「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

72話 ヴォルカニックウルフ

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選ばれし者ギフターズ〉が混乱している最中、学園長室では敵の様子に喝采かっさいが上がっていた。

「流石学園長! あの敵の驚きよう!」
「後はこちらから攻めれば簡単なのでは!?」
「ローバーを捕らえたクトーもいます。これは思った以上に心配ないかもしれませんな!」
「……」

 そう口々に喜びの声をあげる教師達に、学園長は嫌な予感を感じながら外をにらむ。

 外ではこちらの教師達や、数少ない兵士達が敵に向かって進んでいる。
 相手は混乱しているし、立て直しも済んでいない。

 けれど、どこにいるかも分からないSランクの魔物もどこかに潜んでいる事が確認されているのだ。
 油断など決して出来ない。

「ヴォルカニックウルフが現れました!」
「!?」

 学園長室に緊張が走る。

 学園長でもタダでは済まされないSランクの魔物。
 それがこちらの兵士達の前に現れたのだ。

「!?」

 しかも、嫌なタイミングで望まぬ来客を魔法が告げて来る。

「街に敵が侵入した! 街にいる者達に警戒させよ! それと、民は決して家から出てはならんぞ!」
「伝えてきます!」

 伝令の者はそう言って走って行く。

 街ではいつの間にか火の手が上がっていて、街の住人が大慌てで逃げ出している。
 何人かが屋根から屋根を飛び移り、何かをしているのを学園長は見た。

「ジェレ」
「何」
「部隊を率いて街を任せる」
「分かった」

 ジェレは直ぐに消え、街の中にいる連中を1人ずつ駆逐くちくして行く。

 学園長はそれを見て安堵あんどし、前線の事を考えた。
 彼ほどの実力があれば、先ほどの様な大技を放てなくても前線に行けば大きな力になる。
 けれど、行ってはならないかもしれない。
 そう思わされるだけの何かがあった。

「……ワシも出る。街のことは街の連中に任せろ」
「畏まりました。お気をつけて」
「ここでの指示は我々が引き継ぎます」
「任せた」

 学園長は悩んだ末に前線に行くことを決めた。
 予感を頼りにしてこうしている間にも、きっと多くの者が犠牲になるかもしれないからだ。

 数名を残して彼は前線に向かう。

「ワシの学園に手を出したこと……。後悔させてやる」

 学園長はそう言うと、窓の外に飛び出した。

******

「街で火の手が!」
「なんだって!?」

 僕は後ろを見ると、確かに学園の中から火の手が上がっている様だった。

「今は気にしないで! 前だけ見て! 中は学園長達が何とかしてくれるから!」

 そう叫ぶピュリー先生の言葉に僕たちは励まされ、向かってくるヴォルカニックウルフと向かい合う。

「こいつは僕が相手をします! 皆さんは離れていてください!」
「でも! 貴方1人に任せる訳には!?」
「1人の方が存分に力を使えるんです! お願いします!」
「……任せました!」
「無事に帰って来なさいよ!」
「昼食をおごる事を忘れるなよ」
「分かってるよ」

 レイラとアルセラに軽く返して、皆が離れた頃に僕はスキルを使う。

「【タコ化:クラーケン】」

 全身をクラーケンにし、挑発するようにヴォルカニックウルフにちょいちょいと触手を振った。

 僕の行動に興味を引かれたのか、奴はじっと僕を見ていた。

 ヴォルカニックウルフとは山奥の火山に生息していると言われる魔物で、大きさは20mを超えるほどの大きさを持つ。
 体毛は地毛になるほど真っ黒で、外に行くほど赤くなっている。
 その毛先からは真っ赤な炎がチロチロと出ていて、近付くだけで焼かれてしまいそうだ。

 僕は触手を動かし、ゆっくりと奴に向かって近付いて行く。

「グロロロロロロロロロロロロ!!!」

 奴は吠え、そして挨拶とばかりにマグマを僕に向かって吐き出して来る。

「【水流切断アクアセーバー】」

 僕は前の4本の触手から同時に水流を出し、それらを撃ち落とす。

「グロロロロロロロロロロロロ」

 奴は僕を憎々し気に見つめる。
 でも、そんなことをしている暇ではないだろう。

「【墨吐きブラックアウト】」

 ドバァ!!!

 奴に向かって大量の墨を吐き出す。
 しかも、全て奴に向けてではない。
 そのうちの半分は他の敵に向かってだ。

 成果は出て、少し離れた所にいる奴らにも墨はかかる。

 レイラやアルセラ達が戦うのであれば、少しくらい援護をしても罰は当たらない。
 そして、目の前の奴も以前戦ったネクロウルフのように少しでも動きが鈍くなればいい。
 と思っていたのだけれど……。

 ジュワアアアアアアア!!!

 僕の墨は奴に届く前に全てが蒸発してしまった。
 それほどに奴の周囲は熱を放っているらしい。

 よくよく見ると、奴の側には誰もいない。
 きっと側にいるだけで命絶えてしまうのだろう。

「グロロロロロロロロロロロロ!!!」

 奴は叫びながら僕に向かって突っ込んで来る。
 奴が近付く度に周囲の気温は上がり、草木は干上がっていく。

「【闇の牢獄ダークプリズン】」

 奴が突っ込んでくるなら待ち受けるまで、奴の目の前に漆黒のひつぎを出す。
 けれど、奴は当然の様にそれを躱してくる。

「グロロロロロロロロロロロロオオオオオオ!!!」

 爪をきらめかせ、僕に向かって踊りかかって来る。
 近接で戦いたいと言うなら望む所だ。

「【触手強化テンタクルフェイズ】!!!」

 ドシィン!!!

 奴の爪を触手で受け止める。
 確かに爪は鋭いかもしれないけれど、こちらの触手だって伊達ではない。

 爪が少し食い込む程度で、それ以上深く刺さることはなかった。

 そのまま奴の体中に触手を巻きつけ、そのまま絞め殺そうと力を込める。

「グロロロロオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「あっつい!!!???」

 ただでさえ熱かった奴の周囲がマグマにでもなったかの様に熱を持つ。
 クラーケンの触手と言えど熱に少し弱い所があり、思わず力が緩んでしまう。

「ガウ!」

 その隙にヴォルカニックウルフを逃がしてしまった。

 奴は急いで僕から離れて行く。
 僕に近付く事の危険性を知ったに違いない。

「グロロロロロロロロロロロロ!!!」

 何十という溶岩の塊が奴の口から吐き出され、その全てが僕に向かって飛んでくる。

 しかし、それは先ほど撃ち落としたばかりだ。
 それをもう一度やるだけ。

「【水流切断アクアセーバー】」

 瞬時に水流を発射し、それら全てを撃ち落とす。
 周囲にいる味方も被害に巻き込まないようにすら配慮したのだ。

 そして全てのマグマを撃ち落とした時、僕は奴の姿を見失っている事に気がついた。

 ブチブチブチブチ

「!!!???」

 マグマを撃ち落とす事に集中していた僕の触手が1本、奴に食いちぎられてしまった。
 いつの間にか僕の背後に回り込んでいるとは……。
 しかも、先ほど近接戦は僕が有利という事を見せつけたばかりだったので油断してしまった。

「でも、近付くのはやっぱり良くないよ。【触手強化テンタクルフェイズ】」

 残った触手を伸ばし、奴の体をからめとる。
 でも、ただ絡めとるだけでは意味はない。

 先ほどと同様に奴の体はかなりの熱を持っている。
 ただの人であれば近付いただけで死ぬ。

 更にこの俊敏性しゅんびんせいと、ブレスを囮に使う事が出来る程の頭脳。
 これがSランクの魔物なのだ、油断はもうしない。

「【自己再生オートリペア】!」

 僕は触手が焼けただれ、落ちていくその端から回復をする。
 焼けてもまた直ぐに触手が生まれ変わり、そして直ぐに焼け落ちる。

 奴の体を絞め殺すのが先か。
 僕の体が燃え尽きるのが先か。

 といっても、クラーケンの力の前では僕の方が俄然がぜん有利だ。

 でなければこんな勝負はしない。

 奴が苦しそうに体をくねらせて抜けようとする。
 けれど、逃がしはしない。

 あんな囮でもう一度僕にダメージを与えるられると舐めた真似をしたむくいをくれてやらねば。

 あともう少し。
 しかし、閃光が僕に向かって飛んでくるのが見えた。
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