来るのであれば、それは些細ささいなことだと思う。

 それよりも、今はしなければならない事がある。

 俺は『収納』からポーションを取り出し、それを目の前の少女の口に押し込む。

「んむ!?」
「飲め。それで楽になる」
「んむむむ!?」

 少し暴れているけど、俺はそのままポーションを飲ませ続けた。
 少しすると、彼女の体が光りだして肌のつやがよくなる。

「ぷは! 何するんですか!?」
「何って……ポーションを飲ませただけだが?」
「ポーション……? それって……かなり高価なモノなんじゃ……」
「俺にとっては余るほどある。気にするな」
「でも……どうやってここに……?」
「周囲が凍っているだろう? 俺がやった」
「そんな! そもそもここにはグンドラがいるんですよ!? どうやって……」
「グンドラ?」
「この国境第4警備部隊の総隊長です! そいつが……そいつが……」
「なるほど。今はこの砦の中をうろうろしているな。氷も砕いている。これはそこそこ戦えそうだな」
「なんでそんな楽観視しているんですか!」
「治療したばかりでそう熱くなるな。それと……これを使え」
「はい?」

 俺は『収納』から大量のポーションを地面におく。

「これは……」
「全てポーションだ。この砦に囚われている者達に飲ませてやれ」
「え……でも……これって高価なモノで……私達には支払えません」
「いい。俺は金なんかの為にやっているのではない。俺がやらなければならないと思っているからやっているに過ぎないのだ。いいから飲ませて回れ」
「……いいんですか?」
「ああ、俺は……やるべきことがあるからな。だから他の者達は任せたぞ?」
「はい! ありがとうございます!」
「おっと。後はこれも持っておけ」

 俺は再び『収納』を使い、今度は小さな人形を取り出す。

「それは?」
「これはバトルドール。対象の護衛をし続ける魔道具だ」

 俺はそう言って、人形の魔道具を起動し、目の前の少女に指揮権を譲る。

「お前に指揮権を譲った。もしも敵が来たらこれに戦わせろ」
「そんな……絶対貴重なモノだと思うんだけど……」
「俺には不要だ。いいから、倒れている仲間がいるのだろう? 全員分あるはずだ。急いで助けにいけ」
「この御恩は忘れません!」

 彼女はそう言って、近くにいる女性たちの口にポーションを注ぎ込んでいく。

 俺はその様子を見て、次にやるべきことをする。

 地下2階から3階へ。
 そこに、俺が会わなければならない相手がいた。

「お前がグンドラか?」
「お前は……誰だ?」

 俺が来たのは、氷から抜け出した者がいる場所。
 そいつは、武器である戦斧を持って周囲を警戒していた。

「俺はシュタル。最強の魔剣士だ」
「はっ! 最強の魔剣士? 知らんな」

 そう言って来る男は潰したカエルの様な顔をしていて、体はオークの様に醜く太っている。
 顔は俺をバカにしたように見ていて、奴の周囲にはピクリとも動かない魔族の女性が複数横たわっていた。

「別に貴様に知ってもらうつもり等ない。一つ聞こう。なぜ……魔族にそんな事をする?」
「そんなこと? 何がおかしい?」
「その女性たちはお前を殺しに来たのか? そんなことはないだろう? 魔族の村は厳しい状況だ。お前達に戦いを仕掛けている暇はない。それなのに、なぜそんなことをする? 国境を守るのが貴様らの役目だろう?」

 俺はそう奴に問いただすと、奴はポカンとした後に、大笑いする。

「ばはははははは!!! こんな……こんな所まで来て何を言い出すかと思えば……。貴様……バカか?」
「バカ? なぜだ?」
「はっ! 俺達人間が魔族を殺す。それの何がいけない? 勇者が魔族の魔王を殺す。それが正しい。そして、魔族は敵。それが当たり前だ。だから殺す。ただ、殺すだけでは面白くないからな。遊んでいるだけだ。問題ないだろう? どうせ殺すんだ。おれ達が遊んでから殺すのも……大差ない」
「そうか……そういうことか……」

 俺は……これから何をしなければいけないのか、少しだけ分かったような気がした。
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