World Creature Online~私はイノシシになって全てのモンスターをぶっ飛ばす~

土偶の友

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54話 エピローグ

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 私は走って奴の顔の横に行く。アキは危険かもと言っていたけど、私は大丈夫だと思った。

「くはは、どうした。敗者を笑いに来たか」

 奴が口の端から血を流しながら言う。

「ううん。とっても強かった。どうやって勝てばいいか分からないくらいだった」
「だが勝った」
「皆のお陰だよ」
「その皆とやらを率いていたのはお前だ。誇りを持て。幻想種たるワシを倒したのだからな」
「うん。そうする」

 私はそう言って黙る。

「どうした。ワシを殺そうとあれだけ必死だった貴様が。その様な顔をするとは」
「だって……。何だか……寂しくて……」
「そんなことをいうものではない。勝ったのだ。貴様は生き。ワシは死ぬ。強きものが生き残るのがこの世の摂理よ。ワシの死を侮辱するでない」
「ごめん……」
「ならば最後。なぜ貴様の覚醒は解けなかった? わしは計算をしていた。貴様の覚醒が解ける時間にワシの所に着くように。そのタイミングで貴様を確実に葬れるように」
「それはフユカの『共有』だよ」
「『共有』?」

 説明はフユカに任せても良いだろうか。私がフユカの方を見ると、彼女は一つ頷いて話してくれる。

「はい。僕の『共有』で皆の覚醒時間を共有・・したんです。それで、最後僕たちの覚醒は同時に終わったんです」
「……なるほどな。そんな仕掛けがあったとは。やはり戦いとは面白い。こうやって死の淵に立ってすら。ワシはまだ戦いたいと思う」

 でも……もう彼は……。

「ハル。そんな悲しい顔をするもんじゃないよー」

 アキは私にそう言ってくれる。

「うん。でも、何だか、今まで目標にしてたのがいなくなっちゃうって思うと……。何だか……」

 奴は敵だった。それは間違いがなく、いいやつだとも思わない。でも、それでももう少しだけでも戦えたらと。彼から戦いの中で沢山の事を学ぶ事が出来た。そんな相手がいなくなる。それが何だか寂しいような気がしたのだ。

「全く。敵に対してその様な甘い言葉が出てくるとは。先ほどまでワシに風穴を開けようと突撃してきたやつとは思えんな」
「……」
「ふん。調子が狂う。なら貴様にいいことを教えてやろう。幻想種。ワシと同様の存在は後11体存在する」
「!?」

 私の顔は大きく変わっていた。

「その顔は又ワシ同様に穴を開けたくなったか?」
「ちょっと走りたくなった」
「くはは。そうだろう。まだ戦いたいだろう。もっともっと戦いたいだろう」
「それもだけど、もっと世界の果てを見るのが私のやりたいことだけどね」
「この世の果てをみたいのなら他の幻想種も倒さねばならん。貴様らの支配している領域はほんの半分に過ぎんからな。世界の果てをみたいなら、全て倒して走り抜けろ」
「うん……分かった」
「くはは。厳しい道になろうがワシに勝ったのだ。それと他の者達よ」
「何よ」
「なにー?」
「何でしょうか?」
「こ奴は一人でも突っ走る。支えてやるが良い」
「言われなくても。私がハルを守ってあげるわ」
「アタシが魔法で道を作って上げるー」
「僕も道を見失った時は探しますね!」
「皆……」

 皆の言葉がとても嬉しい。

「よき仲間に出会えたな……。それと、キングモグーラよ」
「何や」
「貴様との決着をつけれなかった事。申しわ……け、な……い」

 マウンテンドラゴンコングはそれっきり何も言わなくなった。

「……」
「倒したのね……」
「そうだねー」
「すごい戦いでした」
「お前さんがた。あの幻想種を倒したんや。胸を張るとええ。世界を救ったと言ってもいいんや」

 キングモグーラがそう言ってくれる。その時、アナウンスが鳴り響く。

『全てのプレイヤーにお伝え致します。ただいま、幻想種の1体マウンテンドラゴンコングが初めて討伐されました。これにより、新たなフィールドが解放されました』

「初めてだったんだ……」
「嘘……私たちが?」
「確かに強かったもんねー。正直覚醒しててもヤバかったしー」
「勝てたのが嘘だったと思うほど強かったです」

 そんな事を話していると、キングモグーラが話しかけてくる。

「そう言えばお前さん型に貰ったあの粘土。いい感じに使えそうやわ。せやから、砂の地下帝国が出来そうなんや。もし良かったらきいや。歓迎したるわ」
「どうやって行けばいいの?」
「前ワイおった場所あったやろ?」
「『マーカー』をつけた?」
「せやせや。そこから入れるようになっとるから。気軽に来るとええ」
「分かったー」

 私がそう言うと、彼は起き上がる。体が大きいので踏みつぶされないか不安だ。

「よいしょっと。ワイはこれで帰るで、ほなな」
「うん。バイバイ」
「気を付けて帰りなさい」
「アイテムくれないのー?」
「アキさん。流石にそれは」
「ワイの地下帝国に来たら考えてやるで。ほな」

 ドドドドドドドドドドドドドド

 彼はそう言って地面を掘ってどこかに行ってしまった。恐らく地下帝国とやらに行ったのだろう。

「勝ったんだね……」
「ええ、でもまだまだ私たちの旅は終わらないわよ?」
「そうだよー。最高の眠れる場所に行ってないんだからー」
「ぼ、僕ももっともっとお金を稼ぎたいです!」

 3人は相変わらずで、とっても楽しそうだ。一人落ち込んでいるのがどうかと思ってしまう。

「そうだね! 私も世界の果てを見に行かないと。覚醒した時みたいな立派な体も欲しいし。行こうか!」
「ええ!」
「行こー」
「勿論です」

 私は、兎に角走り出した。その次の瞬間。

『マウンテンドラゴンコングと再戦が可能になりました。実行しますか?』

「………………え? なんて?」

 嘘でしょう? どうして? やつは確かに死んだはず。

「まぁ、ゲームだし……」
「再戦機能とか無いと素材集められないし……」
「一回限りはせめてイベントとかにしますし、ある程度レベル高ければ勝てるような相手にしますよね……」
「そんなのってない! 私の気持ちを返してー!?」
「くはは、全く何を悲しんでいるのかと思えば」
「! 『突進』!」

 私はすっと浮かび上がって来た奴の腹に突撃する。

「ぐは! 何をする。まだ戦闘するとは決まってないだろうが」
「うるさい! でも、またやろうね」
「ああ、何時でも来るがいい。ここで待っておる」
「うん。じゃあまたね」
「ああ」

 私は、奴に背を向けて走り出した。嬉しかったなんて絶対に言ってやらない。

******

 それから私達は色々な場所を回った。奴を倒した事で、レベルも有り得ない程上がった。奴と戦う前に装備を変えていたから当然かもしれない。

 私たちは今キングモグーラが作ったという帝国に向かっていた。

 ナツキがしみじみと話す。

「それにしても、幻想種って後11体もいるのね。他に倒された幻想種っているのかしら?」
「どうだろうね。他の幻想種とそもそも出会ってないから、もっと奥に行かないと会えないやつとかいるのかもね」
「僕も討伐されたっていう話は一回だけ聞いたことがありますね。確か、その人達が今のこのゲームでトッププレイヤーの中で最も優れている。と聞いたことがあります」
「へー。そんな人がいるんだねー。出会ったら大変そうだー」
「どうして?」
「だってーどうやってトカゲサルを倒したんだーって言うことが色々と聞かれそうだからー。面倒でしょー? そんなことする暇があったら寝たいよー」
「確かに……」
「そう考えたらキングモグーラの所に行く時も気を付けないといけないわね。アイツに変な事を言われたりしたら面倒だし」
「そうですね。気を付けながら行くのがいいと思います」
「まぁでも、これでレベル上げをしたり、他のフィールドにいけるね! すっごく楽しみだよ!」
「ええ、私達の冒険はまだまだ続くからね!」
「楽しみだよー。もっと一杯一緒にいよー」
「僕もくっついて離れませんから!」

 私たちは皆で1つ。今も、これからも一緒に冒険をする。リアルのことはお互い何も知らないけど、それでも、ここで私たちはかけがえのない友人であり仲間だ。

 私はこのゲームをやれて本当に良かった。





FIN




********************
ここまでずっと読んで頂き本当にありがとうございます。

一度こういう特化型の話を書いてみたかったので、勢いで駆け抜ける気持ちで書いてみました。

読んで頂けた方々に満足して頂けたら幸いです。

本当にありがとうございました。
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