「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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2章

53話 再び森へ

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「はっ!」

 僕はベッドから飛び起きて、急いで窓の外を見る。
 既に日は登っていて、10時は過ぎているだろう。

「サナ……」

 僕は扉を蹴破るように出る。
 その時に、何かを蹴り飛ばしてしまった。
 カランカランと乾いた音を響かせる。

「これは……睡眠香?」

 それは以前話していた眠りやすくなる香の形をしていた。
 量を間違えなければ素晴らしく効くが、大量に使うと眠りに落ちて目がめないと言われているもの。

 そんな物が僕の部屋の前においてあるとなると……。

 嫌な予感がした。

「【タコ化】」

 僕は足をタコにして普通よりも圧倒的に早い速度でサナの部屋に向かう。

「サナ!」

 サナの部屋の前に到着し、扉を叩いても一行に出てくる様子がない。

「サナ! サナ!」

 扉を何度も叩くけれど、部屋の中に人の気配もない。

「サナ……」

 この扉を蹴破ろうとした時に、扉の下に何かが見える。
 拾い上げて見ると、たった一言書いてある紙だった。

『西の森に』

「……!」

 僕はそれを握り潰し、急いで西の森に向かう。

 少し前にもローバーのクソ野郎に……いや、あれはグレーデンだったか。
 西の平原……森の奥にこいと言われた事があったけれど、またしても行くことになるとは。

 僕はサナを助けるために、西の森へと走り出した。

******

 僕が森に向かって走り出して1時間もしない内に、正面の方から走ってくる生徒達に出会う。

 彼らの服装は皆1年生で、何かから逃げている様だった。

「君! 何があったの!」

 一番最初に走って来ていた男の子を捕まえて話を聞く。

「それが……それが、森に入ったら……入ったら……。一杯……一杯魔物が現れて……。それで、〈守護獣の兜ガーディアンヘルム〉の人達は……何もしてくれなくて……」
「やっぱりか!」
「それで……それで……先生達が向かえ討ってくれてたんだけど……魔物が多すぎて……。それで、足の速い人達でこっちに来るようにって。応援を呼んで来るようにって!」
「分かった。僕も手伝いに行く。君は一刻も早く学園にこのことを」
「は、はい!」

 彼はそう言って急いで後ろに駆け抜けていく。
 速度は僕よりも大分速い。
 そっち系統のスキルだろう。

 僕はそれを確認した後に、森に向かって全力で走っていく。

 森に近付くに連れて、戦闘をしている光景が見えて来る。
 豪炎が巻き起こり、紫電が走り、閃光が焼き尽くす。

 教師陣が中央にいる生徒を守っているのが遠くから見ていても分かる。
 生徒を守りながら森からは脱出して、今は平原で戦っていた。

 その周囲から襲いかかっている魔物は……。

「ネクロウルフ!?」

 しかも分かる範囲で2頭も居て、その配下の狼や殺された冒険者、他には生徒や教師らしき人も操られていた。

 遠くから見てもサナはいるかどうか分からなかった。
 けれど、彼らをここで見捨てることも出来ない。

 だから、僕は彼らを助けに向かう。

 奴らは3方向から生徒達を囲んでいるみたいだった。
 幸いなことに囲むのに集中していて、僕が進む方向からはネクロウルフの背中はがら空きだ。

 こちらに背を向けている一番近い奴に向かって全力疾走しっそうする。

「【タコ化:クラーケン】【保護色カラーコート】」

 足を人の足にし、右手の触手を1本、クラーケンと化して姿を消す。
 そして走ってきた勢いを使って、奴の頭に向かって飛んだ。

「グル?」
「バイバイ」

 メキャ

「グ……ル……?」

 僕は奴の首を握り潰した。

「グルル?」

 奴の周囲にいた狼たちが異変に気付いて振り返るけれどもう遅い。
 奴らのトップは既に殺した。

 ネクロウルフの首が地面に落ちると同時に、周囲にいた奴が吠える。

「アオオオオオ!!!???」
「吠えてる暇あるの? 【触手強化テンタクルフェイズ】」

 両手を触手の4本に増やし、飛びかかってくる奴らを掴んではへし折る。

 パキパキパキ

 周囲にいた狼達はそこまでのサイズではなく、細枝を折るように奴らを握りつぶす。
 1体につき1秒もかからない。

 僕は中央……生徒達に近付きながらすれ違う狼や、死んだ冒険者を再度殺していく。

「あ……り……がと……う」
「ゆっくり休んで」

 ずっと囚われていた冒険者は解放された事によってか時折感謝を述べていた。
 死してなお操られ、好きでもないことをさせられ続けるのは彼らにとっても……きっと、苦痛だったのだろう。

 僕はその事を頭から振り払い走りだす。
 すると、直ぐに先頭で戦っている教師達と合流した。

「あの触手は!」

 中々な言われような気もするけれど……。
 まぁでも、その顔は敵対的な感じではないのでいいか。

「君はクトー君!?」
「応援に来ました! 状況は!?」

 体中から血を流しながらも、拳で戦っていたパリス先生に声をかけた。

「ネクロウルフが3体も出現した! ヤバい! ここもヤバいが左後ろが崩壊しかけている! そっちの援護に行ってくれ!」
「分かりました! 右後ろは問題ないですか!」
「そっちは学園長の私兵が抑えてくれている! それよりも左後ろを!」
「分かりました! こっちのネクロウルフは倒しておきました! 無理はされないように!」

 僕はそれだけ伝えると、別れ際にちょっと間の抜けた表情をしていたパリス先生をおいて次の奴らの所に向かう。

「え? 倒した? 嘘だろ? でもそっちの方から……。信じられんが……」

 僕は生徒達の間を抜けて、森に最も近い所に向かって行く。

「え?」
「誰?」
「クトー様……?」

 少し走ると、一番の激戦区であったであろう場所に到着する。
 そこには先生だけでなく、勇敢に戦ったであろう生徒の死体も転がっていた。

 しかも、戦況は想像以上に悪く、回復魔法の先生であるピュリー先生も頭から血を流しながらロッドを振って戦っている。
 しかも、いつもはか細く優しい声を張り上げて皆を鼓舞こぶしていた。

「戦いなさい! 戦わなければ死ぬしかないのです! しかし! 戦えば生き残れる! 大切な人に会えます! 小さな魔法でも、戦力になります! 戦いなさい!」

 彼女の言葉に当てられたのか、かなりの人が仕える魔法を放ったり、剣を持って敵と戦いに向かっていた。

 僕は彼女の側に近付く。

「ピュリー先生!」
「貴方はクトー君!? どうしてここに!?」
「そんな事は後でいいです! ここより前に誰か生き残っている人はいますか!?」

 僕がそう聞くと、ピュリー先生は一瞬悲しそうな顔を浮かべた後に、首を振った。

「いえ……私より前にいた方は……全員殺されるか……操られています。助けることは出来ません」
「……分かりました。ここは任せて下さい」

 僕はそう話しながら近付いて来る狼を握りつぶす。

 その様子を見て、ピュリー先生も驚いていた。

「貴方は……」
「下がっていてください」

 僕は1人で前に進み、万が一にも巻き込まれないように気を付ける。
 そして、触手を体の前に出して、スキルを放つ。

「【水流切断アクアセーバー】」

 シュパッ!!!

 とても短い時間。
 それだけの時間で僕たちの前にいるほとんどの敵は真っ二つに切り裂かれ、動かなくなった。

「え……貴方……え……嘘……何……今の……?」

 ピュリー先生も驚いているけれど、今はそんな所ではない。

 まだ、ネクロウルフは生きていたのだから。

「ピュリー先生、少し行ってきますね」
「え……危険で……でも……いえ、こんな事が出来るなら、貴方に頼むしかありません。よろしくお願いします」
「任せて下さい」

 僕のことを全力で警戒し、こちらを睨みつけているネクロウルフに向かって駆け出した。
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