「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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1章

25話 西の草原へ

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「はっ!」

 僕はベッドから飛び起きて、懐かしい夢を見たことを思い出す。

「懐かしいな……。もう10年も前のことか……」

 あれから色々あったけれど、サナを治療出来る可能性が出来た事が何よりの前進だ。

 でも、この事を思いだして、少し悲しくもなる。

「そういえば最近はスキルの練習で忙しくてサナに会ってないな……。放課後辺り会いに行くか……」

 今までは2週間も会わないなんてことはなかったから無性に会いたくなってきた。

 彼女は昔の引っ込み思案から変わり、今では普通に初対面の人とも話すことが出来る。

 だから友達も出来ているかもしれない。

 そう考えたら彼女の話を聞くのが楽しみになった。

 僕は、放課後を楽しみにしながら今日の授業の準備をする。

******

「さて、今回の授業ですが」

 今の僕は仲のいい先生であるローバー先生の授業を受けていた。

 他に座る生徒も皆静かに聞いていて、先生の話に集中しているのが分かる。

「最近新しい実験動物を手に入れましてね。かなり研究が進んでいて助かっているんです。最近私が研究しているのは体の中に糸、今は私のスキルで作った物限定ですがそれを筋肉に入れ、補助機能を与えよう。という物なのですよ」
「ほぉ~」

 周囲からは感心のため息が聞こえる。

 そうやって感心しているのは生徒ではなく他の回復技術を教えている先生陣だ。

「それは実際に出来ている段階なのか?」

 あれは……パリス先生だ。
 彼も回復技術……体を鍛えて健康になろうとする人だ。

 いざという時に使えるものではないけれど、一応僕も学んでいる。

 ローバー先生はパリス先生に笑顔で答えた。

「ええ、実用段階までは来ることが出来ています。但し、やはり体の中を激痛が走るので普通に使う。ということは出来ません。一応、痛覚を消す魔法薬を飲めば問題ありませんが、ずっとは流石に続けられないでしょう」
「むぅ……糸で筋肉を補強する……中々に面白い。糸以外でも何か出来ることはあるのか?」
「それを今色々と試している最中で……」

 いつの間にかローバー先生の授業はパリス先生との意見交換会になっていた。

 これはこれで聞いていて楽しいし、色々と先生達の生の声が聞えてくるのでとてもありがたい。

 暫くは先生達の話を聞きつつ、参考になる所はメモを取る。

「しかしローバー先生。スキルに頼った健康というのは中々に難しいのではないですか? 再現性が低すぎる」
「勿論それはあります。けれど、スキルで再現出来る事を普通の人でも再現出来るようになれるかもしれません。私の研究も最初は誰にも見向きもされなかったのはご存じでしょう?」
「……ええ。確か魔法で体を眠らせて、その間に傷を糸で縫い合わせるのでしたか?」
「はい。最初はその様な事は決して認められない。神への冒涜ぼうとくだ。とすら言われました。けれど、そんな声もいつしか消え、今ではこうしてこの国1番の学校で教鞭を取ることも出来ているのです。いずれ、そうなる可能性はあるでしょう?」
「なるほど……一度スキルでも何でもいいから出来るようになる……。確かにそうかもしれません」
「納得頂けたのなら幸いです」
「こちらこそ……と、申し訳ない。授業の邪魔をしてしまいました」
「そんなことはありません。こうやって人に聞いてもらえるからこそ、研究のし甲斐がいと言うものがあるのですから」

 パリス先生は頭を下げてそのまま壁際に戻る。

 それからは普通に先生の授業が始まり、時間まで続く。

 僕は次の授業に向かう最中にローバー先生とパリス先生の話が耳に入った。

「いやいやローバー先生お疲れ様です。この後一緒に食事でもどうですか? 確か授業ありませんでしたよね?」
「ありがとうございますパリス先生。ですが、この後予定があるんですよ」
「そうですか。申し訳ありません」
「いえいえ、また誘って下さい」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」

(大したことない話だったな……)

 研究の話だったらもっと聞きたかったけれど、そうではないようだったので早々に聞くことをやめてレイラとの食事に向かおうとする。

 僕が教室を出た所で話しかけられた。

「ねぇ。君がクトー?」
「ん? そうだけど……」

 見たこともない女子学生が僕の事を待ってくれていたらしい。
 一体どうしたのだろうか?

「これ……」
「手紙と袋……?」

 僕は受け取り、彼女を見るとすぐに逸らされた。

「渡したから」
「あ、ちょっと!?」

 彼女はそれだけ言うとタタタと駆けて行ってしまった。

「何だったんだろう」

 よくわからないけれど、とりあえず封を開けて中を見る。

 そこには……驚くべきことが書いてあった。

『これを読んでいるということはちゃんと届いた様だなタコ野郎。単刀直入に言うと妹のサナは預かった。返して欲しければ西の草原に来い。但し一人でだ。誰かついて来ていたら……サナがどうなるかな? 俺様のありがたい誘いだ。ちゃんと来いよ? グレーデン』

 そう書いてあったのだ。

 急いで袋の中身を確認すると、サナがつけているアンクレットが入っていた。

 僕は手紙を握り潰して、歯をギリリと噛み締める。

 学園長はグレーデンは問題ない。
 そう言っていたけれど、やっぱり逃げていたんだ。

 それも、僕と……サナに酷い事をする為に……。

 僕は怒りに頭が沸騰ふっとうしかけたけれど、今は西の草原を目指して行くだけだ。

 僕は、我を忘れて駆け出した。

 駆けだして直ぐに、たまたまアルセラとすれ違う。

「クトー貴様レイラ様との約束は……」
「今急いでる!」

 僕はそれだけ言うとアルセラをおいていった。

「どうするつもり……」

 アルセラの声は途中で聞こえなくなるけれど、今はそれは知ったことか。
 レイラとの約束は大事だけれど、それでも、サナの事が一番大事なのだ。
 それだけは譲れない。
 絶対の事なのだ。

 学園都市はそれなりの賑わいを見せている。
 学園で作られる生徒の試作魔道具や、スキル研究で賑わっていた。

 僕はその中を走り抜け、西の草原へ急ぐ。

 ただし、学園から走っていく。
 時間はかかってしまうけれど、それは仕方ない。

 本当は馬でも借りれば良かったのかもしれないけれど、馬に乗るのを習う時間があったら回復の勉強をする。

 だから、必死に足を動かして、西の草原を目指して走った。

 西の森を抜け、草原に着いたのは夜になってからだった。
 草原はグレーデンがいる場所がどこかはわからない。

 何で今更こんな場所を選んだのか。
 そう思わないでもないけれど、そんなことはサナが無事であればいい。

「グレーデン! 僕は来たぞ! どこにいる!」

 草原と言っても広い。
 どうせどこかで待っていたのだろうから、大声で叫ぶ。
 周囲を警戒しているけれど、どこからか来る様子はないのが気になる。

 目の前には小高い丘になっていて、後ろは森だけれどそれ以外は広い草原で何もない。

 少し待つと、グレーデンらしき声が聞こえた。

「やっと来たか、待たせやがって」
「グレーデン……」

 グレーデンの声がして、そちらを向くと奴は少し小高い丘の上に仁王立ちで立っていた。

 月明かりを背にしていて、彼の輪郭しか分からないけれど、それでも、何だか変な感じがする。

「てめぇが俺様を助けなかったせいで……てめぇにはその体で払ってもらうからよ。覚悟しておけ」
「その体は……」

 グレーデンの体から、僕と同じようなタコの触手が生えていた。
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