不治の病で部屋から出たことがない僕は、回復術師を極めて自由に生きる

土偶の友

文字の大きさ
109 / 129
6章

121話 治療

しおりを挟む
宣伝とお知らせをさせてください!

本作である不治の病の物語が、12月16日に発売されます!
WEB版を基本としつつも、4万字くらいの加筆もしているので、
楽しんで頂けると確信しています!
ですので、ぜひともよろしくお願いします!

それと、発売を記念して毎日投稿を再開します!

期限は体力の尽きるまでです!
ただ、発売日までは最低でも続けるので、お楽しみにお待ちください!

***************************


 僕達は、他のマーキュリーの患者の中毒性を取り除くために他の部屋に向かっていた。

 部屋から出て、僕は思い出したかのように声をあげる。

「あ! すいません。部屋に忘れ物をしてきました」
「エミリオ?」
「先に行っていてください。すぐに戻りますから!」

 僕は師匠とクレアさんにそういって、先ほどの部屋に戻った。

「サシャ。大丈夫?」
「エミリオ様! 戻って来て下さると信じていました!」
「うん。今助けるからね」
「はい」

 僕は色々ときつそうな体勢をとっているサシャに近付き、彼女の上に置いてある器具や本を取って机の上に戻していく。

 数分もしたらサシャは疲れた様子で、肩を落としていた。

「本当に……エミリオ様が来て下さらなかったらどうなっていたか……」
「でもどうしてあんなことになっていたの? 起きてびっくりしちゃったよ」
「それが……」

 僕はサシャの勘違いを聞いて、少し驚いてしまった。

「そんな……ここは領主の屋敷だよ? そんなことまた起きる訳がないって」
「そう……ですよね。少し……考えすぎていたのかもしれません」

 彼女は思いつめたような表情をしていた。

「うん。サシャ。そこまで思いつめないで。クレアさんもいい人だし大丈夫だと思うよ」
「はい……」
「サシャが心配してくれるのは嬉しいけど、心配し過ぎはサシャに良くないよ。孤児院にいる時も、結構僕の方を見ていたもんね」
「気付いておられたんですか……」
「うん。気にかけてくれていたんだよね。ありがとう。でも、僕は大丈夫だよ」
「エミリオ様……」
「それじゃあ、僕は行くね」
「え? 行くのですか?」
「うん。これからマーキュリーの患者さんの治療にいかないと。だから行くね」
「はい。本当にありがとうございます」
「ううん。いつも助けてもらっているから、またね!」

 僕はサシャに笑いかけて、部屋から出る。
 それから、急いで師匠達に追いついた。

******

「うぅ……がぁぁあぁぁぁ!!!」
「マーキュリー! マーキュリーを私に頂戴!」
「これは……」

 僕達はクレアさんの案内してくれる部屋に到着すると、その中はひどい状態だった。

 患者さん達はベットに手錠てじょうで拘束され、暴れないようにされている。
 部屋の中には数十人がいて、それぞれの患者の近くには使用人や、兄弟だろうか? 男の人が側についていた。

「お2人とも。症状の進行が進んでいる方々から優先させて頂きます。よろしいですか?」
「大丈夫ですが……あの、こんなに暴れて大丈夫なんでしょうか?」

 この状態で入るのは、注射器で間違った部分に入って行ってしまうかもしれない。

 クレアさんは問題ないと教えてくれる。

「魔法で眠らせます。ずっとはできませんが、治療が終わるまでは必ず効果を持続させると約束しましょう」
「分かりました」

 クレアさんの説明に納得してから、彼女の後をついて1人の女性のところにいく。
 彼女の側には、貴族の格好をした男性がいて、じっと患者を見つめていた。

 彼はクレアさんが近付いて来たのに気付くと、すがりついてきた。

「ドルトムント伯爵! 彼女を! 彼女を助ける手立てはないんですか!」
「今からそれを試します。全てが治るとは言いませんが、少しは落ち着きを取り戻すかもしれません」
「本当ですか!? 彼女は私の大切な婚約者なのです! どうか! どうか!」
「分かっています。今は大人しくしていて下さい。分かりましたか?」
「はい……」

 そう言って、彼は力なくイスに座る。
 彼は両手を組み、祈り続けた。

 クレアさんはそんな彼を一瞥いちべつすると、こちらに向き直る。

「それではまずはこの女性から治療して頂きます。よろしいですか?」
「患者が誰であろうと扱いは変わらない」
「ですね」

 師匠に賛同して、僕達の治療が始まった。

「ぐぅぅ! がぁ! マーキュリィィ!!!」
「魂にやすらぎを、体に平穏へいおんを『眠りへ誘えスリープ』」
「ぐぅぅぅ……」

 クレアさんが暴れる患者に魔法をかけて眠らせる。
 それから、僕達は彼女の中に入っていく。



「エミリオ。まずはもう一度おれがやる。いいな?」
「はい」

 僕達は急いで脳に直行して、師匠が治療を始める。

 ただ、場所が場所だけにいつもの様に敵を簡単に倒すだけではいけない。
 周囲を決して傷つけずに、目的の敵だけを倒すようにしていかなければ。

 それから師匠は抜群の魔法制御技術で1体目の敵を倒す。

「流石です、師匠」
「エミリオ。そんな事を言っている場合ではない。この患者の中には一体どれだけのマーキュリーがいるのかわからない。いいから治療を施して行くぞ」
「はい!」
「次はお前が実際にやってみろ」
「分かりました」

 それから次は僕の番になり、治療を始める。
 ただ、その治療は今までとは違った難しさがあった。

「…………………………」

 僕はじっと魔法にだけ意識を向けて集中し続ける。
 ただ、その集中を続けるという行為が思った以上に精神力をけずっていくのだ。

 失敗できない。
 少しでも脳の一部分に触れてしまえば、取り返しがつかないことになる。
 だから僕は集中して治療を続けた。

 それから何匹倒したのだろうか。
 正直途中から頭が痛くなり、魔法を使うのも苦しくなってきていた。
 でも、困っている人を助けるために、僕は治療を続けた。
 当然、師匠も治療を続けていたからというのもあるけれど。

「つぅ……」
「エミリオ。少し休め」
「でも」
「いいから、そんな状態で治療が失敗したら取り返しがつかない」
「……はい」

 途中からは師匠がメインで倒してくれて、僕のやる回数は減っていた。

 いつまで続くのか。
 そう思っていたら、師匠が口を開く。

「これくらいか? 大分倒したはず。とりあえずはこれで戻るぞ」
「は……い……」

 僕は痛む頭を抑えながら、元に戻る。
 すると、

「ありがとうございます!」
「!?」

 元に戻った僕を、患者の婚約者の人が涙を浮かべながら見ていた。

「な、なんでしょう?」
「君が彼女を助けてくれたのかい!?」
「助けて……いるのかはどうかは分かりませんが、変化はあったのですか?」
「あったとも! 最初はいつ暴れ出すか全く分からなかった。でも、君たちが治療を始めてくれてから呼吸がとってもおだやかになっていったんだ!」
「本当ですか!?」
「ああ! 本当だ! 君が……治療してくれたのかい?」
「基本的には師匠がやってくれました。僕もやりましたけど、師匠程は……」

 師匠ほどの治療はできなかった。
 僕が……あれだけ大見得をきってやる。
 そう言ったはずなのに、それなのに、途中からは師匠に任せきりになってしまった。

 でも、それは彼にとっては関係なかったみたいだ。

「そうだったのか! ありがとう!」
「でも、僕はたいしたことは……」
「しているさ! 私がどんな気持ちで彼女の隣にいたのかわかるかい?」
「それは……」
「彼女の婚約者として、ずっと一緒にいる。そう決めたのに、マーキュリーのせいでまともに会話ができないどころか、苦しむ彼女の姿を見続けることになってしまった。何度逃げようと思ったか。何度ここから離れようと思ったかわからない。私に出来ることはないんだと。そう……言われているような気さえした」
「……」
「でも、君が助けてくれたんだ。ずっと苦しそうになっていた彼女を、君が救ってくれた。本当に……感謝しているよ」
「……でも、まだこれからの様子を見ていかないと」
「それは分かっているさ。でも、こうやって彼女の安らかな寝顔を見れるだけでも、君がしてくれた治療には感謝しているんだ」

 彼はそういって、真っ黒になった彼女のほほをそっと撫でる。
 その仕草は、本当に彼女の事を大切に思っていることが伝わってきた。

「だからありがとう。それに、何もしていないなんて言わないでくれ。私には側にいることしかできなかったんだから」
「いえ……あなたのその思いが……彼女の支えになったのではないかと」

 僕は彼は優しく笑ってくれた。

「ふふ、そうだと嬉しいね」
「きっと……そうだと思います」

 こうして、1人を治療することができた。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。