「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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1章

24話 サナと過去

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 過去編は1話で終わって次話から展開が進みます。

***************

 これは僕がまだ6歳だった頃、サナが元気で黒蛇病に侵されていなかった時の話。

「クトーお兄ちゃん、クトーお兄ちゃんどこ!?」

 僕は小さいころ、よく友達と一緒に遊んでいた。
 でも、引っ込み思案のサナはあんまり友達がおらず、いつも僕の後について来ていたのだ。

 僕は男友達と森の中で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、結構派手に動き回っていた。

「お兄ちゃん待ってー!」
「サナ……家に居なよ……バレちゃうだろ?」
「大丈夫だよ。だってお兄ちゃんが助けてくれるもん!」
「もう……サナは……」

 僕はそういいながらも、サナが一緒の木に登れるように手を貸した。

「えへへ、ありがとう。大好き」
「もう……サナは……」

 こんなことがあって、仲が良かったと思われていたけれど、怒られたくないからそうしていただけだ。

 小さい頃、僕はサナがあまり好きではなかった。
 彼女は常に僕の後をついて来ていたし、そのせいで鬼に捕まったことや、見つかってしまったことは何度もあった。

 サナは笑って楽しいと言っていたけれど、僕は全然楽しくなかった。

 そんな時に、僕はあることを思いつく。
 サナに見つからないように一人で行ってしまおうと。

 僕たちが遊んでいた場所は森の少し入った場所で、ゴブリンとか、ホーンラビットみたいな魔物は一切いない安全な森で遊んでいた。

 そりゃ小さな動物はいたけれど、危険は少なかった。

 だから、サナも僕を見失ったら、直ぐに一人で家に帰るだろうと思ったのだ。

「クトーお兄ちゃん待ってー!」

 サナはいつもの様に僕の後をついてくる。

 僕は、そうやってトコトコと歩いてくるサナを隠れてやり過ごしたのだ。

 サナはドンドン奥へと入っていく。

 僕はそれを見送って、友達たちと遊んだ。

 友達にはサナの隙をついて話していたから問題なかった。

 僕は友達とサナのいない楽しい時間を過ごして、最高の日かもしれないと思った。

 友達と遊び疲れて家に帰ると、サナは帰ってきていなかった。

 日が落ちる寸前まで遊んでいたのだ。
 これからは夜が深くなり、子供が普通に過ごすには厳しいことになる。

 僕は信じられなかった。
 でも、サナがいないことは事実だった。

 村では捜索隊が編成され、サナが消えた森中を探した。
  たまたま来ていた、高名な冒険者パーティにも協力を要請して探していた。

 僕は家にいていい。
 そう言われたけれど、家にいるだけだとバカな自分をこれでもかと呪うことになって、居ても居られなかった。

 だから、大人の人に付き添ってもらい、森を探し続けた。

 それから、僕にとって最悪の日は更新し続けた。



 サナは1週間経っても見つからなかった。

 彼女の足ではそこまで遠くに行くことは出来ないはず。

 狩人や冒険者が森の奥まで入り、泊り込んでサナの痕跡を見つけようとしたけれど、何も発見できなかった。

 それでも彼らは諦めずに何日も探してくれたけれど、見つからなかった。

 サナは死んだと囁かれた。

 僕は後悔で……後悔で死ぬかもしれないと思った。

 僕のせいで、僕がサナと一緒にいなかったせいで、彼女は死んでしまったのかもしれない。

 サナに怨まれる。絶対に怨まれる。

 彼女が生きていても死ぬまで呪われるかもしれない。

 本気でそう思い、僕は一人でフラフラと森の中に入っていった。

 それでも良かった。

 生きてさえいれば見つけられる。

 サナが生きて見つかるのであれば、僕がどれほど怨まれても、神から嫌われてもいいと思った。

 だから一人で森に入ったのだ。

 大人たちも連日の捜索で疲れていた。
 皆力なくうなだれ、元気もなかったから見つからなかったのだと思う。

 僕は森の中を探し回った。

 時々サナがいるような気配がして、見るとそれはリスやウサギ等の小動物だった。

 サナが見つからず落胆しても、僕は森の中を探し続けた。

「サナ?」

 時折、サナの幻影が見えた。

 サナがこっちの方に来ている。
 確証はないけれど、いると思った。

 その方向に……どうやって行ったのか、あんな場所は本当にあの森にあったのか。
 思いだせないけれど、それでも、僕はその方向に進んだ。

 気が付くと、目の前に小さな洞窟どうくつがあった。

 中では松明の炎が揺れているのが分かる。

 僕は躊躇ためらわずに入った。

 そして、奇妙な模様をした石の台座が松明に囲まれていた。
 女性らしき人の手に蛇が巻きついた様な姿で、周囲には炎の様な掘り込みがあった。

 サナはそこに寝かされていた。

「サナ……サナ!」

 僕は彼女にかけより揺すった。
 けれど、彼女は起きない。

 死んでしまった……そう思いかけて涙が溢れて来るけれど、彼女の口から小さな……小さな呼吸音が聞こえた。

「すぅ……すぅ……」
「サナ!」

 僕は彼女を再びゆする。
 けれど、彼女が起きる様子はない。

 だけど、このままにしておけるはずがない。
 僕は彼女を背負って、戻ることに決めた。

 連日の捜索で疲れていたけれど、サナを絶対に連れて帰る。
 その気持ちが僕をふるい立たせた。

 僕は疲れた体に鞭打って、無我夢中でサナを背負って森を歩いた。

 その途中、サナが目を覚ました。

「うぅ……うぅ……ん」
「サナ!? 聞こえるかい!? サナ!?」
「クトー……お兄……ちゃん?」
「そうだよ! 僕だよ! 大丈夫? 痛い所はない!?」

 僕は背中のサナに声をかけ続ける。
 背負っているだけでは足りない。
 話して、彼女の声を聞き、少しでも彼女の存在を感じたかった。

「分かんない……体の感覚が……あんまり……なくって……」
「サナ!?」
「でも、私は嬉しい……」
「どうして……」
「だって……お兄ちゃんが……来てくれたから。私を……こうやって背負ってくれてるから……」
「サナ……」

 彼女は頭を僕の頭にくっつける。

 僕はそれがたまらなく嬉しく……悲しくて……言葉に出来なかった。

「ありがとう。クトーお兄ちゃん。やっぱりお兄ちゃんが助けてくれたんだよね。記憶がないけど……何か……怖かった気がするんだ」
「サナ……」
「でも、お兄ちゃんが助けてくれた。だから、私は……サナは怖くないよ。お兄ちゃん」
「サナ……」
「だからクトーお兄ちゃん。ありがとう。大好き」
「………………」

 言葉は出なかった。彼女に嫌われ、怨まれるとすら思っていた。

 けれど、サナは変わらず僕を好きだと言ってくれるのだ。

 僕はそれからどうやって歩いたのか覚えていない。
 サナと何でもいいから話していた。

 彼女との繋がりを消さないために、僕はずっと……ずっとずっと彼女と話し続けていた。

「おい! 2人がいたぞ!」
「サナちゃんもいるわ! 神官を呼んできて!」

 僕たちはいつの間にか村の近くに戻ってきていて、見つかった村人達に助けられた。

 そして、僕とサナは助けられたけれど、サナは黒蛇病という病にかかっていた。

 サナがいた場所はどうしても見つからなかったし、どうしてサナがかかってしまったのか分からない。
 けれど、サナは変わらなかった。

「クトーお兄ちゃん。ありがとう。クトーお兄ちゃんが助けてくれなかったら、サナは生きていなかったかもしれないんだ」
「サナ……でも……僕が……僕が……」
「クトーお兄ちゃん。ありがとう。大好きだよ」
「サナ……」

 僕はそれ以上サナに何か言うことは出来なかった。

 けれど、僕は絶対に行なうと誓ったことがある。
 それは、サナを一生守ることとサナの黒蛇病を治療すること。

 この2つが僕が生きる意味であり、僕の存在意義だ。
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