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1章
3話 クラーケン
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「【タコ化:クラーケン】」
ビシャビシャビシャ!!!
狼達の体から血がそこかしこに飛び散り、地面を真っ赤に染める。
(こいつらの血も赤いのか)
と思いながらも、僕は自分の体が勝手に動くのを見続ける。
「グルルルルルルルルルルルルルル!!!」
僕が一瞬で狼たちを殺したのを警戒しているのか、狼が僕に近付いて来ない。
けれど、僕を殺すことを諦めている様子はなく、囲んだままの状態は変わらない。
「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」
ネクロウルフが何かを使った様に感じた。
その感は当たっていて、奴の周囲の地面から何かがせり出してくる。
恐らくなんらかのスキルだろう。
「……」
「……」
「……」
「……」
骨だけになった狼や、元冒険者であろう腐敗した体の人間。
そいつらが、何十体と生まれてきたのだ。
「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
ネクロウルフが吠えると、そいつらは僕に向かって囲むように近付いてくる。
手下の狼は使いたくないのかもしれない。
そいつらが僕に近付いて来ると、僕の触手は一瞬にしてそいつらを薙ぎ払った。
元々屍で耐久力がなかったのか。
クラーケンの力が桁外れなのか……。
どちらにしろ、まるで何もなかったかのように屍達はバラバラになり動かなくなった。
「グルルルルルルルルルルルルルル」
ネクロウルフは警戒して唸り声を上げる。
けれど、近づいて来ることはしない。
自分の手下を一瞬で消し去った僕を警戒しているのだろう。
僕は、ゆっくりとネクロウルフの方に歩き出した。
「アオオオオオオオオオオン!!!」
「ガウウウウウウ!!!」
ネクロウルフが指示したのか、周囲の狼が飛びかかってくる。
しかし、僕の体が触手を振るうたび、狼たちは真っ赤な固まりに変わっていくだけだった。
僕の歩く速度には微塵も影響はなかった。
「グルルルルルルルルルルルルルル!」
ネクロウルフが威嚇して来るけれど、子犬の様に可愛らしく感じられた。
その鋭く、僕の半分程ありそうな牙も、撫でただけで真っ二つにしてしまいそうな爪も、睨まれただけで、動きが止まってしまいそうな恐ろしい瞳も、全てが所詮は子犬。
僕には……いやクラーケンの前では塵芥に等しい。
「ガウウウウウウウウウウウウウウ!!!」
ネクロウルフの意地か、僕に向かって飛びかかって来る。
「……」
僕の体はネクロウルフの牙も爪も同時に受ける。
1本の触手を奴の前に出し、奴はそれに全力で噛み付き、爪を立てた。
「そんなものか?」
自分の声が自分のものじゃないように感じた。
というか、僕はしゃべったつもりはないのに、何かが口を開いていたようだ。
「グルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ネクロウルフの口からは緑色の液体が触手を伝ってくる。
何か毒の様な物を入れようとしているのだろうか。
けれど、体に異常は感じられなかった。
「つまらん」
僕の体は先ほどと同じように触手を振るい、ネクロウルフの体をバラバラにした。
奴が逃げる隙も与えない。
ただただ触手を振るっただけだ。
「キャインキャイン!!!」
周囲を囲んでいた狼たちは、トップが死んだからか蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
先ほどネクロウルフに噛み付かれた辺りを見てみるけれど、牙が立てられた場所が少しくぼんでいるだけだった。
傷も当然なく痛みもある訳がない。
力をちょっと入れると、直ぐに元通りになったようだった。
それよりも緑色の液体の方が気持ち悪く感じ、地面に擦って拭いた。
全てを拭終えた訳ではないけれど、それでもさっきのままよりはましだろう。
周囲の様子を確認して、足に力を入れ少しばかりの溜めを作る。
何をするのだろう。
そう思っていると、力を解き放ち斜め上に向かって全力で飛んだ。
飛んだ。そう思えるほどに力強く蹴りつけ、壁や床を触手で消し飛ばしながら僕は進む。
何が起きているか分からない。
けれど、僕はこっちの方にいかなければならない気がした。
体もそう思ったのかもしれない。
サナ……サナに会いたい。
そう。サナに会いたいのだ。
僕はサナに会って、グレーデンから守らなければならないんだ。
壊しながら進むけれど、どこまで行ったらここから出られるのだろうか。
考えても分からないけれど、それでも体は進む。
バゴン!
触手を振るっても壊れない壁があった。
壁に止められて驚いてしまったけれど、体には関係ないらしい。
壊れるまで振るうだけだと何度か触手を振るうと、壁が壊れて通れるようになった。
「誰じゃ!?」
中に入ると、そこは一際違った部屋になっていた。
壁際にはぎっしりと本棚が置かれ、部屋の中も光で満たされていて明るい。
中央には真っ白な髪と髭を伸ばしたどこかで見たことのある老人が杖を構えて僕を睨んでいた。
「……」
僕の体は触手を振ろうとしていた。
けれど、僕は何とかそれを押しとどめる。
あの人はきっと敵じゃない。
学校のどこかで見たことがある。
殺すべき人ではない。
しかし、体は言うことを聞かずに触手を振るう。
その速度はネクロウルフを殺した時の半分以下だったけれど、人を殺すには十分な速度だった。
「何じゃと!」
老人はバックステップで飛びのき、何とか躱した。
それと同時に僕に杖を向け、何かを唱える。
「『痺れ動きを止めよ』!」
彼から僕の体に雷のような物が飛んでくるけれど、当たってもなんの効果もない。
痺れたりするのかと思ったけど、そんな事はないようだった。
「効かんのか!? 『縛れ、聖なる光よ』!!!」
彼の杖から光の茨が何十本と伸びてきて、僕の体を縛り上げる。
気持ちとしてはちょっとギュっとされている程度だけれど、触手を振るえば簡単に引きちぎれた。
老人は目を見開き絶望すら浮かべている。
「こ、これでもいかんのか……。もしかして……使わねばならんか。『神の恩寵は届かぬ』」
僕の体が今までで一番重たくなる。
体を動かそうにも、なかなか思うようにいかないらしい。
触手は少しずつ老人を殺すつもりか動いているけれど、僕は何とかして止めようと押しとどめる。
「これでもダメか!? どうしたらいいんじゃ!? このままでは学園が滅んでしまうかもしれん!」
老人が叫んだ言葉をぼんやりと考える。
学園が……滅ぶ……?
学園が滅んだら……グレーデンの奴も死ぬのなら……いいかもしれない。
あいつがいなければ、サナは無事に……サナ……サナ!?
サナは今……学園にいる……。
そうだ。
少し前にサナは学園に入学したのだ。
もしも学園が滅ぶことがあれば……。
サナは……サナは……死んでしまう。
そんなことはさせない。
僕は体を全力で抑え込む。
第一この体は僕の物だ。
ネクロウルフを倒すのを手伝ってくれたとはいえ、幾らなんでも勝手にし過ぎだ。
僕はサナを……サナを守らなければならないんだ。
そして、サナの病を僕が治すのだ。
不治の病と言われた黒蛇病を僕が治す。
それこそ僕がこの学園に来た理由だ。
それの邪魔をするなら僕のスキルとて容赦はしない。
僕は僕の為に、邪魔をするものを許さない!
そう自覚した途端、僕の体の自由が返って来た。
同時に、全身に重い重圧がかかってくるけれど、それも受け入れる。
頑張れば打ち払えそうな気もするけれどそれはやらない。
重圧を受け入れると、体が触手から普通の僕の体に戻ってくる。
触手はなくなり普通の腕に、皮膚もタコの物から人間の物になり、思考も段々といつもの調子に戻ってくるようだった。
「な、何とか……なったか……」
僕の体が完全な人間に戻った所で、重圧は消えた。
僕の体は戻って来たようだった。
でも、問題はまだ残っている。
この老人の部屋を思いっきり壊してしまったのだから。
ビシャビシャビシャ!!!
狼達の体から血がそこかしこに飛び散り、地面を真っ赤に染める。
(こいつらの血も赤いのか)
と思いながらも、僕は自分の体が勝手に動くのを見続ける。
「グルルルルルルルルルルルルルル!!!」
僕が一瞬で狼たちを殺したのを警戒しているのか、狼が僕に近付いて来ない。
けれど、僕を殺すことを諦めている様子はなく、囲んだままの状態は変わらない。
「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」
ネクロウルフが何かを使った様に感じた。
その感は当たっていて、奴の周囲の地面から何かがせり出してくる。
恐らくなんらかのスキルだろう。
「……」
「……」
「……」
「……」
骨だけになった狼や、元冒険者であろう腐敗した体の人間。
そいつらが、何十体と生まれてきたのだ。
「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
ネクロウルフが吠えると、そいつらは僕に向かって囲むように近付いてくる。
手下の狼は使いたくないのかもしれない。
そいつらが僕に近付いて来ると、僕の触手は一瞬にしてそいつらを薙ぎ払った。
元々屍で耐久力がなかったのか。
クラーケンの力が桁外れなのか……。
どちらにしろ、まるで何もなかったかのように屍達はバラバラになり動かなくなった。
「グルルルルルルルルルルルルルル」
ネクロウルフは警戒して唸り声を上げる。
けれど、近づいて来ることはしない。
自分の手下を一瞬で消し去った僕を警戒しているのだろう。
僕は、ゆっくりとネクロウルフの方に歩き出した。
「アオオオオオオオオオオン!!!」
「ガウウウウウウ!!!」
ネクロウルフが指示したのか、周囲の狼が飛びかかってくる。
しかし、僕の体が触手を振るうたび、狼たちは真っ赤な固まりに変わっていくだけだった。
僕の歩く速度には微塵も影響はなかった。
「グルルルルルルルルルルルルルル!」
ネクロウルフが威嚇して来るけれど、子犬の様に可愛らしく感じられた。
その鋭く、僕の半分程ありそうな牙も、撫でただけで真っ二つにしてしまいそうな爪も、睨まれただけで、動きが止まってしまいそうな恐ろしい瞳も、全てが所詮は子犬。
僕には……いやクラーケンの前では塵芥に等しい。
「ガウウウウウウウウウウウウウウ!!!」
ネクロウルフの意地か、僕に向かって飛びかかって来る。
「……」
僕の体はネクロウルフの牙も爪も同時に受ける。
1本の触手を奴の前に出し、奴はそれに全力で噛み付き、爪を立てた。
「そんなものか?」
自分の声が自分のものじゃないように感じた。
というか、僕はしゃべったつもりはないのに、何かが口を開いていたようだ。
「グルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ネクロウルフの口からは緑色の液体が触手を伝ってくる。
何か毒の様な物を入れようとしているのだろうか。
けれど、体に異常は感じられなかった。
「つまらん」
僕の体は先ほどと同じように触手を振るい、ネクロウルフの体をバラバラにした。
奴が逃げる隙も与えない。
ただただ触手を振るっただけだ。
「キャインキャイン!!!」
周囲を囲んでいた狼たちは、トップが死んだからか蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
先ほどネクロウルフに噛み付かれた辺りを見てみるけれど、牙が立てられた場所が少しくぼんでいるだけだった。
傷も当然なく痛みもある訳がない。
力をちょっと入れると、直ぐに元通りになったようだった。
それよりも緑色の液体の方が気持ち悪く感じ、地面に擦って拭いた。
全てを拭終えた訳ではないけれど、それでもさっきのままよりはましだろう。
周囲の様子を確認して、足に力を入れ少しばかりの溜めを作る。
何をするのだろう。
そう思っていると、力を解き放ち斜め上に向かって全力で飛んだ。
飛んだ。そう思えるほどに力強く蹴りつけ、壁や床を触手で消し飛ばしながら僕は進む。
何が起きているか分からない。
けれど、僕はこっちの方にいかなければならない気がした。
体もそう思ったのかもしれない。
サナ……サナに会いたい。
そう。サナに会いたいのだ。
僕はサナに会って、グレーデンから守らなければならないんだ。
壊しながら進むけれど、どこまで行ったらここから出られるのだろうか。
考えても分からないけれど、それでも体は進む。
バゴン!
触手を振るっても壊れない壁があった。
壁に止められて驚いてしまったけれど、体には関係ないらしい。
壊れるまで振るうだけだと何度か触手を振るうと、壁が壊れて通れるようになった。
「誰じゃ!?」
中に入ると、そこは一際違った部屋になっていた。
壁際にはぎっしりと本棚が置かれ、部屋の中も光で満たされていて明るい。
中央には真っ白な髪と髭を伸ばしたどこかで見たことのある老人が杖を構えて僕を睨んでいた。
「……」
僕の体は触手を振ろうとしていた。
けれど、僕は何とかそれを押しとどめる。
あの人はきっと敵じゃない。
学校のどこかで見たことがある。
殺すべき人ではない。
しかし、体は言うことを聞かずに触手を振るう。
その速度はネクロウルフを殺した時の半分以下だったけれど、人を殺すには十分な速度だった。
「何じゃと!」
老人はバックステップで飛びのき、何とか躱した。
それと同時に僕に杖を向け、何かを唱える。
「『痺れ動きを止めよ』!」
彼から僕の体に雷のような物が飛んでくるけれど、当たってもなんの効果もない。
痺れたりするのかと思ったけど、そんな事はないようだった。
「効かんのか!? 『縛れ、聖なる光よ』!!!」
彼の杖から光の茨が何十本と伸びてきて、僕の体を縛り上げる。
気持ちとしてはちょっとギュっとされている程度だけれど、触手を振るえば簡単に引きちぎれた。
老人は目を見開き絶望すら浮かべている。
「こ、これでもいかんのか……。もしかして……使わねばならんか。『神の恩寵は届かぬ』」
僕の体が今までで一番重たくなる。
体を動かそうにも、なかなか思うようにいかないらしい。
触手は少しずつ老人を殺すつもりか動いているけれど、僕は何とかして止めようと押しとどめる。
「これでもダメか!? どうしたらいいんじゃ!? このままでは学園が滅んでしまうかもしれん!」
老人が叫んだ言葉をぼんやりと考える。
学園が……滅ぶ……?
学園が滅んだら……グレーデンの奴も死ぬのなら……いいかもしれない。
あいつがいなければ、サナは無事に……サナ……サナ!?
サナは今……学園にいる……。
そうだ。
少し前にサナは学園に入学したのだ。
もしも学園が滅ぶことがあれば……。
サナは……サナは……死んでしまう。
そんなことはさせない。
僕は体を全力で抑え込む。
第一この体は僕の物だ。
ネクロウルフを倒すのを手伝ってくれたとはいえ、幾らなんでも勝手にし過ぎだ。
僕はサナを……サナを守らなければならないんだ。
そして、サナの病を僕が治すのだ。
不治の病と言われた黒蛇病を僕が治す。
それこそ僕がこの学園に来た理由だ。
それの邪魔をするなら僕のスキルとて容赦はしない。
僕は僕の為に、邪魔をするものを許さない!
そう自覚した途端、僕の体の自由が返って来た。
同時に、全身に重い重圧がかかってくるけれど、それも受け入れる。
頑張れば打ち払えそうな気もするけれどそれはやらない。
重圧を受け入れると、体が触手から普通の僕の体に戻ってくる。
触手はなくなり普通の腕に、皮膚もタコの物から人間の物になり、思考も段々といつもの調子に戻ってくるようだった。
「な、何とか……なったか……」
僕の体が完全な人間に戻った所で、重圧は消えた。
僕の体は戻って来たようだった。
でも、問題はまだ残っている。
この老人の部屋を思いっきり壊してしまったのだから。
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